ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
ボスを撃破した後、部屋は遺跡のような光景へと変化し……
『Congratulation!!』
勝利を讃える表情が浮かび上がった。そして、それを見て現実を理解したのか……
『や……やったぁああああああ!!』
この場にいるプレイヤーたちは喜びの声を上げた。
「ふぅ……」
「みんなお疲れ様」
「あぁ」
「うん」
「アスナもね?」
サツキたち4人も互いの検討をたたえ合い、それぞれが拳を合わせた。すると……
「!そうだ、フラッグは?」
『!』
サツキの言葉に反応し、全員がドロップアイテムを確認した。
「……ないわね」
「こっちもだ」
「一体誰に―――」
「!あったわ」
どうやらギルドフラッグをドロップしたのはミトだったらしく、すぐにオブジェクト化すると……
「はい」
「!ありがとう……これで後始末はなんとかなりそうだよ」
サツキへと手渡したのだ。
「後始末……?」
「どういうこと?」
その言葉に疑問を覚えたアスナとミトは、思わずそう訊いた。
「それはまた後で話すよ………さぁ、みんなは早く6層に上がって」
サツキの言葉通り、ほとんどが第6層へと上がっていった………が、
「3人とも、無理して付き合わなくてもいいのに……」
キリト、アスナ、ミトの3人はサツキと一緒に残る選択をした。
「お前、1人じゃまた無茶するかもしれないからな?」
「これはサツキ君1人に背負わせることじゃないわ」
「それに、少しは私たちのことを頼りなさいよね?」
「みんな……」
そこに……
「!お前ら………まさかボスを倒したのか?」
聖竜軍の過激派プレイヤーたちがやって来たのだ。
「そうだよ。それに―――これもね」
「あ、あれって……」
「ギルドフラッグ……!」
サツキは過激派プレイヤーたちに見せつけるように、ドロップしたギルドフラッグをアイテム化させた。
「名前は『フラッグ・オブ・ヴァラー』……効果はみんな知っての通りだよ」
「フン。流石は灰のビーター様だ………で?ギルドに入っていないお前が、それをどうするつもりだ?」
そう訊かれたサツキは……
「もちろん、これは聖竜軍に渡すよ」
「ほぉ?随分と―――」
「ただし、渡すには条件がある」
「はぁ?条件だと?」
サツキの言う条件と言うのは………
「条件はただ1つ―――この下らない派閥争いが終結した時のみ、フラッグをギルドマスターであるディアベルに譲渡する」
「な、何だと!?」
「ふざけてるのか!?」
「ふざけてなんかいない……それに、僕はこの条件を変えるつもりは毛頭ない」
罵声を浴びせられながらも、サツキは表情ひとつ変えることなくそう告げたのだ。すると……
「俺……俺知ってる!そいつはそもそも、ギルドフラッグを渡すつもりはないんだ!!」
「……」
「無理難題を吹っかけて、フラッグそのままパクって自分たちだけのギルドを作るつもりなんだ!!」
マスクで頭を覆ったプレイヤーが、そんな罵声をサツキに浴びせてきた。
「違う!」
「何言ってるの!?」
「私たちはそんな―――」
「こんな奴の言う事いく必要ないぜ!フラッグ取り返す方法なんていくらでもある!」
そう言いながらマスクのプレイヤーは、サツキに武器を向けてきた。
「!お、おい……?」
「それは流石に―――」
過激派プレイヤーたちはその発言の意味を察したのか、戸惑いを見せていたが……
「それって………力尽くって意味?」
『!?』
サツキが冷たい目をしながら、マスクのプレイヤーにそう返したのだ。サツキのまるで挑発するような発言に、周りのプレイヤーたちは凍り付いてたが……
「あ?あぁ……話が早くて助かるぜ!!」
マスクのプレイヤーはサツキに突進し、剣を振り下ろそうとしてきた。
「遅い」
「なっ!?」
「っ!」
「ひっ!?」
サツキはそれを避けて投げ飛ばすと、素早く曲刀を抜いてマスクのプレイヤーの首元へと突き付けた……。
「せっかくだからここで忠告しておく………もし力尽くで奪おうとしてくるなら、こちらもそれなりの対応をさせてもらう」
『っ……』
サツキは過激派プレイヤーたちにも目を向けながら、そう忠告した。すると……
「これは何の騒ぎや!」
『!?』
タイミングよく、キバオウと穏健派プレイヤーが数名現れた。キバオウたちの姿を見た過激派プレイヤーたちは、思わず黙り込んで驚愕の表情を見せる。
「き、キバさん!あいついきなり俺に襲い掛かってきて―――」
マスクのプレイヤーは、キバオウにサツキが自分に襲い掛かってきたと噓をついたのだが……
「こんのドアホ!!」
「ぐっ!?」
「それに最初から全部見させてもろたわ!襲い掛かったのはお前やろジョー!」
キバオウは事の顛末を見ていたようで、ジョーを胸倉を掴みながらマスクのプレイヤー―――ジョーを怒鳴りつけたのだ。
「重要なアイテムいうてもな……それを手に入れるために同じプレイヤーに剣を向けたら、ワシらは犯罪者となんも変わらん!!」
「っ……」
「何のためにワシら聖竜軍が存在するのか、よう考えてみい!!」
そうしてジョーに灸を据えたキバオウは、サツキの方に歩いてくると……
「すまんかったな、ウチのモンが」
「いや、別に気にしてないよ……あの程度は全然余裕だから」
「余裕て………まぁええわ。じゃあ、ワシはこいつら連れて帰るとするわ」
そう言って来た道を戻ろうとしていたが……
「あっ、帰るなら6層からの方が近いよ」
「?あぁ、そういうことかいな。なら、お言葉に甘えてさせてもらおか―――あとおまんら、今回のこときっちり説明してもらうで?」
『は、はい!』
キバオウはサツキの横を通ろうとした時……
「おおきにな、サツキ」
「!」
小声で礼を言ってから、プレイヤーたちを引き連れて第6層に上がって行った。そんなキバオウに、過激派プレイヤーたちが続くが……
「ったく……結局ビーターが得しただけじゃねぇか」
「だいたい何で、穏健派はそんな奴と協力なんか―――」
「なんなら1人で攻略すればいいじゃねぇか」
そんな不満をこぼしながら歩いて行ったのだ。サツキは何も言い返すことなく、ただその場に立っていた。そうしているうちに、過激派プレイヤーたちはこの場からいなくなり……
「……さて、後始末も終わったことだし、僕たちも―――」
「「「……」」」
サツキは3人に声を掛けたが、キリトとミトは黙り込んでしまっており……
「何で……何でサツキ君が、こんな目に遭わないといけないの……?」
「?急にどうし―――」
「攻略集団のために……この世界に囚われている人たちのために、命を投げ出して戦って………ギルドの崩壊を防いでくれたのも、サツキ君の力あってこそなのに………あの人たちは仲間だけで固まって、他人とも平気でいがみ合って、そんな人たちのためにサツキ君がボロボロになるのなんて………頑張って戦ったのに、あんな人たちのために傷つくなんて………こんなの間違ってるよ……!」
アスナはサツキがあんなことを言われていることに対し、涙を流していた。
「……これは僕が選んだ道だ。僕自身があの時、1人でいることを選んだ……その結果がこうだった―――それだけのことだよ」
「それだけって―――」
「別に今回のことだって、誰かに称賛されたくてやったわけじゃないし―――まぁ、強いて言えばパーティーメンバーのためにはなった……かな」
「サツキ……」
「それにさ、僕のために泣く必要はないよ………実際、さっきの過激派プレイヤーたちの言葉だって、何も感じなかったし」
「!そんなわけ―――」
「あるんだよ………だから―――」
「誰のために泣くかは私が決める!」
僕の為なんかに泣く必要はない―――そう言おうとしたサツキだったが、アスナがそれを遮り……
「もし誰もサツキ君のことを褒めてくれないなら………私たちで褒めてあげる」
涙を拭いてそう言ったのだ。それに同意するように……
「そうね……うちのリーダーは充分頑張ってるし」
「むしろ頑張りすぎているくらいだけどな?」
ミトとキリトがそんなことを言ってきたのだ。そして……
「よく頑張ったね、サツキ君」
「ありがとな、サツキ」
「サツキ、本当にお疲れ様」
「……!」
アスナとミトはサツキの頭を撫でながら、キリトはサツキの肩に手を置きながら、それぞれ労いの言葉をかけるのだった……。
◇
『5!4!3!2!1!―――
ハッピーニューイヤー!!』
ボス戦が終わった後、第5層の主街区では無事にカウントダウンイベントが開催されていた。
「みんな、新年あけましておめでとう!」
「「「おめでとう!」」」
4人も飲み物を片手に乾杯しながら新年の挨拶を交わしていた。
「しっかし、よく花火なんてあったな……どこに売ってたんだ?」
「始まりの街の隅の方にある道具屋で買えるらしいわよ?」
「それをリーテンさんが見つけたんだって」
「「へぇ……」」
サツキとキリトは感心した様子でいたが……
「じゃあ、あの花火でモンスターを―――」
「残念ながら圏内でしか使えないわよ?」
「……そうですか」
「キリト……」
「ははは……」
キリトがそんなことを言ったため、サツキとミトは呆れながらも苦笑いしていた。
「2023年か……」
「もう2ヶ月も経ったんだな……ちょっと信じられない気もするけど」
「そうね……始まりの街にいた時は物凄く長く感じたのに、最近は毎日があっという間に過ぎていく……」
4人はゲームが始まったことを感慨深げに思い出しながら、食事を楽しんでいた。それから少しして……
「そうだ……下で飲み物と食べ物貰ってくるけど、何かリクエストある?」
サツキが他の3人にそう訊いたのだ。
「私も行こっか?」
「ありがとう。でも、1人で大丈夫だよ」
サツキはミトの提案を断ると、1人で下へ降りる階段に向かって歩いていった。そうして城内を進んでいたサツキだったが………
「……そこにいるのは誰?」
曲刀を抜きながら、物陰に向かってそう言ったのだ。すると……
「流石だな!まさか俺のハイディングを見破るとは……!」
黒いポンチョの男がサツキの前に姿を現したのだ。
「お前……誰?そもそも何でここで待ち伏せなんかを?」
サツキがそう問い掛けると……
「決まってるだろ
黒ポンチョの男はそう返してきた。その言葉を聞いたサツキは、1つの結論に至った……。
「あぁ……お前がモルテたちが言ってた『ヘッド』―――PK集団のリーダーってわけか」
「お察しの通りだぜ、兄弟……!」
この黒ポンチョの男が、モルテたちが言っていた『ヘッド』であり、聖竜軍の過激派を扇動して攻略組に混乱を引き起こそうとした張本人なのだ。
「……あと、その兄弟っていうのやめてもらえる?」
「ハハハ!そうつれねぇこと言うなよ……!」
サツキは不快な表情をしながらそう言ったが、逆に黒ポンチョの男に笑いながら断られてしまう。
「それで目的は?僕を殺そうとしてるなら、別の場所の方がいいんじゃ?」
サツキは冷静にそう訊いたのだが……
「おいおい………『灰の剣士』であろう御方がまさか―――圏内は前庭までで、城内は圏外扱いだって知らないのか?」
「……」
黒ポンチョの男は余裕の表情を崩さずそう言い、むしろ笑みを浮かべていた。
「……じゃあ、ここで試す?」
サツキは冷たい目を向けながら、殺気を出して静かに曲刀を構え直した。それを見た黒ポンチョの男は……
「ハハハハハ!思った通りだ……やっぱ、お前も
「……」
何故か嬉しそうにそう言っていた。そして―――
「っ!!」
サツキは黒ポンチョの男へと、その俊敏性を活かして急接近していた。
(圏外かどうかなんてもう関係ない……ここでこいつを何とかしておかないと……!)
サツキはこの場で黒ポンチョの男と決着をつけるつもりのようで、圏内ならば捕縛、圏外ならば戦闘不能になるまでHPを削るか、それ以上のこともするつもりでいたのだ。
「Wow!」
黒ポンチョの男はサツキが一瞬で距離を詰めてきていることに驚きながらも、手に持ったナイフですかさず防御したが……
「しっ!」
その直後にノックバックによって、近くの柱まで吹き飛ばされる。サツキは間髪入れずに、黒ポンチョの男に攻撃を仕掛けていく。
「Time Out!」
「ちっ……!」
だが、黒ポンチョの男に煙玉を地面に投げられ、サツキはその視界を奪われてしまい……
『また会おうぜ!兄弟!』
「……逃げられたか………」
その隙に姿を消してしまった……。
読んでくださりありがとうございます。
次回からは時間が飛んで、アニメ沿いに話を進めていきます。
それでは、次回『黒猫たち』もよろしくお願いいたします。