白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───漫画25巻199ページ

四条眞妃
『白銀御行と四宮かぐやの恋愛が上手く行くかどうか
、もうそれだけの話。』



001『時は遡って』

 

 

 

 

───静かな病室。

 

 

貴方の寝息と心電図の音、私の鼓動しか聞こえない病室。

 

ベッドに居る貴方は、もう三日も目を覚まさない。

 

 

 

『・・・どうしてこんな事になったの?』

 

 

以前、親友になった再従姉妹姪の四条眞妃さんに勧められたインド。

最初は思い出したくもないけど、しばらくしたら、また行きたくなる場所とか・・・。

 

 

・・・そんな所って、あるの?

 

 

眞妃さんの双子の弟の帝さんは、

 

『君は行く必要はない!

あの時は、姉はアレだったから行ったんだから、

君には本当に必要ないって!!』

 

と言ってたけど、本当に何があったの?

 

 

インドに旅立つ日、貴方は空港まで見送りに来てくれて、あんなに元気だったじゃない。

 

 

 

『かぐやが居ないなら何もやる気が出ないから、しばらくは自堕落な生活かな。』

 

 

・・・なんて冗談言ってくれてたのに・・・。

 

 

インド撮影旅行中盤、貴方の妹の圭さんから貴方が会社で倒れて意識が戻らないと泣きながらの電話を受けて、全てが真っ白になったわ。

 

取るものも取らず飛行機に乗って・・・

貴方に会うまで、どれだけもどかしかったか!

 

空港には圭と後輩の石上君が迎えに来てくれていて、そのまま病院へ。

病室で眠ってる貴方を見て、私は立っていられなくなって・・・

 

 田沼先生(ヤブ医者)の話では恐らく過労と心労が重なって一時的な昏睡状態だと・・・。

 

 

 

 

───要するに、何も解らないと。流石、ヤブだわ!

 

 

・・・こんな大事な時に、1秒でも離れたくないのに!

 

私はこんなタイミングで襲って来たウェルカムシャワーのせいでトイレに3時間も閉じ込められて・・・。

 

こんな恥ずかしい事はないわ!!

金輪際、あんな国に行かない!!!

 

強行軍の疲れと時差ボケと心労と、物理的に削られた体力低下で椅子に座ってるのがやっとの状態で、貴方の側に付いてる事以外何も出来ない自分の無力さに打ちしがれて・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方が倒れたと聞いて、皆さん面会に来てくれたわ。

 

最初から病室にいた貴方のお義父様は、やつれてるから心労がたたってと思ったら、ユーチューバーを引退したのにストーカーが諦めてくれなくて、つい最近は殆ど下着姿にシースルーの上下で婚姻届を持って現れたと。

圭と二人で引いたけど、そのストーカーから逃げたいから見舞いに来たって・・・。

圭が待合室に連れて行ってくれたわ。

 

 

付き添ってくれた、やっぱりブラコンだったんだと解った義妹の圭。でも、私以上に泣いて『かぐ姉』を何度も言う圭は、シスコンも併発してるのでしょうね。

 

 

会社の事は任せて下さいと力強く言ってくれた、20代とは思えない頭とお腹になってしまった石上君。

 

 

・・・貴方はお父様似だったのね・・・。

 

 

石上君の奥さんになったミコさん。

会う度に丸くなって学生時代の3倍に体の幅は大きくなってる。

石上くんの頭とお腹と相対的に太くなっていくミコさん。

 

何処まで太くなるんだろう・・・。

 

 

相変わらず放浪とニートを繰り返して、時より居候してる藤原さんの裏方を手伝ってる愛。

手伝ってるって聞いて数ヶ月すると、藤原さんのお父さんの政敵が辞職したり引退してるのよね。

うちで培ったスキルは健在なのは嬉しいわ。

藤原さんとの交換条件で暫く来てくれるそうだけど、まだ荷物置いたままなのね。

 

 

藤原さん、お父さんの秘書になって多忙なのにお見舞いに来てくれて。

貴女が真人間顔になって常識的な発言をする度に、人は変われるんだと実感するわ。

テレビ番組で見たお花畑な人達を泣き出すまで追い詰めた舌鋒は、素晴らしかった。

あれからお父様と貴女の支持率はかなり上がったわね。

 

 

眞妃さんも帝くんとパリから駆け付けてくれて、眞妃さんは泣きながら私を抱きしてくれて・・・

 

あんまり力を入れて揺さぶらないで!

抱きしめられると脂汗が止まらない!!

精一杯の力で抑え込んでる悪魔が暴れ出すから、それ以上強く抱きしめないで!!!

 

あれだけ言い合ってたのに、今は似た者同士だと思えるわ。

御行さんと付き合えなかったら私は今の貴方みたいになってたのね・・・

まだ、引きづってるのね。

 

 

帝さんは、相変わらず眞妃さんに頭が上がらないのね。

頭にコブが出来てた事は、見なかった事にするわ。

 

 

貴方の主治医になった田沼翼さんと奥さんの渚さん。

翼さんを監視する為に専門部署を作って監視してるって噂は本当だったのね。

貴方の周りはベテラン師長達だけで固めて若い子は一切近付けない渚さんの手腕には感服する。

 

・・・でも、息子さんがますます翼さんに似てきて怖いと言ってた。

その息子さんが眞妃さんに懐いてる事に、周りの皆さんがいいしれぬ恐怖感を抱くのは何故かしら・・・

 

 

 

・・・私も何故だか怖い。

 

 

結婚の報告の時に一度会えただけのお義母様とも、ゆっくりお話できたわ。

色々『視える』からこそ、『見えなく』なっていたのだと思うと、お義母様の事は他人事に思えなかった。

 

 

まさか、雲鷹兄さんや青龍まで来るとは思わなかった。

雲鷹兄さんは『死なれたら投資が無駄になる。』なんて不吉な事を言って!

 

・・・次兄・青龍は家長・黄光の名代で偵察に来ただけの様ね。

 

 

他のにも色んな方がお見舞いに来てくれて、昼間は個室の病室が賑やかだったは・・・。

 

日が暮れて、二人きりの病室で心電図の音と貴方の寝息だけが聞こえる。

 

 

・・・どうして、どうしてこうなってしまったの?

 

 

ごめんなさい、私は行かなければいけないの。

 

 

 

これから、悪魔と戦ってきます。

 

 

 

 

終わったら、本当に二人きりだから側に居ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───時計の針は21時を指していた。

 

長かった悪魔との戦いもやっと終わったわ。

 

もう誰にも邪魔させない!

 

貴方と二人きりよ、御行さん。

明日の朝日は二人で見ましょう。

こんな日に夜空に月はあんなにも綺麗に瞬いてる。

 

 

 

 

 

─────あなたが好き。

 

 

 

竹取物語のかぐやの話を覚えてる?

 

何百年でも生きて私を迎えに来てくれると言ったじゃない!

 

お願いよ。

 

一生に一度のわがまま、もう一度だけ言うわ。

 

 

 

『目を覚まして、おかえりと言って・・・。』

 

『あなたが居ないと、全てが色褪せて見えて、生きてる心地がしないの・・・』

 

 

眠って目覚めない想い人の顔を覗き込み、唇を重ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・』

 

『・・・・』

 

『・・・・ま?』

 

『かぐや様?』

 

 

私を呼ぶ声と体を揺さぶられる感覚で目が覚めた私は、目に入ってきた光景に既視感を覚える。

 

 

・・・おかしいわね。

 

病室は白が基調だったのに、これじゃ昔の私の寝室みたいじゃない。

見覚えのある幼さの残る顔が私を覗き込む。

 

 

 

『かぐや様、お時間です。』

 

 

あれ?

 

何で愛がメイド服でここにいるの?

私、寝ぼけてる?

室内、と言っても天蓋付きのベッドの天蓋が邪魔して殆ど見えないけど、見覚えのある室内は私の昔の寝室だった。

混乱する頭でも現状確認はしないとと、私を覗き込んでる愛に聞いてみる。

 

 

 

『ねえ、今は何時で、ここはどこ?』

 

 

まだ夢の中かと考えたけど、揺さぶられた感覚と見てる光景は鮮明で夢には思えない。

 

 

 

『どうされました?

起きて頂きませんと、学校に遅れますよ。

二学期のスタートが遅刻では、かぐや様らしくありませんよ。』

 

 

─────二学期?

 

────スタート?

 

───遅刻?

 

 

 

ゆっくりと体を起こし自分の体を見てみる。

見覚えのある手足と胴体。けれど、それはまだ幼さがある今の体よりやや細さや小ささを感じる身体。

 

 

 

『愛、今日は何日?』

 

『・・・本当にどうされたんですか?

今日は9月1日で今は朝の6:03ですよ。

新学期だから早く起こしてと仰ってたじゃないですか?』

 

 

心配そうに私を覗き込む愛を見返しながら私の頭は起きてる現象を理解しようと働いてる。ただ、それよりも確かめたい事がある!

 

 

 

『直ぐ出ます!

食事はいいから、身支度を手伝って!!』

 

 

そこから十分もかけず秀知院高等部時代の制服に着替えると、同じく着替えさせた愛と送迎の車に乗って世田谷に向かう。

聞いてた話が合っていればまだ家にいるはず!

目的地は駐車場の少ない区画だから、表通りに止めさせて車から飛び出す。

後ろから愛が運転手に指示を出してる声が聞こえるけど、今は確かめる事が先。

目的地のアパートの階段を駆け上がりドアをノックする。

 

相手が出てくるまでに息を整えて・・・。

 

 

 

『はい、どちら様っ、!

しっ、四宮!?』

 

 

ドアを開けてくれたのは、一番会いたい人だった。

夏の空気が支配する早朝。

Tシャツにエプロン姿の想い人の姿を、その瞳に映して涙が止まらなくなる。

 

 

 

───もう止まらない、止められない!

 

 

流れる動作で四宮かぐやは白銀御行に泣きながら抱き着き、唇を奪う。

 

 

 

『お兄ィ、だれ・・・』

 

 

様子を覗きに出てきた御行の妹の圭が、二人を見て固まる。

 

階段下からかぐやの後を追い掛けて来た、早坂愛が階段を登りきらずに固まる。

 

 

 

『えええぇぇぇーーーーーぇ!?』

 

 

ほぼ同時に、圭と愛の魂のこもった絶叫が、世田谷の朝に響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────その日、御行は上の空で始業式に出ていた。

 

朝の襲撃の後、理由が解らないが抱き着いて離れず泣き続ける四宮を抱いて訳も解らず混乱する中、駆け付けてくれた四宮付きの執事のハーサカ君が漸く四宮を引き離してくれたが、いつもと冷静な様子と大違いな四宮が気になって、直ぐに秀知院学園の制服に着替えて、親父と妹の圭からの突き刺さる視線や隣近所のひそひそ話に見送られながらハーサカ君に促されて四宮の送迎の車で通学する事になった。

 

ご厚意で圭も乗せ貰えたのは助かるが、車中がいたたまれない空気で重苦しかった。

圭と、ハーサカ君と、運転手さんからの視線の中、それでも泣いてる四宮を慰める事しか出来なかった。

 

 

 

・・・四宮に一体何があったのだろうか?

 

 

流石に学校に着く頃には、四宮も泣くのを止めて幾分落ち着きを取り戻したが、完全に泣き腫らした顔では周りに何かあったとしか思われない状態で、無理をしてるのは明らかだった。

 

・・・こんなに取り乱した四宮は初めてだ。

 

 

 

先に中等部の校舎前で圭が降りる。

 

 

 

圭は降り際、

 

 

 

『帰ったら、きっちり説明して。』

 

 

困惑三割・憤怒七割の声で猛烈な圧を纏った事を言われた。

 

 

「俺は何もしてない!

むしろ、された方だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

・・・本当に四宮に何があったんだろうか?

 

もしかして、家を抜け出して花火を見に行った事で酷い事でもされたのだろうか?

 

まさか、虐待レベルの仕打ちを?

 

・・・そんな事ばかりを考えしまう。

 

 

 

 

 

─────そして、

 

 

 

『四宮の唇、柔らかくて暖かった。』

 

 

唇の感触が!

温もりが!!

 

頭から離れないので、思考が纏まらない。

 

 

 

『うおおぉああぁぁぁぁ!?』

 

 

時より雄叫びか唸り声か、当人にも何か解らないが大声を出さないと収まらない状態に御行はなってしまった。

 

 

 

 

 

 一方、当の四宮かぐや、中身は高校生に戻ってしまった白銀かぐやは、自分がタイムスリップしてしまった事に困惑し、同時に、タイムスリップした時点が高等部ニ年次の夏休み明けであったので、これから起きる事の反芻とあの時は出来なかった事が出来るとの期待、そして何よ、この歳で制服を着ているという事に強烈に羞恥心を刺激されていた。

 

 

───恥ずかしい、恥ずかしすぎる!

 

 

が、泣いてるのは半分演技である。

 

今、かぐやの頭の中を占めてるのは再会できた喜びから夫の本来のファーストキスを、それが起きる以前に本来と同様にディープキスで奪ってしまった事である!

 

それも、何の脈絡もなく早朝に実家まで押しかけて、である。

 

タイムスリップ自体受け入れがたい思考の中、

 

 

 

───もし御行さんが居ない世界だったら?

 

 

 

と考えて理性が機能しなかったのである。

 

泣いて誤魔化して時間を稼ぎ、どう言い訳しようか考えてる真っ最中である。

 

しかし、

 

 

 

『何考えてるんですか、かぐや様!?

今までが嘘みたいなあんな!!

あんな大胆な事を!!!』

 

 

着替える暇が無い為に男装のまま問い詰めてくる愛に、どう説明しよう・・・。

 

 

 

『・・・しょうがないじゃない。

自分でも止めれなかったんだから。』

 

 

正直に話しても信じて貰えるとは考えられず、最悪は病院送りが容易に想像できる。

 

原因が解るまで当面は、高等部二年次の四宮かぐやで過ごすしかない!

 

 

 

『ともかく、顔をこちらに向けてください。

 

少し拭かないとお顔が人に見せる理由にはいかない状態になってます。

 

 

 

・・・でも、やっと出来ましたね、かぐや様。』

 

 

 しかし、白銀御行と時間をずらして登校したとはいえ、かぐやの泣き腫らした目は誤魔化せず、御行の不可解な行動と相まって周りは気がつく!

 

夏休み明けというタイミングもある。

 

 

 

「会長達二人に何かがあった!」と。

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━始業式後の生徒会室。

 

 

 

『ごめんなさい!』

 

 

夏休みの間のホコリの掃除を済ませると藤原と石上は二人のただならない雰囲気に早々に退散して、生徒会室はかぐやと御行の二人だけになり、かぐやから謝罪を切り出した。

 

 

 

『四宮、謝らなくて、いい・・・。

 

何か大変な事があったというのは俺でも判るつもりだ。

 

ただ、その・・・。

 

今朝のあの事は・・・、

 

どう受け止めて良いか解らないんだ。』

 

 

 

(あれ?、予想してた反応と違う。)

 

 

 

『あれは、その・・・

 

何と言ったら良いのかしら。』

 

 

御行の素直な反応に戸惑うかぐや。

 

この頃は、まだ恋人になる前の夏の為に互いに相手が告白してくる様に仕向けていた時期であり、後々あの時は実はこうだったと、後年互いに語り合い甘酸っぱい失敗を共有した時期である。

従って、今の御行の反応は身構えていたかぐやには意外な反応だった。

 

一方、御行はかぐやを目の前にすると今朝のキスがどうしても思い出してしまい、頭が回らなくなってしまうのである。

 

そして、ドアの外には気配を殺した藤原と石上が二人の話に聞き耳を立てていた。

 

 

 

『笑わずに、聞いて頂けますか?』

 

『・・・内容による、だな。』

 

『解りました。

少し長くなりますから、お茶を淹れますね。

それと、入って来てください、藤原さん、石上君。』

 

 

生徒会会長席のデスク前に立っていたかぐやは、左手の壁際に置かれた急須まで歩きながら呼吸と思考を整え、生徒会室のドアに隠れてる2人に声を掛ける。

 

 

 

『・・・バレちゃってましたか?』

 

『貴女とは長い付き合いのつもりですよ、藤原さん。』

 

 

照れ隠しに軽く笑いながら書記の藤原千花と会計の石上優は、入室を促されて生徒会室に入りソファに並んで座る。

 

 

 

『白銀会長も、此方にお願いします。

あまり、大きな声では話したくない話ですので。』

 

 

四人分の湯呑みを用意しながらデスクに座る白銀御行にもソファに移動を促す。

その間に電気ケトルは沸騰し始めていて、かぐやはケトルのスイッチを切る。

沸騰したお湯では茶葉の風味などが台無しになるからである。

流れる様な所作で茶葉を蒸らし、お茶を淹れソファ前の各々の席の前にお茶を用意する。

 

 

 

『まずは、花火大会の事、ありがとうございます。』

 

 

深々と3人に頭を下げるかぐや。

 

 

 

『そんな、四宮先輩改まって。』

 

『そうだぞ、四宮。

あれぐらい・・・、ッ!』

 

 

石上と白銀が答えるが、白銀は途端に祭りの最中の自身の言動を思い返して、急激に恥ずかしさがこみ上げてきた。

 

(そうだった!

俺は、なんて恥ずかしい事をドヤ顔で言いまくっていたんだ。)

 

みるみる紅潮してかぐやが見れなくなる白銀。

ちなみに、ちゃっかり御行の横に座るかぐや。

それが余計に御行を紅潮させる。

 

 

 

『実は、藤原さんとの約束の日に京都の本宅に呼び出されて、行けなくなって・・・。

 

花火大会の日も、本家のお手伝いの人が来ていて外出を止められて行けなくなりまして・・・。

 

抜け出すのに手間取って、それで間に合わなかったのを皆さんに助けて貰って。

 

 

あの日は、私の人生で一番素敵な夜でした!』

 

 

これはかぐやの本心である。

 

窓から小さな打ち上げ花火を遠くに見るしかなかったのが、自分の好きな人や仲間達と空一杯に広がる花火を見る事が出来たのは初めてだったのだから。

 

 

 

『それで、昨日の夜なんですが、あやふやになってるのですが凄く怖い夢だったのを覚えてます。

夢の内容は、よく似てるけど別世界に私だけいるという夢でして。』

 

ここで一口お茶を啜る。

 

ここから追及が厳しくなる内容なので気を引き締める。

白銀達は聞き入ってる。

 

 

 

『それで、どうしても怖くて・・・

あういうのが、居ても立っても居られないというのですね。

それで、朝からみ・・、会長のお家に押し掛けてしまいまして・・・。』

 

『えっ?』

 

『・・・はい?』

 

『・・・』

 

『・・・』

 

 

赤面する二人を見て、藤原と石上が状況を理解するのに五秒ほど必要だった。

ただ、石上は二人はやっぱりそうなんだと飲み込めたが・・・。

 

『な、なんで会長の家に行くんですか!

私の家なら知ってるでしょう、かぐやさん!!

信じられない!?

なんで!?

なんで!!?

なんで!!!?

なんでこれなんですか!

そこは私ですよね!!』

 

 

白銀御行を指差しながら抗議する藤原千花。

予想してたけど、反応に困る反応。

かぐやは今回はそれを計算して態と話してはいるけど。

 

 

 

『・・・藤原書記、あんまりな言い様じゃないか?』

 

 

正直、ショックを受けてる御行。

 

 

 

『御行君は黙ってて!

これは大事な問題です!!』

 

 

追い打ちでショックを受ける御行。

立ち上がって全身で不快感を示す藤原に、困惑する三人。

 

 

 

『・・・うちの運転手に聞いたら、早朝は松濤より三軒茶屋の方が走りやすいそうなので、会長のお家に伺わせて頂いたんです。

他意は無いんですよ、藤原さん。』

 

 

かぐやは運転手に泥を被せる事にした。

 

 

 

『だとしても、納得できません!』

 

 

四宮かぐやの無二の親友を自他共に認める藤原千花としては、収まらないところである。

 

 

 

『藤原先輩、少し落ち着いて。

四宮先輩が謝ってるんですから。』

 

 

見かねて石上が助け舟を出す。

 

 

 

『兎も角、四宮があれだけ取り乱すのは初めて見た。

それだけ怖かったんだろう。

ところで、本当にそれだけか?』

 

『それだけ、と言いますと?』

 

『花火で抜け出した事で、家の方に、その・・・。

・・・折檻されたりしたのではないか?』

 

『それは、大丈夫でした。

何とか誤魔化せましたので。』

 

『なら、いいが・・・。』

 

 

その後、藤原千花が機嫌を直さなかった事、白銀かぐや自体が状況を整理出来てない事もあり、これといって進展なく各々帰途についた。

しかし、かぐやは家には真っ直ぐ帰らず車を近くの家電量販店と携帯ショップに向かわせ、自分用のスマホ・ノートPC・一眼レフデジカメを買って帰った。

 

同行した早坂愛は、特に助言も無しに次々商品を選んでは買っていくかぐやに唖然とする事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───かぐや様が変だ、おかしい!

 

 

今朝のらしくない寝ボケ状態からのあまりに俊敏な身支度。

いつ調べたの!?と言いたかった裏道を駆使した白銀会長の家への最短ルートを、運転手に的確にナビゲートして近くまで行ったら飛び出して行って・・・。

 

あれは相当に調べたとしか思えない!!

 

急いで追い駆けていったけど、あれだけグズグズしてたのが嘘の様な大胆な・・・

そうかと思えば泣き出して、そのクセ会長をガッチリ掴んで離さない。

こっちは慌てて変装したり、運転手に口止めしたり、抱き着いて白銀御行から離れないかぐや様を引き剥がしたり、滅茶苦茶大変だったのに!!!

 

・・・かぐや様、滅茶苦茶に力が強かった。

大事な人が引いてましたよ。

 

帰りは帰りで、全ての予定キャンセルで家電量販店や携帯ショップ回って、あれだけ機械音痴だったはずなのが玄人好みのノートPCや一眼レフデジカメ買うし、頑なに変えなかったのにスマホにするし・・・

おまけに、メモリー増設したいからって専門店に行くし。

こっちは頭がついていけない!!!!

 

朝食をパスした事や慌ただしく支度させて出てきた事の詫びだと言って使用人の人数分のお菓子も買うなんて、今までそんな事した事なかったのに。

渡された子達の困惑は見て取れるぐらいだった。しかも、一人一人に手渡し・・・。

お菓子の評判良かったし・・・。

あのお菓子、何時リサーチしたの!?

私も貰ったけど、本当に美味しかった。

・・・ヘルスメーターが怖い。

あの店のお菓子、私も知らなかった・・・

(因みに、一番迷惑かけたからと愛は他の人の三倍貰って、ホクホク顔になった。)

 

 

 

『本当に、何があったんですか、かぐや様!』

 

『えっ?

いつも通りよ、愛?

ハイ、ポーズ。』

 

 

買ってきた一眼レフデジカメで撮影してくる、かぐや。

思わずポーズをとってしまう早坂愛。

 

 

 

『はい、見て見て。

綺麗に撮れたわよ、愛。』

 

『あ、・・ありがとうございます。

じゃ、なくて、それです、それ!

昨日まで「早坂」だったのに、いきなり下の名前で呼んで。

本当に何があったんですか!?

今朝からあまりに変わり過ぎです。』

 

 

仁王立ちでかぐやに迫る早坂愛。

構えていたデジカメをテーブルに置いて、愛に向き直るかぐや。

 

 

 

『二人だけの時ぐらい名前読んだら、だめ?』

 

 

上目遣いで潤んだ目で愛を見つめる、かぐや。

 

 

 

『だめって事無いですけど、あまりに急で・・・』

 

 

あまりに下手に来るかぐやの出方に、耐性のない愛は戸惑いを隠せず顔を逸らしてしまう。

 

 

 

『なら、決まりね。

改めて、よろしくね愛。』

 

 

戸惑う早坂に抱きつくかぐや。

 

 

 

『あ、そうそう。

愛はこれ好きだったでしょう?

一緒に食べよう。』

 

 

何処にしまってたんだと聞きたくなる、愛の大好物のワッフルとレーズンバターを取り出してきたかぐやに、頭痛がしてきた早坂愛だった。

 

嬉しい変化ではあるんだけど、調子狂うな・・・。

顔を赤くしながらそう思う早坂愛。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───誤魔化せたかな?

 

 

愛に自身に起きた事がバレるのは時間の問題ねと考えてるかぐやだったが、この時期は愛の苦しい心境を理解できなかった後悔もある。

それに、いつ元の時代に戻れるのか、もう戻れず2度目の人生を送らないといけないのか、それすら解らない現状では愛に余計な負担を掛けたくないという本心もあり、誤魔化した。

 

 

 

まあ・・・、今朝のアレは不可抗力という事で。

 

 

 

 

 

───御行さんに二度と会えないかもしれない───

 

 

 

その考えが頭に出てきた瞬間に、直ぐに会いたくてたまらなくなった。

 

 

 

 

 

 それに、少し幼くなった早坂愛が『愛』と呼ぶと戸惑う様な少し恥ずかしがるのがツボだったりするかぐやであった。

 

自身の部屋に居着きかけてグータラしていた愛を見てるだけに、余計に可愛く感じる。

 

白銀かぐやは、オバ・・・淑女が入り始めた年齢であり、年下の子をイジるのが少しづつ楽しくなってきていた。

 

 

 

『そうだ、今夜は愛と一緒に寝たいな。』

 

『えっ!?』

 

『いいでしょう?

だめ?』

 

『・・・本当にどうしちゃったんですか、かぐや様?』

 

『たまにはいいでしょ?』

 

『・・・解りました。』

 

 

やれやれといった感じだが満更でもなく、妹に甘えられた姉の心境で本当は嬉しい早坂愛だった。

 

 

 

 

 

───一方、白銀家では妹と父親から追及を白銀御行は受けていた。

 

 

 

『早朝から押し駆けて来て、玄関先で熱いキスして、その理由が怖い夢見たからって、普通の関係じゃありえないでしょ!?』

 

『・・・それは、俺が言いたい事だよ。』

 

『・・・・・御行。

お前はあの娘の事は、どう思ってるんだ?』

 

 

兄妹の一連のやりとりを黙って見ていた父親が、一歩踏み込む。

 

 

 

『どうって・・・。

嫌いじゃないよ。

・・・好きだ・・・。』

 

 

自分の机に面した壁に最初に張った紙には、

 

「四宮の横に立てる男になる!」

 

と書かれてる意中の相手なのだから、その相手からのキスは告白同然で、花火大会の一件もある為、白銀御行としてはこのままトントン拍子と行きたいが、違和感もある。

 

「四宮かぐやは何か隠してる。」

 

今朝の涙が嘘だったとは思えない。しかし、何かを隠してる。

直感だが、確信めいたものを白銀御行は感じている。

 

 

 

『ともかく、はっきりさせておいた方がいいよ。

今朝の事のかぐやさんの本心は何だったのか。』

 

『・・・解ってるよ。』

 

 

が、しかし、車に同乗させて貰って横で見ていた白銀圭は、あれは嘘泣きだと思っていた。

 

 

 

『かぐやさんがものすごくガッチリお兄の服を掴んでたから!』

 

 

それが理由だった。でも、そんなにお兄の事をかぐやさんは好きなんだと思うと、嬉しい反面で兄を奪われたという気持ちになってしまう。

 

近々、藤原姉妹とかぐやと買い物に行く約束をしてるから、聞けるならその時にかぐやさんに聞いてみようと圭は考えていた。

 

白銀家では、これ以上の話の進展はなくモヤモヤした気持ちのまま、三人は眠りに就いた。

 

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

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