ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
『森の秘薬』のクエストをクリアし、それぞれアニールブレードとアニールシミターを手に入れたキリトとサツキは、その後2~3週間にわたり圏外のフィールドや迷宮区を駆け回って情報を集めつつ、自身のレベルを順調に上げていた。そんなある日の夜、サツキはこのSAOで知り合った人物が待つ場所に向かっていた。
「来たよ、アルゴさん」
「おっ!待ってたぜ、サーちゃん」
「……それ、やめてって言ったはずだけど……」
「ニャハハ!冗談だよ、サー坊」
アルゴはベータテストの時から『鼠』と呼ばれている凄腕の情報屋であり、デスゲーム化した後もベータの時の経験を活かして攻略本を作成している。サツキはキリトの紹介でアルゴと知り合い、ベータと正式版との情報の差異の確認を手伝ったりしている。
「頼まれたところだけど、特に変更はなかったよ。キリトも一緒に行ったから間違いはないはず」
「……今回はキー坊の言いつけを守ってくれてるみたいで何よりダ」
「あの時のことは反省してるって……」
サツキは最初、キリトの負担を減らすためや自身の経験を積むために、夜に1人でフィールドに出ていた……が、それはキリトにばれてしまい、必ず2人で行くことを約束されたのだ。
「それはそれとして、助かるヨ………なぁ」
「?」
「サー坊ってビギナーだロ?」
「まぁ、そうなるね」
「なのに何で、危険を承知で手伝ってくれるんダ?もちろんサー坊の実力は信用できるし、協力してくれていることもありがたいけど……」
アルゴはサツキがビギナーにもかかわらず、こうして協力してくれていることを疑問に思っていたらしい。それに対し……
「こういうことをやるのに、ビギナーかどうかなんて関係ない。それにこれは、僕がやらなきゃいけないことだった……それだけの話だよ」
サツキは何てことないようにそう返した……。
「?やらなきゃいけないってどういう―――」
アルゴはサツキの言い方が気になったのか、何か訊こうとしていたが……
「いや、深くは訊かないでおいてやル。けど……くれぐれも死ぬなヨ?」
「分かってるよ……じゃあ、お休み」
サツキはアルゴにそう返すと、キリトのいる宿へと戻っていった。
◇
サツキがアルゴに会った翌日、リトルネペントの出る森で2人のプレイヤーが狩りをしていた。
「はぁっ!アスナ、スイッチ!」
「やぁっ!」
紫髪で鎌を持ったプレイヤー―――ミトがリトルネペントに一撃を入れた後、入れ替わるように栗色の髪の細剣を持ったプレイヤー―――アスナが目にも止まらない速さで細剣ソードスキル『リニアー』を発動させ、とどめを刺した。そんなアスナの死角から、ネペントが攻撃を仕掛けてきたが……
「しっ!」
ソードスキルの硬直が解けたミトが、それを一撃で仕留めたのだ。その後も、順調に狩りを続けていた2人だったが……
「!あれって……アスナ、ここは任せてもいい?」
「どうかしたの?」
「珍しいモンスターを見つけてね……そいつはレアアイテムを落とすから、ここで倒しておきたいの」
「……分かった。気を付けてね」
「うん、すぐに戻るから!」
ミトはアスナにこの場を任せると、レアモンスターを追って駆け出して行った。
「そこっ!」
ミトはすぐにモンスターに追い付き、苦戦することもなく仕留めてレアアイテムを手に入れることに成功する。その後、急いでアスナのところへと戻ったのだが……
「っ!?アスナだめ!!」
「えっ―――きゃあ!?」
アスナは最後のリトルネペントを倒そうとしていたが、その背後に運悪く実つきが湧いてしまった……ミトは慌ててアスナを止めようとしたが既に手遅れで、ソードスキルは背後にいた実つきにも当たり、辺りに煙がまき散らされる。
「アスナ!!」
アスナと合流しようとしたミトだが、行く手をリトルネペントたちに阻まれてしまう。ミトは目の前のネペントに鎌を振るい戦ったが、徐々に崖の方へと追い詰められてしまう……そして……
「なっ!?」
「ミト!?」
地面にあったトラップに引っ掛かってしまい、そのまま崖下へと落下してしまった……ミトはアスナと合流しようと森へと戻ろうとしたが……
「!噓……」
丁度そこにリトルネペントの集団がおり、行く手を阻んでいたのだ。
「っ……邪魔だああああ!!」
ミトはネペントの集団へと突っ込んでいき、次々とネペントを倒していったが、徐々にHPは削れていき……
「くっ……!?」
とうとうHPがレッドゾーンに入ってしまい、回復薬も底を突いてしまう……。
「このままじゃ……!」
視界の左上にあるレッドゾーンに入ったアスナのHPゲージを見て、ミトの表情は絶望に染まりそうになっていた………その時、
「しっ!」
「え……?」
突如として、曲刀を携えた1人のプレイヤーが現れ、ミトに襲いかかろうとしていた数体のネペントをまとめて倒してしまったのだ。
◇
「別に無理してついてくることないんだよ?」
「無理はしてないから大丈夫だ。それに、また1人で無茶させるわけにはいかないからな?」
この日、サツキとキリトの2人はリトルネペントの出る森の近くへと来ていた。理由としてはアルゴの依頼の件もあるが、サツキが助けられる人がいるなら助けたいということで、レベルを上げも兼ねて初心者がいそうな場所を見て回っているのだ。すると……
「「っ!?」」
突然、森の方から破裂音が聞こえてきた……その音はデスゲームが始まったその日に聞いた、リトルネペントの実つきを攻撃した時に鳴る音だった。
「キリト!」
「あぁ!」
それを聞いた2人は、音がした方にいるプレイヤーが危険な状況だと判断したのかすぐに駆け出していった。その途中で……
「!この音……」
「音……?何か聞こえるのか?」
微かにだが、サツキの耳に戦闘音が大きく2つ聞こえてきていた。1つは今向かっている森の方から、もう1つは森の崖下の方から聞こえてきていた。
「ごめんキリト!森の方は任せた!」
「!あぁ、分か―――」
サツキはキリトの返事を聞く前に、森の崖下の方に続く坂の方へと走っていった。その先には……
「聞き間違えてなければ―――!当たりだ……!」
紫色の髪をサツキと同じくポニーテールで纏めた鎌使いの女性プレイヤー―――ミトが戦っているのが見えたのだ。ミトはリトルネペントに囲まれてしまっており、何とか応戦しているようだったがよくない状況なのは変わらなかった……サツキは一気に加速し、ミトのところに辿り着くと……
「しっ!」
「えっ……?」
ツタを振るおうとしていた数体のネペントを纏めて斬り、ポリゴンに変えたのだ。
「大丈夫?」
「!あなたは―――」
「ごめん、話なら後にして。あとこれ」
サツキはミトに回復のポーションを渡すと、目の前の敵に向かって駆け出していく。そんなサツキに、ネペントは腐食液を吐き出そうとしてきたが……
「ふっ!」
その前に自身の速さを活かして懐に飛び込むと、弱点を次々に斬っていきネペントを仕留めていった。
「凄い……」
サツキの動きや剣技を見て、ミトは思わずそう呟いていた。その間に全てのネペントを倒したのか、サツキは曲刀を鞘に納めながら回復し終えたであろうミトに近づいていく。
「これで全部かな……」
「あ、ありが―――!いや、こうしてる場合じゃ……!」
「っ!」
ミトは何かを思い出したように、森へ向かって走り出した。サツキもすぐさまミトの後を追い、森の中へと入っていく。そうして辿り着いたのだが……
「アスナ!」
「ミト!」
そこには、ミトの親友であるアスナがキリトと一緒にいる姿があった。どうやらアスナはキリトに助けられたらしく、ミトの姿を見た瞬間に駆け出してそのまま抱きしめたのだ。
「ごめんアスナ!私、あなたを守るって約束したのに……!」
「ううん!いいんだよ……本当に良かった!ミトが無事で……!」
そのまま2人はしばらくの間、泣きながらも互いの無事を喜び合っていた。
「キリト、お疲れ」
「あぁ、サツキもな……にしても流石だな?」
「森の方以外からも戦闘音が聞こえたから、もしかしたらって……」
「……前から思ってたんだけど、サツキってリアルでも耳が良かったりするのか?」
一方で、サツキとキリトも互いに労いの言葉を掛け合っており、そんな会話の中でキリトはサツキの耳がいい理由を訊いていた。
「まぁ、ね……昔から音や気配には敏感だったから……」
どうやらサツキは昔から耳が良く、そのおかげで微かな戦闘音などを聞き分けることができているようだ。それに加えて気配を感じやすいらしいが、その話をしているサツキは少し複雑な表情をしていた……。
「というか、SAOに来てから何か変なんだ……」
「?変ってどういう―――」
キリトは首を傾げながらサツキにその理由を訊いたが……
「あの……」
「「!」」
落ち着いたアスナとミトが声を掛けてきたため、一度話を止めて2人の方に向き直った。
「助けてくれてありがとう。それにミトのことも……」
「私からも、アスナのことを助けてくれてありがとう」
アスナとミトが、自分たちを助けてくれた2人に続けてお礼を言った。
「そうだ……私はミト。この娘が親友のアスナ」
「俺はキリト。こっちが相棒のサツキだ」
それから、双方の自己紹介を済ませると……
「それで……この後、2人はどうするんだ?」
キリトはアスナとミトにそう尋ねたのだ。
「今日はもう戻ろうと思ってるけど……アスナは?」
「……うん、私もそうしたいかな」
その返事を聞いて、キリトとサツキは顔を見合わせると……
「良ければになるけど……僕たちが送って行こうか?人数多い方が、その分安全だろうし……」
サツキから2人にそう提案をしたのだ。
「「えっ?」」
「!ごめん、やっぱり今の無しで……」
2人はそんな提案をされるとは思わず少し驚いていたが、その反応を否定の意志と受け取ったのか、サツキが少し怯えたようにそう返していた。
「!ううん、今のはそういう意味じゃなくってね?」
「アスナの言う通りよ?別に嫌ってわけじゃないから安心して?」
そんなサツキを見て、アスナとミトはすぐさま誤解を解こうとする。
「と、とりあえず2人とも、俺たちの提案を受け入れてくれるってことでいいのか?」
「えぇ、そうさせてもらうわ……それに、人数が多い方がいいっていうのはその通りだしね」
こうしてサツキとキリトは、近くの街までアスナとミトと共に戻ることになった。
◇
ミトとアスナを助けてから数日後……デスゲーム開始から約1ヶ月が経っていた。サツキはこの日も、朝早くから近くのフィールドで軽く素振りや狩りをしていた。
「しっ!………このくらいにしておこう」
サツキは1時間程度狩りをした後、曲刀を鞘に納めると街に向かって歩いていた。そして、道中何事もなく街へと戻り、宿に帰ろうとしたのだが……
「おはよう、サツキ君」
「この間ぶりね」
「アスナにミト……?」
アスナとミトがいたのだ。
「……何でここに?」
「サツキとキリトに話があって……というか、噂通りだったわね」
「噂……?」
ミトの言葉を聞き、サツキは首を傾げた。
「夜中や早朝に迷宮区やフィールドで目撃されてるフードを被った凄腕の曲刀使いのことよ」
「その曲刀使いに危ないところを助けられたプレイヤーも多いらしいって」
「……待ってそれって―――」
「「もちろんサツキ(君)のことよ?」」
「……」
普通に攻略していたつもりのサツキだったが、噂になっていることに思わず黙り込んでしまった……2人はこの噂の曲刀使い=サツキだと考え、ここで待っていたようだ。
「というか、何でわざわざフードを?前は被ってなかったわよね……?」
すると、サツキは複雑そうな表情で……
「……実は前から、僕を女性と勘違いした人たちが言い寄って来てたんだけど……最近はそれが酷くなってきたから………」
「「あぁ……」」
アスナとミトはそれを聞き、同情するような目をサツキに向けた。
「……それよりも、話って場所を移した方がいい?何ならキリトも呼ぶけど?」
「えぇ、そうしてくれると助かるわ」
それを聞いたサツキは、すぐさまキリトにメッセージを飛ばした。それから3人は街にある広場へと足を運び、キリトが来るのを待った。そして、待つこと数分後……
「サツキ、待たせたな」
「いや、それほど待ってないから大丈夫。早速だけど―――」
「あぁ……それで2人とも、話って?」
キリトが来たところで、早速2人の話を聞くことにした。
「えっと……まずは、昨日助けてくれてありがとう」
「あなたたちが助けてくれなかったら、こうして私たちは今ここにいなかった」
「お礼はいいって……でも、助けられて良かったよ」
アスナとミトは律儀に、改めて昨日助けられたことに対する礼を言ったのだ。
「で、それだけってわけじゃないんだろ?」
キリトがそう訊くと……
「うん。こっちが本題なんだけど……
あなたたちと私たちとで、パーティー組まない?」
「「!」」
「4人で組めば、攻略で生き残る確率も上がると思うし……それに誰か知らない人と組むよりは、あなた達は信じられるから」
サツキとキリト、ミトとアスナで4人パーティーを組まないかという誘いだった……理由としては4人の方が攻略の際に危険が減るということや、
「……1つ訊くけど、2人もゲームクリアのために攻略してるってことでいいんだよな?」
「えぇ、もちろんよ」
ミトがそう言うのに合わせ、アスナも同意を示すように頷いた。
「……分かった。俺は構わないよ……サツキは―――サツキ?」
「……」
(パーティー……人数が多いと危険が減りそうなのも、信用できる人と組みたいっていうのも分かる……けど―――いやでも、僕個人の理由で迷惑掛けるわけには……)
キリトが割とすぐに承諾したのに対し、サツキはメリットに納得していたものの、何やら踏ん切りがつかない様子でいた……。
「おーい、サツキ?」
「!?ごめん何でもないパーティーを組むのは僕も賛成だから」
「お、おう……分かった……」
キリトに名前を呼ばれたサツキは、何故か食い気味にそう言ったのだ。
「なら決まりね」
「あぁ、よろしくな」
こうして4人は、攻略のためにパーティーを組むことになった。
次回『攻略会議』