ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 今回は、『森の秘薬』の話をやっていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第3話 裏切り

 

 クラインと別れ、始まりの街から出たキリトとサツキは、日が沈む前に次の村に辿り着くためにそこに通じている道を走っていた。その途中で、狼のモンスターが数体現れたものの……

 

 「しっ!」

 

 「ふっ!」

 

 2人はそれを物ともせず、ダメージを受けることなく仕留めていっていた。

 

 (やっぱり速い……!俺が一撃入れる間に、サツキは既に二撃目を入れようとしている……)

 

 そんな中でキリトは、サツキの戦いを見て改めてその剣速に驚いていた。その後も2人は、道中のモンスターを苦戦することなく倒していき、日が沈む前には『ホルンカ村』へと辿り着いた。村に着いた2人は、近くの店で回復薬などのアイテムを買った後、とある民家を訪れていた。

 

 「ここがさっき言ってたクエストが受けられるってところ?」 

 

 「あぁ。ここで受けられるクエストで『アニールブレード』と『アニールシミター』を手に入れる」

 

 2人が今から受けようとしているのは『森の秘薬』というクエストであり、『リトルネペント』という植物型のモンスターからドロップする『胚珠』を特定のNPCに渡すというものだ。その報酬として、片手剣ならアニールブレード、曲刀ならアニールシミターというように、武器カテゴリーごとの強化武器を手に入れることができる。

 

 だが、その胚珠をドロップするのはリトルネペントの花つきの個体だけであり、その出現率は1%以下に設定されているため、アイテムを手に入れるには相当の時間がかかることもある……そんなクエストを無事に受注した2人は、リトルネペントが生息する森へと向かっていた。その道中……

 

 「そうだ……サツキ、1つ注意して欲しいことがあるんだ」

 

 「注意?」 

 

 「あぁ……実つきのリトルネペントが出てきたら、そいつは絶対に攻撃しないでくれ。倒すと実が割れて、そこから他のリトルネペントを呼び寄せる煙を出すんだ」

 

 このリトルネペントというモンスターには葉っぱが付いている通常の個体、胚珠をドロップする花つき……そして、キリトの忠告の中にあった実つきという個体が存在する。通常の個体と花つきは普通に倒しても問題はないのだが、実つきは倒した瞬間に煙を吹き出すことで、周囲のリトルネペントを引き寄せてしまうのだ。

 

 「それはまずいね………了解したよ」

 

 サツキは実つきを倒した場合のことを想像したのか、少しばかり険しい顔をした。

 

 「まぁでも、サツキはあれだけ戦えるんだし、そう心配しなくても大丈夫だと思うぞ」

 

 「だといいけど……」

 

 「じゃ、早いとこ終わらせようぜ」

 

 キリトはサツキの肩に手を置いてそう言うと、そのままサツキと共に森の中へと入っていった。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 2人がクエストを開始して1時間が経過した。元テスターのキリトはもちろんのこと、ビギナーのサツキもその戦闘センスや剣技でリトルネペントを順調に狩っており、2人ともレベルをいくつか上げることはできていたのだ……が、

 

 「……ねぇ、キリト」

 

 「……何だ?」

 

 「……花つきってさ、こんなに出ないものなの……?」

 

 「あー……俺もここまで出ないとは思わなかったよ。多分だけど、ベータの時よりも出現率が低くなっているんだろうな……」

 

 出てくるのは普通のリトルネペントばかりで、本命の花つきは一向に現れなかったのだ。

 

 「まぁ、根気強くやるしかないな」

 

 「だね……」

 

 そう言って、2人が狩りに戻ろうとした……その時、

 

 「っ!?」

 

 「誰だ!」

 

 背後から拍手のような音が響いたため、キリトは咄嗟に音が聞こえた方に剣を構え、サツキも武器を構えながらその方向に声を発した。

 

 「!ご、ごめん……驚かせるつもりはなかったんだ……」

 

 そこにいたのは右手に片手剣、左手に盾を装備しているプレイヤーであり、出てきたのがプレイヤーであったため2人は構えを解いた。

 

 「そっちの人の剣技が凄かったから、どうしても気になって……」

 

 「僕の……?」

 

 「なるほどな……まぁ、気持ちは分かるが」

 

 そのプレイヤーは2人の戦いを見ていたらしく、特にサツキの剣技に目を引かれて声をかけようとしていたようだ。サツキはその言葉に首を傾げていたが、キリトは納得した様子でそのプレイヤーに同意していた。

 

 「ここにいるってことは……君たちも例のクエストを?」

 

 「あぁ、そうだ」

 

 そのプレイヤーは2人が自身と同じクエストを受けていることを知ると、ある提案をしてきた。

 

 「そうだ……良かったら協力しないかい?3人でやった方が効率も上がるだろうし」

 

 この提案は、2人にとっても相手にとってもメリットのあるものだったが……

 

 「……キリト、どうする?」

 

 「?俺が決めていいのか?」

 

 「キリトは僕よりも経験がある……だから、判断を任せたい」

 

 サツキは、自身よりも経験豊富であるキリトに判断を任せた。 

 

 「……俺は協力してもいいと思う。大人数でやった方が効率いいのは事実だからな」

 

 「……分かった。僕もそれでいいよ」

 

 「っていうことだけど……」

 

 「!ありがとう、助かるよ……俺はコペル」

 

 「キリトだ。こっちはサツキ」

 

 「よろしく」

 

 「あぁ、こちらこそ」 

 

 2人はそれぞれコペルと握手を交わし、このクエストの間だけ共闘することになった。

 

 

 

 

   ◇

 

 

 

 

 3人で狩りをすること十数分……盾を装備しているコペルが攻撃を防ぎ、その隙にキリトとサツキがネペントのHPを削り切るという作戦で、2人の時よりも早いペースで狩ることができていた。 

 

 「サツキ、スイッチ!」

 

 「はぁっ!」

 

 今はサツキが、曲刀ソードスキル『カーム』でネペントを水平に斬り、とどめを刺したところだ。

 

 「ふぅ……」

 

 サツキは他にネペントがいないのを確認すると、ゆっくりと息を吐いた。すると……

 

 「キリト……サツキは本当に元ベータテスターじゃないのかい?」

 

 「あぁ、サツキは正真正銘ビギナーだよ。それにサツキほどの実力なら、ベータの時に有名になってたと思うぞ?」

 

 「確かに……」

 

 サツキの戦いを見ていたコペルが、キリトにそう尋ねていた……その直後、

 

 「!2人とも、あれ―――」

 

 「「!」」

 

 サツキが何かを見つけたのか、2人に声を掛けながら指を差した。その方向には、幸運なことに花つきが2体もいたのだ。それを見て、3人は走り出していったのだが…… 

 

 「っ!?待った!」

 

 「どうしたの?」

 

 「あれを見ろ」

 

 「!実つきか……!」

 

 花つきの後ろから、実つきが現れた。この状況で戦えば、実つきを攻撃して他のネペントを多く引き寄せ、3人とも死んでしまう可能性があった。

 

 「……実つきのタゲは俺がとる。その間に2人は花つきを」

 

 「!……任せるぞ」 

 

 「……無理はしないでよ」

 

 「あぁ、分かってる」

 

 どうやらコペルが実つきの気を引き、その間に2人が花つきを各個撃破する作戦のようだ。コペルを先頭に、3人はリトルネペントへと駆け出していく。

 

 「くっ……!?」

 

 接近してきた3人のうちコペルに狙いを定めたリトルネペントたちは、ツタを伸ばして攻撃を仕掛けてきた。その攻撃をコペルは盾で防いでいき、作戦通りに気を引いていく。そして……

 

 「お前の相手は俺だ!」

 

 その声に反応したのか、花つきのうちの1体が狙いを変え、キリトに腐食液を吐き出してきた。

 

 「はぁっ!」

 

 それを難無く回避すると、弱点にホリゾンタルを当ててネペントのHPを削り切った。

 

 「!よし、落ちた……サツキ、そっちはどうだ!」

 

 花つきをキリトが仕留めると、目的のアイテムである胚珠がドロップした。胚珠を確保したキリトはもう1体の花つきと戦っているサツキの方を向いた。

 

 「っ!」

 

 サツキは自身に伸びてくるツタを軽々と避けると……

 

 「ふっ!」

 

 隙を見てソードスキルを発動させ、ネペントの弱点を斬った。そして……

 

 「っ!こっちも今落ちたよ!」

 

 「コペル!こっちはドロップしたぞ!」

 

 キリトはサツキと自身の分の胚珠がドロップしたことを確認し、未だに実つきと戦っているコペルのところに向かおうとした……が、

 

 「ごめん。キリト、サツキ……」

 

 「「っ!?」」

 

 コペルはそう呟くと、ソードスキル『バーチカル』を発動させ、わざとネペントの実を斬ったのだ。実が斬られたことによって煙が吹き出し、周りにいたリトルネペントが次々と2人のところに押し寄せてくる。

 

 「コペル……何で―――」

 

 「キリト、今はこいつらを!」

 

 「!あ、あぁ!」

 

 コペルに裏切られたことにキリトは動揺していたが、サツキの言葉に剣を構え直す……コペルは最初からMPK―――モンスタープレイヤーキルを狙って2人に接触してきており、リトルネペントに2人を殺させることで、残った胚珠を手に入れてクエストをクリアするつもりだったようだ。

 

 「キリト、スイッチ!」

 

 「はああああああ!!」

 

 サツキが目の前のネペントにダメージを与えると、入れ替わるようにキリトがソードスキルを発動させてとどめを刺す。スキルの硬直時間の隙を狙い、ネペントがツタを振るうが……

 

 「ふっ!」

 

 サツキがすぐさま前に出て弱点を斬ることで、キリトを攻撃から守ったのだ。その後も次々と向かってくるネペントを狩り続け……

 

 「しっ!……これで全部?」

 

 「……あぁ、索敵スキルには何も引っ掛かってない」

 

 絶対絶命な状況を乗り切り、ネペントを全て倒すことに成功したのだ。

 

 「……コペルは?」

 

 「戦ってる間に反応がなくなっていた……隠蔽スキルを使って逃げようとしたんだろう」

 

 「……隠蔽スキルって?」

 

 聞き覚えのないスキルに、サツキがそう訊き返す。

 

 「視界からカーソルを消すことで、モンスターからターゲットされなくなるスキルなんだ……でもコペルは、このスキルの弱点を知らなかった」

 

 「弱点……?」

 

 「……隠蔽スキルは、視界以外の感覚を持っているモンスターに対しては効果が薄い」

 

 「!」

 

 先ほど戦ったリトルネペントは、主に臭いで敵を判別するモンスターで、コペルの使った隠蔽スキルは効果がなかった……そのため、コペルは数体のリトルネペントに囲まれてしまい、そのまま死んでしまったのだ……。

 

 「……とりあえずここから離れよう。また襲われるかもしれないし」

 

 サツキはキリトにそう言うと、村に向かって歩き出そうとしたが……

 

 「!ちょっと待ってくれ」 

 

 「?」

 

 「……コペルの取り分の胚珠を、あいつが死んだ場所に供えてやりたいんだ」

 

 キリトはドロップした胚珠のうちの1つを、コペルが死んだ場所に弔いとして供えると言い出したのだ。それはどのような形であれ、この世界で必死に生きようとしていたコペルに対するキリトなりの優しさだった……が、サツキは……

 

 「……いいの?」

 

 「えっ?」

 

 「どんな理由があれ、キリトはコペルに殺されかけた……そんなやつに、アイテムを渡すの?」

 

 「サツキ……」

 

 間接的に人殺しをしようとしたコペルに対し、情をかける必要はないと言った……。

 

 「……確かにコペルのやったことは、この世界においては犯罪行為そのものだ……けど、あいつの生き残りたいって気持ちは、分かるんだ……」

 

 「……」

 

 キリトの言葉を聞いたサツキは……

 

 「………分かったよ」

 

 「!サツキ―――」

 

 「ここで待ってるから、早く行ってきなよ」

 

 「!……ありがとう」

 

 最後には折れ、渋々ながら了承してくれたのだ。キリトは礼を言うと、コペルの使っていた剣と盾が落ちている場所へと歩いていった。そして、1人残されたサツキは……

 

 「……人のこと言えないくせに、何を偉そうに何言ってるんだ……僕は―――」

 

 まるで自嘲するように、何かを呟いていた……。

 

 

 

 

 




 
 次回『少女たち』
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