白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
他薦多数により生徒会長選挙に強制出馬の可能性があると告げられた四宮かぐやは、翌日から調査を始めた。
そして、知る事になる。
今回の面倒な裏面を。
端的に言えば、
「四宮家長女」で「純院」の四宮かぐやが「生徒会長に相応しい」という考えが原因である。
「混院」の白銀御行が生徒会長だった事が気に入らない「層」が主犯である。しかし、ハッキリ「層」と言い切れるほど纏まってはいない。
二学期中間テストで、かぐやと御行が同位一位だった事も影響している。
教師に見せてもらったかぐやの(勝手な)推薦人リストから同学年の20人程に直接聞いてみると、
『四宮さんな相応しいと思って。』
『前副会長だから。』
『混院の次は純院でしょ。』
と、拍子抜けする答えが返ってきた。
純院なら誰でもいい、という安直な考えが透けて見える様で呆れた。
『生徒会は激務だから、会長は経験者がなった方が良い。』
まともな意見を言ったのは一人しかいなかった。
『一年生・三年生の方も似たり寄ったりです。』
『ため息しか出ないわね。
これがわが学友たちかと思うと情けなくなります。』
『そんなもの、というと語弊がありますが、群衆心理みたいなものです。』
校舎の端の人目につかない窓辺で窓越しに早坂愛からの調査報告を受けている四宮かぐやは、段々真剣に対応する事が馬鹿馬鹿しくなってきた。
『ただ、一部で看過しない方がいい動きもあります。』
『と、いうと?』
『この間、かぐや様が勉強を見てあげた一年生三人は、かぐや様を本気で生徒会長に相応しいと考えてる様です。
同級生達への働きかけを強めてます。
今のところ、一年生の立候補者「伊井野ミコ」の選挙活動と相殺されてますが、かぐや様と白銀御行と伊井野ミコの三人に割れそうです。』
『・・・私、大分冷たくあしらった筈だけど、あの勉強会?』
『二日目までに脱落した者の一部は半分恨み節の様な事を言ってますが、自分から脱落したので逆恨みと周りも相手せず、自分自身も自覚のある者が大半で沈黙してます。
相対的にあの三人と伊井野ミコはかぐや様が最後まで見てあげた事で、かぐや様の好感度がかなり上がってます。
伊井野ミコは、かぐや様に応援演説を頼みたいと周囲に漏らしたとか。』
『迷惑な話だわ。
真剣なら余計にね。』
『マスメディア部の最新調査結果は、かぐや様3・白銀前会長2.5・伊井野ミコ1・特になし3.5、の様です。』
『私の強制立候補は100人に達しなければいいのね?』
『そうです。
100人にならなければ問題ありません。』
『解ったわ。
地道に一人づつ説得して回ります。
こういうのを「ドブ板選挙」というのかしら?』
『目的は真逆ですけどね。』
二人とも苦笑せざるを得ない状況である。
─────
『四宮先輩!』
早坂愛と別れて廊下を歩いてると背後から呼び止められ振り返ると、風紀委員の伊井野ミコと大仏こばちの二人がいた。
『確か、伊井野ミコ、さんだったわよね?』
『四宮先輩、勉強会ではお世話になりました。』
『初めまして。
風紀委員の大仏こばちと言います。』
『初めまして、大仏さん。
それで、伊井野さんはなにか?』
『いえ、お見掛けしたのでご挨拶をと思いました。』
妙な間が三人の空間に降りかかってくる。
この感覚、選挙の時だけ連絡してくる人の奥歯に何か引っ掛かった様な歯切れの悪い、あの感覚に似てると思うかぐや。
面倒な事になりそうなのでその場をかぐやが離れようとした刹那。
『こ、これが私の主張なんですが、四宮先輩にも見てもらってもいいですか!?』
伊井野ミコから紙を手渡される。
書かれていたのは、立候補動機と校則の改定案。
髪型の規制案は、女子は三つ編み・男子は丸坊主だった。
そういえばそんな事を言ってたわね、この子はと思ったがコレは使えるかなと考え始めたかぐやの視界に伊井野ミコの髪が映った。
不自然に感じたかぐやはつい言ってしまった。
『伊井野さんの服装規定案に、伊井野さんの髪型は合致しないのではないの?』
慌てて自分の髪を気にしだした伊井野ミコは、『失礼しました!』と頭を下げると駆け出して行った。
『いいところつきますね、四宮先輩。』
『へぇっ!? あっ!
ごめんなさい、言わない方が良かったわね。』
『いえ、誰かが指摘するだろうとは思ってましたから。』
大仏こばちも一礼して伊井野ミコの後を追い掛ける。
引きつり笑いで二人を見送るかぐやは思う。
「気が付いてなかったの?」と。
─────
『僕も四宮さんなら一票入れるよ。』
『いえ、投票の際には厳格に判断して一票を投じてください。
では、失礼します。』
今回は出馬しなかった本郷勇人はかぐやの勝手な推薦人になっていたので理由を聞いたところ、四宮かぐやの人気が強くて断念したとの事。
不快感を顔に出さない様に丁寧に断りを入れて離れるが、どうしても強制出馬になるなら公約は男女丸刈りにしましょうかと、かぐやは俯いて考え出した。
『あ、かぐや。』
聞き慣れた声に呼ばれて顔を上げれば、四条眞妃が柏木渚を伴って歩いてくるのが見えた。
こころなしか、眞妃が不機嫌そうにかぐやには見えた。
『眞妃さん、柏木さん、ごきげんよう。』
『こんにちは、かぐやさん。』
『その様子だと、かぐやも出馬させられそうなのね。』
『ええ、そうな・・・。
もしかして、眞妃さん達も?』
『私はないんですけど、眞妃が。』
『迷惑な話よ、まったく。』
『実は、私も昨日校長先生から話があって。』
『たまったもんじゃないわ。
そんなにやりたいなら自分達でやればいいでしょうに。』
『全くです。
眞妃もかぐやさんも忙しいんですから。』
四宮かぐやは四条眞妃が話しかけてきた理由がなんとなく察せた。
柏木渚と目線が合うと頷かれたのでそういう事なのだろう。
「四宮かぐやが出馬を嫌がっている」
と、印象付ける為だ。
周りで聞いていた生徒達は自分のクラスに持ち帰り話してくれるだろう。
「貴女はそういう人よね。」
とかぐやは不器用な四条眞妃の事を思う。
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『ハァ〜・・・、極楽。』
『変な声出さないでくださいよ。』
主に心労で疲れた四宮かぐやは、来客もなかったので早く寝ようと早坂愛に就寝前マッサージをして貰っていた。
『愛の揉み方は心地良いのですもの。』
『お褒めに預かり嬉しいですけど。』
『じゃ、今度は私が揉むはね。』
『ちょっと、かぐや様。それじゃあ、アベコベですよ。』
『いいじゃない、やらせてよ。』
『もう・・・。』
照れながらもかぐやのマッサージを受ける愛。
「姉妹」はじゃれ合いながら、夜は更けていく。