ホテルから脱出して数日
俺は姫野先輩から新人歓迎会の話を聞いた。
原作では、新人二人がホテル内部での出来事にトラウマを抱えてしまい、公安から退職を考えているということで、それを引き留める為に行われたのだが今回は───
『新人歓迎会ですか?』
『そ!4課全員で集まったこと無いから親睦を深めよう…って名目で、マキマさん呼んでデンジ君のこと聞き出してみる感じ』
『へぇ…デンジ君を』
『クナイくんも見たでしょ?人間から悪魔になって、悪魔から人間に戻る~なんて初めての事例だよ。それにマキマさんがデンジくんを気にかけてる、いつもは色々飛び回ってるのに、デンジくんが来てからはほとんど東京にいる。マキマさんはデンジの正体を何か知ってるんじゃないかな…』
『宴会芸でも用意しておきます』
『クナイくんは
───といった感じでデンジの正体をマキマから聞き出すのが本命の新人歓迎会のようだ。
まぁ一応やっておきたいこともあったのでちゃんと開催されるのはよかった。
あとついでに人の奢りで飯が食いたかったのでちょうどいい…
『わかる』
「お前はいつも俺の奢りみてーなもんだろ」
「カンパーイ!!」
チンッと小気味良い音で飲み会は始まった
各々好きな料理を頼み、食べ始める。
公安のデビルハンターは確かに儲かるが、それと同時に死にやすい。こうやって大勢のデビルハンターと飲み交わす機会はそうそうない。
なので皆、内では人に飢えているのだろう、目の輝きも声の弾みもいつもと違い、ほんの少し明るい。
次第に騒ぎも弱まり、新人の自己紹介が始まる
「俺デンジ~歳は…えーっ16!趣味は食うのと寝るの!」
「私は荒井ヒロカズです!22歳!契約している悪魔は狐!趣味は俳句です!」
「東山コベニです、20歳です……契約してる悪魔は…秘密で…趣味は美味しいものを食べる事です」
「浅鳴クナイ…18歳で、契約してる悪魔はたくさん、趣味は漫画を読むことでーす」
「お前新人じゃねぇだろ」「座ってろ」「新人より若い先輩だ」「身長はいちばん新人っぽいのにね~」
「オイ誰だ今身長の話したヤツ」
「俺最近占いにハマってるんですよ」
「へぇ」「おぉ…」「カッコいいじゃん」「ちょっと占ってよ~」
「…で、これが最近骨董屋で買った水晶玉です」
「本格的だな」「わざわざ買ったのか…」「わー重そー」「触っていい~?」
「ちなみに1万5000円しました」
「いやたっか!」「ぼったくられてるよそれ!」「アハハッバカだバカだ~!」
「ほぉ~これは……皆さん仕事運が超カスですね。ちゃんと周りをよく警戒してください、なんか飛んでくるかもしれないんで」
「なんだそりゃ」「不安になること言わないでくださいよ」「何が飛んでくるのさ」「石なら遺族の人に投げられたことあるよ~」
それからしばらく、マキマも到着──
──したのだが…姫野とアキはマキマにデンジのことを聞くために、マキマに飲み勝負を挑んだ結果、どちらも酔い潰れてしまった
「おいチビ人間!そのカレーはワシのじゃ!寄越せ!!」
「だったらパワーさん同じの頼めばァ!?」
「はー?ワシがそれ頼んだんじゃが!?」
「嘘つけェ!!」
そんなやり取りをクナイとパワーがしていると…
ふらりといきなり姫野の姿が起き上がり、デンジへと近づく。
そのままデンジの顔を掴み、唇を唇へ寄せ、デンジも期待に満ちた瞳でキス寸前────
「《
───の所でクナイが姫野の頭を掴むと、停滞の悪魔の能力で止め、すかさずポケットから袋を取り出し、口元へ寄せる。
そして能力を解除すると…
「ヴォェェゥェォヴゥ…!」
「うわきったねェ!ゲロだゲロ!ゲロ女!ゲロ食っちまう所だったァ!!」
「おーナイスクナイくん」
「オイオイ大丈夫か?」
「用意がいいですねぇ」
「まぁ姫野先輩は飲みに行くと1/5の確率で吐きますんで…用意しますよそりゃ」
クナイは姫野の嘔吐処理で大変だった時の記憶を思い出して遠い目をしながら返答した。
「まぁそんなことよりとっとと食べちゃおう…」
追憶をやめ、食事を再開しようと席に戻るクナイ
しかしそこには……
「ン?なんじゃ!ジロジロ見るなチビ人間」
…と、クナイが頼んだカレーをヘタクソな手付きで貪っているパワーの姿があった
「…畜生ォッ!」
クナイはただその場に蹲って悔しさに打ちひしがれるばかりであった……
いつも通りの日常。
公安対魔特異課は、いつも通りの仕事をこなしていた
ある者は、悪魔が発生した現場に。
ある者は、日課の巡回を。
ある者は、道案内を。
そんないつも通りを嘲笑うかのように
その
懐から、鞄から、日常から
あらゆる所に紛れて、その虚ろな口を獲物へと向ける
牙すら無い、ただ吐き出すだけの間抜けな口か
食する為ですらなく、奪うことしか知らぬ口か
躊躇いなど一切無く、無慈悲にその喉は押され
───
それは悲鳴か、はたまた雄叫びか─────
──乾いた音が遠くで響く
デンジ達は疑問に思うも、特に気にせずラーメンを食べ進める。
そんな彼らの近くで男が呟き始めた
「ここのラーメンよく食えるな…味酷くないか?」
「誰…?」
「…《カッター》」
その声と共に男に向けて何かが飛ぶ
「──ッ!!」
男はとっさに腕で庇うと、その腕にカッターの刃が突き刺さった。
「おいクナイ何を…!」
「皆下がって」
「ッテメェ!!」
怒る男は立ち上がり、懐から
「─"銃"ッ!?」
そう呼ばれるにふさわしいモノであった。
「死ねッ!」
男はその凶弾を怒りのままに発射する───
「《鏡》」
「あ"ッ!?」
──しかし、放たれた弾丸が突き刺さった場所は、自分自身の右手であった。
急な痛みに怯み、銃を取り落とす男
その隙を逃さず、姫野は銃を蹴り飛ばす
デンジは男の股間を蹴り上げ、パワーは血でハンマーを形成、瞬時に頭を殴り気絶させた。
「なァーコイツなんなんだ?」
「わからない…!なんで銃を…日本じゃ警察とデビルハンター以外入手は不可能なのに…とにかくまだ銃を隠し持ってないか確認を───
「ヘビ」
「ッ皆離れろ!!」
クナイが叫んだ瞬間、巨大なナニカが下から現れる
──衝撃と轟音
痛む身体と頭を押さえ、目を開く。
建物は半壊、壁は吹き飛び、若干の曇り空がクナイの視界を覆った
「ずいぶんと、勘がいいのがいるね」
そう喋りながら瓦礫で出来た階段を女が登ってくる
金髪で赤パーカー
その横には建物の崩壊させた大きなナニカ。
それは、人の腕で編まれたような胴体と口を持つ、まさに巨大な"ヘビ"であった
「出てこい」
そう女が言うと、ヘビの口を抉じ開け誰かが現れる
デンジが"チェンソーの悪魔"だとするのならば、この男は"刀の悪魔"
剥き出しの歯と頭部には軍帽
その鍔と両腕は巨大な刃と化し、ロングコートと相まって、その姿は言うなれば"化け刀の軍人"
「クソが…」
そう呟くと、男は怒りと共に殺意を溢れさせた。
クナイは辺りを見回す
姫野とアキは先ほどの衝撃で負傷、パワーは瓦礫に埋もれているのか発見できない。
「<痛覚0倍>…デンジくん、そっちの黒いヤツは頼めるかい?」
「あァ…」
そう答えるとスターターを引き、チェンソーの悪魔へと姿を変え
「…せっかくうまいラーメン食ってたのによォ…」
「店ごとブッ壊しやがって……」
「食べ物は粗末にしちゃァいけませンって教わらなかったかァ~~ッ!!!?」
その叫びと共に両者の刃が交わり
衝撃と共に火花が飛び散る
悪魔に変ずる者同士の戦いが始まった────
《カッターの悪魔》攻撃力はそこそこ高い、倒してもバラバラになって逃げる性質を持つ。クナイはよく飛び道具として使う