フリーザーは南から北へ、カントー本土を横断するように飛んだ。
海岸線、街の灯り。生きている世界。
空から見るとまた違うんだな。
ああ、これがおれの諦めた世界でもあるのか。
体も徐々に回復していた。ふたご島の火山の熱気はむしろ焼けそうなくらいだったが。
やがて、大きな街が見えてくる。
ヤマブキシティ。カントー地方の中心都市。高層ビルが立ち並び、無数の灯りが煌めいている。
戻ってきてしまったか。
フリーザーは人目につかない静かな街の外れに降り立った。
今ならわかる。
フリーザーは闘いたいんだ。
そうだろ?
フリーザーは鳴いた。
おれにはわかる。
つまるところ、有り余ったエネルギーが循環せず、行き場を失っている。
若さ故、うまく使いこなせていないだけなのだ。
このクソッタレな世界でまだやることがあるとしたら、死ぬ気で闘ってみることくらいなんだろうか。
フリーザーにはまだ未来がある。目にまだ微かな光があるのを感じる。
このポケモンのために何か自分にできることをしたい。自然とそんな風に思えた。
彼は近くのフレンドリーショップに向かった。わずかに残っていた所持金で、モンスターボールを一つ購入して先ほどの場所に戻る。
フリーザーは待っていた。もう言葉にする必要もないようだ。
モンスターボールをかざすと、カチリと音がした。
ありがとうフリーザー。言葉ではなくきちんと行動で尽くさせてもらうよ。
それからフリーザーと共に過ごすようになった。
日が経つにつれ、朝、目を覚ますことが苦痛ではなくなった。食事に味を感じるようになった。風景が美しいと思うようになった。
そんな日々を過ごしていた時、タマムシシティの方から歩いて来る一人の女性に出会った。
女性は日傘をさして優雅に歩いていた。長い黒髪。落ち着いた雰囲気。
花のような香りがした。
女性は彼に気づいた。
「御機嫌よう」
彼女の声は、どこか透き通っていた。
彼女は立ち止まった。
「あなたのポケモン、フリーザー?どんな子ですか」
彼は少し考えた。おれに似ているところはあるけど、そもそも謎が多いしなあなどと考え込んでしまう。
彼女は首を傾げた。
「どんな想いを持った子ですか。何を感じていますか」
彼はわからなかった。
彼女もそれを察した。
「あなたはまだ、ポケモンとの生活を始めたばかりのようですね。これからもっと多くのポケモンにも出会うでしょう」
彼女は微笑んだ。
「では、いつか教えてください。タマムシシティです。訪ねてください。私はエリカ。ジムリーダーです」
「もしあなたがポケモンのことを理解したいなら、いつでも来てください。あなたとあなたのポケモンの絆を、形にする手助けができるかもしれません」
そう言って彼女は去っていった。
独特な雰囲気を醸し出す女性だった。
確かに、ジムへの挑戦は今の自分たちにとって、最も進むべき道なのかもしれない。
おれがトレーナーになれば、フリーザーに戦いの場を用意してあげられる。
こうして彼は、フリーザーと共にカントーのジムに挑戦することに決めた。
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ジム。ポケモンバトルの場。トレーナーとポケモンが共に戦い、技術と絆を証明する場所。
彼はニビシティから順番に8つのジムに挑戦することにした。
最初のニビジム。ジムリーダーのタケシは、彼の申し出を受け入れた。
バトルが始まった。初めての戦い。
岩タイプのポケモンたちに、フリーザーの氷技は今ひとつ効果が薄いようだ。
彼自身トレーナーとしてはまだ未熟だ。技の選択、タイミング、戦術、全てが手探りだった。
フリーザーは彼の指示に従おうとするが最善ではないことも多い。
それでもフリーザーは諦めず、彼も諦めなかった。
何より四苦八苦しながらの戦いはスリルもあって楽しかった。
苦戦の末、フリーザーの執念の体当たりが決まる。
褒められたような戦いではなかったが、初めてのバッジ。グレーバッジ。
初めてのポケモンセンターも利用し、次のジムへ移動することにした。
ハナダシティでは、フリーザーが新たな技を習得した。
フリーズドライ。氷技でありながら、水タイプに効果抜群の特殊な技。
ジムリーダーのカスミのスターミーを凍らせたその技は、圧巻だった。
バッジがまた一つ増えた。
退かないこと。仲間を信じること。どんな困難でも、一緒に乗り越えること。フリーザーの静かな存在が、それを教えてくれた。
お互いに心の中が少しづつ分かり合えるようになってきた気がした。