頭痛がひどいデビルハンターの話   作:kanesa

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痛みとは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───コーヒーとはまず、香りを楽しむモノだ。

 

 

 ──集中力が向上する、リラックス効果が期待できるとか何とか…

 

 

 ─香りの成分が脳にいい感じに作用してなんかよくなるらしい……

 

 

 

 

 

 ……よく考えたら俺前世でも今世でもあんまコーヒー飲んでないわ

 でもまぁ食後のコーヒーは、なんか普通に飲むより美味しい…気がする

 

 あっカレーライスは美味しかったです。

 

 

 

 

 

「おぉ~ブラックとは大人だねぇ少年」

 

「少年って…俺18ですよ、もう働いてますし…免許見ます?」

 

「またまた~!そんなに強がらなくてもいいか…えホントだ…

 

 

 そう呟いたレゼは免許を持ったまま固まる。

 

 そこまで驚くことないじゃん……

 やっぱ私服か?スーツ着てないのが悪いのか?

 

『身長でしょ』

 

 やかましい

 

 

 

 

「それで、そっちは見たところ高校生ですか?」

 

「…そうそう!絶賛勉強中の高校生!」

 

「へぇ…この辺りだと…第四南高ですか?」

 

「あぁ…そこそこ!第…四南高!」

 

 ──嘘だ。

 

 第四南高等学校は立地の問題で生徒の数が減少傾向にあり、昨年には第四西高等学校と合併している。

 

 

「じゃあウチの妹と同じところなんで、もしかしたら会ってるかもしれないですね」

 

「アハハ…そうかもしれませんねー……ちょっとおトイレ行ってきま~す…」

 

 

 ──逃げたか。

 

 まぁ妹は嘘だけど、あんまり自分自身の設定の方は詰めてなさそう…というか…ターゲットの情報だけ与えられたって感じだろうか

 

 ともかく、半ば無理矢理だったとはいえレゼに関する情報の確認と整理は出来た。

 そろそろお暇するとしよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……会計を済ませ、外に出る。

 

 しばらくの間店内にいたからか、いやに太陽の光が眩しく感じた…辺りを見回すと、半袖で汗を掻いた人々が多く目につく。

 

 

 俺は《冷凍庫の悪魔》の冷気で涼んでいるから特に気にしていないが、今は夏真っ盛りだ。

 

 セミの合唱が鳴り響き、日差しは照りつけ、熱中症の患者が続出することだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───そういえば()()はここから近いな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「……お前の力なら楽に殺せるだろ、死なせてやってくれ」

 

 

 早川アキがそう頼み込む

 

 その足元には、悪魔の内臓にまみれた民間のデビルハンターの身体、どうやら悪魔に呑み込まれていたようだ。

 

 下半身は既に無く、息も絶え絶えといった様子

 数分とかからず、その命の灯火は消えるだろう

 

 そう見込んでアキは頼んだが───

 

 

「…え?やだよ」

 

 

 ──その残酷な一言が吐き捨てられる

 

 

「…僕は天使である前に悪魔だよ?」

 

「人間は苦しんで死ぬべきだと思ってる」

 

 

 ……アキの表情に影が差す

 奥歯を強く噛み締める音が己の頭の中で響く

 

 刀を強く握り直すと、その切っ先は死に損ないの額へと向けられた

 

 ザシュリ、と。

 

 迅速に、安らかに、躊躇い無く刺し貫く。

 

 

「あ…り…がとう…

 

 

 ……それが最期であった。

 

 …この切っ先に滴る血は、たとえ拭こうと永遠に遺るモノなのだろう

 

 

 

 

「フリでもお前とは仲良くなれないな」

 

「らしいね」

 

 

 暫しの静寂の後、そう言葉を交わす。

 

 

 ──クナイのように、痛みの悪魔の力を使えればもっと楽に逝かせてやれたのだろうか

 

 そう考えた時…

 

 

「……今、痛みの悪魔の力があれば…なんて思っただろ?」

 

「……………」

 

 

 沈黙は返答となる

 

 

「図星かな?…でも痛みの悪魔との契約なんてやめといた方がいいよ」

 

「…………なんでだ」

 

 

 一度、痛みの悪魔の契約を提案されたアキは疑問を口にする。

 あの時は痛みの悪魔の方から断られてしまったが、契約して得られる力自体は強力だろう。

 

 

「もう知ってるかもしれないけど、痛みの悪魔と契約した人間は、多重契約者くんを除いて皆自殺してる」

 

「僕はそこそこ長いから、彼以外の契約者も何人か見たことがあるんだ……彼は知らないだろうけど、契約代償の痛みは、本来あの程度じゃない」

 

「『頭が割れる』とか『死にたい』とかそんなことを呟いて、壁に頭を打ち付けて、擦り付けて、痛みを痛みで誤魔化して…そうしてみんな狂って死んでいったよ」

 

 

 何の感情も無く、ただ淡々と天使の悪魔は語る

 

 

「……どうしてそうなる前に、契約を解除しなかったんだ」

 

 アキはさらに疑問を溢す

 

 悪魔との契約は、双方の同意によって行われる

 クナイのような特殊な事例を除いて、悪魔との契約は自分から解除出来る、であれば何故──

 

 

解除した人間もいたさ、その数日後には皆死んだけど

 

「痛みってね、慣れないらしいよ…寧ろその逆、より過敏になるんだ、契約を解除した人間はね」

 

「痛みに敏感になって、今まで以上に痛みを恐怖するようになって……最終的に気づくのさ」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「解除してから死ぬか、解除せずに狂って死ぬか…何れにせよその程度の違いでしかない」

 

「ま、死ねば楽になるって考えには共感するよ…頑張る必要が無くなるからね」

 

 

 クナイですら知らない痛みの悪魔の真実を知り、アキは絶句する

 

 ──契約を解除してもいずれ死ぬ…

 

 それほどまでに強力なら───

 

 

「…なんでクナイはあの程度で済んでいる?」

 

「さぁ?そこまでは知らないよ…大方、相当痛みの悪魔に()()()()()()()んじゃない」

 

 

『クナイ君に()()()()()()()でも──』

 

 あの時聞いた黒瀬の言葉が自分の中で木霊する

 

 

 ──痛みの悪魔に、気に入られるほどの秘密。

 

 

 結局、いくら考えようとアキの中でその答えが出ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そういえば、なんで痛みの悪魔との契約を否定した?人間は苦しんで死ぬべき…って言ってただろ」

 

「勝手に死ぬのはいいけど、勝手に契約して発狂されたら面倒だからね…生きるのは疲れるけど、うるさいのはもっと疲れるんだよ」

 

 

 ──やっぱりコイツとは仲良くなれないな

 

 

 アキは改めてそう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 ──クナイは現在、病室の扉の前にいた

 

 ノックをすれば「ハーイ」と女性の声

 

 

 

 

 ガチャリと扉を開ければ、中にいたのは()()をした黒髪の女性──

 

「おークナイくん!よく来たね~!」

 

「失礼します()()()()…これお見舞いの品です」

 

 

 

 

 

 

 

 




《冷凍庫の悪魔》:人間を凍える部屋の中に閉じ込める悪魔…なのだが、《監禁の悪魔》のように自分自身の中に閉じ込めるタイプだったので内側から斬られてしまった。


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