ソードアート・オンライン ~灰の剣帝の英雄譚~   作:アキ1113

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 今回も引き続き、映画の話をやっていきます。

 それでは、どうぞご覧ください。



第9話 企み

 

 遺物拾いへと繰り出したサツキたちは、第5層の街中を歩いていた。

 

 「なるほど……確かにハマるとヤバいわね……」

 

 アスナは納得したようにそう口にした。

 

 「だろ?ベータの時なんか、遺物拾い専門になったやつもいてさ……敬意を込めて『ヒロワー』なんて呼ばれてたりしたな」

 

 「敬称なの、それ?……でもこれ、私たちだけでこんなに拾っても良かったの?」

 

 「確かに……ちょっと拾い過ぎた……?」

 

 アスナとサツキがそんな心配をしていたが……

 

 「……優しいんだな、2人とも」

 

 「は、はぁ!?別に私は……」

 

 キリトに優しいと言われたアスナは、照れ隠しなのか思わずそう返していた。

 

 「まぁ、気に病む必要はないよ。俺たちが拾ったのは、この層にある遺物全部から見れば微々たるものなんだからさ」

 

 「えっ?」

 

 「そもそも街中での遺物拾いは、ここのトレジャーハントとしてはオマケのようなものだからな」  

 

 「それどういうこと?」

 

 サツキがそう訊くと、ミトとキリトが……

 

 「この下には地下墓地―――ダンジョンが広がっててね……ここで拾える遺物っていうのはたかが知れてるのよ」

 

 「つまり、トレジャーハントはダンジョンの方が本命ってことだ」

 

 真実を明かしたのだ。

 

 「は?……は?……はぁーー!?」

 

 それを聞いたアスナは……

 

 「それを!先に!言いなさいよね!!」

 

 「うおっ!?」

 

 キリトの左わき腹にフックを食らわせようとした……が、街中は圏内のため、障壁に阻まれてしまう。

 

 「け、圏内なのにアスナのフックはなんだか効くな……」

 

 「でも、これがサツキじゃなくて良かったじゃない?」

 

 「あー……確かにそうだな……」

 

 キリトは前に一度、サツキがリアルで武術をやっていることを聞き、興味本位でその技を見せて欲しいと頼んだことがあったのだ。その時に……

 

 

 

 

 

 

 『じゃあ、そこに立ってみて』

 

 『えっ?あ、あぁ……』

 

 サツキはキリトを立たせ、自身は数歩距離を取った。すると……

 

 『よし……何でもいいからさ、ソードスキル撃ってみて』

 

 『『えっ?』』

 

 『スキルを……?』

 

突然、そんなことを言い出したのだ。その言葉に、キリトや見ていたアスナとミトも困惑の声を上げた。

 

 『ここは圏内でしょ?』

 

 『それは、そうだが……』

 

 『心配しなくてもいいよ』

 

 『……後で文句言うなよ?』 

 

 『分かってる』

 

 キリトは渋々ながら背中の剣を抜き、ソードスキルを発動させるための構えを取る。そして……

 

 『はぁあああああ!!』

 

 キリトは片手剣ソードスキル『ソニックリープ』を発動させ、サツキにへと突進していった。キリトの攻撃はその勢いのまま、サツキに当たる直前で障壁によって阻まれるかと思われた……が、

 

 『へっ?』

 

 サツキの前に来た瞬間、キリトの視界は一瞬で上下逆さまになっていた。

 

 『ぐっ……!?』

 

 (な、何が―――っ!?)

 

 サツキは地面に倒れて混乱しているキリトの腹に、素早く拳を打ち込もうとし――― 

 

 『……え?』

 

 当たる寸前でそれは止められていた。

 

 『一応はこんな感じだけど……大丈夫?』

 

 『!あ、あぁ………今、何したんだ?』

 

 差し出されたサツキの手を握りながら、キリトはそう尋ねた。

 

 『ソードスキルが来る方向を見て、その勢いを利用して軽く投げただけだよ……簡単に言えば、合気道の技をこの世界でも使えるように、少し工夫してみただけだよ』

 

 『な、なるほど……』

 

 

 

 

 

 

 「あれを圏外やデュエルで食らってたらやばかったな……」

 

 「流石にそんなことしないよ」

 

 キリトはその時のことを思い出し、苦笑いをしていた。

 

 「じゃ、バフが切れるまでもう少し祭りを続けようか。あそこにさっき言ったダンジョンへの入口があるからさ」

 

 「そこにはもっと沢山落ちてるの?」

 

 「コインだけじゃなくて、マジック効果付きの指輪とかネックレスとかも―――」

 

 「指輪!?ネックレス!?」

 

 「アストラル系がやたら出るけど、拾い放題だぞ」

 

 「ひ、拾い放題……!」

 

 アスナはその言葉に、さらに目を輝かせたが……

 

 「ん?ねぇ、アストラル系って……?」

 

 アストラル系という言葉に引っ掛かったのか、疑問府を浮かべてそう訊いた。

 

 「モンスターの種類のことだよ」

 

 「種類?」

 

 「ここまで戦ってきたモンスターにも、亜人系とか昆虫系とかあっただろ?」

 

 「え、えぇ……」

 

 「つまりアストラル系っていうのは、幽霊の類で―――」

 

 「にぇっ!」

 

 「むぐっ!?」

 

 アストラル系=幽霊と知ったアスナはそれ以上聞きたくなかったのか、キリトの口を塞いだ。

 

 「えっと……今の『にぇっ!』って……?」

 

 「………ロシア語で『ノー』って意味よ」

 

 「……何がノーなんだ?」

 

 そんなやり取りを見ていたサツキは……

 

 (アスナの前では、この類の話題は禁止だね……)

 

 アスナの前では、心霊系の話をしないようにしようと心に誓った。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 ダンジョンへと足を踏み入れた4人は、見栄を張ったアスナを先頭として順調に進んでいた……が、アスナはどう考えても恐る恐るといった様子で進んでおり……

 

 「……アスナ?」

 

 「ひゃ!?な、何?」

 

 「……もし怖いんだったら、僕が先頭に―――」

 

 「だ、大丈夫だよ!ゆ、幽霊なんてこ、怖くないんだからね!」

 

 「……」

 

 その様子を見て、サツキが気を遣って交代しようと提案したが、アスナはサツキが言い切る前に拒否したのだ……そのまま進んでいると、下層にある礼拝堂のような部屋へと辿り着いた。

 

 「わぁ……凄い……!」

 

 「慌て過ぎてこけるなよ?」

 

 「こけないわよ!」

 

 そこにある宝石の山に目を輝かせているアスナに、キリトが冗談めかしたように声を掛ける。

 

 「壁際にはトラップがあるから気を付けろよ?あとここは圏外で、モンスターが出るぞ?」

 

 「うん、分かってる」

 

 「特に『モーンフル・レイス』っていうのが急に現れるから、注意しろよ?」

 

 「っ!」

 

 それを聞いたアスナは不安そうな顔をし……

 

 「えっと……レイスって確か、スコットランドの伝承に出てくる……」

 

 「詳しいな……察しの通り、さっき言ってた幽霊系の―――」

 

 「幽霊…………っ!?」

 

 予想通りの事実にアスナが恐怖を感じていると、突然風が吹いてロウソクの灯りが全て消えてしまった。

 

 「!来たわね……」

 

 「あぁ……」

 

 「「……」」 

 

 それに対し、何かが起きると感じた4人は、それぞれの武器に手を掛けた。

 

 「あ、灯りを……」

 

 アスナは何とか灯りを確保しようとして、動こうとした直後……

 

 「!」

 

 後ろに青白い灯りがともったのだ。誰かが灯りをつけてくれたと思ったアスナは、後ろを向いたが……

 

 「あ、ありがと――――えっ?」

 

 その光は灯りではなく、床の一部が青白く発光しているものだったのだ。

 

 「みんな!気を付けろ!」

 

 すると、光の中から青白い腕が生え、同じ色の髪をした女性―――否、モンスターが徐々に姿を現した。

 

 「だ、ダメダメダメやめてやめてやめて……!」

 

 そのモンスターこそ、先ほどキリトが言っていた『モーンフル・レイス』で、目の前にいたアスナに狙いを定めて襲い掛かろうとしていた……が、

 

 「「アスナ!」」

 

 「い、いや……」

 

 「まずい……!」

 

 幽霊が苦手なアスナは動くことが出来ず、それを見たサツキはすかさず曲刀を抜刀し、アスナのところへと走り出した。

 

 「いやぁあああああ!?」

 

 アスナが叫び声を上げながら後ろに下がると、足元にトラップがあったのか床が回転し始めた。

 

 「きゃっ!?」

 

 「アスナ!?」

 

 そのままアスナは、床の下にある場所へと落ちてしまった……すると……

 

 「っ!」

 

 『!?』

 

 アスナの方に走っていたサツキは、すれ違いざまにレイスに一撃入れると……

 

 「サツキ!?」

 

 そのままアスナを追って、床が閉じる前に自ら下へと落ちていった……。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

 

 アスナを追って、床の下へと落ちたサツキは……

 

 「アスナごめん!」

 

 「えっ?」

 

 一言謝ってから、アスナの腕を掴んで自身のところに引き寄せると……

 

 「くっ……!」 

 

 壁に足を付けて減速し、地面に近づいたタイミングで壁を蹴った。それからアスナを守るようにして近くの壁に背を向けて激突し、落下ダメージを軽減して着地することに成功したのだ。

 

 「サツキ君!?」

 

 「ダメージは………少しだけか」

 

 サツキがすぐさまダメージを確認すると、思ったよりも減っていないことに少しだけ安堵した。

 

 「だ、大丈夫なの……?」

 

 「ダメージはそれほどないから大丈夫。それよりもメッセージ―――は、圏外だからダメか」

 

 2人に何とか無事を伝えようとしたが、圏外ではメッセージ機能が使えないことを思い出した。

 

 「ど、どうするの……?」

 

 「……とにかく、進んでみるしか―――ってあれ?レイピアは?」

 

 「えっ?」

 

 サツキはポーションで減った分の体力を回復すると、アスナの腰にレイピアがないことに気付いた。

 

 「そんな……どこに―――あっ!」

 

 アスナが辺りを見回すと、近くの地面にレイピアが落ちているのを見つけた。どうやら落ちる時に手放していたらしく、アスナはすぐにレイピアを拾いに行こうとしたが……

 

 「!……ネズミ?」

 

 その前に、近くの横穴から黒いフードを被ったネズミ型のモンスター『スライ・シュールマン』が現れたのだ。シュールマンはアスナの方を向くと、何故か笑うように鳴くと……

 

 「ウソ!?待って!」

 

 「そういう感じのやつか……!」

 

 レイピアを持ち去ってしまったのだ。それを見た2人は、すぐさまシュールマンを追いかけていく。

 

 「もう少し……!」

 

 先に駆け出していたアスナがシュールマンを捕まえようと手を伸ばした……が、

 

 「きゃっ!?」

 

 シュールマンにばかり気を取られていたのか、水溜りに足をとられて転んでしまった。サツキはアスナの上を勢いを落とすことなく飛び越えると、ソードスキルのリーパーを発動させ……

 

 「しっ!」

 

 『ギャッ!?』

 

 アスナのレイピアを奪ったシュールマンを仕留めたのだ。サツキはドロップしたアイテムを確認すると、その中の『シバルリック・レイピア』をオブジェクト化した。

 

 「これで合ってるよね?」

 

 「うん!ありがとう!」

 

 レイピアが無事に戻ってきたアスナは、一先ず安心した表情をしていたが……

 

 「……」

 

 サツキはドロップしたアイテムの中にあった『丸めた紙くず』というのをオブジェクト化し、それを広げて見つめていた。

 

 「サツキ君、それは?」

 

 「さっきのやつからドロップしたんだけど……」

 

 「えっと……今日の日付、時間に場所……と『181、203』って、座標?」

 

 アスナが紙を見ると、そこには『29、22:00、B3F、(181、203)』と書かれていたのだ。

 

 「今いる場所は……!近い……」

 

 アスナはマップを開き、自分たちのいる場所を確認すると『181、215』とあり、現在時刻は『21:45』とあった。

 

 「……サツキ君、どうする?」

 

 「……」

 

 (それにしても……こんな圏外で待ち合わせ……?)

 

 サツキは明らかに、書かれている場所で何かがあると思ったようで……

 

 (普通ならこんなところで待ち合わせなんてしない……普通のゲームならまだしも、SAOでリスクのあることをするはずがない。圏外で会う理由があるなら………誰かに聞かれたくない話をする、か……)

 

 「サツキ君……?」

 

 「……行ってみよう」

 

 「そうだね……」

 

 自身の予感を確かめるためにも、紙に書かれた座標の場所へ向かうことにした。その場所には時間を掛けることなく到着し、顔などを見られないようにサツキはフード付きのマントを被り、アスナもフードを被った。

 

 「……もし、付き合っている人たちの待ち合わせだったら、私たち完全に覗き魔だよね……」

 

 「……」

 

 アスナは苦笑いしながらそう言ったが、サツキは完全に黙り込んで周囲を警戒していた。

 

 「……」

 

 (サツキ君、さっきからどうしたんだろう……?)

 

 いつもより厳しい表情をしているサツキを見て、アスナは心配そうな表情をした……それから数分経ち、紙に書かれていた時間の3分前になると……

 

 「……」

 

 ((!来た……))

 

 フードを深く被ったプレイヤーが現れたのだ……さらにその直後、

 

 「……」

 

 もう1人同じ装いをしたプレイヤーが現れ、互いの姿を確認すると共通のハンドサインを交わした。

 

 「どもどもー、今日は早いですねー?もしかして……お待たせしちゃいました?」

 

 「いや、大して待っちゃいねぇけど……ここまで来るのがメンドイや。メンドイと言えば、待ち合わせの手書きメモもメンドイ……あれ苦手なんだよね俺、もうメッセでいいじゃん?」

 

 「ダメダメ!ダメですよ?メッセージ一覧に履歴が残っちゃうじゃないですかー!」

 

 (付き合ってる人たちってわけではなさそうね……)

 

 (やっぱり、普通じゃないな………思った通りだったけど。それに後から来た方って……)

 

 サツキが考えていた通り、普通の待ち合わせというわけではないようだ。そして、2人は近くの壁に寄りかかり……

 

 「じゃ、サクっと本題に入りますか……例の話、どうなりましたか?」

 

 (例の話……?)

 

 「上手くいってるぜ?聖竜軍の一部の連中―――過激派の奴らは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 明後日のカウントダウンパーティーをバックレて、フロアボスを討伐しに行くってよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 次回『狙い』
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