ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~ 作:アキ1113
この話以降は、週に1~2回のペースで投稿していく予定になります。ただ、あくまで目安として考えて頂ければと思います。
それでは、どうぞご覧ください。
「みんな!今日は1人も欠けることなく集まってくれてありがとう!」
ボス戦当日、昨日の攻略会議に参加したプレイヤーは、全員広場に集まっていた。前に立っているディアベルの話を聞いていると……
「……サツキ、昨日も言ったが―――」
「無茶しない、でしょ?分かってるよ」
サツキはキリトに少しだけ呆れたように、小声でそう返した。
「じゃあ行こうか!」
ディアベルの言葉と共に、プレイヤーたちは迷宮区にあるボス部屋に向かっていく。その道中……
「2人とも、やけに落ち着いてるけど………こういうことには、その……慣れてるの?」
アスナがサツキとキリトを見て、そう訊いてきたのだ。
「ボス戦にっていう意味なら慣れてるつもりだ……でも、この世界のは本当に命懸けだからな……」
「そう、よね……サツキ君は?やっぱり、キリト君と同じ?」
続けてアスナは、サツキにもそう訊いたが……
「……キリトとは逆、かな?」
「えっ?」
「逆……?」
アスナは予想していた答えとは違ったのか少し驚いており、ミトも思わず首を傾げていた。
「僕はVRMMO自体初めてだから、キリトと違ってこういうボス戦の経験はもちろんない………でも、昔色々あったから命を懸ける―――とまではいかないけど、こういう状況には慣れてる方だと思ってるよ」
「……そう……」
(サツキ君……あなたに何が……)
そんなやり取りをしているうちに、ここまで犠牲者を出すことなくボス部屋前へと辿り着いた。そして、全員の準備が終わり……
「最後に1つだけ……みんな、勝とうぜ!」
ディアベルがそう言った直後にボス部屋の扉が開かれ、一斉にプレイヤーたちは中になだれ込んで行った。部屋の中は最初薄暗くなっていたが、灯りが手前から奥に向かって灯っていき……
「!あれが……」
奥の玉座に座っていた第1層ボス『イルファング・ザ・コボルトロード』がその姿を現した。
『……グラァアアアアアア!!』
プレイヤーたちの姿を確認したのか、ロードは玉座から立ち上がると雄叫びを上げ、武器である骨斧と。すると、ロードの周りに取り巻きである『ルインコボルト・センチネル』が3体湧いてきたのだ。それと同時にHPバーが4本出現その直後、センチネルたちは部屋に入ってきたプレイヤーたちを排除しようと、それぞれの得物を手に走り出してきていた。
「来たか………攻撃開始!!」
それに対してディアベルも指示を出したことで、第1層ボス攻略戦が幕を開けた。
◇
ボス戦開始から十数分、ロードの攻撃に参加している隊はディアベルの指揮の下、順調にHPを削っていた。そして、センチネルの処理を任されたサツキたちは、キリトとアスナ、サツキとミトのペアに別れて戦っていた。
「スイッチ!」
「はあっ!!」
『ギャ!?』
キリトとアスナはキリトがセンチネルの攻撃を弾くと、アスナが喉元を狙った凄まじい速さのリニアーでとどめを刺していた。
(相変わらず速い……初めて連携した時から思っていたが、剣先が見えない……)
キリトはアスナの剣技を見て、改めて感心した様子でいた。
(それに……)
「やぁっ!スイッチ!」
「しっ!」
『!?』
キリトがサツキたちの方に目を向けると、ミトがセンチネルの攻撃を弾き、完璧なタイミングでサツキが凄まじい速さのカームでHPを削り切っていた。
(ミトもさすがの鎌捌きだな……それにサツキも初めて会った時より剣速が上がっているし、ソードスキルや回避の動きに無駄がない……俺も負けていられないな……!)
「やぁっ!キリト君スイッチ!」
「あぁ!」
その後もセンチネルを対処していると……
「残り1本だ!」
『グラァアアアアアア!!』
HPバーが残り1本となったロードは、今まで使っていた骨斧と盾を投げ捨てたのだ。
「情報通りやな……!」
「よし!みんなボスを囲んでくれ!」
情報通りに武器を持ち替えようとしている様子を見て、ディアベルは周りのプレイヤーたちにロードを囲むように指示を出していた。すると……
「!ねぇ、キリト」
「何だ?」
「……
「え?」
サツキがそう口にしたため、キリトもロードが持ち替えている武器を見て……
「っ!?違う!あれは
「ちっ……!」
「お、おい!?」
「「サツキ(君)!?」」
キリトの反応を見て、武器がベータと違うことを察したサツキは、すぐさまディアベルたちのところへと走り出した……ロードが持ち替えたのは野太刀と呼ばれる刀カテゴリーの武器で、ベータテスト時点では10層から敵が使用してきていたのだ。昨日サツキはアルゴにこうなる可能性を話していたが、それは現実のものとなってしまった……。
「サツ―――くっ!?」
サツキの後を追おうとしたキリトだったが、目の前にいるセンチネルに邪魔されてしまう。
「キリト君、私たちが!」
「っ!頼んだ!」
その横をアスナとミトが駆け抜け、サツキの後を追って行った。
「はぁっ!」
キリトはすぐにセンチネルを倒し、自身も駆け出すと同時に……
「ダメだ!全力で後ろに跳べ!!」
『!?』
ロードの前にいるディアベルたちにそう叫んだ……が、それは既に遅く……
『グラァアアアアアア!!』
『うわああああ!?』
ロードは刀ソードスキル『
『グラァアアアアアア!!』
刀突進ソードスキル『浮舟』による斬り上げで、空中に打ち上げようとしていた。ディアベルは回避しようとしたが、
「しっ!!」
『!?』
割り込んだサツキがソードスキルを発動させながら、ロードの刀に自身の曲刀をタイミングを合わせて滑らせるように当てた。すると……
「ぐっ……ああああああ!!」
ディアベルに当たるはずだった刀をぎりぎりのところで逸らしたのだ。刀はディアベルの左側すれすれを通っていき、そのHPは1ドットも削られることはなかった。
「!君は―――」
「下がれるなら早く下がって。回復したらみんなをお願い。時間は僕が稼ぐから」
「待て!?1人じゃ―――」
サツキはディアベルに下がるように言った後、少しでもダメージを受けたプレイヤーが回復できる時間を稼ぐために、ロードへと1人で飛び出して行った。
『!グルァアアアアアア!!』
ロードはこちらに1人で向かってくるサツキを見ると、刀を振り上げて襲い掛かってきたのだ。
「しっ!はぁっ!!」
サツキは冷静にロードの攻撃を見切ると、それを次々と捌いていった。さらに、少しずつではあるが隙を見て反撃し、ロードのHPを削っていく………が、1人ではさすがに限界がきたのか……
『グラァ!!』
「!まず―――ぐっ!?」
刀ソードスキル『緋扇』による3連撃を最後まで受けきれずに吹き飛ばされ、サツキはダメージを受けてしまう……そして、そのまま地面を転がっていくが……
「っ……!」
その途中で何とか受け身をとり、すぐにロードのいる方を見て武器を構えた。
(何だ、今の感覚……気のせい、なのか……?)
サツキは斬られた辺りを抑えながら、何かに困惑していたものの……
『グラァアアアアアア!!』
「っ!」
次の攻撃を見切るために集中力を高めた……その時、
「うおおおおおお!!」
「!」
他の隊にいたエギルが両手斧ソードスキル『ワール・ワインド』でロードの攻撃を弾き返したのだ。さらに……
「「はあああああ!!」」
アスナとミトも続けてソードスキルを食らわせ……
「「スイッチ!」」
「うおおおおおお!!」
『グラァアアアアアア!?』
キリトも追撃を加え、ロードを吹き飛ばしたのだ。
「遅くなった!」
「サツキ君、早くこれを!」
「また無茶して……あとで覚悟しときなさいよ?」
アスナはサツキに回復ポーションを渡し、ミトはまた無茶をしたサツキに文句を言っていたが、無事だったことが嬉しいのか僅かに安堵していた。
「大丈夫か?」
「えっと……エギルさん?」
「!覚えていてくれたのか?いや、それよりも俺たちが時間を稼ぐ!これ以上、ダメージディーラーにタンクやらせてたまるかよ!」
『あぁ!!』
エギルのパーティーメンバーたちは、声を上げてロードに向かって走り出していく。すると……
「すまないみんな!」
「ディアベルさん!」
回復を終えたディアベルも戻って来ており……
「ボスを取り囲んで攻撃を防いでくれ!隙が出来たところに攻撃する!攻撃する隊はタイミングを見て俺が指示する!行くぞ!」
『了解!!』
ディアベルの指示の下、サツキたち以外の隊はボスを取り囲み、ソードスキルを防ぎながら時間を稼いでくれていた。
「もしもの時は、とどめは君たちに任せたい」
「えっ?」
「君たちなら、ボスの攻撃に対応できる……頼めるか?」
ディアベルは先ほどのサツキたちの戦いを見て、今の攻撃でHP削り切れなかった時のラストアタックを任せてきたのだ。
「……分かった」
その返事を聞いたディアベルは頷き、自身の隊へと走り出して行った。そして、サツキもHPを回復し終わり……
「―――よし、行けるよ」
「分かった……行くぞ!」
4人も攻撃に参加するために、駆け出して行った……その時、
『グラァ!!』
『!?』
ロードが再び旋車を放ってプレイヤーたちを一掃しようと、上へと跳び上がったのだ……が、
「させるかぁあああああああ!!」
『!?』
キリトがソニックリープで跳び上がり、ダメージを与えてロードの攻撃を防いだのだ。それによって、ロードは落下していき……
「サツキ!アスナ!ミト!最後の攻撃一緒に頼む!」
「「「了解!」」」
着地したキリトにそう言われたサツキたちは、ロードにとどめを刺すために駆け出していく。それを見たロードは、一番早く辿り着いたミトに狙いを定めて刀を振るったが……
「せいっ!!」
ミトはそれを回避すると、ロードの脚を狙ってソードスキルを放った。それによってロードは体制を崩した。そこに……
「やぁああああああ!!」
続けてアスナがリニアーを放ち、ロードを後ろへと吹き飛ばしたのだ。さらに……
「「スイッチ!!」」
「「っ!」」
2人がそう言った直後、サツキとキリトがそれぞれ曲刀二連撃ソードスキル『ダブルムーン』と片手剣二連撃ソードスキル『バーチカルアーク』を発動させ、ロードにとどめを刺すために駆け出した。そして……
「しっ!」
「はぁっ!」
2人は一撃目を当てた後、同時に二撃目をロードに届かせた。
「っ……はぁああああああ!!」
「ぐっ……おおおおおおお!!」
その攻撃は、ロードの身体を深く斬り裂いていった。そして、2人が剣を振り切った直後、ロードのHPは0となり……
『グギャアアアアアアア!!?』
その身体をポリゴンへと変えた……。
◇
ボスが消滅した後、辺りは静まり返っていたが……
Congratulations!!
『!……うおおおおおおお!!』
その表示がボス部屋内に浮かび上がった瞬間、プレイヤーたちは歓声を上げた。
「はぁ……」
サツキも一息吐くと、曲刀を振ってから鞘へと納めた。すると、サツキの目の前に獲得した経験値やアイテム、コルが表示されたウィンドウが出てきていた。その中には……
「!これって……」
『Hate Bonus』というものがあったのだ……これはボスのヘイト値を最も稼いでいた者に与えられるもので、サツキはディアベルを助けた後、ロードと対峙し続けていたため、このボーナスを獲得したようだ。獲得したのは新しい装備で、名前は『コート・オブ・アッシュ』とあった。すると……
「サツキ、お疲れさん」
「!そっちもね、キリト」
キリトが拳を出してきたのを見て、サツキもキリトの拳に自身の拳を合わせ、互いの健闘をたたえ合った。そこに……
「2人ともお疲れ様!」
「一時はどうなるかと思ったけど……犠牲が出なくて本当に良かったわ……」
アスナとミトがそう言いながら、安堵した表情を見せていた。
「Congratulations!見事だったぜ」
「!エギルさん」
「あんたらがあの時動いていなきゃ、恐らく犠牲が出てたと思う……本当にありがとな!」
こうして、第1層ボス攻略戦は犠牲者0で完了し―――
「何でだ!!」
『!?』
「何でお前らは、ボスの攻撃を知ってて黙ってたんだ!?」
突然、1人のプレイヤーがサツキたちを見て大声を上げたのだ。
「え……?」
「お前らはボスが使う武器や技の情報を知っていたんだろう!?最初からそれを話していれば、ディアベルさんが危険な目に合うこともなかった!!」
その言葉を皮切りに……
「確かに……何で隠してたんだ……?」
「それにサツキっていう奴……ボスの攻撃知ってたから、あんなに戦えたんじゃないのか?」
「攻略本にも載ってなかったのに……」
周りにも次々と、サツキたちに対する疑惑が伝染していく……。
「ちょっと待てよ!サツキたちはディアベルを命懸けで助けたんだぞ?それに元々、イレギュラーな事態も想定できただろ?」
エギルはそう言い、反論したのだが……
「お、俺知ってる!こいつら元ベータテスターだ!だからボスの武器や技、美味いクエストとかを知ってて隠してたんだ!!」
フードを被って顔を隠したプレイヤーが、サツキとキリトを指差してそう言ったのだ。それによって、サツキたちを糾弾する流れになってしまっていた。そんな中……
(どうする……このままじゃサツキたちが……!)
キリトはこの状況を何とかする方法を考えていた……特に、サツキはビギナーであるにもかかわらず責められている状況で、アスナとミトも一緒のパーティーだったという理由で立場が悪くなる可能性があった。そうして、キリトは考えに考え……
(!ある……けど……)
ある方法を思い付いた……だがそれは、キリト1人が危険な目に合うかもしれないものだった……。
(っ!ここはやるしか―――)
キリトは覚悟を決め、一歩前へと出ようとした……が、
「っ!?」
それをサツキが手で制して止めたのだ。
「ごめん……約束、破るね」
サツキはキリトたちに一言そう言うと、前へと出て行きプレイヤーたちの前に立った。
「は……?」
「え……?」
「サツキ君……?」
キリトとミトが呆然とし、アスナが不安そうにサツキの名前を呼んだ次の瞬間……
「お前らさ……これ以上、僕を失望させないでくれる?」
『!?』
サツキが底冷えのするような声で、そう口にしたのだ。
「ど、どういう意味だよ……?」
「そのままの意味だよ。お前らはベータテストにいた奴らよりもレベリング出来ているようだったし、いくらかマシな方だと思ってた………でもこれじゃ、期待外れもいいところだよ」
「!?ま、待ってく―――」
ディアベルは、サツキが何をしようとしているかを察して止めようとしたが……
「でも、僕はあんたらとは違う!」
「っ!?」
それを遮るようにサツキは言葉を発したのと、プレイヤーたちの注目がサツキに向いていたことで、ディアベルの言葉がプレイヤーたちに届くことはなかった……。
「僕はベータテストの時、誰も辿り着いたことのない層まで到達した……ボスのスキルを知っていたのは、そこで散々そのスキルを使う敵と戦ったからだよ」
「な、何だと……!?」
「それに僕は、情報屋よりも知ってることは多い……だから、さっき言った層までは苦戦することもないだろうね」
『!?』
サツキが言い放った言葉に、プレイヤーたちは驚愕した………が、キリトや一部のプレイヤーは他のプレイヤーとは違う意味で驚愕していた。
「っ……」
(サツキ……お前は……)
キリトが察している通り、サツキはビギナーがベータテスターに向けているものを全て自分に向けさせることで、キリトを始めとしたベータテスターたちを守ろうとしていた………それは正に、キリトがやろうとしていたことと同じだった……。
「な、何だよそれ……!?」
「ベータテスターどころの騒ぎじゃねぇぞ!?」
「もうそんなのチーターだろ!?」
「ベータテスターのチーター……ビーターだ!!」
「このビーターが!!」
「俺たちを騙しやがって!!」
プレイヤーたちがサツキに、次々と憎しみや敵意の籠った言葉を投げかける中……
「……呼び名なんてどうでもいいよ」
サツキは冷たい目でプレイヤーたちを見ると、ドロップしたアイテムの『コート・オブ・アッシュ』をオブジェクト化してから装備した。そして、サツキは第2層に向かおうとし……
「……1つ忠告。ここから先は、本当に死ぬ覚悟がある人だけ来ること。あと―――
そこのフード被ったお前、これ以上くだらないことするなよ?」
「ひっ……!?」
一度足を止め、フードを被って顔を隠したプレイヤーに左手で指差しながらそう言うと、再び2層に向けて歩き出して行った……。
次回『2層へ』