ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 今回は、サツキが去った後の話を書いていきます。

 前回よりも短めにはなりますが、どうぞご覧ください。



第7話 2層へ

 

 サツキが去った後、ボス部屋内は静まり返っていた……。

 

 「サツキ……っ!」

 

 自分がやるはずだったことをビギナーであるサツキがやったことで、キリトは悔しさから現実世界なら血が出るほど拳を握りしめていた。そのことを知らないプレイヤーたちは、完全にサツキのことを汚いビーターであると思っており、その悪口を言いながらも第1層の主街区へと戻って行った………が、

 

 「……俺は行く」

 

 「「!」」

 

 「このままサツキだけに背負わせてたまるかよ……!」

 

 キリトはアスナとミトにそう告げると、サツキを追って行こうとした。すると……

 

 「私たちも行くわ」

 

 「!アスナ、ミト……」

 

 「来るなって言っても、勝手について行くから……それに、あのままにしておけるわけないでしょ?」

 

 アスナとミトも、サツキの後を追うつもりだったようでキリトを見てそう言ったのだ。

 

 「!そうだな……」

 

 そうして、サツキを追って2層へ向かおうとしたが……

 

 「待ってくれ!」

 

 そこにディアベルがやって来て、3人を呼び止めたのだ。ディアベルの後ろには、エギルやキバオウの姿もあった。

 

 「君たちは、サツキさんのところに行くのか?」

 

 「あぁ、そうだが……」

 

 キリトは何か言われると思ったのか、少しばかり身構えたが……

 

 「なら……彼に、伝言を頼みたいんだ」

 

 「「「……?」」」

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 一方、ボス部屋から出て行き、2層へと繋がる螺旋階段を上っていたサツキだったが……

 

 「はぁ……はぁ……はぁ……!!」

 

 何故か呼吸を荒くし、手すりに掴まりながら進んでいた。そんな中、サツキの頭の中には……

 

 

 

 

 

 『ねぇ、あの子……』

 

 『あいつ■■■何だろ?』

 

 『何、あの傷……?』

 

 『怖いよぉ……』 

 

 『気持ち悪いんだよ!この■■■!』

 

 『■■■だ!逃げろー!』

 

 『さっさと消えろよ■■■!!』 

 

 

 

 

 

 昔の記憶だろうか……そんな声が、絶えず響いていたのだ……。

 

 「っ……ここでもか……!」

 

 (違う!あのプレイヤーたちは、あいつらじゃない……!)

 

 それに苦しみながらも、何とか階段を上っていくと……

 

 「!ここが、第2層……」 

 

 その先にあったのは、大小のテーブルマウンテンがいくつも連なっており、その周りには草原が広がっている光景だった。その光景を眺めながら、息を整えていたサツキだったが……

 

 「っ……さっさと行こう……」

 

 他のプレイヤーと会う前に先へと進もうとし―――

 

 「サツキ!」

 

 「!?」

 

 「追いついた……!」

 

 「よ、良かった……」

 

 後を追ってきたキリトたちに呼び止められたのだ。

 

 「……何で、ここに?」

 

 「言ったでしょ?あとで覚えておきなさいって」

 

 「いや、そうじゃなくて……」

 

 サツキが困惑した様子でいると……

 

 「……何で、あんなことをしたの……?」

 

 アスナがビギナーであるサツキが、危険を冒してまであのような役回りをした理由を訊いてきた。

 

 「……あのままじゃ、元ベータテスターに悪意や憎悪が集中して、危険な目に合う可能性が高くなっていた……でも、それを1人だけに向けさせることができれば、最悪の事態は避けられる」

 

 「それは分かるけど………だからって、ベータテスターじゃないサツキがそんなことする必要は―――」

 

 「ボス戦前に言ったでしょ?こういう状況には慣れてるって……だから僕がやらなきゃ―――」

 

 「いや、違うな」

 

 突然、キリトがサツキの言葉を遮った。

 

 「確かに、あの場では生贄が必要だった………でもミトの言う通り、サツキがわざわざ生贄になる必要はどこにもなかった。それにさっき、慣れてるとか言ってたけど……あれ、噓だろ」

 

 「……そんなわけな―――」

 

 「俺のことを止めた時、手が震えていたのにか?」

 

 「……」

 

 キリトの言葉が図星だったのか、サツキは思わず黙り込んだ。

 

 「……気付いてたんだ」

 

 「お前が何で、自分の身を顧みずに無茶をするのかは分からないし、今は訊かないでおく……けど、俺たちはパーティーメンバー―――仲間なんだ。だから……もう少し頼ってくれ」 

 

 「私たち、まだ出会ってからそんなに経ってないけど………サツキ君が死んだりしたら、私たちは悲しいんだよ……?」

 

 「アスナの言う通りよ……だから絶対に、馬鹿な真似はやめてよね?」 

 

 サツキはその言葉を聞き、少し間を空けてから……  

 

 「ははっ……お人好し過ぎるでしょ……」

 

 ほんの少しだけ笑みを浮かべ、呆れたようにそう言った……が、

 

 「「「サツキ(君)には言われたくない!!」」」

 

 逆に3人から突っ込まれてしまっていた。 

 

 「さて……アスナとミトは戻っておいた方がいい。早く戻っておかないと、ビーターたちの仲間だと思われるぞ?」

 

 「!何を言って―――」

 

 「キリト、あなたまさか……」

 

 「あぁ……このままサツキだけに背負わせるわけにはいくかよ」 

 

 キリトはそう言いながら、ラストアタックボーナスで手に入れた『コート・オブ・ミッドナイト』を装備する………キリトは最初から、サツキにつけられた『ビーター』の汚名を共に背負うつもりでいたようだ……。

 

 「……キリトもみんなのところに―――」

 

 「断る」

 

 「っ……キリトなら僕のやったことの意味、分かるでしょ?」

 

 「あぁ……これは元々、俺がやろうとしていたことだからな」

 

 「!だったら―――」

 

 「でもそれは、お前を見捨てる理由にはならない」

 

 「!」

 

 その言葉に、サツキは思わず目を見開いた。

 

 「……絶対に後悔するよ?」

 

 「そんなの覚悟の上だ」

 

 「……」

 

 「……」

 

 サツキはキリトを巻き込みたくなかったが、キリトが譲らないのを悟り……

 

 「……分かった。もう好きにしなよ」

 

 サツキは諦めたようにそう言ったのだ。 

 

 「じゃあ、好きにさせてもらうぜ―――あっ、それとお前に伝言だ」

 

 「伝言……?」

 

 「ディアベルからは『君だけに重荷を背負わせてしまって済まない。困った時は必ず力になるから、いつでも頼って欲しい』……あとエギルは『次のボス戦も一緒に戦おう!』……キバオウは『ディアベルはんやワイらを助けて貰ったことは礼を言う……けど、ジブンのやり方はまだ納得できひん。ワイはワイのやり方でクリアを目指す!』……っていう感じだったよ」

 

 「そう……うん、分かった」

 

 サツキが伝言を聞いた後……

 

 「俺たちはそろそろ行くか」

 

 「……そうだね」

 

 キリトがそう言うのと同時に、2人は次の街へと歩みを進めることにした。すると……

 

 「……2人とも!」

 

 「「!」」

 

 「私たちもすぐに追いつくから!」

 

 「それまでに死ぬんじゃないわよ!」

 

 アスナとミトから、そんな言葉を投げかけられた。

 

 「!……あぁ!分かってるよ!」

 

 「そっちも気を付けて!」

 

 キリトとサツキもそう返し、今度こそ2層の主街区に向かって行った。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 アスナとミトと一旦別れ、サツキとキリトは2層の主街区へ続く道を歩いていた。すると、その道中で……

 

 「そういえば……何で最後、あんなこと言ったんだ?」

 

 「え?」

 

 「あのフードで顔を隠してたプレイヤーに『これ以上くだらないことするなよ?』って言ってただろ?」

 

 キリトはサツキに、ボス部屋から去る前の言葉の意味について訊いてきたのだ。 

 

 「……あのプレイヤー、明らかにベータテスターを糾弾する流れに持っていってたからさ……何か狙いがあると思って………まぁ、ほとんど僕の勘みたいなものだし、杞憂ならそれでいいんだけど……」

 

 サツキはそう言ったのだが……

 

 「……いや、サツキの考えも間違いとは言えない思う」

 

 「え?」

 

 キリトはサツキの言葉を肯定した。

 

 「この先、攻略を邪魔するような存在が出てくることがあるかもしれない。それに……考えたくはないけど、最悪このSAOで―――」

 

 「PKが出てくるかもしれない?」

 

 「!……あぁ」

 

 最悪の場合というのを想像したのか。2人の間で少しの間だけだが沈黙が流れた。

  

 「ま、まぁ楽観視ってわけじゃないけど、これもあくまで可能性の1つ―――」 

 

 「キリト」 

 

 「!ど、どうした……?」

 

 サツキは急に立ち止まり、キリトの名前を呼ぶと……

 

 「怖がらせるわけじゃないんだけどさ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしPKと戦うことになったら、どうする?

 

 「……!」

 

 キリトの目を真っ直ぐ見ながら、そう問いかけたのだ。サツキの表情は真剣そのもので、

 

 「それは……」

 

 (もちろん殺してしまうのはダメだ……でも、もしPK側が止まらなかったら―――)

 

 キリトは答えようとしたが、様々な可能性を考えてしまったのか、思わず言葉を詰まらせてしまう……それを見たサツキは……

 

 「……ごめん、変なこと訊いて」

 

 「えっ?」

 

 「今のは忘れてくれていいから」 

 

 申し訳なさそうに言うと、再び街のある方を向いて歩き始めた。そんな中で……

 

 (そうだよね……普通はこんなの、すぐに答えられるわけがない。それにすぐ答えられたとしても、ほとんどが絶対に殺さない道を選ぶ……キリトの反応は正しい)

 

 サツキは先ほどの質問に対するキリトの反応について考えていた。そして…… 

 

 (……もし、その時になったら僕が―――)

 

 サツキは歩きながら、とある決意をするのだった……。

 

 

 

 

 

 





 次回『遺跡の街』
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