白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


サッカー部の交流試合を終えた白銀御行等は、四宮かぐや発案の「生徒会として文化祭にバンド演奏する」企画の為に、楽器店を訪れた。


062『田沼翼は話したい』

 

 

 

───日曜日、かぐやの寝室

 

 

日課の朝食作りと朝食を済ませた四宮かぐやは、自室で自分の三味線や笛の点検をして、白銀御行達と決めた歌に合わせて演奏してみてもどうにもしっくりこず、困っていた。

「和楽器バンド」というコンセプトにしたが、その和楽器が歌の邪魔をする可能性が出てきたのだ。

 

 

 

『案外、合わせにくいのね・・・。

明日にも、皆さんに相談しましょう。』

 

 

スマホで相談したいところだったが、御行達は昨日の試合の疲れも出ていると思われ、かぐや自身も昨日の疲れが出てる為に億劫に感じられて、手を伸ばす気にはならなかった。

 

いつもの週末なら、今頃は京都の本宅で父親の四宮雁庵と過ごしてるのだが、今週の雁庵は関東視察があり、その後は定期検診の為に検査入院と聞いている。

 

その視察の前にかぐやの三者面談に来てくれた事、席は離れていたが初めての外食(茶屋は顔も見えなかった)が出来た事、父親だけでなく兄・四宮雲鷹の意外な一面を知る事が出来た事も、白銀かぐやとしては知る事は出来なかった・経験できなかった事だ。

 

 

 

『戻れたら、お兄様と食事に行ってみようかしら?

絶対嫌がりそうだけど。』

 

 

そう呟き、かぐやは一人笑う。

視察後の検査入院も、四宮家お抱え医師の田沼正造の病院が関東にある為に、それを考慮しての雁庵の関東滞在の予定になっている。

為に、かぐやは動けない。

数年先であれば雁庵に同道する事もできたであろうが、父親の事業に関わりのない今の状態では娘の立場しかない。

関東滞在中は、一つ上の兄であり関東含む東日本が管轄の四宮雲鷹が雁庵に同道すると聞いている。

定期検診明けに病院で会う事が出来ればいいが、平日の午前中に退院して京都に立つ予定では会えそうにはない。

父親に会える事が当たり前の様になっていた為に会えない事がもどかしく感じられ、それは贅沢であり本来は会える様になったのは入院して認知症の症状が出てからだった。

それも監視と盗聴付きで・・・。

 

そして、いつもならかぐやの側に必ず居る近侍の早坂愛は、かぐやが期末試験の報奨に約束した「一日オフ」に出掛けている。

 

それもあって、一日掛けて演奏できる様に練習しようとしたかぐやだったが、目論見が外れた格好になった。

 

 

 

『・・・仕方ないわね。

ままならないのは、いつもの事よね。』

 

 

かぐやは一人しか居ない寝室で、自分を慰める様に呟く。

 

しかし、藤原千花・四条眞妃・石上優・伊井野ミコ・早坂愛・柏木渚・白銀御行、そしてかぐや自身の将来と今の姿を思い浮かべ溜息が漏れる。

 

 

 

『・・・老けたわよね、私も皆さんも・・・。』

 

 

嫌な現実から目を逸らす様に、かぐやは練習を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───午後、とある喫茶店

 

 

藤原千花と柏木渚は、二人だけでお茶をしていた。

 

二人がこの店で落ち合った理由は、

 

 

「サッカー部交流試合での白銀御行とかぐやの抱擁シーンをどうするか?」

 

 

だった。

 

千花はかぐやに頼まれて試合の記録用に写真を撮影していたが、試合の疲れや皆で楽器を見に行く為に早く帰った為に、かぐやのデジタル一眼レフカメラを返しそびれていた。

 

渚はセクハラ対策で、試合に出場した四宮かぐや・四条眞妃・早坂愛を中心に映像をスマホで撮影しており、二人共御行とかぐやが熱烈に抱き合うところを撮影してしまったのだ。

 

その前の、女子三人掛かりで御行を押さえ込んで何かしていた事は、コンタクトレンズを装着させる為だったとかぐや達から聞いて削除済みである。

どう見ても危ない光景な為に要らぬ誤解を招くと削除したのだ。

 

しかしながら、「二人の抱擁」はゴール直後の瞬間の為に、削除するのが躊躇われる。

記念に残したいが千花としてはあまり見たくもないのと、以前の御行やかぐやの反応を考えると削除するべきかとも思え、結論が出せない。

一緒にいた龍珠桃と子安つばめは画像と映像を欲しがったが・・・。

 

桃は目が笑っていた為に御行をからかう材料にする気だろうと思われ、つばめは純粋に二人の関係を喜んでる様だったので余計タチが悪い。

 

生徒会長選挙や体育倉庫の一件で二人の関係は当人達(主に御行)が認めてないだけで、高等部全体からは二人の恋の進展にイライラしてるのが本音だが、下手な事をして二人の仲が壊れては大変と見守る事にされてるのが、当の二人だけが知らない周りの暗黙の了解になっている。

 

かぐやの春を喜びたい気持ちは千花にもある。しかし、相手がポンコツの実態を知ってしまった御行である事が嫌なのだ。

 

 

───絶対に余計な苦労をする。

 

 

現に、自分がそうなのだからと。

あれだけ喧嘩していた二人がそんな仲になる事には感慨深いものだが・・・。

 

 

 

『・・・本当に、どうしましょうね。』

 

『・・・試合の経過を考えれば残したいですけど、でも・・・。』

 

 

さっきからこの調子で、店に入ってかれこれ一時間経っていた。

その間にケーキを三つ食べ、ミルクティーのおかわりを半分飲んでる千花は流石であるが。

どう考えても、栄養は全部胸に行ってるとしか思えず、渚は口が引き攣り見てるだけでお腹一杯になっていた。

雑談の中でタピオカミルクティーやラーメンも時折食べてる事を聞き、にも関わらずこのスタイルを維持出来てるのは不思議でしかない。

自分なら確実に太る。

ある意味、都合のいい千花の身体に渚は嫉妬を覚えていた。

その渚が、何気なしに喫茶店の窓から通りを見た時、自分の恋人の田沼翼と見知らぬ女が連れ立って歩いてるのが、人混みに中に見えたのだ。

 

 

 

『・・・翼?』

 

 

二人の姿は直ぐ周りの雑踏の群衆に紛れて分からなくなったが、直ぐ様スマホをポシェットから取り出した渚は翼に電話を掛けると同時に、財布から千札2枚を取り出してテーブルに置くと、

 

 

 

『ごめんなさい、急用を思い出したので!』

 

 

おかしな言い訳を千花に言うと、スマホを耳に当てながら渚は慌ただしく喫茶店を後にする。

 

 

 

『・・・どうしたの?』

 

 

呆気に取られた千花だけをテーブルに残して時間は流れる。

 

千花を店に残して通りに出た渚は翼に電話を続けるが、翼は電話に出ない。

ラインやメールを送るも応答なし。

日頃なら直ぐにラインやメールも返事が返ってきて、電話も出るか自分から掛けてくる翼にしてあまりに様子がおかしい。

 

渚の中で限りなく赤に近い黄色信号が点灯する。

やむなく、翼のスマホの位置情報から場所を特定する。

勝手にイジって渚側からのみ翼のスマホの位置を特定できる様にしていたのだ。

渚の今の場所から500m程離れている建物内に居る事が解り、慌てて走り出す。

果たして、翼のスマホの反応があったのはアクセサリーショップだった。

ウィンドウショッピングを装いショーウィンドウから店内を覗くと

、翼と見知らぬ女が二人でペンダントやネックレス類を並べてるコーナーで何やら相談し合ってる様に見えた。

正直、見覚えのない女で異国人の様に見える。

非常に親密に見えて、あまりに二人の距離が近い。

踏み込みたい衝動を抑えて渚はスマホで二人の様子をこっそり撮影し始める。

今の状態では白を切られたら逃げられてしまう。

 

確実な証拠を抑えなければ───。

 

だが、撮影している渚の事などお構いなしに、翼は展示されてるペンダントの一つを手に取ると女と相談してる様で、そのペンダントを見知らぬ女の胸の位置に合わせている。

まるで恋人同士の様に・・・。

 

数分間、そうやって幾つかのペンダントを見知らぬ女と選んでいた翼はその内の2つのペンダントを持つと、レジに向かった。

会計の間、見知らぬ女は店内を暇潰しに見ている。

渚からは最初は女は背中しか見えてなかったが、その時は顔がはっきり見えた。

 

 

───サッカー部の試合に出ていた早坂さんだ───

 

───確か、四宮さんの友達でお弁当の配膳も手伝っていた───

 

───でも、なんで翼といるの!?───

 

 

会計を済ませた翼が戻ると、二人は店を出てくる。

渚は二人に気付かれない様に慌てて隠れる。

 

 

───何故、私が隠れる必要があるの!?

 

 

隠れながら疑問は湧く。が、今は決定的な証拠が欲しい。

 

店を後にした二人はそのまま駅方向に歩いていく。

それにしても、今日の早坂愛はお姫様まではいかないまでも名家のお嬢様と言われても信じてしまうほど、おめかしをしている。

日頃のギャル姿など微塵も想像できない程で、遠目に見ても二人は楽しそうに談笑しながら、その姿はまるで恋人の様に見えてしまう。が、何故か二人は足が早い。

渚も急いで追い掛けているが人通りもあり徐々に離される。

その間にも電話・ライン・メールを送るも、翼は気付く気配もない。

 

それが渚には腹ただしい。

 

やがて二人は駅に着くと、改札口の乗降客の群れに紛れてしまい、解らなくなってしまった。

すかさず、渚は翼のスマホの現在位置を検索する。

流石に直ぐには動かないが、上下線のどちらに乗ったか位解らないと追跡できない。

最短営業距離の切符を買い渚も改札内に入るが、1/2の確率に掛けて上り線のホームに向かう。が、ホームに出たところで、反対側の下り線のホームで電車を待つ二人を見つける。

タイミング悪く、そこに下り線の電車が入る。

慌てて階段を掛け登り下り線のホームに向かうが、渚の目の前で電車は発車してしまった。

急いで時刻表を確認するが、次に来るのは各駅停車の電車で、二人が乗ったのは急行電車だった。

 

焦る気持ちを抑えながら翼に何回目になるか解らない電話を掛ける。

今回は、やっと電話に翼が出た。

 

 

 

『───もしもし、渚?

どうした・・・』

 

『翼! 今、どこにいるの!?』

 

『───どうしたの?

今電車だから、後で掛け直すね。』

 

『ちょっと!? 翼!!』

 

 

無常にも電話は切られた。

なら、ライン。

駄目なら、メール。

矢継ぎ早に渚は翼に送り始める。

 

 

 

『・・・良かったの?』

 

『大丈夫だよ、今は電車の中だし。

それより、早坂さんこそありがとう。』

 

『いいよ、あれぐらい。』

 

 

電話を切った直後からスマホが振動しだしたのに、バイブを切ってスマホをポケットに入れた翼に、愛は気遣わしい気な視線を送る。

 

実のところ、愛はアクセサリーショップに居た時から、店の外から誰かが様子を伺っている事に気が付いていた。

それが翼の恋人の渚だという事が判ったのは、店を出た時だった。

本人は隠れてるつもりだろうが、丸見えに近いぐらい建物の陰から体が出ていたからだ。

渚の様子から見て盛大な勘違いをしてるなと思ったが、日頃二人で所構わずイチャツイてるのを幾度も見て愛も苛ついていたので、偶にはいい薬だろうと放置したのだ。

少し、面白そうだという気持ちもあった。

 

渚は見た目と違い感情の起伏が激しく、愛が二人を見かける時は50%の確率で翼が渚に謝っていた。

更にいえば、田沼翼は四条眞妃の想い人であり、主人のかぐやの友人ではあるが赤の他人の渚と、かぐやの親族である眞妃では愛の中で優先順位は異なる。

 

今日、愛が翼と遭遇したのは全くの偶然で、観光客に言葉が喋れないのにカタコトの英語とスマホで道を教えていた翼を、見るに見かねて愛が助け舟を出したからだ。

翼が助け舟にお礼を言ってきた時に、何故か愛である事に翼が気が付いたのだ。

一見しただけでは早坂愛とは解らないぐらい、今日は日頃と違い意外な服装をしていた為に、目の色が青色である事や道案内を英語でした為に、翼は最初は愛を外国人と思っていたのだ。

最も、翼はサッカーの試合で初めて早坂愛を認識したので、愛に気が付く方が凄いのだが。

日頃は渚とイチャつき倒して周りの顰蹙を買ってる事に気が付かない程の鈍感なのに、変なところで勘が働くようだった。。

 

その後、用事のある場所が一緒だった二人は雑談をしながら歩き、翼が先日の愛の試合を手放しで褒めてくれてむず痒い気持ちになりながら、通り道にあったアクセサリーショップで恋人の渚へのプレゼント選びを手伝って今に至る。

 

無論、愛も自分の参考の為に多少乗り気だった。

職場環境的にも役回り的にも彼氏どころか男友達もいないし作れないので、男性の気持ちはあまり解らないので翼でも、愛には参考になる。

 

時間にして、渚が千花と喫茶店でお茶を始めた位から一緒にいるだけなのだ。しかしながら、恋人と過ごすのはこんな感じなのかなと愛は感じていた。

そうこうしてる間に、電車は二人の目的地間近になっていた。

 

二人が行こうとしていたのは、横浜の「海が見える丘公園」。

バラ園が今年の秋の見頃の最終盤に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、渚は絶望に陥っていた。

翼のスマホの位置情報が解らなくなったのだ。

これでは、二人がどこに行ったか解らない。

スマホをポケットに入れる時に翼が電源を切ってしまったのだ。

 

 

 

『どう・・・、したらいいの・・・。』

 

 

電車で横浜までは出てきたが、この辺りは渚は日頃は来ない所の為に、勝手が分からず途方に暮れていた。

思えば、最近の翼は様子がおかしかった。

二人で居ても変に余所余所しい時があり、話も頷くだけで生返事の時もあった。

一つ疑いだせば全てが疑わしくなり、次第に疑心暗鬼になっていく。

 

そして、

 

 

 

『・・・探偵さん、お願いしようかな・・・。』

 

 

飛躍した思考に陥ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おすすめスポットだけあって、景色がいいね。』

 

 

翼は呑気に公園の感想を述べるが、愛は早く離れたい。

今となっては正直、助け舟を出さなければよかったとも思っている。

何かに付けて恋人の渚の話が出るので、ウンザリしている。

女性と居る時は他の女性の話はしないというエチケット位は学習して欲しいものだ。

何故かアクセサリーショップの建物陰に隠れていた渚は、付けて来ていた筈なのに姿を見せず、最寄り駅から公園の間の道すがらにも気配が無かった。

撒いたつもりはなかったが、追い付けなかった様だ。

ただ、翼の表情は恋人の話をしてる時は少し悲しそうな顔をする時があるのが引っ掛かるが。

 

 

 

『ありがとう、早坂さん。

おかげで良い下見が出来たよ。』

 

『そう。

じゃあ、私はこれで。』

 

 

これ以上付き合う義理はない。

そう思い切り上げようとする愛を翼が呼び止める。

 

 

 

『暗くなるし、送るよ。

お礼もしたいから、晩御飯はどうかな?』

 

『いいわよ。

それ程の事はしてないから。』

 

 

公園まで一緒に来たのも将来のシミュレーションの一環だったが参考にはならず、早く終わらせたい。しかし───、

 

 

 

『ちょっと、聞いて欲しい事もあるんだ。』

 

 

意外に寂しそうな顔をする翼に断るタイミングを愛は失ってしまい、近くの喫茶店で食事をする事になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それで、聞いて欲しい事って?』

 

 

注文も終わり、面倒な話も料理の来る間に済ませてしまいたい。

こういう時は相手の望む展開にした方がいい。

そう考えて愛は翼に話を降ったのだが、とんでもない話が翼から飛び出す。

 

 

 

『渚と・・・、別れ様かと思うんだ。』

 

『・・・えっ?』

 

 

愛には驚きの話だった。だが、翼への片想いを振り切れないかぐやの再従兄弟姪の四条眞妃には朗報だ。

詳しく聞いておく必要がある。

 

 

 

『なんで、別れたいの?』

 

『渚がね、俺と付き合い出してから成績が下がり続けてるんだ。

俺が足を引っ張ってる以外に考えられないし、俺は国立大学の医学部に進学しないといけないんだ。

親はあんまり言わないけど、俺に医者になって欲しいのが本心で・・・。』

 

『・・・。』

 

『渚は秀知院大学に進学するつもりだけど、この間の試験結果では厳しいと言われたみたいなんだ。

俺と付き合い出した頃から言われ出したみたいなんだけど・・・。

俺と別れたら成績は元に戻るだろうから、進学は問題なくなる。

俺はあんまり頭は良くないから、医学部は難しいのが現実なんだ。

・・・この間の三者面談でも、そう言われたんだ・・・。』

 

 

いつもの脳天気な翼は姿を消し、自身の進路と恋人の進路に真剣に悩む翼が今はある。

こっちが素なのだろうと愛は思う。

日頃の翼は渚の為に演じてるだけなのかもしれない。

誰しも虚勢を張らねば、強い自分を演じて弱い部分を隠さなければやってはいけない。

 

 

───しかし、

 

 

いくらなんでもほぼ初対面の愛にこんな話をするものだろうか?

 

相談できる相手も居ないのだろうか?

 

愛はそう思ったが、二人であれだけベッタリイチャイチャしてれば友達も去るだろうなと思う。

眞妃ですら渚と距離を置き始めてるのに、嫉妬心の募る男友達は尚更だろう。

 

 

 

『・・・本当に、別れたいの?』

 

『・・・本当の気持ちは・・・。

けれど、気持ちだけではどうにも・・・。』

 

 

けしかける事や叱咤は簡単だが、目の前の男は少しの力が加われば折れてしまいそうな危うさを抱えている。

嫌なら抗うしかないが、やり方が解らないか諦めているのか・・・。

 

おそらく、後者だろう。

 

羨ましい悩みだと、愛は思う。

勉学に励みテストの点数を伸ばせば解決する、その程度の悩みだ。

段々、真剣に聞くのが馬鹿らしくなってくる。

本人は真剣だろうが、生まれつき平均的な思考ができない人間も世の中には居るのに、と。

どれだけ優秀でも大人の勝手に振り回されてる子供もいるのに、と。

 

 

 

『・・・彼女が、他の男とキスしていても我慢できるの?

もう関係ない、って言えるの?』

 

『っ!』

 

『なら、簡単に諦めるみたいな事言わない。』

 

『・・・けど、どうしたら・・・。』

 

『・・・生徒会の会長さんに相談してみたら?』

 

 

白銀御行にこういう事を押し付けるのは心苦しくはあるが、翼は時折生徒会に出入りしていて何かしらの相談をしている様で、渚と付き合う経緯にも生徒会が関係していたのだから、生徒の充実した学生生活の支援という生徒会の役割からも適任ではある。

それに、翼の恋人の渚はかぐやの友人なんだから、関わりのない私より生徒会で処理して欲しいとも思う。しかし、それは後の祭りだった。

 

横浜駅から当てもなく翼を探して彷徨っていた渚が、何の因果か二人が食事を待ってる喫茶店に辿り着いてしまい、深刻そうな話をしている光景を見て勝手な解釈からショックを受けて、呆然とし立ち去ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

─────つづく

 

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