実況パワフルプロ野球another~一夏の思い出~ 作:かぼ茶
「友沢ー!」
「なんだ曽二、聞こえているから大声を出すな。あと俺は野球はやらない」
「おっけーおっけー、それでもいいからさ、練習見てくれない?」
「僕が練習を見るのか?」
「俺バッティングイマイチでさ、あと友沢ってピッチャー経験あるって聞いたから
うちの野手陣の打撃、守備とピッチャーの球見てやって欲しいんだ、いいかな?」
「・・・まぁ、そういうことなら別にいいだろう。今日はバイトもないからな」
「サンキュー、助かる。じゃあ放課後にグラウンドでな!」
「ああ・・・」
(毎回来てもらって断るのも悪いしな、これはお礼だから・・・)
昼休みの終わりを告げるベルに合わせて走っていく不思議な少年の後ろ姿を見つめながら
彼は誰へする言い訳でもないのに、そんなことを思っていた・・・。
―――放課後―――
カァーン、スカァーン!
「おいコナミ、左右への打ち分けを意識するなら手先じゃなく脇をたため!」
「お、おう!」
ダダダダダッ、ズシャーーッ!
「矢部、膝からスライディングしてると怪我するぞ!」
「やんすっ!」
バシッ、シュッ・・・パシーン!
「荒井三兄弟、内野はお前達で固まってるんだ。兄弟なら
もっと相手のことを意識して併殺プレーをするんだ!」
『了解なんだな~!』
「・・・ふぅ、友沢君も案外ノリノリだね」
ヒュッ、パシーン・・・ヒュッ、パシーン
「あ、早川にもそう見えるか?」
ピッ、スパーン・・・ピッ、スパーン
「・・・うん、だってすごく楽しそうなんだもん友沢君」
確かにノックのときなんかはバット振るのがすっげー楽しそうだったな・・・。
やっぱり今日連れてきて間違いなかった、あいつはまだ野球を諦めてねぇんだ!
「なぁ早川、ちょっと・・・」
「どうしたのコナミ君」
(ひそひそ・・・友沢を・・・バッター・・・空振り・・・)
「うんうん・・・、そうだね、やってみよう!」
「・・・よし、今日はこんなものだな。後は各自ダウンとストレッチを怠らないように」
「やっと終わったでやんす・・・。友沢君は鬼コーチでやんす!」
「何を言っている。お前達の基礎トレーニング不足が原因だろう。
とりあえずそのよくわからないプラモデルは捨てていいんだな」
「わー!、おいらが悪かったでやんす、基礎トレするから捨てないででやんす!」
「なんだ、まだまだ元気じゃないか。塁間ダッシュもうあと50本ついk」
「おいら突然しんどくなってきたでやんす、もうしゃべれないでやんす!」
おーおー、皆仲良くやってるじゃねえか。
チームメイト間は早くも良い感じだな!
(コナミ君、ぼーっとしてないで早く言わないと!)
(おっと忘れてた、すまねぇすまねぇ)
「皆お疲れ様。なぁ友沢、突然で悪いんだけどこいつの球、打ってやってくれねぇか?」
「どうした、本当に突然だなコナミ。何かあるのか?」
「いや、本来は俺が打席に立ってやりたいんだがこのチーム、俺以外にキャッチャーがいなくてさ、今日たまたま来てるし俺より打撃がすごい友沢に打ってもらおうかと思って」
「まぁとくに構わないが・・・、時間もないから1打席だけだぞ?」
「ありがとう、さんきゅーな!」
「行こう、コナミ君!」
そう言うと、早川はダッとマウンドに駆けていく。さぁて、いっちょやりますか!
「一打席だけだからな?」
「おっけー、凡打か三振なら俺たちの勝ち、ヒット性の当たりなら友沢の勝ちだな」
頷き、足元をならす友沢を一瞥し俺はマウンドに向かった。
「コナミ君」
「おう、これが高校での初投球、ってことになるんだな」
「そうだね。でも、あの作戦があってもなくても、僕は打たせないよ」
「ったり前だろ、気ぃ抜いた球投げてたら友沢に叱られっぞ」
「あはは、そうだね。・・・よし、僕も頑張るよ」
その一言が聞けて安心したぜ、気合十分だな!
笑みを浮かべてぽむ、とお互いのグローブをぶつけた。
よし、やってやるぜっ!
俺は定位置に戻り、早川の投球練習が始まった。
いつもどおりの地を這うようなフォームからの・・・・ッ!
ピッ――――ッパシィーン!!
「ナイスボール早川!」
声はないがガッツポーズで返してくれる早川。ぴょこぴょこ揺れるおさげが可愛いぜ。
「・・・スピードガンで測ったときはそれほどでもなかったが、
何が原因か・・・ノビのせいか、球がかなり早く感じるな」
「そいつはたぶんアンダースロー特有の感覚だぜ友沢。
ソフトボールなんかは一流の投手だと体感速度は160キロもあるらしいからな」
「なるほど」
納得したのか、そのまま頭のイメージを訂正するかのように2,3素振りをする。
ぜってえ打たせねえからな!
投球練習も終わり(もともと練習後ダウンしてなかったから肩は暖まってはいた)、友沢がバッターボックスに入ってくる。さぁ、勝負だ・・・っと、その前に・・・、
「おーい、矢部くーん!」
「なーんでやすかー!」
倉庫に用具をしまってくれていた矢部君を呼ぶ。
さすがだ、すぐ来てくれる。でもこんなところで快速を役立てなくても・・・。
「ごめんごめん、ちょっと1打席だけでいいから審判してくれない?」
「わかったでやんす、多分そんなことだろうと思って面持ってきたでやんす」
サンキュー、気がきくじゃん!
「二人とも用意できてるでやんすか?」
『もちろんだ(よ)!』
「じゃあ早速行くでやんす、プレイボールでやんす!」
(ふぅ・・・第一球目だけど、友沢の闘争心を煽る意味でももちろんココ、だよな。早川・・・?)
(・・・!?、・・・コクッ)
俺のサインに少し驚いたみたいだけどOKもらえたな。
さぁーて・・・、スーパープレイヤーに見せてやろうぜ、俺たちの力!
ザッ・・・
ノーワインドアップから地面すれすれで振り抜かれる腕。来いボール、俺のミットまで!
シュッ―――スパーァン!!
っしゃあ、ナイスボール!
「す、ストライクでやんす!」
「なっ・・・、ど真ん中だと・・・!?」
「おいおい友沢、今更ブランクを言い訳にさせないぜ。大丈夫か?」
「くっ・・・、問題ない。次は打つ。」
言うが早いかバットを構え、早川睨みつけてやがる・・・、焚きつけは十分だな。
・・・とは言ったものの、たしかにボールの軌道は見極められてしまったはず・・・。
ここは・・・、攻めるか。
アウトコース低め、ぎりぎりいっぱいのサインを手早く出してやる。
軽く首を振り、モーションに入ろうとする早川に合わせて俺も構える。さぁこい!
ザッ―――ビシュッ!
(よし、構えたところばっちり・・・・ッ!?)
ギィンッ!!
っな!?
とっさにマスクを外して打球の方向を確認した。
レフト線に流された、ちくしょう・・・!
「ファールでやんす!」
「ふぅ、かなり球が伸びるようだ。やはり初めての下手投げは難しい」
なんてこと言いながらボックスの外で素振りしてやがる。
ばっきゃろー!
初打席で早川の球あれだけ飛ばせりゃ十分だろうが。
「早川さん、ボールなんだな~」
「晴男君、ありがとう!」
ファールの球、ぱるおが取りに行ってくれたみたいだな・・・。さて、どうするかな。
まぁあの外角をもってかれちゃ仕方ない。ちょっと早いけどシンカー、行くか!
(早川、真ん中やや低めからボール球になるようにシンカー、行くぜ!)
(うんっ!)
早川の返事が聞こえてきた、と思わせるくらいの自信にあふれた頷き。
これで釣られてくれたらいいが・・・。
ザッ・・・ビシュッ!
「!」
スパーン!
「ボールでやんす!」
「驚いた、1球外してくるとは思ったがこんなシンカーまであるのか・・・」
「余裕じゃないか、でも次で決めるぜ」
そう言いつつマスクかぶり直してるけど、結構やばいな。見られちまった。
あんまり間置いちまうとアドバンテージなくなっちまうからな。勝負をかける!
(しっかし友沢の適応能力すごいな、こりゃマジで天才ってやつじゃねえか)
なんてことを一人考えながら早川にサインを出す。
(これで決めるぜ、内角高めぎりぎり、ストレート)
(うん、つまらせて凡打に打ち取る!)
早川も意図してることが分かってくれたみたいでひと呼吸置いてモーションに入る。
「これでラストだ、行くぜ!」
「来い!」
肩より少し高い位置に構えられた友沢のバット。
その友沢の構えている肘近くに構えられた俺のミット。
全力で投げ込まれる早川のボール。
俺は昔からずっとこうだった。
「楽しく野球がしたい」
勝っても負けても楽しければそれでいい。
あ、もちろん悔しいから勝ちたいけどな!
で、ここに来て友沢、お前に出会ったんだ。
初めてお前見たとき、「野球が好きだ!」ってオーラがひしひし伝わってきたぜ?
もし嫌いならやめたはずの野球のグローブとボール、きちんと手入れしてないよな。
しかも今日の練習に都合よくグローブ持ってきてるわけないもんな。
何かどうしても辛い理由があって野球を手放そうとしたんだろう、それはわかる。
でも、自分に嘘ついてまで大好きなこと諦めなくていいと思うんだ。
絶対続けるための方法がどこかにあるはずだから、諦めるのはそれを探してみてからでもいいだろ?
だから、なぁ友沢―――――!
「カッキィーン!!」
文句なしだった。
あの打球ならまず間違いなくホームランだろう。
ちっ、嬉しそうな顔しやがってこのやろう!
「あーっ、友沢君に打たれたあぁぁっ!」
思いっきり叫びながら早川がドサッと音をたててマウンドに大の字でひっくり返った。
悔しいけどあそこまで綺麗に飛ばされちゃいっそすがすがしい。
「早川、ありがとう。楽しかった」
「こちらこそ、でも今度は三振取るからね!」
「俺は今回でさい・・・」
「友沢」
話を遮ってやった。ひと呼吸置いて続ける。
「俺と、野球しよう。いや、俺たちと野球しよう」
「言っただろう、俺はやめたんだ」
「もう自分を抑えるのはやめにしようぜ、打ったときのお前すっげー嬉しそうだった」
「それは・・・」
「何が原因かは知らないけど、それを理由にして逃げるのはもう終わりだぜ」
「っ・・・」
うつむいて唇を噛み締めている。頑張れ、友沢!
「っ、でも・・・俺の家は」
プルルル!プルルル!プルルル!プルルル!
ビクッ!!
『!?』
「っああ、すまない俺だ」
ベンチの鞄に携帯を取りに行ったようだ、あーびっくりした。
「はい、もしもし」
「亮」
「父さん!どうかした?」
「今日はバイトは無いのか」
「今日は休みだよ、仕事は大丈夫なの?」
「ああ、今は大丈夫だ・・・、母さんが倒れてからお前には苦労をかけた。うちの仕事もギリギリで辛い思いもさせたかもしれないな。本当にすまなかった」
「突然どうしたのさ、俺は全然気にしてないよ」
「いや、お前が野球をやめてしまったと聞いたときは本当に申し訳ないことをしたと思った。息子に好きなことすらさせてやれない不甲斐ない父だと自分を罵りさえした」
「父さん・・・」
「だがもう大丈夫だ、今日大きな仕事の契約があってな。大手のミゾットスポーツさんから大きな受注をいくつかもらったんだ。これでなんとか母さんの治療費もまかなえる。だから、今からでも遅くない、もう一度野球をやってくれないか?」
「・・・ありがとう父さん、俺のこと気にしてくれて、今まで頑張ってくれて。俺、もう一度頑張ってみるよ、甲子園に行って、プロ野球選手になって、父さんの作ってくれたバットでいっぱい打って、グローブでいっぱい投げて、守るよ、父さんの会社を絶対に有名にしてみせる!」
「父親思いの子を持てて私は幸せだ。私も亮に負けないように頑張ろう、今日は手続きと後の処理で遅くなりそうだから朋恵と翔太を頼んだ」
「うん、分かった。頑張って、それじゃあ・・・」
ピッ。
「誰からだったんだ?」
「父さんからだ・・・、おいコナミ、明日の練習は何時からだ?」
「え、今日と同じ時間だけど・・・」
「俺を誘ったからにはもちろん甲子園で優勝できないと許さないからな?」
「っ、ああ!!」
「じゃあ、俺は一足先に帰る。妹達が待っているからな」
「忙しいところ今日はありがとう、明日からよろしくな!」
「ああ。」
素っ気なさそうに荷物まとめて帰ってったけど、頬が緩んでたぜ、友沢?
まぁなにはともあれ友沢GETだぜ!
「やったねコナミ君!」
早川がマウンドから走ってくる。おっと、勢い余ってハイタッチとかしちまった。
「よっし、明日からも頑張ろうな!」
「うん、僕も打たれないように頑張るね!」
9人までもう少しだ。頑張るぞー!!