一章:門出
シンオウへ向かおうとしたその時、家を出て空を見上げると、フリーザーが飛んでいた。
彼を迎えに来たのだ。みんなお見通しなのが悔しい。でもどこかで見ていてくれたのかな。
フリーザーは地面に降り立ち、翼を広げた。
イーブイは目をキラキラさせながら先にフリーザーに飛び乗り、彼も背に乗った。
イーブイはとても嬉しそうだ。
フリーザーが飛び立つ。
目指すは、シンオウ地方。
長い旅路だったが、やがてシンオウの大地が見えてきた。
寒すぎる。シロガネ山のトラウマが…
そして、日本を代表する名所、天冠山が見えてくる。
頂上にはこれまた有名な槍の柱が聳え立っている。
歴史の教科書で見たやつだ。
フリーザーに頼んで少し寄ってもらった。
過酷な環境故に既に廃墟となってしまっている。
だが、わかる。
重々しい空気。
本物というやつだ。
ただの観光地ではない。
そして、誰もいるはずはないのだが、何かに見られている気がする。
アルフの遺跡の時と同じだ。
試される大地ってやつか…
名残惜しい気もするが、いつまでもここにいると凍え死んでしまうので、フリーザーに乗って出発する。
217番道路に沿って進む。あたり一面純白の雪に覆われた道。
凍土という言葉に相応しく、この先人が住んでいるのが信じられない。
試されすぎだろ…
エイチ湖のほとりを目指してフリーザーが降下を始める。
するとその時、イーブイの体が光り始めた。
光が収まる。そこには…
グレイシア。
氷タイプに進化したイーブイ。青白い体毛。凛とした姿。
グレイシアは彼を見上げた。
その目には、決意があった。フリーザーからも何か影響を受けたのだろう。
やがてフリーザーが湖のほとりに降り立つ。
その途端、近くに空から何かが落ちてきた。
小さな鳥ポケモン。ヤヤコマ。
傷ついて凍えている。気流にも巻き込まれたのだろう。
彼はヤヤコマを拾い上げた。
グレイシアが心配そうに見ている。
彼はヤヤコマを手当てした。
本格的にはポケモンセンターに預けないといけないが、一先ず大丈夫だろう。
フリーザーとはここでお別れなようだ。
何やら、遠くに住む友達と会う約束をしているらしい。
またいつか、と言うように一度鳴き、空へ飛び去っていった。
その後、ヤヤコマをポケモンセンターに連れて行き、無事回復した。
付いて来たいようだったので、一緒にシンオウを周ることにした。寒いからちょうど助かった…
彼はグレイシアとヤヤコマと共に、シンオウを歩き始めた。
ヤヤコマは飛ぶことが好きで、高速で飛ぶことを探究し、食事をするのも忘れ、栄養失調になっていたようだった。
その奇行も変わり者扱いされ、理解されず、群れから追放されてしまったらしい。
そんな性格も相まって、いざバトルとなると切り込み隊長として先陣を切って突っ込んでいく。
少しずつ飛びながらのバトルのコツも掴み始めたようだ。
そんなヤヤコマへ道案内を任せ、次の町ハクタイシティへ向かおうとするが、不気味な森の洋館へ迷い込んでしまった。
隊長、怖すぎて洒落にならないよ…
ここでも何かに監視されている気配がする。
戻る道もわからないので、仕方なく奥へ進んでいく。
するといきなり家電が動き出した。
テレビ。冷蔵庫。洗濯機。
頭の上のグレイシアが怖がってしがみついてくるせいで前がよく見えない。
しかしよく見るとその家電の中に、オレンジ色の小さなポケモンがいた。
ロトム。
プラズマポケモン。
イタズラ好きなようだ。
しばらくすると、グレイシアとヤヤコマは危害がないとわかったのか、一緒に遊び始めた。
ロトムもただ誰かと遊びたかっただけなのかもしれない。
やがて、ロトムも彼になつき、旅についてくるようになった。
ロトムは旅を楽に、そして豊かにしてくれた。
普段はボールの中ではなく、スマホの中にいることが好きなようだった。
ヤヤコマは不満そうだが、ロトムは正確に最短ルートで道案内もしてくれるので、道に迷うこともなくなった。
他にも洗濯やら掃除やら、調理補助、遠隔での敵情視察まで、できないことは何もないと思えるほど器用な奴だった。
おれはこのパーティなら面白いバトルができると確信していた。