ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
(カウントダウンパーティーをバックレて、フロアボスの討伐……!?)
(フロアボスの討伐……過激派のやつらが……)
2人のプレイヤーが話している計画に対し、2人に差はあれどどちらも驚いた様子でいた。今の聖竜軍には2つの派閥があり、ビーターであるサツキやキリトと協力しつつ、攻略を進めようとする穏健派……逆にサツキやキリトを敵対視し、自分たちだけで多少無茶な手段を取ってでも攻略を進めようとする過激派だ。
「ここら辺で何かひと騒ぎあった方が、面白いですもんね?」
「簡単に言ってくれるけどよ……穏健派の奴らの目を盗んで過激派のやつらを説得するの、結構大変なんだぜ?」
「分かってますよ~、そのためのイカしたトーク技をヘッドからレクチャーしてもらってるじゃないですか?」
「それもそうだな……上手いこといって、奴らには殺し合いするところまでいって欲しいんだけどな!」
「……」
(こいつら……過激派と穏健派をぶつけて、聖竜軍を崩壊させる気か……!)
この2人が所属している集団の目的は、過激派と穏健派をぶつけることで、聖竜軍を崩壊させて攻略組―――延いてはアインクラッドにいるプレイヤーたちを混乱に陥れるつもりのようだ。
「しっかし、ヘッドの考えだけは相変わらず読めねぇな?」
「今はまだまだ種蒔きのときなんですよ……焦ったら、楽しいお祭りのあっという間に終わってしまいますからね?」
「『過程も楽しめ』だろ?分かってるよ」
その話を聞いていた2人だったが……
『っ!?』
突然、小石が転がるような音がこの空間に響いた。それはアスナが足元の小石を蹴ってしまった音で……
「……今の音、聞きました?」
「あぁ……」
「もし今の内緒話を誰かに聞かれてたら、激サックですねぇ?」
それを聞いたプレイヤーのうちの1人は、武器を抜いてサツキたちのいる方に迫り始めた。すると……
「その内緒話、詳しく聞かせてもらうよ……モルテさん」
「「!?」」
(サツキ君!?)
サツキはフード付きマントを外し、敢えて2人の前に姿を現したのだ。
「お前、いつからいやがった?」
「最初から………って言ったらどうするの?」
「ま、まじですか……」
プレイヤーの1人―――モルテは、サツキのその言葉を聞いた途端に冷や汗をかきながら武器を抜き、戦闘態勢へ入っていた。対照的にサツキは冷静なまま抜刀し、いつでも戦えるように構えた。
「……ここは退きますよ」
「あぁ?何ビビってんだよ!こんな弱そうなやつ1人くらい、どうとでも―――」
「あれが噂のサツキさんですよ……!」
「なっ!?あいつがヘッドの言っていた……」
(ヘッド……僕のことを何か吹き込んでいることといい、一体何者なんだ?)
モルテにそう言われたもう1人も何故か驚いており、サツキは目の前の2人がヘッドと呼んでいる人物について考えたが……
「……ここで洗いざらい吐いてもらうよ?」
サツキはすぐに思考を切り替え、2人を逃がすまいと退路を断つように立ちはだかった。さらに……
「俺たちにもその話聞かせてくれよ」
『!』
「2人とも無事?」
「ミト……!」
そこに、2人を探しに来たキリトとミトが現れたのだ。
「いよいよまずくなってきましたね……」
「なら、大人しく話してくれるか?」
「まさか……
そんなわけないでしょーー!!」
『!?』
モルテは突然、洞窟中に響くほどの大声を出したのだ。その意図に気付いたキリトとミトは……
「サツキ!」
「アスナ!」
「「!?」」
すぐさま2人を抱きかかえると、近くの窪みに飛び込んで隠蔽スキルを発動させた。
「ではでは~!」
モルテはそう言い残し、もう1人のプレイヤーと共に姿を消した。その直後、モンスターの大群が先ほどまで立っていた場所を走り抜けていく。それから、完全にモンスターの気配が消え……
「はぁ……大丈夫か?」
「僕は大丈夫」
「私も……」
その後は4人とも無事に、主街区まで戻ることができたのだった。
◇
翌日、第5層にあるシヤーヤ村で……
「「「はぁ……気持ちいい……」」」
アスナ、ミト、アルゴの3人は風呂に入っていた。
「サンキューな2人とも、こんないい風呂誘ってくれテ」
「ううん……私たちも日頃の感謝をアルゴさんに伝えたかったから……」
「いいよそんなの……それよりも昨日、あの後物騒な連中と会ったんだっテ?」
「えぇ……」
「まぁ、アーちゃんとサー坊が無事で良かったヨ……奴らのことはオイラも追っかけてるから、何か分かったら知らせるヨ。もっとも、これはサー坊からの依頼でもあるんだがナ?」
「サツキから?」
ミトが首を傾げながらそう返すと……
「あぁ……そういう連中がいたら、無理のない範囲で調べて欲しいって。自分でも調べてるみたいだけどナ?」
「……それ、初耳なんだけど?」
「私も」
アスナとミトは笑顔だが笑っていない目でそう言ったのだ。
「……これ、言わない方が良かったカ……?」
(サー坊、何か……ごめんナ)
後で説教が確定したサツキに、アルゴが心の中で謝っていると……
「……あの、アルゴさん」
「ん?」
「ソロでそういう人たちを調べるのは、危険過ぎるんじゃない?」
アスナは急にそう訊いてきたのだ。
「アルゴさんの情報は私たち攻略組だけじゃなくて、後からはじまりの街を出たミドルレベルのプレイヤーにも、凄く助けになってる………もし、アルゴさんに何かあったら攻略そのものが止まっちゃうくらいに……」
アスナはアルゴの身を案じているのか、心配そうな表情をしながら話し続ける。
「だからもっと―――ううん、単純にアルゴさんが1人で無茶してるんじゃないかって心配なの……その……友達として……」
「アスナ……私もよ、アルゴ。あなたの気持ちは同じ元ベータテスターとして分かるけど、せめて誰かを頼るとか……」
2人の言葉を聞いたアルゴは、少し嬉しそうにしながら……
「……ありがと、2人とも。でも、オイラにも情報を伝えなきゃいけない責任があるんだヨ」
「それって、情報屋として……?」
「いや、元ベータテスターとしてダ」
「!そうなんだとしても、アルゴさんが1人で危険な役目を負う必要なんてないわ。キリト君やサツキ君だって、フロアボス攻略の時にはレイドに入ってるんだし……」
アスナはアルゴの危険を減らそうと、説得しようとしていたが……
「アーちゃんが心配してくれるのは、オイラが非戦闘ビルドだからだロ?」
「え、えぇ……」
「なら……ほい!」
アルゴは近くに浮いていたバナナの葉を束ねたものを取り、アスナへと投げ渡した。
「論より証拠ってやつだナ……アーちゃん、ちょっとやってみないカ?」
「やるって……?」
「なるほどね……」
「ミト?何するのか分かったの?」
「デュエル―――は大げさだから、チャンバラだナ」
「えっ?チャンバラ……?」
想像していなかった言葉に、アスナは思わず首を傾げた。
「デュエルの真似事やろうぜってことだヨ」
「い、今!?」
「もちろん!」
「……せ、せめて水着着ない?」
「え?オイラ水着なんか持ってないゾ?」
「じゃあ今作るから!」
それから水着を着た3人は風呂から上がり、アスナとアルゴは互いに向き合った。
「えっと……どういうルールなのかな?」
「そうだな……最初に『ベシッ!』ってやった方の勝ち」
「クリーンヒットってこと?」
「そういうことダ」
「……分かったわ」
「ミーちゃん!審判お願いしてもいいカ?」
「えぇ、もちろんよ」
それから2人は持っている葉っぱを構え……
「それじゃあ………始め!」
ミトの掛け声と共に、2人は駆け出していく。
「ふっ!」
「!」
(やっぱり速い!)
アルゴはそのスピードを活かして攻撃を仕掛けてきたが、アスナも隙を突いて一撃で勝負をつけようとした。その2人の攻撃は、互いに当たることはなく……
「いやー流石だなアーちゃんハ!最初の一発で決めるつもりだったけど『ベシッ!』じゃなくて『ピシッ!』だったからナ」
「ミトも何も言ってこないし、チャンバラ続行ね……!」
そうして2人は構えを取り……
「やぁっ!!」
「はぁっ!!」
一進一退の攻防を繰り広げていく。そして、アルゴがその速さを活かしてアスナの懐に飛び込み、勝負を決めようとしたが……
「っ!?」
「!」
(これで……!)
足を滑らせ、態勢を崩しそうになってしまったのだ。アスナはそれをチャンスだと思い、逆に勝負を決めにいった………が、
「っ!」
「「!?」」
アルゴは風呂がある方へと飛び上がったのだ。そのまま風呂に落ちるかと思われたアルゴだったが……
「よっ!ほっ!はっ!」
何と水面を走っていたのだ。
「「え……?」」
これには思わず、アスナや審判役のミトも驚きを隠せずにいた……が、
「あ―――」
5歩目を踏み出そうとしたところで、風呂に沈んでしまった。
「ぷはっ……!」
それから、アルゴが風呂から上がり……
「にゃはははははは!!」
「「………あははははは!!」」
思いがけないことが起きて面白かったのか、3人は思わず笑い出したのだ。
「いやぁー!楽しかったナー!―――で、ミーちゃん結果は?」
「2人とも『ピシッ!』が1回ずつだから……この勝負は引き分けね」
「やっぱりそうカ」
「アスナもそれでいい?」
「うん、もちろん!それにしても、さっきの水面走ってたのって、何かのスキルだったりするの?」
「いや?………いつもなら情報料をもらうところだけど、まぁいいカ」
アルゴは風呂に脚を入れると、アスナの疑問に答えた。
「今のは修行の成果だヨ。ほら、子供の頃プールとかで挑戦しなかったカ?」
「それって、右足が沈む前に左足を出せば、水面を走れるってやつ?」
「そうそう、それダ!」
「うーん……やったような気もするけど……」
「それ、この世界ならできるのかもって思って……その日から毎日、川とか風呂で練習しまくっタ。そうしてどうにか、4歩までなら走れるようになったんダ―――ま、いわゆるシステム外スキルってやつサ」
その芸当はアルゴのようにアジリティー―――俊敏性の高さがあってこそできるものなのだが、実際にやってみようと思う人は少ないだろう。
「アルゴさんがソロで探索できるのは、さっき見せてくれたとんでもない素早さがあるからなのよね?」
「だからデュエルで、アスナに伝えたかったってことね」
「そう言われると、自惚れ過ぎ感バリバリだけどナ……でもまぁ確かに、いざってなればダッシュで逃げれば何とかなるって思っている部分はあるヨ。足元にもちゃんと気を付けるしナ」
笑ってそう言ったアルゴは……
「豪華な風呂に誘ってくれたお礼に、2人にもう1つ特別な情報を教えてやるヨ」
「えっ?」
「その情報って……?」
2人にあることを教えた。それは……
「さっき2人は1人で危険な偵察をする必要はない。同じベータテスターのキー坊や、ソロでも動けるくらい強いサー坊だって攻略集団に参加してるんだからって言ったロ?でもな、キー坊やサー坊が完全なソロプレイヤーをやってない理由は、危険が減るからじゃないと思うぞ?」
「じゃあ……何?」
するとアルゴはアスナの胸の辺りを指差し……
「アーちゃんやミーちゃん、それにサー坊がいるからさ……サー坊も、キー坊と同じ理由だと思うゼ?」
「「……」」
「まあサー坊の場合は、1人だと何やらかすか分からないし―――放っておいたら、危ないかもしれないからナ……」
「危ないって……?」
その言葉の意味が分からなかったのか、ミトはアルゴにそう訊いたのだが……
「あぁいや、ただの勘だヨ。気にするナ」
アルゴはサツキから聞いた言葉を思い出しながら、そうはぐらかした………。
『サー坊、今回のことだけど………もし、相手が本気で来たらどうするんダ?』
『本気って?』
『……それ、分かってて言ってるだロ?』
『確認のためだよ。紛らわしかったらごめん……で、どうするかだよね?』
『あ、あぁ……』
『結論から言えば………
やるよ。その時になったら躊躇もしない』
『!それは―――』
『それに、そんなことやれるとしたら……多分、この世界で僕しかいないと思うよ』
『……それ、どういう意味ダ?』
『こればっかりは、アルゴにも教える気はないよ』
「……」
(マジで死ぬなヨ、サー坊………)
読んで下さり、ありがとうございます。久し振りの投稿になりましたが、この小説はゆっくりとしたペースで進んでいきますので、ご了承いただければと思います。
それでは、次回『作戦』もどうかよろしくお願いいたします。