頭痛がひどいデビルハンターの話   作:kanesa

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レゼ編
客引きの痛み


 

 

 

 

 

 

 走る、駆ける。

 

 ─駆ける、走る。

 

 ──悪魔に追われながら、二人の男女が駆ける。

 

 悪魔の見た目は凶悪、白眼に魚介類のようなフォルム、その鋭利な牙がこちらを襲うところを想像するだけで恐ろしい。

 

 ──男の方は子供だろうか

 先導する女性に付いて行きながら逃げている。

 

「ッキミ!こっち!早く!」

 

 女性が叫ぶ

 彼女がいる場所は廃ビルの入口、悪魔もサイズ的に建物内までは入っては来れない

 

 そう判断した彼は、スピードを上げて廃ビル内部へと滑り込んだ。

 ドンッと悪魔が建物に衝突し、壁が揺れる。

 どうやらギリギリだったようだ。

 

 その後、悪魔は数度の衝突を繰り返し、獲物が出てこないと悟ると、諦めたように通りすぎていった──

 

 

 

 

 

 

「はぁっ…もう行ったみたいね…」

 

「…そうですね」

 

 ──緊張の糸が切れる

 呼吸の音も静かにしていたのか、荒い息の音が繰り返される。

 

「とりあえず本当に安全かわかるまで、もう少しここで待ってましょう……キミは中学生?親御さんは──

 

 グチャリ

 

 壁から背を離し、安心させる為か笑顔で少年の方へと一歩踏み出した瞬間、足元で妙な音が鳴る。

 

「……《ガム》?」

 

 ベタリと足に張り付き離れない

 それどころかウネウネと動き、足を覆い隠さんとへばりついて来る

 

「─ッ!なによコレ!?ちょっとキ───

 

《餅》

 

 突如として飛来してきた白い物体によって、壁へ貼り付けられた。

 手や身体全体にベッタリとへばりついており、動かすことも出来ない。

 

 何、何故、どうして──

 女性が混乱する中、()()()()()()少年は口を開く

 

 

「随分と狡猾だよなぁ…()()

 

「─!?何言ってるのよ!悪魔はさっきの──

 

《アンコウの悪魔》、出現回数は計9回。そのいずれもデビルハンターから逃亡、もしくは討伐後に死体が消える不可思議な現象が起こっている」

 

 彼は喋りながら、自身の懐に手を入れ、複数枚の写真を取り出した。

 

「その悪魔が現れた場所の防犯カメラには全て、悪魔から逃げるお前の姿が写っている」

 

「そしてお前の近くで逃げている者の顔、悪魔出現の後に、死体が見つからず行方不明者扱いとなっていた者達の顔と一致していた」

 

 複数枚の写真を見せつけながら矢継ぎ早に語る。

 対する彼女の顔は恐怖に歪み、彼の顔を見つめて固まったままだ。

 

「あの分かりやすく外で暴れまわっている悪魔の方は偽物(ダミー)、本体は人間の姿をしたお前」

 

「主目的は共に逃亡するフリをして民間人を閉所へと誘導、逃げ切れたと安心した所を襲うこと」

 

「─そうだな?《チョウチンアンコウの悪魔》

 

 彼がそう言い放つと、女の身体がグギリと、音を立てて変化して行く。

 目は白く、鋭い牙とヒレが生え、先ほどの悪魔を思わせる姿になる。

 悪魔はどうにか抜け出そうと暴れるが、手を動かすことすら出来ない。

 

クソ!クソッ!バレタッ!!放セ!!

 

「そりゃバレるだろ、せめて姿くらい変えろ…」

 

 そう言いながら、彼は懐から短刀を取り出す

 キィンと鞘から刃を抜く音を聞き、悪魔は処刑目前の罪人のような顔になる

 

ヤメロ!ヤメロッ!!

 

「安心しろ、殺しはしない。契約の為に少しだけ()をするだけだ<痛覚5倍>」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと…俺は中学生じゃない」

 

 ───刃が振り下ろされ、悪魔の悲鳴が廃ビル内部に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ…まさかスーツから私服に変えただけで簡単に釣れるとは…」

 

 思ったよりチョロかったな…

 …まぁとはいえ人に化けて襲う所は凶悪なことに変わり無いけど

 

 ───というか中学生って…

 ──やっぱ私服か?私服が悪いのか?

 

『チビだからじゃない?』

 

 あー黙れ黙れ

 

 

 

 

 

 そんなことを考えながら歩いていると

 見覚えのある姿が、前方の喫茶店の扉から現れた。

 

 ──デンジくん?

 

 ってことは今出て来た喫茶店が【二道】か

 

 ──そしてデンジに向かって手を振ってお見送りしているのが【レゼ】か…

 

 …まぁここ最近のデンジの様子から薄々もう会ってるのは察してはいたが…

 確か、デンジが見るからにウキウキしだして、その後すっごい迷ってる雰囲気出し始めたのが5日前だから…

 

 ……おっといけない、つい考え込んでいたようだ。

 

 

 ──そう思い、視線を前に向けると

 

「ヘイ!少年!」

 

「!!!!???」

 

 

 レゼの顔が目の前にあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやなんで───

 

 ──そういえばここ店の前だった…

 立ち止まっちゃったから客と勘違いされたのか 

 とりあえず誤解を解いて早く離れなきゃ……

 

「お客様ですか~?お客様ですね~?一名様ご案内でーす!」

 

「あーいやすみません客じゃないですちょっと考え事して立ち止まってただけで…」

 

「まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや」

 

 ──ダメだ話が通じねぇ

 

 しっかり肩を捕まれてる…

 クソッそんなに客を入れたいか(給料上げたいか)

 

 こうなりゃ無理やり突っ切ってでも…

 

「お昼時だしお腹空いてませんか~?ご飯も食べられますよ~?」

 

「いや別に空いて───

 

 振り払おうとそう言いかけた時

グゥゥゥ…と盛大に自分の腹の中から空腹の合図が響き渡った。

 

 ──そういえば昼飯食うの忘れてたなぁ…

 

「ありゃりゃ~?お腹の方はずいぶんと正直みたいですねぇー?」

 

「……………ッ!」

 

 

 ……仕方ないか

 

 一度大きくため息をつく。

 

 そして、若干乱れた髪を直しつつ振り向き──

 

 

「カレーライス…ありますか?」

 

 

 俺はなぜか無駄にカッコつけてそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




《ガムの悪魔》:拘束に特化した悪魔、体を伸ばしたり縮めたり、粘度を変えて自由自在に動くことが出来る。ちなみにグレープ味らしい、誰が食うんだこんなの

《餅の悪魔》:老人の天敵。能力自体は《ガム》に似ているが、より粘着質で、体の温度を変えることが出来るので、拘束しつつ熱攻撃も出来たりする。白い悪魔だ

《チョウチンアンコウの悪魔》:今回契約された。悪魔部分がおとりで、人間部分が本体という中々にめんどくさい悪魔。女性の姿をしているのはこちらの方が油断を誘いやすいかららしい


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