ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 今回から、映画『冥き夕闇のスケルツォ』の話を書いていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第8話 遺跡の街

 

 西暦2022年12月29日、アインクラッド第4層ボス部屋前………そこには、攻略組がボス戦前最後の確認を行っていた。それは、サツキたちも同様で……

 

 「……」

 

 「……アスナ、もしかして緊張してる?」

 

 「!ううん、そういうわけじゃないよ?」

 

 アスナが黙り込んでいるのを心配して、ミトがそう話し掛けてきた。

 

 「それに……もう私もニュービーってわけじゃないんだから」

 

 「そうね……このゲームが始まったばかりの頃よりも、アスナはずっと強くなったわ」

 

 「ありがとう……でも、私よりも……」 

 

 アスナは少し嬉しそうにしながらも、サツキの方に目を向けた。

 

 「……」

 

 そんなサツキは目を閉じており、集中力を高めていた。

 

 「リアルで武術をやっているとは聞いたけど、それで元々の戦闘センスが高いんでしょうね……」

 

 「実力でだけ言えば、今の攻略組の中で1番なのかも……」

 

 元々高かったサツキの実力は、2層で手に入れた体術スキルとリアルで習得した武術を組み合わせた戦い方を編み出し、ここまでの攻略でさらに向上していたのだ………が、

 

 「でも毎回、戦い方が危なっかしいっていうか……」

 

 「ま、まぁ、前よりも無茶する回数は減ってるから……」

 

 回数は減ったとはいえ、無茶することはまだ多いようだ………そんなサツキに……

 

 「サツキ、緊張はしてないか?」

 

 キリトがそう声を掛けてきたのだ。

 

 「大丈夫だよ。これまでボス戦は何度かやってきたし、緊張とかそういうのはないかな………かと言って、油断する気は微塵もないけど」

 

 サツキはそう返しながら、曲刀を鞘へと納めた。

 

 「そうか……今回も頼りにしてるぜ、サツキ」

 

 「!……そっちもね」

 

 そんな話をしていると……

 

 「私たちのことも忘れないでよね?」

 

 「私もみんなのこと、頼りにしてるから」

 

 ミトとアスナも2人のところに来て、そう口にした………その直後のタイミングで……

 

 「全員揃っているな!それじゃあ早速、始めさせてもらう」

 

 レイドのリーダーであるディアベルが全員の前に立ち、最終確認が行われようとしていた。

 

 「初めての人もいるだろうから改めて……俺はディアベル!ギルド『聖竜軍』のギルマスを務めている!」

 

 聖竜軍は第1層のボス戦の後、ディアベルをリーダー、キバオウとリンドを副リーダー、さらには第1層ボス戦に参加していた多数のプレイヤーを中心として作られたギルドだ。ディアベルの挨拶に、聖竜軍に所属しているギルドのメンバーは拍手と歓声を上げた。

 その他に参加しているのは、第1層ボス戦にも参加していたエギル率いるパーティーや初めて参加するパーティーが1つ、そしてサツキたちのパーティーというようになっている………ちなみにサツキのパーティーのリーダーは、何故か満場一致(サツキを除く)でサツキということになっているが、本人はまだ納得はしていないようだ。

 そして、ディアベルの話やボス戦での確認も終わり……

 

 「みんな!今日中に5層に到達するぞ!」

 

 『おぉーー!!』

 

 その一声で、第4層ボス攻略戦が開始された。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 「来るぞ!C隊、前へ!」

 

 『ギャアアアアアア!!』

 

 第4層のボスは半馬半魚の姿をした『ウィスゲー・ザ・ヒッポキャンプ』というボスで、主に水の攻撃を放ってきていた。だが、事前の情報通りだったことやディアベルの指揮により、順調にHPを削っていた。さらに……

 

 「「はぁああああああ!!」」 

 

 タイミングを見極めたアスナとミトが、ボスの足元にソードスキルを当てると……

 

 「はぁっ!」

 

 「しっ!」

 

 すかさずにキリトとサツキが後に続き、ボスの正面からソードスキルを食らわせた。

 

 『ギャアアアアアア!?』

 

 2人の攻撃によりHPバーが残り1本となったボスは、部屋の柱を壊し暴れ回り始める。

 

 「残り1本だ!B隊、突撃準備!」

 

 「了解や!このまま押し切るで!」

 

 『おう!』

 

 ディアベルの指示で攻撃に移ろうとしていた……が、

 

 「なっ!?」

 

 「うわっ!?」 

 

 「きゃ!?」

 

 ボスが放った水流に巻き込まれ、プレイヤーたちは部屋の入口の方へと流されてしまう……そんな中、サツキとキリトは近くの柱に剣を刺すと……

 

 「ミト!」

 

 「アスナ!」

 

 「「!」」

 

 それぞれミトとアスナの手を掴み、自身の方に引き寄せたのだ。

 

 「大丈夫?」

 

 「えぇ、助かったわ」

 

 サツキは反対側にいるキリトとアスナの無事を確認した後…… 

 

 「アルゴさん!」

 

 ここにいるはずのないアルゴの名前を呼んだ。

 

 「ほいきた!」

 

 すると、待ってましたと言わんばかりに、外で待機していたアルゴがボス部屋の扉を開いた。それによって、部屋の中に溜まっていた水が外に放出されていった。そして、水が完全に部屋から出たタイミングで……

 

 「いくぞ!」

 

 キリトの声を合図として、4人は一斉にボスへと駆け出して行った。

 

 『ギャアアアアアア!!』

 

 ボスは水のビームを放ったが、それを4人は難無く避けると……

 

 「「「「はぁあああああっ!!」」」」

 

 ほぼ同時にソードスキルをボスに直撃させ、そのHPを削り切った。そして……

 

 『ギャアアアアアア!?』

 

 ボスは断末魔と共に、その姿をポリゴンへと変えていった……。

 

 『う、うおおおおおおお!!』

 

 その光景を見たプレイヤーたちは歓声を上げ、ボスが討伐されたことを喜んだ。それはサツキたちも例外ではなく……

 

 「お疲れ、みんな」

 

 「そっちもね」

 

 互いにハイタッチを交わすのだった。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 第5層の主街区『カルルイン』……

 

 「それじゃあ、第5層開通を祝って……乾杯!」

 

 「カンパーイ!」

 

 「……乾杯」

 

 サツキたちはそこにある店で、今回のボス討伐の祝勝会を行っていた。

 

 「オネーサン!おかわり!」

 

 そこにはアルゴも参加しており、ジョッキの中身を飲み干すと店員のNPCに追加の飲み物を注文していた。そんなアルゴに……

 

 「アルゴさん」

 

 「ん?」

 

 「ボス戦、手伝ってくれて助かったよ」

 

 サツキは今回のボス戦を手伝ってくれたことに対する礼を言っていた。

 

 「ボス部屋が水没するかもって情報、オイラのガイドブックに載せ忘れたからナ。それくらいのアフターサービスはするサ」

 

 「正直、俺は断られると思ってたけどな」

 

 キリトがそう言うと……

 

 「もちろん、ギャラは別途請求するヨ?」

 

 「!お、お手柔らかに……」

 

 「やっぱりね……」

 

 アルゴは笑顔で今回の働き分のコルを請求し、キリトはいくら請求されるのかと考えたのか若干戦慄し、ミトは呆れながら苦笑いを浮かべていた。

 

 「しっかし、4層はクリアまで1週間……そんなにかからなかったナ?」

 

 「1層の攻略には1ヶ月もかかったもんな」

 

 「この調子なら、年内に6層まで行っちゃうんじゃないカ?」

 

 「でも今年は後2日よ?流石にそんな短期間じゃ行けないわ」

 

 そんな話をしていたのだが……

 

 「……」

 

 「えっと……アスナさん?」

 

 「さっきからどうかしたの?」

 

 乾杯してから黙っているアスナを見て、キリトとサツキはそう声を掛けた。

 

 「……どう考えても同時だった」

 

 「えっ?」

 

 「同時って?」

 

 「ラストアタックボーナスのことよ!」

 

 「あ、あぁ……」

 

 「そういうことね……」

 

 アスナは4人のソードスキルがボスに直撃したタイミングが同時だったにもかかわらず、ラストアタックボーナスをキリトが手に入れたことを不満に思っているようだ……。

 

 「最後のソードスキル、みんな同時だった!」

 

 「は、はい……」 

 

 「なのにどうしてキリト君がボーナスを持っていくの!?」

 

 「えっと……それを俺に言われても……」

 

 キリトは戸惑いながらも……

 

 「多分、だと思うけど……俺のソードスキルの方が一瞬早く当たったんじゃないかなー……って―――」

 

 「そんなわけない!!」

 

 「えぇ……」

 

 アスナに何とかそれらしい理由を説明したが、まったくもって納得した様子ではなさそうだ……その光景を見かねたサツキが……

 

 「アスナ、こればっかりは仕方ないと思うよ?だからその辺にしておいて―――」

 

 「じゃあ!サツキ君は納得できるの!?」

 

 アスナにそう声を掛けたが、逆に不満はないのかと訊かれてしまった……が、 

 

 「僕はボスを犠牲なく倒せれば後は何でも良かったし、ボーナスも『取れればいいな』くらいに考えてたから―――まぁ確かに僕も狙ってはいたよ?でも、必ずしもドロップしたアイテムが自分の戦闘スタイルに合うかどうかは分からないしね。だから、この場の誰がボーナスを取っても、特に不満とかはないよ」

 

 サツキはこの場の全員に向けてそう答えたのだ。そんな答えに……

 

 『……』

 

 サツキ以外の全員は複雑そうな表情をして黙り込んだ。 

 

 「えっ?僕、何か変なこと言った……?」

 

 それを見て、サツキが不安そうに訊くと……

 

 「はぁ……これじゃ私が、我儘言ってる子供みたいじゃない……今回は不本意だけど納得してあげる」

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 アスナは苦笑いしながらも今回の件に納得し、キリトはこれ以上この話題を引きずらないようにするために、アスナに向かって礼を言った。 

 

 「……サツキはもう少し、不満とか言ってもいいと思うわよ?」

 

 「え?」

 

 「何ならオネーサンに相談してもいいゾ?」

 

 「えっと……ありがとう……?」

 

 ミトとアルゴに何故か気を遣われているのに対し、サツキは疑問府を浮かべながらもそう返した。

 

 「でもアルゴの言う通り、どんどん攻略のペースが上がってるわよね」

 

 「攻略組のほとんど―――というか聖竜軍の連中が、サー坊とキー坊―――特にサー坊に対して、競争心むき出しになってるからナ」

 

 「まぁ、今のところいい結果に結び付いてるけどね……」

 

 ミトやアルゴの言う通り、ビーターの汚名を被ったサツキとキリトに対抗するように、聖竜軍のプレイヤーたちが攻略を進めている。そのため、層が上がるごとに攻略のスピードも上がってきているのだ。

 

 「それでも、大晦日のカウントダウンパーティーはキリト君たちも呼ばれてるんでしょ?」

 

 「あぁ、この前ディアベルと会った時に教えて貰ってな………流石に聖竜軍の奴らも、年明けくらいはプレイヤー同士でいがみ合いたくはないんだろうな」

 

 「だったら、普段から少しは仲良くできるんじゃ―――」

 

 「それは無理だと思うよ」

 

 アスナの言葉を他でもないサツキが遮った。

 

 「そもそも最初の印象っていうのは、簡単には変えられない……それに攻略じゃ協力はするけど、僕の方から積極的に仲良くするつもりもないよ。第1層でやったことが無駄になるかもしれないしね」

 

 『……』

 

 サツキは自身と攻略組との線引きを徹底しているようで、その言葉にサツキ以外は思わず黙り込んだ。それを聞いて……

 

 (せめて俺(私)たちは仲良くしよう……)

 

 と、サツキ以外の全員は同じことを思ったのだ。すると……

 

 「あ、それよりもさ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっき言ってたカウントダウンパーティーって、何?

 

 「「「「……え?」」」」

 

 「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 『……え?』

 

 サツキはそのことを知らなかったようで、その場の全員が首を傾げた。

 

 「!も、もしかして……」

 

 「サツキ君にだけ、知らされて……ない?」 

 

 「いやいや、そんなわけ―――」

 

 キリトはその時、第5層が開放される数日前のことを思い出した……。

 

 

 

 

 

 『キリトさん!』

 

 『ディアベル?俺に何か用か?』

 

 その日、街中を歩いていたキリトは偶然ディアベルに出会ったのだ。そこで……

 

 『ちょっと伝えたいことがあってね……大晦日に攻略組のプレイヤー全員でカウントダウンパーティーをやる予定なんだ。だから、直接伝えておこうと思って』

 

 『なるほどな……』

 

 『キリトさん。サツキさんにもこのことを伝えてくれないか?』

 

 『あぁ、もちろんだ』 

 

 『助かるよ。まだキリトさんやサツキさんのことを嫌っている人たちは多くてね………と言っても、前よりは目に見えて減ってはいるけど』

 

 今までの攻略の中で、2人の活躍やサツキの元々の性格もあってか、嫌うプレイヤーは以前よりも減ってはいるようだ……が、それでも嫌うプレイヤーはいるため、事情の知っているディアベルがカウントダウンパーティーのことを直接キリトに伝えに来たようだ。

 

 『……まぁでも、理解してくれている奴らが少しでもいるだけでありがたいよ。サツキはビギナーだから尚更だ』

 

 『そうだな……じゃあさっきの件、任せたよ!』

 

 

 

 

 

 

 「あー……」 

 

 (あれからタイミングが無くて、完全に忘れてた……!)

 

 キリトはその時のことを思い出し、両手で顔を覆いながらやってしまったと言わんばかりに天を仰いだ。 

 

 「キー坊……まさか……?」

 

 それを見たアルゴがジト目でキリトを見て…… 

 

 「!えっと……その……」

 

 「「……キリト(君)?」」

 

 「大変申し訳ありませんでした!!」 

 

 アスナとミトが目の笑っていない笑顔で圧をかけたことで、キリトはその場で土下座をしたのだ。

 

 「いや、全然大丈夫だよ。それにこういうのには慣れてるから」

 

 だが、サツキは本当に気にしてないという様子でそう言い、目の前にある食べ物を口に入れた。サツキがそう言ったことでこの話題は終わり……

 

 「さて……オレっちはそろそろ行くかナ?」

 

 「え?でも最後のデザートが―――」

 

 「この層の情報とかをいち早く集めないといけないからナ。そういうわけだから、じゃあナ!」

 

 アルゴは5層の情報収集をするために、街の中へと去って行こうとし……

 

 「あっ、そうだサー坊」

 

 「?」

 

 「頼まれてたアレだけど、まだ時間がかかりそうダ。何か分かり次第、また連絡するヨ」

 

 「分かった。けど……無茶だけはしないで」

 

 「あぁ、そっちもナ」

 

 『……?』

 

 急に真剣な雰囲気になったサツキとアルゴを見て、他の面々は不思議に思ったのか疑問府を浮かべた。それから少しして……

 

 「お待たせいたしました。デザートのブルーベリータルトです………4名分でよろしかったでしょうか?」

 

 「あぁ、大丈夫だ」

 

 4人の前にデザートのタルトが運ばれてくる。

 

 「美味しそう……!」

 

 「実はこれ、バフ付きの限定メニューなんだぜ?」

 

 「バフ?」

 

 「どんな効果なの?」

 

 サツキとアスナがキリトに訊いたが……

 

 「食べて見れば分かるわよ」

 

 ミトがそう言ったので、2人は早速タルトを口に運んだ。

 

 「!美味しい……!」

 

 アスナがタルトの味に感動していると……

 

 「!このアイコンは……?」

 

 「あっ、ホントだ……これがバフ……?」

 

 サツキが視界に端に表示されたアイコンに気付き、アスナも今まで見たことのないものに疑問府を浮かべた。

 

 「2人とも、床をじっくり見回してみなさい」

 

 「「床……?」」

 

 ミトに促され、2人が床を見ると……

 

 「……あ、何かある」

 

 「ホントだ……誰かの落とし物……?」

 

 そこにはコインのようなものが落ちており、アスナは誰かが落としてしまったものだと思っていた。

 

 「これは遺物だ。この第5層は遺跡の層で、こういう遺物があちこちに落ちてるんだ」

 

 「あと1~2日で下層からプレイヤーが上がってきて、遺物拾い祭りになると思うわよ?」

 

 「へぇ……あっ、ここにもあった」 

 

 サツキも別の遺物を見つけたのか、それを拾い上げた。

 

 「こっちにも……あっ、あそこにも」

 

 アスナが次々と遺物を拾い上げる様子を見て……

 

 「ここで遺物拾いにハマるとヤバいぞ?これが普通のゲームだったら、小マップとかに表示されたり画面内で光ったりするけど、SAOじゃ単に落ちてるだけだからな」

 

 キリトは歯止めが効かなくなる前に声を掛けた。

 

 「え?でもちゃんと光って……あっ!」

 

 「なるほどね……それがバフってことか」

 

 キリトの言っていたバフというのは、落ちている遺物が見つけやすくなるというものだった。

 

 「そういうことだ。落ちてるコインや宝石がぼんやりと光って見える大変お得な―――」 

 

 「宝石!?」

 

 「!あ、あぁ……それも落ちて―――」

 

 「このバフって持続時間どれくらいなの?私も遺物拾い祭りやりたい!」

 

 アスナは『宝石』という単語に反応し、目を輝かせながらそう言ったのだ。

 

 「わ、分かった!分かったから……!」 

 

 そんなアスナに押され、サツキたちはご飯を食べ終わった後で遺物拾いをすることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 





 次回『企み』
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