頭痛がひどいデビルハンターの話   作:kanesa

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玉の痛み

 

 

 

 

 

 ────特異4課突入後。

 

 

 屍の血が飛び散る中、悪魔達の声が響き渡った

 

 各々好きな手段でゾンビを蹴散らしていく

 ゾンビを殴り殺す者もいれば、食い散らかす者も、踏み潰す者も…

 

 地面には屍の山と、真っ赤な湖と川が

 

 なるほどこれが屍山血河(しざんけつが)か…

 リアルで使うことあるんだなこの四字熟語

 

 そんな光景を見つつ俺はゾンビ達を斬っていく

 

「まったく…ゾンビは自我が無いから痛みの悪魔が通じなくて嫌んなる……それにこの異臭…」

 

 ──あぁ…天童さんと黒瀬さんの観光案内してた平和な数日前に戻りたい…

 

 そんなことをため息をつきながら考えていると、背後から声がかかる

 

 

「そこのキミ」

 

 振り向くとそこには、羽根と頭上の光輪が目立つ、スーツ姿の人物"天使の悪魔"だ。

 見た目は女っぽいがこれで男だ、まじかよ

 

「あぁはい…なんでしょうか…?」

 

 ──結構前からいるが、ぶっちゃけほとんど関わりがないのでどう応対したらいいかわからない…

 

「別にめんどくさいから敬語じゃなくてもいいのに…あっちの彼が呼んでるよ」

 

 指差す方向に目を向けると、そこにはアキの姿

 

 手に持っているのは釘の剣ではなく、天使の悪魔の力で作った武器、この前呪いの悪魔は契約解除させてやったのだ。

 

 契約解除の説得にはかなり骨は折れたが

「相手がデンジみたいに復活する相手だったらどうすんの」とか「寿命代償に悪魔1殺はショボい」「無駄にデカイかさばるお荷物」「剣としても使いづらい武器未満」「肝心な時に切れない切り札は切り札じゃないゴミ」と、力説すればすごい複雑そうな顔をしながらも契約解除はしてくれた。

 

「クナイ、そろそろ行くぞ…それと悪魔、コイツを外に運べ」

 

 そう言いながら気絶した男を引き渡すアキ

 

 俺は一度大きくため息を吐き、頭を押さえると、アキの後ろに付いていく。

 

 

「いってらっしゃ~い…」

 

 

 ──気の抜けるような天使の悪魔の声が、俺たちの後ろでよく響いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──カツリ、カツリと二人分の足音が響く

 

 

 縦長の通路を通り、階段を登りきる

 

 そして、二人の足が止まる。

 

 

 相対するはヘビの悪魔の契約者"沢渡アカネ"

 

 

「大人しく投降し──

 

「《ヘビ》<噛み付き>」

 

 先に口を開いたのはアキ、先に動いたのは沢渡

 

 大蛇の大口は、降伏勧告なぞ知らぬとばかりに早川アキへと迫る──

 

「《熊》」

 

「チッ」

 

 やはり前回と同じく、熊の悪魔の豪腕がヘビの顎をしっかり捕らえ、強靭な爪で切り裂いた。

 

 沢渡は一度だけ舌を鳴らすと、指1本を前に向け

 

「ヘビ…<尻尾>!」

 

 そう叫ぶと、巨大な尻尾が天井を突き破り、クナイの頭上に襲い掛かった──

 

 

 ──だが早川アキはその()()を見逃さない

 

「ッッ!!クナイ!行けッ!」

 

 尻尾を刀で受け止めながら、クナイに指示を出す

 クナイはそれを聞くと、すぐさま行動に移した

 

「《縄》」

 

 現れたのは《縄の悪魔》

 その姿は、一言で言うならば

 "ケンタウロスのカウボーイ"

 手に持った捕縛用の縄は、悪魔自身の首に、まるで絞首刑の用に繋がっており異様な雰囲気を醸し出している。

 

 クナイはその悪魔の背に乗り駆け出す

 

 その馬の足は、ヘビの身体を素早く駆け巡り、沢渡の頭上へと飛び出す

 手に持った縄を回し、廻し、獲物を捕獲せんと沢渡へ投げ飛ばした──

 

 

「ックナイ!避けろッ!!」

 

「《ヘビ》<脱け殻>」

 

 

 ──未来を見たアキが叫ぶがもう遅い

 クナイは既に空中、逃げ場は無い。

 

 沢渡の足元から飛び出した巨大なヘビによってクナイの身体は壁へと叩き付けられた。

 

 立ち上る土煙、ひび割れた壁

 

「……ッ」

 

 アキは一瞬動揺、その隙を突き、ヘビの尻尾がアキの身体を弾き飛ばす。

 

 ──形勢逆転。

 

 そう確信した沢渡は口を開いた

 

「大人しくしろ、そうすれば楽に殺──

 

「《縄》」

 

 

 背後からの奇襲、反応出来なかった沢渡の身体は瞬く間に縛り上げられる。

 

「…なッ…んで…!」

 

 確認すると、短刀を沢渡に向けたクナイの姿

 

 その隣には、ザブリと地面から顔を出す、黒い姿に白い眼のような模様

 鋭い尾びれと背びれ、凶悪な牙と笑み

《シャチの悪魔》の姿があった。

 

 

「大人しく投降しろ」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 ──拘束された沢渡アカネと共に通路を歩く。

 

 

 アキはデンジの方に向かった

 

 監視は一人で充分というのもあるが、彼女に聞きたいことがあったのでちょうどいい。

 

 

「武器人間のことをどこで知った?」

 

「……………」

 

「どうやって武器人間を作った?」

 

「…………」

 

 沢渡は答えない。

 

 

()()()についてどこまで知っている?」

 

「……ッ」

 

 沢渡の身体が一瞬、ピクリと動いた──

 

 

 ──次の瞬間、左からヘビの悪魔が沢渡の首元目掛けて突っ込んで来る。

 

「ッ《熊》」

 

 だが、瞬時に熊の悪魔を出し、ヘビの噛み付きを押し止める。

 

 貴重な情報源だ、死なせるわけには──

 

 

 

 

 ──そう、振り向いた時には既に遅く

 

 沢渡の喉元には小さなヘビが食い付いており、そのまま彼女の喉笛は食いちぎられた。

 

 鮮血が舞い、白い壁をキャンバスのように赤く、朱く色付けた。

 

 ドサリ、と軽く倒れる音が響く

 

 

「───チッ」

 

 やられた。

 

 だが、冷静さは忘れない

 このいつも通りに響く頭痛が、逆に頭を冷やす。

 

 沢渡アカネは原作でも謎の多いキャラだった

 出来ることなら生かして、詳細な情報を得たかったが仕方ない。

 

 そう思い、一度ため息を吐いて落ち着くと、なにやら男の悲鳴が耳に入った。

 

 

 ……なるほど、姫野先輩が生存してもサムライソードの玉は犠牲になる運命かぁ

 

 

 

 

 ───この遠くで響き渡る音に、なんと名付ければいいのだろうか

 

 襲撃で犠牲になった人達への鎮魂歌(レクイエム)

 

 それとも、まだ物語は始まったばかりの前奏曲(プレリュード)

 

 俺は雲の多い空を見上げ、耳を澄ました──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──いやどうカッコよく言おうがただのおっさんの悲鳴だなコレ

 

『うるさい』

 

 

 

 




《縄の悪魔》:縄を操る悪魔、どんなモノもコイツにかかれば縛り上げられてしまう。次々に縄を引っかけて、ターザンのように移動出来たりする。ちなみに首が絞まるのが快感だそうだ

《シャチの悪魔》:能力は壁や地面に潜れる、だいたい《サメの魔人》と一緒。見た目は普通のシャチをより鋭く凶悪にした感じ、眼の模様がリアル過ぎて気持ち悪い。《サメ》のことは密かにライバル視しているらしい
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