Sword Art Online ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
今回は、黒猫団編の後半となります。果たして、この世界線での黒猫団はどうなるのか……。
それでは、どうぞご覧ください。
サチとの特訓を始めてからしばらく経ったある日……
「じゃあ、行ってくるよ」
黒猫団のリーダーであるケイタが、ギルドハウスを買いに第1層の『始まりの街』へと出掛けて行った。そして、残されたサツキたちはというと……
「なぁ、ケイタが家を買いに行っている間にさ、少し稼ごうよ」
「賛成!じゃあさ、試しに上の層に行っちゃおうか?」
テツオとダッカーがそんなことを言い出したのだ。すると……
「ま、待って!サツキの意見も訊いた方が……」
サチが真っ先にそう言い、サツキの方に目を向けた。そして、サツキは全員の視線を受けながら少しの間考え……
「……危なかったらすぐに引き返すこと、高レベルの敵とかは僕に任せること……この2つが守れるならいいよ」
『よしっ!』
条件つきで、サチたちが上の層へ行くことを許可した。そうして行くことになったのは第27層の迷宮区で、その中に入った直後……
「そういえばサチ、それって……?」
ササマルがサチの手にある、前使っていたものとは違う新しい槍について訊いてきた。
「うん、サツキの提案でね。武器は変えずに特訓して貰ったの」
「それはまたどういう……?」
「色々試したけど、やっぱり槍の方がサチにはあってると思ってね……まぁ、試せば分かるよ」
『……?』
サツキとサチ以外が首を傾げていると……
『GyAAAAAAAAAA!!』
「サチ、準備しておいて」
「うん、分かった!」
サツキはサチにそう声を掛けると真っ先にモンスターへと突っ込んでいった。そして、モンスターの攻撃を難無くパリィすると……
「スイッチ!」
「っ!」
サチはサツキの合図を聞くと瞬時にソードスキルを発動させ、槍の一突きでモンスターのHPを削り切ったのだ。それを見たサツキ以外の他の面々は……
「す、すげぇよサチ!」
「えっ?」
「そうだよ!」
「いつの間にあんなことできるようになったんだよ!」
その戦い方を絶賛していたのだ。サチに特訓をつけるようになってから、サツキはもともと頼まれていたサチの盾持ち片手剣への転向ではなく、サチが上げていたパラメーターの俊敏性を活かした槍の突きによる一撃離脱の戦法を身につけるというものに方向転換を行った……その過程で攻撃力も同時に上げた結果、上層でも通用するような槍使いが誕生したというわけだ。
「ううん、全部サツキのおかげだよ」
「もともとのサチの筋が良かったからだよ。それと驚くのもいいけど、まだ迷宮区の中だから油断はしないようにね」
「分かってるよ、サツキ先生!」
「先生じゃないんだけど……」
「でもサツキはサチの師匠みたいなもんだろ?」
「それは、そうなるんだろうけど……とにかく、早く先に進むよ」
『はい、先生!』
「だからそれやめてって」
そんなやり取りをしながらも、一行は迷宮区を進んでいき……
「ん?この壁、何かあるんじゃねーの?」
「!これって……隠し部屋じゃない?」
その途中で力偶然にも、隠し部屋を発見することができたのだ。
「おっ、宝箱だ!ラッキー!」
ダッカーはいの一番に駆け出し、目の前にある宝箱を開けようとした……が、
「開けるな!」
「!?」
サツキがすぐさまそれを止めた。
「き、急にどうしたんだ……?」
普段は声を荒げることのないサツキに、周りは困惑した様子でいたが……
「それ、トラップだよ」
『!?』
その言葉を聞き、その場の空気が凍りついた……もしあのまま宝箱を開けていれば、どうなっていたかは想像に容易くないだろう。
「あ、危ねぇ……!」
「助かったよ、サツキ!」
「でもこれ、どうすれば……?」
そう訊かれたサツキは、鍵型のアイテムを取り出した。
「それは……?」
「こういうトラップを解除できるアイテムだよ……本当は中々見つからないやつだけど、命には代えられないからね」
サツキはそのアイテムを宝箱に使うと、何かがが解除されたような音が部屋に響いた。
「これで大丈夫……開けていいよ」
「ほ、ホントか?」
「お、俺が開けるよ――――」
恐る恐るといった感じでダッカーが宝箱を開けた。宝箱を開けると、中には大量のコルやレアアイテムが多数入っており、黒猫団の面々は喜びの声を上げた。それから部屋の中から出ると……
「思わぬ収穫だったな?」
「あぁ!ケイタもきっと驚――――」
「おめでとうございます!」
『!』
サツキたちの前にわざとらしく拍手をしながら、黒いフードを深く被って顔を隠したプレイヤーが現れたのだ。
「よくあの部屋のアイテムを手に入れましたね?」
「だ、誰だ……?」
「さぁ……?」
黒猫団の面々が突然現れたプレイヤーに困惑していると……
「おやおや!そこにいるのは灰の剣帝様じゃありませんか!」
プレイヤーが、サツキの方を見ながらそう言ってきた。それを聞き……
「もしかして……サツキの知り合い?」
「……」
「サツキ……?」
サチが隣にいるサツキに尋ねたが、サツキは何故か黙り込んで冷たい雰囲気を纏っていた……。
「いや、こう呼んだ方がいいでしょうか……
灰の処刑人、と」
「灰の……」
「処刑人……?」
初めて聞く言葉に、サツキ以外は思わずそう呟いて首を傾げていた。一方でサツキは、ただ静かに目の前のプレイヤーを見据えていた……。
「後ろの貴方達が知らないのも無理はありませんね――――まぁ、私を含めたオレンジやレッドのプレイヤーの間では有名ですが」
「なっ!?」
「オレンジやレッドって……!」
「あぁ……こいつはPKだ……!」
「でもあのプレイヤーのカーソルはグリーンだぞ……?」
すると……
「……オレンジやレッドのギルドにグリーンのプレイヤーがいないわけじゃないよ」
「えっ?」
「グリーンのプレイヤーで釣ってから、オレンジやレッドのプレイヤーでキルする……PKの常套手段だよ」
サツキはサチたちにそう教えながら、ゆっくりと鞘から刀を抜く。
「ほう……私のギルドを相手に戦う気ですか?」
グリーンのプレイヤーがそう言うと、その周りから今まで隠れていた十数人のオレンジプレイヤーたちが姿を現した……どうやらこのオレンジギルドは、サツキたちが手に入れたアイテムやコルを殺して奪うつもりのようだ。それに対し、サツキは静かに刀を構え……
「……やれ」
グリーンのプレイヤー――――ギルドリーダーの合図と共に、オレンジプレイヤーたちはサツキや黒猫団に向かって襲いかかる……が、
「っ!」
『なっ……!?』
サツキがオレンジプレイヤーたちの間を一瞬で駆け抜けてから納刀すると、突如としてオレンジプレイヤーたちはその場に倒れ込んでしまったのだ。
「な、何が起きた……!?」
「……」
その一瞬の出来事に驚くギルドリーダーを余所に、サツキはそのまま抜刀もせずに歩みを進めていく。
「な、なめるなぁ!!」
そんなサツキの行動に自身がなめられていると思ったのか、ギルドリーダーは武器である片手剣を抜いてソードスキルを発動させて襲いかかるも……
「ぐあっ……!?」
サツキは最小限の動きでそれを避けると、片手剣を持っている方の手首を掴んで投げ飛ばしてしまったのだ。それからサツキは、刀の切っ先をギルドリーダーに向け……
「全員動くな」
『っ!?』
「どうする?おとなしく黒鉄宮の牢屋に入るか……それともここで、HPを全損させて死ぬか」
普段よりも冷たく低い声色で、黒鉄宮の監獄エリアに繋がった結晶を見せながら選択を迫った。すると……
「くっ……
この人殺しが!オレンジやレッドプレイヤーたちを殺しておいて、正義のヒーロー気取りか!!」
「えっ……?」
その予想だにしていなかった言葉を聞き、サチたちは思わず戸惑いからか固まってしまっていた……。
「お前がそれを言うんだ……言っておくけど僕は、お前たちのような存在をどうにかできるなら、別に人殺しと呼ばれても構わない」
「っ……この狂人が……!」
その後、オレンジギルドのプレイヤーは全員、黒鉄宮の牢屋の中へと大人しく入っていき、また1つプレイヤーたちを脅かす存在は表舞台から消えていった……それからサツキたちは、ここに長居するわけにもいかないということで、圏内に向けて歩いていたが……
「……」
『……』
その間、サツキとサチたちの間には沈黙が流れていた。そしてそのまま圏内に着き……
「ね、ねぇ、サツ――――」
「ごめん」
「えっ?」
「やっぱり、僕はみんなとは違ったみたい」
サツキはサチたちに顔を向けることなく、そう口にしたのだ。
「な、何言ってるんだよ……?」
「違うってどういう……」
「改めて分かったんだ。僕はこの世界でも人を殺せてしまう………だから、僕は誰かと一緒にいるべきじゃない」
「!そんなことは――――」
サチや他の3人は嫌な予感がしたのか、サツキのことを止めようとした……が、
「今までありがとう……じゃあね」
「待って!待ってよサツキ!!」
「転移――――」
サツキは転移結晶で、どこかの層へと去っていくのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回で黒猫団編は完結となり、次回はサツキのその後について書いていきます。
それでは、次回の話もよろしくお願いいたします。