白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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 私がタイムスリップしてから、こちらの時間で1か月が過ぎた・・・。

 

 

 

 今だタイムスリップのキッカケや条件も掴めないまま。

 

 SF小説は読まないから愛に聞いたり、インターネット検索して調べた事や色々思いつく事をやってみたけど、変化は起きない。

 何時タイムスリップが起きてもいい様に、タイムスリップの時の事と、それからのこちらの世界でやった事を思い出せる限り書いた鍵付きの日記を書き続けてる。

 

 

 

・・・書いてて少し恥ずかしかったけど。

 

 

 鍵はペンダント代わりに首から下げてるけど、内容を「この時の私」が読んだら気絶するわね。

 

 

 

・・・そのまま引きこもりなっちゃったらどうしよう・・・。

 

 

 愛は日記が2冊になった事に気が付いたけど、何も言わないでくれてる。

 

 読まれたら説明のしようがないから妄想と言うつもりだけど、心配されてしまうわね・・・。

 

 残念な子と言われるぐらいならまだいいけれど(よくないけど!)、強制入院させられて永遠に世間から隔離されるか、最悪は・・・。

 

 愛も最近は私が接し方を変えたからか、「タメ口」を言ってくれる時が増えてきた。

 言ってから気が付いて謝ってくる時もあるから、まだまだ自然になるまで掛かるかしら。

 丁寧語や謙譲語だと愛らしくないのよね。

 

 

 

 

 

 

 

───私は「この時間」の人間じゃない───

 

 

 

 本来なら「高校2年生の私」が過ごす筈だった時間を奪ってる。

 あの時、愛が言ってくれた「1度だけの高2が終わる」。

 本当にその通りね。

 くだらない意地をお互い張らなければ、2年になってからあんな事やこんな事や色んな事できたのに、

 

 

 

私の、バカーーー!!!!!

 

 

・・・御行さんも、バカ・・・。

 

 

 

 

 

だから、なの、かしら・・・。

 

 

 

強引なキスをしたけど、「この時間の白銀御行」からの告白を受け止める事や彼との時間を過ごす事に罪悪感がある。

 

 「この時の私」は、まだ彼へ感情を整理して受け止めきれてはいない。

 

それなのに、「経験した」私が「初めて」をしてもいいのかしら・・・。

 

 

 

 

──もし、「その時」までに元に戻れなかったら、「わたし」が彼の受け止めないと──

 

 

 

 

 

 

 

 

───「深いキス」なんて数られないぐらい、してるから───

 

 

 

 

 

 

──けど、

 

 

 

 

 

 

『月見するぞ! ヤッホーッ!!』

 

 

 

──今の「彼」を幼いと感じてしまうのは、仕方がない事よね?・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───放課後・生徒会室

 

 

 

 生徒会任期満了まで残り僅かの日、中秋の名月を見るのに絶好のコンディションの今日、生徒会会長・白銀御行のテンションは最高潮に達していた。

 

(でも、いいか・・・。

なかなか、大人になったらこんなにハメを外せないし、私も楽しもう。

「あの時」は途中で恥ずかしくて帰ってしまったから、楽しめなかったし。)

 

 

 

『会長、どうしたんですか?』

 

『ああ、四宮。

今夜は中秋の名月で、星空指数が良かったんでな、「月見」をしようと思ってな。

屋上の使用許可は取ってるから、今夜は少し遅くなると家の方に連絡するんだ。』

 

『まあ、お月見ですか?

準備しないといけませんが、何が必要なんでしょうか?』

 

『定番はすすきとお月見団子、大人なら月見酒かな?

温まれる様に、お汁粉の用意はしてある。

夜はまだまだ暑いとは言っても夜風の吹く屋上は冷えるからな。』

 

『まあ、さすが会長ですね。』

 

『ハハハッ、やめいやめい。』

 

 

会長席デスクでの2人のやり取りを見て少し引いてる藤原千花と石上優の二人は、ひそひそ話で今後の打ち合わせをする事にした。

 

 

(凄いテンションだね、二人とも。)

 

(まあ、もう生徒会も解散ですしね。

僕は参加しますよ。)

 

(私は、星よりお餅の方がいいんだけど。)

 

(なら、藤原先輩。

会長は、四宮先輩に任せて僕達二人でお汁粉作りますか?

ちょっと、あのテンションは苦手なんで。)

 

(良いですよ。

石上君、月明かりに照らされた私に惚れたらダメですよ。)

 

(・・・なに言ってんすか?)

 

 

段取りも決まった事で、四人は屋上に向かう。

 

 

(そういえば、石上君は隠し部屋を何時見つけたのかしら?

少し掃除しないとだけど、秘密基地みたいに改造するのもいいわよね。)

 

 

 そんな事を考えていたかぐやは、藤原千花の声で思考の海から呼び戻される。

 

 

 

『うわあぁ、結構星が見えますね。

綺麗。』

 

『そうだな。

月が見えるのは南東から真上の方角だから、街の明かりも比較的少なくて、悪くないロケーションだ。』

 

『ですけど、風があるから少し冷えますね。

コンロの火が消えたら危ないですから、あっちでお汁粉作りますか、藤原先輩。』

 

『おけまる。』

 

 

アイコンタクトを交わし、示し合わせて風の通りにくい屋上への出入り口の陰に行く藤原と石上。

 

 

「ごゆっくり、四宮先輩。」

 

 

すれ違いざま、小声で四宮かぐやに告げて少し微笑んで去っていく石上優を見送りながら、かぐやは思う。

 

 

(ありがとう。)

 

 

貴方はそういうところを上手く出せたら、私なんかと違って人に好かれるのに、と。

 

 

 

『さて、参りますか!』

 

 

正直、「私」には悪いけど、今しか二人のお月見はチャンスがなかったのよ!

 

来年は離れ離れな上に平日だったから会いに行けなかったし、再来年以降はお互いかどちらかに用事や仕事があって一緒に見れなくて、それが当たり前になってしまって・・・。

 

かぐやは気合を入れて、準備されたシートに胡座をかいてる白銀御行の横にかぐやは座る。

「経験」した月見の時より、御行の近くに・・・。

 

 

 

『うん? 石上達は?』

 

『風があるからと、あっちでお汁粉作ってくれてますよ。』

 

 

かぐやの指差す方を一瞥して、御行は視線を星空に戻す。

 

(あの時、どんな順番だったかしら?)

 

記憶を思い返してると、肩に何かが触れる感触で御行の方を見る。

 

 

 

『冷えるだろう。

俺のでよかったら使ってくれ。』

 

『あぁっ、ありがとうございます。』

 

(そうそう、私が言う前に上着を掛けてくれたのよ。

それで、確か・・・。)

 

『冷えると思って温かいお茶も用意したんだ。』

 

 

そう言うと、御行は水筒からお茶をコップに注ぎ、かぐやに手渡す。

 

 

 

『い、いただきます。』

 

 

茶道の習慣から少し残して飲んで直ぐに御行にコップを返すが、あろう事か御行は返された飲みかけを捨てずにお茶を足して飲んだ。

それを気にする素振りもない。

 

(ええぇっーーー?!

 

それはしなかったでしょう!!

 

それに、また私が口つけたところで飲んでる!!

 

 

 

お、落ち着いて、私。

落ち着くのよ。

ここでつまずいたら、台無しになるから!)

 

 

 

『か、会長、秋の四辺形はどの辺にあるのですか?』

 

『なんだ、四宮は星に興味があるのか?』

 

『はい。とても。』

 

(こう言ったわよね、あの時は。

そうしたら・・・)

 

『なら、もっとこっちに来い。』

 

 

「経験」した通り、御行はかぐやの右肩を抱き、自分に引き寄せる。

 

(後にも先にもこの時だけだったのよね、強引に強く抱き寄せてくれたのは!

でも、ちょっと「あの時」より近いんですけど!!)

 

かぐやが座った位置が御行に近い為に起きたハプニング。

御行が星の説明をしてくれてるが、半トリップ状態のかぐやの耳に入らない。

 

 

 

『わかったか、四宮?』

 

『えっ、あっ、ちょっと見分けが。』

 

 

御行の横顔ばかり見てるから、かぐやは星を見る余裕はない。

 

 

 

『ふむ。

なら、こっちはどうだ?』

 

 

そういうと、抱きしめた体勢からかぐやごと御行は後に体を倒して、仰向けになる。

二人の身長差から、かぐやのおでこの横に御行の口が来る位置関係から夏の三角形の説明が始まる。

 

(そうよ! これよ、これ!!

貴方、いつも気を掛けてくれて優しくしてくれるけど、たまには強引なのも良いのよ!!!)

 

トリップと興奮の混ざった一種危ない状態に入るかぐや。

 

 

 

『どうだ、四宮?』

 

『・・・はい、解りました。』

 

『・・・そういえば、月といえば「かぐや姫」だな?

名前も同じだから、思い入れもあるんじゃないか?』

 

『・・・そうですね。』

 

(ち、近い。でも、ここが肝心よ、私。

頑張って意識を保つのよ!)

 

 

目線だけ真上よりやや東に下がった所に浮かぶ月に向ける。

 

 

 

『月を見上げると、月に連れ戻された女の物語を思い出さずにはいられません。だからこそ、・・・月は嫌い。』

 

 

(さあ! 来て!! 御行さん!!!)

 

拳に力の入る、かぐや。

まるっきり気が付かない御行。

 

 

 

『・・・そうだな。

月に連れ戻される前に「かぐや姫」は、愛した男に「不死の薬」を渡して月に連れ戻される。

渡された男は、「かぐや姫」のいない世界に未練はないと「不死の薬」を燃やしてしまう。

美談めいた話で物語は閉じる。』

 

『だが、』

 

『俺は何時も思うよ。

あれだけ他の求婚者達を拒んだ「かぐや姫」が一人だけ愛した相手に、「不死の薬」を渡した意味を。

あの薬は、「いつか私を迎えに来て」。

そういう意味だったんじゃないかと。』

 

『・・・。』

 

二人で寝転んで抱き寄せられた体勢のままで密着に近い位置関係から、かぐやの心臓が力強く脈を打ち鼓動が御行に伝わってしまう程にかぐやの体を揺らす。

御行も無意識にかぐやを抱く右腕に力が入っていた。

かぐやの視線はみゆきの横顔に吸い付けられて動かす事が出来ない。

鼓動が更に早くなる。

 

 

 

『・・・もし、俺だったら。

かぐやを手放しも諦めもしない。

薬も燃やさず、何十年何百年掛かってもかぐやを奪い返しに月まで行くのに、と。』

 

『・・・。』

 

『俺とかぐやの物語なら、かぐやの言葉の裏を考え抜いてあんな結末なんかには絶対にしないのに、と。』

 

(ごめんなさい、「私」。

もし、今好きと言われたら受け止めてしまうわ。)

 

涙が溢れそうになってるのを自覚したかぐやはやや俯く様に顔を傾ける。刹那、おでこに優しい感触を覚える。

 

 

 

『どうした、しっ!』

 

 

かぐやが姿勢を少し変えた事に御行も反応してかぐやの方に顔を向ける。

幸か不幸か、二人は「あの時」とは違い、密着してる上に身長差があった。

為に、かぐやのおでこに御行の唇が触れた・・・、キスした様な状態になってしまった。

両者、思考停止から身体が硬直して御行の唇がかぐやのおでこに「キス」した状態でオブジェの様に固まってしまった。

 

 

 

───一方、

 

 

 

『火が通ってなかったら不味いですから、味見しましょうよ。』

 

『ええっ?

もう3回目だよ?

これだけ煮たからいいでしょう?』

 

『さっきのは、少し硬かったじゃないですか?

最初のは火が通ってなかったから、丸い形のままだったですし。』

 

石上優は藤原千花がかぐや達に気が向かない様に必死だった。

 

 

(早くしてください、もう限界ですよ、四宮先輩! 会長!!)

 

 

『あんまり煮たらお汁粉が不味くなります。

もう止めて持って行きますよ!

会長!! かぐやさん!!!

お汁粉、出来ましたよ♪』

 

 

藤原千花の声に金縛り状態が解けた二人はかぐやが御行から慌てて離れると、何も無かったかの様に振る舞う。

 

 

 

『お、おぅ。

出来たか、お汁粉?』

 

『あぁ、ああ、いい匂いですね、お汁粉美味しそぅう。』

 

 

直前の出来事で思考が纏まらない両者。

 

 

(しまった。

四宮の顔に、俺の顔をぶつけるとは。

痛くなかったかな?)

 

(み、御行さんからキスなんて!?

こ、これはどういう意味のキスなの!!?)

 

 

 

『どうしたんですか、二人とも。

かぐやさん、顔が赤いような?

大丈夫なんですか、かぐやさん?

会長、かぐやさんに変な事したんじゃないんですか?』

 

『いや、変な事なんて。

四宮が星を知りたいと言うから説明してただけだぞ。

なあ、四宮?』

 

『え、えぇえ、そうですよ。

会長から教えてもらってたんです。』

 

『ふ〜〜〜ん?

本当ですか?』

 

『まあまあ、早く食べないとせっかくのお汁粉が冷めちゃいますよ。』

 

 

見かねて石上優が助け舟を出す。

 

 

 

『・・・まあ、いいですけど。

それより、おだんご、おだんご♪

そ・れ・と、こんなのもありますよ♪♪』

 

 

藤原千花が持ち出したのは、激辛煎餅と塩味の効いたしょっぱい煎餅だった。

鍋を両手で持ってたのに、何処に隠し持ってたんだ?と、三人はツッコミを入れたかった。

 

 

 

『はぁ、温まりますね。』

 

 

よそって貰ったお汁粉を一口食べて感想を言うかぐや。

海が近いせいか風が意外に吹くのだ。

お餅も一口食べると中からチョコレートの味が口いっぱいに・・・。

 

 

───えっ?

 

 

・・・チョコレート?

 

 

お餅なのに、なんで?

 

 

周りの三人を見ると、藤原さんは美味しそうに食べてるけど、御行さんと石上君は固まってる。

 

口の中を処理してから聞いてみる。

 

 

 

『藤ぃ原ぁさん、何か入れたのぅ?

お餅からチョコレートの味がするだけど・・・。』

 

『俺はイチゴ味だったぞぅ、藤原書記ぃ?』

 

『僕ぁは、ミカンです。』

 

『ああ、お餅足りなそうだったから、クリーム大福入れたんですよ。』

 

 

 

『『『えっ?』』』

 

 

 

『食べるつもりで部室に置いてたんですけど、意外と消費期限が早くて助かりました。』

 

『『『・・・フ、藤原「書記!、さん!、先輩!」』』』

 

『・・・ふぇ?』

 

 

 

 

 

意外な発見だったが、案外ずんだ餡とチョコは食べれた。

 

 

 

『これはこれで、新発見だな?』

 

『発見したくなかったですけど、ね。』

 

『何食べてもミカンが強烈に残ってて、味がミカンに邪魔されます・・・。』

 

『結構、美味しいじゃないですか!?』

 

『『『そういう問題じゃない!』』』

 

 

そう言いながら、案外楽しくて笑い合って「四人のお月見」は大事な思い出になった。

 

 

 

 

 

藤原千花の学生時代のハジケぶりを説明する際に必ず引用されるので、藤原千花には数多い黒歴史になったが。

 

 

 




漫画・アニメを確認すると、どう見ても回し飲み(中身入ったまま)してる様にしか見えないので、間接キスよりそっちの方が問題じゃないのかと思うのですが、漫画・アニメ本編中は無視されてるので誇張しました。

茶道の作法に回し飲みのやり方があるのですが、口をつけた所は拭いて次の人に渡し、受け取った人は器を回して口をつけてから拭き、また次の人にとなります。
この感覚でかぐやはコップを御行に返したと受け取ってください。
こじつけです。
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