白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
月見の翌日、四宮かぐやと白銀御行は気まずかった。
御行はテンションの時間切れから冷静になり、自分の発言に悶えていた。
ただ、四宮かぐやは嫌がってはおらず自分の話を最後まで聞いてくれたのだから、夏休み明けのキスといい自分への好意は決定的ではないのか?とは考えるのだが、やはり自分の発言の羞恥心がそれを上回り、かぐやを避けてしまう。
かぐやは、事故と判っていたが御行からのキスで幸せな気分ながら、顔を見ると意識してしまいぎこちなくなり、冷静でいられない。
おでこへのキスは白銀かぐやは「初体験」だったのだ。
従って、藤原千花が持ってきた「パッピーライフ」ゲームに両者は参加してしまった。
そして、石上優が交通事故イベントで退場せず、絶妙なバランスで子供ゾーンを抜け大人ゾーンになってから、藤原千花のイベントが炸裂した。
寝取られ・不倫・隠し子・蒸発等など、下手なドラマなど話にならない濃厚なイベントの連続に当の藤原千花ですら轟沈し、石上優からの嵐の様な非難と指摘が藤原千花に殺到した。
白銀御行と四宮かぐやは早々に結婚できて波に乗るかと思いきや、そこから運の尽きの様な、子沢山の養育費高額化・事業の倒産・多額の借金・交通事故・難治の病と立て続けに不幸に見舞われ、
『四宮!
俺なんか捨てて幸せになってくれ!!』
と、御行からゲームと思えない発言まで飛び出すほど追い詰められ、かぐやが必死に励まして、なんとかゴールできた。
千花と優からはニ人に生暖かい視線を向けられたが、「原因を作ったのは貴女でしょ!」とかぐやは千花に抗議したかった。
(この人、落ち込むと底が解らないぐらいの落ち込み方するのよね・・・。)
あまりに酷い時に、一度だけ頭を抱き抱える様にあやして、気の済むまで泣かせたり愚痴らせたりしたのだが、本当に子供をあやしてる様な嫌な感覚になったので、それ以来「禁じ手」にしている。
かぐやは、自分の事は棚に上げて大概な事をいっている。
「似た者夫婦」でしかないのだが・・・。
翌日は業務の最終確認に終止し、
───翌々日
秀知院学園高等部、第67期生徒会任期満了の日。
かぐやが「経験」した通り、生徒会室の片付けと掃除を済ませて、秘密部屋の存在に石上優と四宮かぐや以外が驚いた後、生徒会室を退出して少し歩くと藤原千花が泣き出し、かぐやも感極まってしまい泣き合い、第67期生徒会は解散となった。
ファミレスで打ち上げのつもりだったが、廊下で偶然会った高等部校長に、四人は予想外の事を告げられた。
「他薦多数により、四宮かぐやさんが生徒会長選挙に立候補する事になるかもしれない」と。
───放課後・ファミレス
四宮かぐやは突然の話に困惑を通り越して呆れるしかなかった。
死文化した条項、
「一、他薦が百人を超えた者は生徒会長選挙に立候補するものとする。
辞退は認められない。」
校長の説明では、第10期までは他薦により生徒会長が選挙前に選出される事が慣例であり、多くの仲間に推薦をされる人望も生徒会長たる者には大事であるとされていたが、第11期からは支持が割れる様になり、今の様な生徒会長選挙になったと。
『しかし、な?
それだけの支持が得られるのありがたいが、望んでもいないのに生徒会長選挙に立候補させられるとは。
結局は押し付けられてる様なものだし、卑怯だと言いたくなる。
自分達でやればいいだろうに。
すまん、四宮。
そんな条文を改正しなかったのは、俺のミスだ。』
『会長、ミスというのであれば副会長であった私も同様です。
お気になさらないでください。』
『しかしな・・・。』
苦々しげに言う前会長・白銀御行は、自身の選挙戦は苦戦を強いられたのでそれだけの他薦(=得票)が確定してる状況は羨ましく思える。
しかし・・・。
『かぐやさんにそれだけの支持が集まってるっ話は、私達の周りには聞こえて来なかったんですけどね。
石上君は何か知らない?』
『クラスメイトの名前と顔が一致しない僕に聞きます?
ただ、僕のクラスではそんな動きは無かったはずですけど。』
『そうなると、首魁は3年生か?』
『まあ、この事は明日以降考えます。
今は慰労会を楽しみましょう。』
『そう、だな。』
かぐやとしては、「経験」した生徒会長選挙は同じ2年生の「本郷勇人」を出馬辞退させ、残った「白銀御行」と「伊井野ミコ」が一騎討ちとなり、接戦の末、白銀御行が勝利して第68期生徒会長になった。
まさか、自分が出馬する事になるなどと思いもしなかった・・・。
この時、かぐや以外の3人にはかぐやが思い詰めてる様に見えた。
藤原千花ですら軽口を叩くのを憚られる様に。
実際は、犯人の目星をつけて責め苦を味あわせてあげましょうと考えてただけなのだが。
かぐやとしても、自分が生徒会長では「来年」の騒動の時に、「副」生徒会長の立場では御行に不利に働かないかと懸念がある。
そうならずに、事が丸く収まる事が一番望ましいが、なった時に不利に働く要素は排除したい。
その為に、京都本宅に毎週末通ったり、父を始め色んな人と人脈の再構築をしているのに、と。
その後、冷水を掛けられた慰労会は盛り上がりに欠ける中、お開きとなり藤原千花と石上優は電車で家路についた。
かぐやは泉岳寺別邸まで白銀御行に送ってもらい、門をくぐろうとした時───
『四宮!』
『はい・・・?』
振り返るかぐやに御行がある紙を差し出す。
その紙は白銀御行の記入済みの生徒会長選挙の出馬届だった。
『こ、これは?』
用紙を見ながら御行に真意を聞くかぐや。
理由は聞かずとも解るが言って欲しい。
『自惚れだが、俺が出馬すれば多少は票が割れるだろう。
あとはどうなるか判らんが、少なくともやりたくない四宮に生徒会長をやらせなくていい様にはなる。』
『・・・会長。』
『まだ早いぞ、四宮。
だから、そんな顔するな。
お前に、そんな顔は似合わない。』
込み上げてくる感情と涙を見せない為に、かぐやは頭を下げて。
『ありがとうございます。』
そういうのが精一杯だった。
言外に
「そうやって、困った時に助けてくれる貴方が好き。」
と。
かぐやに見送られながら、白銀御行は手にした自身の出馬届を見つめて覚悟を決める。
一部始終を見ていた早坂愛は、そういうのは学校の中でやってくれないかなと思う今日このごろ・・・。
面倒な仕事が増えるから、見なかった事にしようと黙認した。
翌日、届け出を済ませた白銀御行は正式に生徒会長選挙立候補を表明する。
高等部全体に伝わる様に。
目的は、「やりたくない四宮かぐやを生徒会長にさせない」為に、かぐやを守る選挙戦に突入する。