特異課に新人が入って来るとの知らせだ。
新人ということはおそらく───
「おーいクナイくーん!」
…思考を止めたのは女性の声。
痛む頭に響いてさらにズキズキ痛む。
めんどくさそうな顔作ってから声の方向に顔を向ける。
そこには黒い眼帯が特徴的な
「どうしたんですか姫野先輩」
「いやーちょっと頼みたいことがあってねー…」
原作のキャラであり、酒カスヤニカスのダブルコンボをキメる女でもあり、飲み会の度に酔った勢いで
「で、頼みってなんですか」
「…クナイくんって"鏡の悪魔"と契約してるよね?」
「まぁしてますね」
「じゃあ割れた鏡とか直せたり…する?」
「出来ますけど…なにがあったんです?」
「…実は────」
話を聞いた。
要約すると
「昨日めっちゃ酔っぱらって家の鏡全部叩き壊しちゃったてへぺろ☆」だそうだ……。
「バカなんですか??」
「あーひっど!これでも大変だったんだぞー?鏡使えないから髪型のセットも出来ないし……」
「自業自得じゃないですか……というか先輩バッグに手鏡入れてませんでしたか?」
「あっ……」
「やっぱバカだこの酒乱女…」
二日酔いで頭が回ってないじゃないか…
「……そういえばそろそろ新人入って来るんだったねー」
「(話逸らしたなこの人…)そうですね、まぁ俺は戦い方が特殊だから教育に向いてないとかで新人担当できませんけど…」
「クナイくんちっちゃいから後輩にナメられそうだしね」
「ちっちゃいって言うなよ!!」
…自分の中で考えないようにしていたが、俺の身長は同年代の18歳男子の平均身長と比べてかなり…だいぶ……小さい…身長高めのアキと並ぶとそれはもうひどいことになる…
両親はどっちも高身長だったのにどうして…
「なんなら女の子と比べても小さいんじゃない?…今度入って来る新人の女の子、歳は20で身長は155cmだってさ」
「…153cm…負けた……っ!!!」
2歳上とはいえ女の子に負けた……っ
「だいぶちっちゃいとは思ってたけど予想してたよりずっとちっちゃいね…」
「ンン…ま…マまぁ?あと2年ありますし??20歳までにはグングン伸びてますから???」
牛乳欠かさず飲んでますし??これからめっちゃ伸びるから2mくらい…いや絶対マジでホント
「それじゃあ鏡の件はよろしくねー!」
そう言い残して先輩は去っていった。
…とりあえず身長の話は置いておいて、新人の話だ。
さっき先輩が言っていた"20歳の新人の女の子"はやはり、原作キャラの
つまりそろそろ原作開始の時期、デンジがマキマのスカウトで公安対魔特異4課に来る、それが近いということだ。
……始まるのだ、激動の時代が。
人は大勢死ぬ、悪魔も大勢現れる…そしてそれらは文字通り悪魔の掌の上。
黒幕が分かってるのに手が出せない、手を出しても何もできない、もどかしい。
知人も大勢死ぬ、さっき話していた姫野先輩だって、何もしなければ死ぬ。
「チェンソーマン」という世界に入り込んだ俺という名の
自分が生きるために一生の痛みを受け入れた。
自分が死なないために多くの悪魔を契約させた。
皆を救うなんて傲慢なことは言えない、もし救えるとしても自分の手の届く範囲、自分の力が通じる時だけだろう
これからのことが不安で不安でしょうがない、なのに頭の痛みは変わらない、慣れることの無い、いつも通りの痛みだ。
そんな痛みに安心感を覚えてしまうほど、10年という時間は長く、この世界に自分が
「痛みなんてこれから嫌というほど食わせてやる…だから俺を生かして、活かさせてくれ。」
寝てるのか、返事をするのも面倒なのか、俺の頭に潜むもう1人の
「まぁとりあえず今日はアイスでも買うかな…」
心持ちは変わらず、されど気持ちは新たに
空を見上げて白い雲に潜む太陽を見つめた。
──痛みが一瞬強まり、また元の痛みに戻る
それはアイスの痛みか、先ほどの返事か
俺はただいつものように片手で頭を擦るのだった
鏡の悪魔:鏡を復元したり、鏡を出して攻撃を反射したり、自分と同じ動きをする分身を出したり出来る。便利。