────特異4課、ホテル内部突入
──姫野のご褒美キス発言により、デンジは今かつて無いほどにヤル気を引き出し、単独先行をしていた
「ヘッ!へヘッヴェヘヘヘヘ!!」
「オイッ単独行動は危険だ!!止まれ!!」
その背後にはデンジの暴走を止めようと、荒井ヒロカズも走っており、絵面がカオスになっている。
「やっぱ男の子からかうのが一番おもしれ~や」
「いい性格してますね…」
「よく言われる~……それでー?クナイくんは私のご褒美でやる気出してくれないのかなぁ?」
「えぇ…?タバコ吸いまくってる先輩のキスとかむしろ罰ゲームですし…寿命いくつか縮んじゃいますよ」
「あ"ークナイくんひっどーい!!おねーさん傷付いたー!!アキくん慰めて~!」
荒井に壁へ押さえつけられているデンジを見ながら辛辣な返答をするクナイ。姫野はアキへ泣き付くが、興味無さげにスルーしてアキは質問する
「そんなことより姫野先輩、先輩の新人達は使えそうですか?」
「むっ………ンー荒井君は実力不足だけどやる気は十分、逆にコベニちゃんは引っ込み思案だけどかなり動けるかな。アキくんの方は?」
「血の魔人は強いですが短気でまだ裏切る可能性があります、デンジはまだ知らない要素が多すぎてわかりません…クナイ、お前から見て新人達はどうだ?」
「俺?……えーっとそうだなぁ…荒井さんは体格はいいけど少々真面目すぎるというか、まだ頭が固いね…ぶっちゃけ警官とかの方が向いてるんじゃないかな。東山さんは頭も身体もデビルハンター向き…でもメンタル面が心配だね…なんも考えない方が強いタイプ」
「パワーさんはかなりサポートタイプ…単独より連携の方が強そう、性格に関しちゃまだなんとも…とりあえずご飯あげときゃ悪い動きはしないと思うよ。デンジくんはかなり良いね…性格も動きもデビルハンター向き、メンタル強くなった東山さんってとこかな…あとこっちもご飯あげときゃ言うこと聞くと思う」
「おお~かなり分析できてるねー!…なんなら私より分かってるかも」
「いやそれはどうなんですか担当として…」
「アッハハハ!まぁまぁ……それでどう?二人とも、この新人4人…生き残れると思う?」
唐突な質問。
咄嗟のことに思考を止められ、一瞬の静寂がその場を包むも、頭を押さえたクナイが口を開く
「ン…状況によるでしょうね…ただでさえ悪魔関連はイレギュラーが多いですし…まぁ他よりは生き残る確率は高いかと」
「……たとえ強いと思ったヤツでもそうでないヤツでも、一年もあれば死ぬか民間に行きます。」
クナイが答えた後に、アキは一瞬考えたが、その思考を止め、言葉を紡いだ───
「答えになってないな~アキくん………」
不満か不服か
どちらにせよ、その回答に満足していない姫野は、押し付けるように呟く
「──アキくんは死なないでね」
「先輩ー?俺には"死なないで"って言ってくれないんですかー?」
「……………クナイくんは死なないでしょっ」
いつものように痛むクナイの頭を、少し不機嫌になった姫野がひっぱたく。
パシンッと前方の騒ぎに負けず劣らずの良い音が響き渡った───
───8階から出られなくなってる
悪魔により、この階層から出られなくなってしまったことが判明。不安が空間を支配する中、姫野先輩は俺に意見を求める
「クナイくん、この状況どう思う…?」
俺は事前に永遠の悪魔の仕業だと知っているのだが、転生者の浅鳴クナイとしてではなくデビルハンターの浅鳴クナイとして答える。
「そうですね……状況としては《監禁の悪魔》の時と近いですね、ただ《監禁》は悪魔自体が部屋になっていたので……さっき壁を傷付けてみましたが特に反応はありませんでした、この8階自体を悪魔が覆って異界にしていると考えて良いでしょう………考えられる悪魔としては《無限》《幽閉》《隔離》《ループ》《永遠》《循環》《反復》といった感じでしょうか…」
「…ありがと、というか冷静すぎじゃない?」
「まぁ悪魔に閉じ込められるとかよくあるんで…」
そう、本当に多いのだ。
俺は複数の悪魔の力を使うという性質上、他の人と連携が難しく、バディもいない。なのでほとんど討伐は一人で行うのだが、一人という状況が良くないらしい。
物理的に出られなくさせるヤツもいれば概念的に出られなくさせるヤツもいる。閉じ込めて恐怖を煽って喰らう、そういうことをしてくる悪魔が一人になるとマジで多い。
なのでもうすっかり閉じ込められ慣れてしまったのだ。
だが、閉じ込められ慣れてない新人のコベニは、この出られなくなったという状況がひどく恐ろしいようで──
「私達…全員ここで死んじゃうんだ…お腹ペコペコで死んじゃうんだ…」
「あっそれは大丈夫」
「えっ」
急に言われた言葉の意味が分からなかったのか、コベニは疑問と恐怖が入り交じった顔でこちらを見る。
「俺《小麦の悪魔》と契約してるからね、パンとかならいつでも出せるよ」
ホラ、と言いながら何も無い手にパンがポンと現れる
「だから餓死することは無いから安心して」
──────────────。
デンジとパワー以外の皆が絶句しながらこっちを見つめる。
「………まぁとりあえずクナイがいれば食料の心配はいらないな」
「……便利だね~クナイくん…無人島行ってもやっていけそう」
まぁ…うん…アキと姫野先輩でさえ俺の契約している悪魔は把握しきれていないからね、驚くのも無理はない。
「それはワシのパンじゃ!寄越せ!!」
「あっずりぃ!先輩!俺にも!!」
………とりあえず二人に渡すと、腹が減ってたのかすぐに食いきった……秒で食ったぞ…秒で…
「うまいパンも食えて良いベッドで寝れる…もうここに住んでも良くねーかァ…?」
デンジは食べて眠くなったのかベッドに寝転がるとそう呟く。
「あーでも…マキマさん…に…会えね…ぇ…のは………………」
そう言いながらデンジは夢の世界へと旅立った。
閉じ込められ慣れている俺も見習いたいと思うほどの慣れ具合であった─────
「あっそうだアキ、一応《シロアリの悪魔》でこの階層ごと食い尽くせるけどどうする?」
「……………………最終手段にしとけ」
監禁の悪魔:箱型の悪魔、中に閉じ込めて人間を食べる。クナイは倉庫代わりにしている。
小麦の悪魔:小麦に化けて内側から小麦の苗床にする悪魔、パンとか麺とか出せる。
シロアリの悪魔:中にいる人間ごと建物を食べる悪魔、本気を出せば3時間で小さいビルを平らに出来るらしい。