ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 今回も、冥き夕闇のスケルツォの続きを書いていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第11話 作戦

 

 「キリト君、サツキ君、お風呂上がったよ?」

 

 風呂から上がったアスナとミトは、キリトとサツキのいる丘の上へと来ていた。そこでは……

 

 「!お帰り、楽しめた?」

 

 「えぇ、それはもう」

 

 「なら良かったよ」

 

 木刀で素振りをしていたサツキと、寝転がって日向ぼっこをしているキリトがいた。

 

 「あれ?そういえばアルゴは?」

 

 「一旦戻るって」

 

 「『キー坊とサー坊によろしくナ』って言ってたわよ?」

 

 起き上がったキリトは、アルゴがいないことを疑問に思っていたが、2人がそう答えたことで納得したような表情を浮かべた。

 

 「そっか……結構長風呂だったけど、どんな話してたんだ?」

 

 「っ!お、女の子の話を聞きたがるものじゃないわよ!」

 

 「えっ?ってことは、このアスナとミトとあのアルゴがガールズトーク的なことを―――」

 

 「だから詮索するなって言ってるでしょ!?」

 

 「いや詮索するつもりじゃ―――」

 

 キリトとアスナがそんな言い合いを始めているのを見て……

 

 「い、言っとくけど、いわゆるガールズトークなんてしてないからね?」

 

 「それは本人たちの自由だと思うけど?それに、僕が内容を聞いたところで良く分かんないと思うし」

 

 「そ、そう………というか、サツキはもう少し興味を持ってもいいと思うわよ……?」

 

 キリトとは違い、サツキは興味がなさそうにミトに答えながら木刀を仕舞った。すると、キリトとの言い合いを終えたアスナが……

 

 「……みんなで一生懸命頑張って、こんなに綺麗な風景が見られるところまで来たのに………あの2人は、派閥同士でいがみ合うことを………そんなの、SAOの攻略を妨害してるのと同じじゃない!しかも、モルテっていう人、派閥同士で人殺しさせようだなんて、そんなことして何になるって言うの……?」

 

 悲しそうな表情をしながら、そんな疑問をぶつけた。

 

 「あいつら……PK集団はそういう連中なのよ」

 

 「ぴーけー……?」

 

 「プレイヤーキラー………つまり、この世界における殺人者」

 

 「……!」

 

 「……」

 

 「アスナ、覚えておいてくれ。この浮遊城アインクラッドにはゲーム攻略そっちのけで、PKに勤しんでいる集団がいる」

 

 「そんな……どうしてそんなことを?この世界でプレイヤーを殺せば、現実世界で本当に死んでしまうのに!!」

 

 キリトの言葉を聞いたアスナは、それが理解できない様子でいた。それもそのはず、この世界でのHP全損=現実での死………なのにもかかわらず、そんなことを楽しむなど普通はありえないだろうからだ。すると……

 

 「……これは僕の推測だけど、プレイヤーたちはこの世界で現実なら普通はできないことやりたいって考えている人が多いはずなんだ」

 

 「現実じゃできないこと……」

 

 「例えば、剣を手にして未知のモンスターを狩ったり、ステータスを上げて人間離れをした動きをしてみたい……とか」

 

 「!」

 

 (それって、アルゴさんの水面を走ることも……)

 

 サツキの言葉を聞き、アスナは先ほどのアルゴのシステム外スキルのことを思い出した。

 

 「それならまだいいんだけど………奴らはそのやりたいことっていうのが殺人―――PKだった」

 

 「「「!」」」

 

 「現実じゃ剣なんか持ってたら即逮捕だし、殺人なんてもっての外……だからこのデスゲームの世界なら、リアルな殺人ができる―――って、思ったのかもしれない。まぁ、現実に戻った後どうなるかは分からないけど」

 

 そんなサツキの推測を理解できてしまったのか、3人は思わず黙り込んでしまう……。

 

 「それに現実世界だとしても、こういうことをやる人間は案外多いと思うよ………例えば自分の子供に暴力を振るうことでストレスを発散したり、弱い立場の人いじめたり、無理矢理相手の嫌がることをしたり………」

 

 「……サツキ?」

 

 「サツキ?どうしたの?」

 

 「サツキ君?大丈夫?」

 

 急に黙り込んでしまい、右手で左腕を掴んだサツキを見て、3人は心配そうに声を掛ける。

 

 「!ご、ごめん……それより今は、過激派連中の抜け駆けを止めないとね」

 

 「そ、そうだな………アスナ、ミト、頼んでいた件だけど行けそうか?」

 

 「う、うん……でも、何で両派閥のカウントダウンイベント責任者を……?」

 

 「過激派の方に訊いただけじゃ、とぼけられるかもしれないからな」

 

 「でも……イベント責任者も、抜け駆けのこと知らないってこともあるかもしれないわよ?」

 

 「もちろんその可能性もある……だから僕が、トップの3人も呼んでおいた」

 

 「「!?」」

 

 「待てサツキ!さっき言ってた『考え』ってそれのことか……?」

 

 「そうでもしないと分からないでしょ」

 

 サツキがそう言ったのを聞いて……

 

 「みんなが楽しみにしているパーティーなんだから、あまり無茶しないでね?」

 

 アスナはサツキにそんな言葉を投げかけた。それを聞いたキリトは…… 

 

 「パーティー、か………パーティーを楽しむのはいいことだと思う。攻略に余裕が出てきたってことだからな……ホント、1層にいた時からは想像もできないよ」

 

 「確かに……みんなもっと必死に攻略進めるかと思ってたよ」

 

 「だけど、そういう隙をPK集団は狙ってくる―――いや、このゲームが突いてくるって気がするんだ」

 

 真剣な表情をして、3人にそう言うのだった。

 

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 

 サツキたちは5層の主街区に戻って来た後、とある食事処に来ていた。

 

 「シヴァタさん、リーテンさん……まずは、急に呼び出してしまってごめんなさい」

 

 「いや、それはいいんだけど……」

 

 「私も別に気にしていないわ」

 

 そこには今回のカウントダウンイベントを企画したシヴァタとリーテンの2人がいた。聖竜軍には過激派と穏健派、そしてもう1つ中立派と呼ばれるプレイヤーたちがいる。2人はその派閥となっており、今回のカウントダウンイベントの担当者としても最適だったというわけだ。それから……

 

 「それで………どうして副リーダーたちと、リーダーがここに?」

 

 「ワイら3人、まとめて灰のビーターに呼ばれたんや」

 

 「俺たちも何のことやら……という感じなんだ」

 

 聖竜軍のリーダーであるディアベルと副リーダーであるリンドとキバオウも、サツキに呼ばれてきていた。

 

 「俺たちに訊きたいことがあるらしいけど……それって何なんだい、サツキさん?」

 

 ディアベルに促されたサツキは、単刀直入にこう訊いた。

 

 「じゃあ、早速本題に入るけど………聖竜軍の過激派連中が明日のカウントダウンパーティーをバックレて、第5層のフロアボスを討伐しようとしているっていう情報は聞いたことある?」

 

 『!?』

 

 その話を聞いた5人は、声に出さないものの驚いた表情をしていた。

 

 「そんな情報、どこから……?」

 

 「悪いけど、それは聖竜軍に混乱を招くからそれは言えない」

 

 「俺たちに、混乱……?」

 

 「けど、情報屋から買ったわけでもないし、僕ら4人は実際にその話をしているところを見た……プレイヤー名や顔とかは分からなかったけど」

 

 『……』

 

 それから少しの沈黙が流れた後……  

 

 「!まさか……」

 

 「何か知ってるの?」

 

 サツキの話を聞いてから何かを考え込んでいたディアベルが、いきなりそう呟いた。 

 

 「実は、第5層のボスがとんでもないアイテムをドロップするって話をウチの団員がしてきてね。元ベータテスターなら知っている話だと思うけど……」

 

 ディアベルはキリトとミトの方に視線を向けながらそう言い……

 

 「第5層ボスだろ………って!?」

 

 「も、もしかして……!?」

 

 「「ギルドフラッグ!」」

 

 それを受けた2人は、ベータテストの時の記憶からあることを思い出した。

 

 「ギルドフラッグって、旗のことか?何をそんなに驚いて……?」

 

 「武器としては、攻撃力最低のロングスピアなんだけどな……それをこうやって―――」

 

 キリトはティースプーンをテーブルに立て………

 

 「装備プレイヤーが地面に突き立てると、近くのギルドメンバー全員に全ステータス上昇のバフがかかる」

 

 「な、何だと……」

 

 「その旗を持っているプレイヤーは移動できるの?それとバフの効果時間は?人数の上限は?」

 

 リーテンがギルドフラッグの詳細な情報について訊くと……

 

 「発動中の移動はできないけど、旗を立てている間はバフの効果が続く。そしてギルドメンバーであれば、人数に上限はない」

 

 破格と言っていい性能が、キリトの口から語られたのだ。

 

 「そんな……」

 

 「でも何で、過激派のやつらはギルドフラッグを……?」

 

 「!確かに……それだったら、ギルド全員で取りに行っても何も問題はないはず」

 

 そんなシヴァタとリーテンの疑問に……

 

 「簡単だよ……過激派だけの新ギルドを作る」

 

 「なっ!?」

 

 「だから戦力強化のために、ギルドフラッグが欲しいんだろうね。そして、それが現実になれば……」

 

 「聖竜軍は、その情報を話していた奴らの狙い通り、崩壊することになる……」

 

 サツキは冷静に、最悪の事態となった場合のことを告げた。

 

 「ど、どうすれば………」

 

 「……方法は1つだけある」

 

 「えっ!?」

 

 「あるんですか!?」

 

 シヴァタとリーテンがキリトの方を見てそう訊くと……

 

 「俺たちだけでボスを倒す。それ以外に手はない」

 

 『!?』

 

 現実的ではないことを言い出したのだ。当然、聞いた2人は驚きを隠せずにいた。

 

 「僕たちがフラッグを手に入れれば、少なくとも最悪の事態は避けられる」

 

 「やっぱり、それしかないわよね」

 

 「そうだね……」

 

 サツキたち3人もこれを想定していたようで、特に驚くこともせずそう口にした。

 

 「シヴァ……私―――」

 

 「分かってるよ、リッちゃん………俺も協力するよ」

 

 そう言ってくれる2人に、サツキは内心で心配しながらあることを問い掛けた。

 

 「僕たちがやろうとしていることは、ハッキリ言ってかなり危険なことだよ……それでも行くの?」

 

 すると……

 

 「ゲームクリアを目指すなら、これ以上のギルド内での対立関係は何としても防がないといけない」

 

 「それに、下の層で待っている何千ものプレイヤーを裏切ることはできません」

 

 「……分かった。それと、ありがとう」

 

 サツキの心配を余所に、2人は迷わずそう言ってくれたのだ。

 

 「あと、聖竜軍のトップ3人はギルド内を見張っておいてくれると助かるんだけど……」

 

 「分かった。任されたよ」

 

 「せやな……ワイらが行ったら、連中に怪しまれるかもしれへんしな」

 

 「済まないが、ボスは任せたぞ」

 

 聖竜軍の3人はそう言うと、その場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 




 読んで下さり、ありがとうございます。

 久し振りの投稿となりましたが、これからも更新頻度は遅いですが読んでいただけると幸いです。

 それでは、次回『想定外』もどうかよろしくお願いいたします。
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