ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
少人数でのボス戦が決まった後、サツキたちはボス戦に参加してくれるプレイヤーを集めに行った。その結果、サツキたち以外にアルゴ、エギルのパーティー4人が集まり―――合計11人でボス戦に挑むことになった。
そして、その日の夜……
「しっ!」
『GyA!?』
サツキの姿はフィールドにあり、モンスターを狩りながらソードスキルや型の確認をしていた。
「ふっ!………もう少し―――」
「そろそろ休んだらどうだ?」
「!……キリトか」
サツキが狩りを続けようとしていると、そこにキリトがやってきたのだ………どうやらサツキが帰って来ないのを気にして、ここまで来たようだ。
「ここまま続けてたら、明日に響くぞ?」
「分かってるよ……けど、少しでも不安要素は無くしておきたいんだ」
「それは分かるが……」
なおも狩りを続けようとするサツキに………
「じゃあさ、俺とデュエルしてくれよ」
キリトはそんな提案をしてきた。
「デュエルを?」
「あぁ。これで俺が勝ったら―――というか終わったら、どちらにしろ大人しく休んでくれよ?」
「それ、やる意味ある……?」
「!いいんだよ、俺も寝れなかったところだし」
「……分かったよ」
サツキはそれを了承し、デュエル申請をキリトへと送った。
「!ありがとな」
キリトも申請を了承し、2人の間に60秒のカウントダウンが浮かび上がった。デュエルのルールは初撃決着モードというもので、どちらかのHPが少しでも減ったら勝敗が決まる方式となっている。そのためかキリトは、ソニックリープの構えを取っており、一撃で勝負を決めるつもりのようだ。それに対し………
「……」
サツキは曲刀を抜いてから何の構えも取らず、キリトをただ見据えて立っているだけだった………が、
「っ……」
(この違和感はなんだ……サツキは構えを取っていないはずなのに……?)
キリトは何かおかしいと感じ、警戒した様子でいた。そして……
「っ!」
カウントが0になった瞬間、キリトはソニックリープを発動させてサツキへと迫っていく。それをサツキは……
「……」
「っ!?」
剣の軌道が分かっていたかのようにバックステップを取り、ギリギリのところで避けたのだ。何かがあると思っていたキリトだったが、まさかこれだけの動きで避けられるとは思わず、一瞬だが動揺してしまった。サツキはキリトのソードスキル発動後の硬直時間を見逃さず、すぐさま一歩踏み込むと……
「終わり」
「っ!?」
キリトに一撃を入れ、そのHPを減らした。
「……僕の勝ち、だね」
デュエルのWinner表示を確認したサツキは、キリトに一言そう言いながら曲刀を鞘に納めた。
「な、なぁ……今のって、どうやったんだ?」
キリトも片手剣を納めながら、恐る恐るといった感じでサツキに尋ねた。
「キリトの構えから何のソードスキルかを予測して、後はその動きを見て避けただけだよ」
「避けただけって………随分簡単そうに言うな?」
サツキの言葉を聞いたキリトは、思わず苦笑いを浮かべた。キリト自身もサツキの言っていることの意味は分かるが、それを実際にやってのけるのは簡単ではないことも分かる………だからこそ―――
「もちろん、最初からできたわけじゃないよ。寝る前とかに練習はしたけどね」
「……」
(サツキのやつ、だからこんな動きができるように………)
キリトはサツキの才能と、何よりもその努力を感じ取っていた。すると……
「それでさ……何で急にデュエルを?」
「!……気付いてたのか?」
サツキがキリトに、デュエルをやろうとした本当の理由を訊いた。
「………第1層のボスを攻略した日のこと、覚えてるか?」
「うん、もちろん」
「その時さ、サツキはこう言ったよな―――『もしPKと戦うことになったら、どうする』って?」
「……」
キリトの口から出る言葉を、サツキは黙って聞き続ける。
「俺はあの時、迷ってすぐには答えられなかった………パーティーメンバーは死なせたくない、でも人は殺したくないって―――けどサツキはもう、覚悟を決めていたんだろ?」
「……」
それから、少しの沈黙が流れ―――
「そうだよ」
「!」
キリトの確信したような言葉に、サツキは一言そう答えた。
「もし、目の前で仲間がPKに殺されそうになっていたら………僕は迷わず仲間の命をとる」
「サツキ………」
「まぁそんなこと、起きない方がいいんだけど」
そう言って少しだけ微笑むサツキに向け……
「俺、あれから考えたんだ………俺もその時になる前に、覚悟を決めなきゃいけないって」
「………だからデュエルを?」
どうやらキリトは、先日遭遇したPK集団と戦う時の自分の覚悟を確かめるために、サツキに対人戦―――デュエルを申し込んだようだ。
「あぁ……でも、お前に比べたら全然だったけどな?」
キリトは万一の時に、PKの―――人の命を奪うという覚悟を決められない自分を自嘲するようにそう言ったが……
「……キリトたちはそのままでいいんだよ」
「えっ?」
「それが普通の感覚、無理に変える必要なんてない………それに、その感覚のまま現実に帰れるのが一番いいから」
サツキはキリトにそんな言葉を投げかけた。
「だからさ……その時が来たら、キリトはみんなのことを守ってよ。そしたら僕も、人を殺さずに済むかもしれないし」
そう言ったサツキに対し、キリトは……
「いや、俺も一緒に戦う」
「!」
「お前だけに背負わせはしない………それに、アスナとミトだってそう言うと思うぜ?」
その時になったら、自分たちも戦うと口にしたのだ。サツキはキリトに『戦うな』と口にしようとしたが……
「……」
キリトの本気であろう雰囲気を感じ取ったのか、その言葉を飲み込んだ。そして……
「まぁとにかく今は明日のこと、だな」
キリトはそう言うと、サツキに向かって拳を突き出し……
「絶対に勝つぞ、サツキ」
「!……もちろんだよ」
サツキもそれに応えて拳を合わせた。
◇
翌日、サツキたち11人は、第5層迷宮区の前まで来ていた。
「……サツキ」
「分かった………たった11人でのボス戦だけど、勝算は十分にある。もちろん、1人の犠牲者も出すつもりもない」
キリトに声を掛けられたサツキは、代表して話をし始めた。
「聖竜軍の崩壊を防いで、カウントダウンパーティーを成功させるためにも……みんな、頼むよ」
「よし!やってやろうぜ!」
『おぉ!』
サツキの言葉に反応し、エギルを筆頭にそれぞれが武器を掲げて声を上げた。その後、一行は迷宮区に突入し、道中現れるゴーレムたちを倒しながらボス部屋へと進んでいく。
「上がった先に通路があるのか………それともいきなりボス部屋があるのか……」
「ベータの時とは違ってるのか?」
「あぁ、ベータの時はここに扉があって、それを開けたらボス部屋だった」
ベータの時にボス部屋への扉があったという場所で、サツキたちは一度止まっていた。
「その時はどんなボスだったの?」
「古代遺跡の番人って設定の、超でっかいゴーレム……ただ、今までのフロアボスもベータと形は似てても、必ず何らかの変更は入ってたからな」
キリトが言うには、ベータ時代のボスは巨大なゴーレムだったらしいが……
「!そうだ、ボスについて何か知ってるか?」
正式版では何か変更点があると思い、キリトは情報屋であるアルゴの方を向いてそう訊いた。
「オイオイ………オイラが情報屋だってこと忘れてるナ?」
「おっと……悪い悪い」
キリトはアルゴに、情報料であるコルを渡したものの………
「毎度あり―――と、言いたいところだけど、今回はサービスしとくヨ」
アルゴは珍しく、無料でボスの情報を教えてくれるようだ。
「結論から言うと、ボスがゴーレムなのはベータの時と変わってなさそうダ。額に紋章があって、それが弱点になル」
「なんだか魔法みたいだな……」
「あぁ……そして区切りの5層ボスは、一際強敵なはずダ。ま、覗いてみるしかないだロ?」
「そ、そうだな………とにかく、いきなりボス部屋だった時のことを考えて、まずは俺が偵察に行くよ」
元ベータテスターであるキリトが偵察役を買って出たのだが……
「いや、ここはオイラに任せてくレ」
「えっ?」
「もしかしたら、この階段の床がせり上がって道を塞いでしまうトラップかもしれない………そうなっても、オイラなら閉まる前に脱出できル」
アルゴが理由をつけ、1人で偵察に行こうとしていた。すると……
「いや、俺も行く。これは譲れないぞ?」
「それを言うなら、もう1人くらいいた方がいいでしょ?それに僕も、脚は速い方だと思うし」
キリトとサツキがアルゴを1人で行かせまいと、そう名乗りを上げた。
「えぇー………しょうがないナ」
アルゴは苦笑いしながらも、渋々といった様子で3人で行くことを了承した。
「悪いけど、階段の見張りは任せた」
「あぁ」
「分かったわ」
シヴァタとミトがそう答えたのを聞いた3人は、上へと繋がる階段へと歩き出そうとし―――
「……キリト君、サツキ君、アルゴさん」
「「「?」」」
「……気を付けてね」
アスナにそう言われ……
「大丈夫、すぐ戻る」
キリトが代表してそう言い残し、今度こそ階段を上っていく。そうして辿り着いたのは……
「……あれ?ここってボス部屋だよな?」
何もない円形の空間だったのだ。
「6層に上がる階段もないぞ?」
「それに、ボスが湧く気配もないヨー」
「お、おい!」
1人で動こうとしているアルゴを、キリトは止めようとするが……
「大丈夫ダ。多分だけど、もうちょっと移動しないとポップしないんだヨ」
アルゴはそう言い、足元にある青い線で描かれた四角形の光を踏んだ………その時―――
「ちっ……!」
「アルゴ!!」
急に部屋の中が明るくなり、床から巨大なゴーレムの手が出てきたのだ。
「う、うわぁ!?」
その手はアルゴを掴もうとしており、そのまま上まで持ち上げて握り潰そうとしてきたが……
「っ!」
部屋が明るくなった瞬間に駆け出していたサツキが、ギリギリのところでアルゴを助け出したのだ。
「サー坊!?」
「危なっ……!」
「それはこっちのセリフだサツキ!とにかく今は、ここから戻っ―――」
「2人とも下ダ!!」
「「っ!」」
そんなやり取りをする3人を、下から現れたゴーレムの手が捕まえようとしてきたのだ。さらに……
「下!下!!」
「っ!?」
2本目の腕がキリトの逃げた先に出現したが、アルゴが事前に気付いたおかげでそれを回避することができた。
「っ……何だ、2本もあるのかよ……!」
「腕が2本あるのは普通ダ!」
すると、アルゴが何かに気付いたのか……
「おい2人とも、腕が2本あるってことは―――」
「脚も2本ってことでしょ?それより上!」
「「っ!」」
何かを言おうとしたが、その前に頭上から脚が3人を踏みつぶそうとしてきており、サツキがすぐに気付いていたおかげで回避することができた。加えて衝撃波まで襲い掛かるが、各々がそれに反応して回避していく。
「なるほど………その線を踏むとターゲットサークルが出現―――ゴーレムの手と脚が攻撃してくるってことか……」
「それに加えて衝撃波まで……厄介だね」
すると……
「おーい!」
『っ!?』
「まだボスは出てきてないのか?」
階段を見張っていた全員が、サツキたちのいるところに上がってきたのだ。だが、今ここにきた面々は既にボスが出てきていること、足元の線を踏むと攻撃がくることなど知らず、線を踏んでしまっていた……。
「来るな!!」
「回避!回避ーっ!!」
『!?』
サツキとキリトが焦ったように声を上げ、全員がすぐさま回避行動を取った………が、シヴァタとエギルパーティーのうちの1人がぶつかってしまい……
「「うわあああああ!?」」
ゴーレムの手に捕まってしまった……。
「アスナ!!」
「ミト!!」
「「!」」
キリトとサツキは2人の名前を呼ぶと、呼ばれた2人はその意図を察したのか……
「「はぁああああああ!!」」
すぐにソードスキルを発動させ、それぞれ腕を1本ずつ攻撃する。それによって、捕まっていた2人を助け出すことに成功した。そして……
「あ、あれって………」
『GyAOOOOOOOO!!』
『Fuscus the Vacant Colossus』―――第5層ボスの額に紋章がついたゴーレムがその姿を現した。そのボスの姿を見たキリトの表情を見て……
「キリト、一応訊くけどこいつって………」
サツキは確認の意味を込めてこう訊いた……。
「あぁ………
ベータと、名前も全然違う……!」
読んで下さり、ありがとうございます。
第5層ボスと対峙したサツキたち………果たして、どう攻略するのか……。
それでは、次回『激戦』もどうぞよろしくお願いいたします。