ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 この小説では、ソードアート・オンラインの二次創作を書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。



アインクラッド編
第1話 チュートリアル


 

 『……』

 

 とあるアパートの一室で、部屋の端でうずくまっている1人の少年がいた………その少年は一見すると少女のように見え、髪も肩の辺りまで伸びていた……が、同年代の子供に比べると瘦せ細っており、身体の所々にアザや切り傷……さらには火傷の痕まであった。そこに……

 

 『おい』

 

 『ひっ……!?』

 

 少年の父親と思わしき男が声を掛けてきた……が、少年はその声を聞くと怯えたように縮こまってしまう……。

 

 『もうすぐあいつが来るから、お前はとっとと出ていけ』

 

 『……』

 

 『ちっ……さっさとしろ!!』

 

 『っ……!?』

 

 男は少年の腕を掴むと、玄関のある方へと玄関へと投げ飛ばした。投げ飛ばされた少年は、起き上がると逃げるように外へ出て行った。少年はそのまま、少し遠くにある公園へと向かった……。

 

 少年は実の父親から虐待を受けており、その日は父親の彼女が部屋に来るため、邪魔となる少年は外に追い出されていた。実の母親は、数年前に浮気をして既に別れており、今は父親と暮らしている……そして、それが原因となったのか定かではないが、少年は父親に暴力を振るわれていた……。

 

 そんな少年は、このようなとき(・・・・・・・)にいつも来る公園へ着くと、近くにあるベンチに座った。周りの子供たちやその親は少年を見ると、あからさまではないものの距離を取り始めた……おそらく自分以外の誰かが助けてくれると思っているか、ただ単に面倒事には関わりたくないと思っているかのどちらかだろう……。

 

 『……きみ、大丈夫か?』

 

 時には声を掛けてくれる人もいたが……

 

 『触らないで!!』

 

 『!?』

 

 触れられることに恐怖を感じているのか、差しのべられた手を毎回振り払ってしまっていた。

 

 『ご、ごめんね……すぐに誰か来てくれるから……』

 

 その人もどうしようもないと思ったのか、そう言い残して少年から離れて行き―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 「っ……またあの夢……」

 

 西暦2022年11月6日の朝、1人の少年が一軒家の自身の部屋で目を覚ました。

 

 その少年は一見すると女性と見間違うほどの中性的な容姿をしており、髪は青みがかった黒髪で背中のあたりまで伸びていた。そして瞳は琥珀色をしている……そんな少年の額の左側には、普段は髪で隠れているが何かで殴られたような痣があり、左腕―――正確には前腕のあたりだが、怪我をしているのか包帯が巻かれていた。

 

 この少年の名は百瀬朔夜(さくや)といい、今年で14歳となる中学2年生………だが、ある事情から学校には通えておらず、家で勉強などをしている状態となっている。ちなみに朔夜は、普通に学校に通えていれば学年でも上位の成績をとるぐらいの学力はあり、既に高校で習う事もやっている。

 

 「……シャワー浴びよう」

 

 朔夜はベッドから身体を起こすと、寝ている時にかいた汗を流すために風呂場のある1階へと降りていく。すると……

 

 「あっ!おはよう朔君―――って、何か顔色悪いけど……大丈夫?」

 

 「え?あぁ……大丈夫だよ」

 

 声を掛けてきたのは、1歳年上で朔夜の義姉である百瀬陽菜(ひな)だった。陽菜は朔夜の顔色を見て、心配そうにその顔を覗いてきた。

 

 「大丈夫ならいいけど……無理はしちゃだめだよ?」

 

 「うん……ごめん」

 

 「そこは『ありがとう』でいいんだよ?……それに今日はあの日(・・・)なんだから、いつまでもそんな顔してちゃだめだよ?可愛くて綺麗な顔が台無しになっちゃうよ?」

 

 陽菜は微笑んで朔夜のことを慰めながらも、同時に少しからかうようにそう言ったのだ。

 

 「可愛くて綺麗って………陽菜姉、それ褒めてるの?」

 

 「えっと………さぁ?」

 

 「……まぁ、いいや。シャワー浴びてくるね」

 

 「うん!」

 

 陽菜とそんなやり取りをした後、朔夜は風呂場でシャワーを浴びて汗を流した。その後、ドライヤーで長い髪を乾かしてからポニーテールのようにして結ぶ。そして、慣れた手つきで左腕に包帯を巻くと、そのままリビングへと向かっていく。

 

 「朔君、朝ご飯できてるよ!」

 

 朔夜がリビングに行くと、朝食が出来たタイミングだったようで、陽菜が笑顔でそう声を掛けてきた。

 

 「ありがとう……義父さんと義母さんはもう行ったの?」

 

 「うん。今日は久し振りに1日中デートだって」

 

 2人の両親―――朔夜にとっては義理にはなるが、今日は朝から出掛けているらしい。

 

 「いただきます」

 

 「味どう?濃いとか薄いとかあれば言ってね?」

 

 「……うん、美味しいよ」

 

 「!良かったぁ……前よりは大分食べられるようになったね?」

 

 「まぁ……ね」

 

 陽菜はそんな朔夜の様子を見て思わず微笑みながらも、自身も朝食を口にしていく。それから朝食も食べ終わってから時間が経ち、少し早めの昼食も終わり……

 

 「……じゃあ、そろそろ―――」

 

 「あっ、朔君!」

 

 「?」

 

 自室に戻ろうとした朔夜だったが、急に陽菜に呼び止められた。

 

 「……ちゃんと、楽しんできてね?それから、朔君のペースでいいから友達を作ること!あとは―――」

 

 「『感想聞かせて欲しい』でしょ?全部分かってるよ………じゃあ、行ってくるね」 

 

 「うん、行ってらっしゃい!」

 

 陽菜と別れて自室へと戻った朔夜は、ベッドに腰掛けながら机の上に置いてある黒色のヘッドギア型のマシン―――ナーヴギアへと視線を向けていた。このナーヴギアは、被ることで人間の意識を仮想世界へダイブさせることを可能とするもので、今までのVRとは一線を画すマシンと言えるだろう。

 そんなナーヴギアだが、1万台しか製造されておらず、手に入れるのが困難を極める代物だ。そんなものを何故、朔夜が持っているのかと言うと……

 

 (にしても、いつの間に義父さんはナーヴギアを……それに、義母さんや陽菜姉もグルだったし……)

 

 ゲームが趣味の一つである朔夜だが、とある理由で今までオンラインゲーム……というよりもMMORPGというジャンルを避けてきていた。ナーヴギア専用ソフトである『ソードアート・オンライン』にも、世界初のフルダイブ型VRゲームということで興味を持っていたが、今まで避けてきたMMORPGというものであったため、プレイはしないつもりでいた……が、朔夜の義父は本人に内緒でナーヴギアの抽選に応募していたらしく、それが見事当選した……というわけらしい。ちなみに、義母と義姉もそれを知っており、完全にサプライズだったようだ。

 

 「!そろそろか……」

 

 少年はそう呟くと、頭にナーヴギアを装着してベッドに寝転がった。そして、時計が午後1時を示すと同時に……

 

 「すぅ……はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 リンク・スタート!

 

 朔夜は深呼吸をしてから目を閉じ、仮想世界へと旅立つ言葉を発した。すると、朔夜の視界は白く染まったかと思えば、様々な色のついた無数の線が現れる。その後、様々な設定の確認を済ませると、パスワードや自身のプレイヤーネームを入力していく。それらが全て終わると……

 

 

 

 Welcome to Sword Art Online!

 

 

 

 朔夜が仮想世界を訪れたことを歓迎するメッセージが浮かび上がる。その直後、視界が光に包まれた後、目を開けると……

 

 「!ここが……」

 

 そこには西洋のような街並みがあり、朔夜と同じくログインしてきた大勢のプレイヤーたちが行き交っていた。朔夜がいる場所は『転移門広場』と呼ばれているところで、中心には目印となるような石柱が立っていた。

 

 「えっと、まずは―――」

 

 そう呟きながら、朔夜こと『サツキ』は歩を進めて行った。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 街の武器屋で曲刀を買ったサツキは、それを左腰に装備して早速フィールドへ繰り出していた。そうして歩いていたサツキの目に……

 

 「!あれか……」

 

 『フレンジーボア』というイノシシのモンスターの姿が飛び込んできたのだ。ちなみにこのモンスターは、他のゲームでいうところのスライムの扱いらしい。

 

 「……」

 

 サツキは静かに左腰の鞘から曲刀を抜き、その切っ先をボアに向けて構えた。ボアの方もサツキに気付いたのか、すぐさま突進してきたが、サツキはぎりぎりまで引き付けた後、最小限の足さばきで避けると……

 

 「ふっ!」

 

 右手に持った曲刀でボアをすれ違いざまに斬り付ける。さらにサツキは曲刀を逆手に持つと、すぐさまボアの方を向いて駆け出していき、ボアを背後から斬ったのだ。それによってHPを削り切ったのか、ボアはポリゴンを四散させ消えていった。サツキはそれを見ながら、血振りをするように曲刀を振ってから、腰にある鞘へと納めた。

 

 「やっぱり凄い……想像よりも思った通りに動く………」

 

 サツキは現実と変わらない感覚に、感心しながらそう呟いていたところ……

 

 「おーい!」

 

 「!」

 

 自身を呼ぶような声が聞こえ、すぐさま後ろを振り向いた。そこには、こちらに近づいている頭にバンダナを巻いた赤い長髪の男と、その後ろから黒髪の男が歩いてきていたのだ。

 

 「えっと……何か用ですか?」

 

 何故この2人が自身に近づいているのか分からないサツキは、平静を装いつつも警戒していた……が、その警戒は杞憂だったようで……

 

 「さっきの動き見てたけど、スキルもなしに凄ぇな!」

 

 「え?」

 

 バンダナの男は、サツキのことを褒めるように声を掛けてきたのだ。

 

 「もしかして、アンタもβテスターなのか?」

 

 「え、えっと……」

 

 サツキは急に話し掛けられたことで、思わず困惑してしまっていた。

 

 「クライン、相手が困ってるだろ?それに、それを訊くのはマナー違反だぞ?」

 

 「おっと、すまんすまん!アンタもいきなり悪かったな」

 

 そんなサツキの様子を見た黒髪の男がバンダナの男―――クラインを止めてくれていた。

 

 「いや……あと、僕はβテスターじゃないですけど」

 

 「そうなのか?戦い慣れてそうだったからてっきり……」

 

 すると……

 

 「そうだ!折角だし、一緒にやらねぇか?今、この元βテスターのキリトさんに色々とレクチャーしてもらってるところなんだ」

 

 クラインがサツキに対し、そんな提案をしたのだ。サツキはそのように誘われるのを想像していなかったのか、少しの間どうするかを考えていたが……

 

 「じゃあ……折角なのでお願いします」

 

 「おう!よろしくな!」

 

 人の厚意を無下にすることもできなかったのと、ソードスキルを発動させるコツも知りたかったことから、レクチャーをお願いすることにした。

 

 「えっと、君は―――」

 

 「!僕はサツキって言います」

 

 「サツキ、か……俺はキリト。敬語はなしでいこう」

 

 「クラインだ。よろしくなサツキ!あっ、俺もタメでいいぜ」

 

 「分かり―――じゃない……分かった」

 

 こうしてサツキは、キリトというプレイヤーにレクチャーを受けることになるのだった。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 「ソードスキルを発動させるには、モーションを起こすことが大事なんだ」

 

 「モーション……」

 

 キリトのアドバイスを聞きながら、サツキは剣を抜いて構えを取った。すると……

 

 「あとはシステムが技を自動的に―――って……!」

 

 「ふっ!」

 

 曲刀に光が宿り、すぐにソードスキルが立ち上がった。サツキはそのまま駆け出すと、曲刀ソードスキル『リーパー』で目の前のボアを一撃で仕留めたのだ。

 

 「「……!」」

 

 (速い……!βテスターではないって言っていたけど……リアルで何かやっているのか?)

 

 キリトとクラインはサツキの剣速に驚いており、キリトはリアルで剣道か何かをやっていたのではないかと予想していた。

 

 「こんな感じで―――って、どうかした?」

 

 サツキはキリトとクラインの方を振り向き、今のソードスキルがどうだったかを訊こうとしたが、何故か2人は驚いた表情をしていた。

 

 「!いや、何でもないよ。それよりもおめでとう!」

 

 「俺からもおめでとさん!」

 

 キリトは右手を、クラインは左手を上げてサツキとハイタッチをしようとしてきた。サツキも曲刀を鞘に納めてから、両手を上げた……が、

 

 「っ……!?」

 

 何故か自身の両手に視線を向けた後、急に引っ込めてしまった。

 

 「……」

 

 (っ……また……)

 

 「サツキ……?」

 

 「どうかしたのか?」

 

 「!あぁ、ごめんごめん……あと、ありがとう」

 

 キリトとクラインがサツキに声を掛けると、サツキは何事もなかったかのように2人とハイタッチを交わす。 

 

 「にしても、一発で成功とはやるじゃねぇか!」

 

 「?そんなに珍しいの?」

 

 「そういうわけじゃないけど……俺の説明を少し聞いただけでできるあたり、サツキはセンスがあるんだろうな」

 

 「俺なんて最初は苦労したもんだぜ……」

 

 キリト曰く、どうやらサツキにはセンスがあるらしい。実際、サツキと会う前にクラインがキリトにソードスキルのレクチャーを受けていた時には、ボアに向かってスキルを発動させようとしたが、一発では発動せずに体当たりを何度も受けていた。

 

 「おし!この調子でガンガン行くぞ!」

 

 クラインの言葉通り、その後も3人は共にレベリングに勤しむのだった。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 「しっかし、何度見ても信じらんねぇな……ここがゲームの中だなんてよ」 

 

 時刻が17時を越えたあたりで、3人はフィールドにある小高い丘で休憩をとっていた。空の色も時間に合わせて夕焼けに染まっていた。

 

 「俺、マジでこの時代に生まれて良かった!」

 

 「……大袈裟なやつだな」

 

 「だって初のフルダイブ体験だぜ?サツキ、おめぇもそう思うよな?」

 

 「まぁ……否定はしないけど。それに、実際面白いしね」

 

 クラインの言葉に対し、サツキは同意するようにそう言った。

 

 「ってことは2人とも、ナーヴギア用のゲームをやるのはこれが初めてなのか?」

 

 「俺はSAOのために慌ててハード揃えたって感じだ。たった、1万本の初回ロットをゲットできるとは、我ながらラッキーだったぜ」

 

 「僕は父さんがいつの間にか抽選に応募してて……それが運良くって感じだよ」

 

 「なるほどなぁ……でも、βテストに当選したキリトの方が俺たちよりもラッキーだけどな!」

 

 このSAOのβテストは抽選で選ばれた千人しか参加資格がなく、倍率はナーヴギアを手に入れるよりも高いものであったことは想像に容易い。

 

 「そういや、ベータのときはどこまで行けたんだ?」

 

 「2ヶ月で10層しか行けなかったな。でも……今度はひと月もあれば十分だ」

 

 「……お前、相当ハマってんな?」

 

 「βテスト期間中は、寝ても覚めてもSAOのことしか考えてなかったよ」

 

 キリトは背中の剣を抜くと、その刀身を見つめた。

 

 「この世界はこいつ1本でどこまでも行ける……仮想空間なのに、現実世界よりも生きてるって感じがする」

 

 「……」

 

 キリトの言葉を聞いて思うことがあったのか、サツキは何かを考えるように黙り込んでいた。

 

 「さて2人とも、もう少し狩りを続けるか?」

 

 「当ったり前よ!……って、言いたいところだが……腹減ってよ。一度落ちるわ」

 

 「こっちで食べる飯は、空腹感が紛れるだけだからな……サツキはどうする?」

 

 「!僕は……もう少しやっていこうかな」

 

 サツキはキリトにそう訊かれたことから、一度考え事を止めて狩りを続けると答えた。

 

 「そうか……まぁ俺は、5時半にピザの予約してるからな!」

 

 「準備万端だな?」

 

 「おうよ!ま、食べたらまたログインするけどよ!」

 

 すると……

 

 「なぁ、この後俺、他のゲームで知り合った奴らと合流する約束してるんだけどよ……紹介するから、そいつらともフレンド登録しねぇか?」

 

 クラインが2人にそんな提案をしたのだ。

 

 「っ……」

 

 「えっ……?」

 

 それに対して、サツキとキリトは同じような反応をした。ただ、キリトは戸惑った様子でいて、サツキも戸惑いはあったものの、それよりもどこか怯えた様子でいた。 

 

 「!あぁいや、無理にとは言わねぇよ。それにこのゲームやってりゃ、紹介する機会はいくらでもあるしな!」

 

 クラインは2人の様子から察したのか、そう言ってくれたのだ。

 

 「あぁ、悪いな……ありがとう」

 

 「……ごめん、クライン」

 

 2人は申し訳なく思いながらそう言うと……

 

 「気にすんなって!サツキも謝る必要なんかねぇぞ?それに礼を言うのはこっちだ!この借りはいつか返すぜ……精神的に!」

 

 クラインは手を差し出してきたのだ。

 

 「2人とも、これからもよろしく頼むぜ!」

 

 「あぁ、分からないことがいつでも訊いてくれ」

 

 「……うん、またレベリングしよう」

 

 2人も順番にクラインと握手を交わした。そして……

 

 「それじゃあ、俺はそろそろ抜けるわ」

 

 クラインは2人に背を向け、ログアウトしようとメニューを開いた……が、

 

 「あれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 ログアウトボタンがねぇぞ?

 

 「「……え?」」

 

 

 

 

 

 





 次回『デスゲーム開幕』
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