白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
秀知院高等部第68期生徒会長選挙
立候補者公示日
立候補者
2年生、白銀御行
1年生、伊井野ミコ
以上、二名の立候補を認める
────投票日は10月15日とする。
貼り出された立候補者名を見て安堵する、四宮かぐや。
推薦取り下げをお願いして周り、自身の立候補は回避できたが勝手な推薦人は98人に達して、強制出馬の瀬戸際だった。
「経験」した生徒会長選挙は、「会長」と白銀御行を呼べなくなる事が我慢出来なかったかぐやが、御行に立候補をお願いする形で、「お願い」を先読みして準備していた御行が出馬する流れだが、白銀御行と伊井野ミコの一騎討ちになる。
今回は強制出馬でかぐやが立候補させられたら、かぐやが生徒会長になる可能性が高かった。
勝手な推薦人が98人にもなったのが証左であり、純院の混院嫌いはかなりのもの。しかし、為にかぐやは選挙期間中にどう動くべきか悩んでいた。
自分が動けば藪蛇になり、白銀御行に不利に働くのではないか?
その可能性があった。
『良かったじゃねぇか、四宮先輩。』
掲示板の前で思考に沈みかけたかぐやを現実に呼び戻す声に反応して、声の主を探す。
振り向いた先には、彼───。
剣道部部長、一年生の小島が居た。
『お久しぶりですね、小島さん。』
『他人行儀だな、疲れる事した仲なのに。』
『その言い方、わざとでしょ。』
『さてね。
・・・しかし、
この事と同じで気に食わない事が起きた。』
四宮かぐやの右横に並んで立った彼は掲示物を見ながら話を続ける。
『アレが国内に居た。
行方知れずの筈だったが、場所を変えてただけみたいだ。
で、大友に手を出した。
・・・夏の頃の話だそうだ。』
『アレって・・・、まさか。
荻野ですか?』
小島は人差し指を唇の前に持ってきて、内緒のポーズをする。
四宮かぐやの表情が困惑から驚愕、そして嫌悪に素早く切り替わっていく。
『私も聞いた。』
今度は、四宮かぐやの左側から相槌の声がして二人は目を向ける。
居たのは二年生の龍珠桃。
小島とは犬猿の仲だが、アレに関しては噂は耳にしていた。
二人と違って直接は関わってなかったが。
『怪我させたって噂だろ?』
『そうらしい。』
『どういう事になってるんですか?』
小島と龍珠の二人だけで話が通じてる事に困惑するかぐや。
『その内・・・。
今は、白銀を。
前会長に頼まれてるだろ、先輩。』
『それだけじゃないだろ?
守ってやれよ、勝負で負けたんだから。』
『お二人共、その言い草は聞き捨てなりませんけど?』
『おお、怖。
まあ、選挙頑張ってな。』
そういうと小島は手を振りながら右手に歩いていく。
『白銀は敵が多いからな。
かなり、やっかまれてるしな。』
龍珠桃も左手に歩き出す。しかし、
『龍珠さん、お昼一緒にどうですか?』
『ああん?
まあ良いけど。
暇、あんのか?』
『ええ。
屋上ですね?』
そう答えると手を振りながら龍珠桃も歩き去った。
残った四宮かぐやは不安な面持ちで掲示物を見つめる。
『・・・怪我をさせたって。』
─────昼休み・屋上
天気が良い日は屋上が定位置の龍珠桃は、かぐやの弁当を2人で囲んでいた。
『しかし、珍しい組み合わせだな。』
『そう、ですね。私達はあまり接点なかったですからね。』
そう言いながら居住まいを正したかぐやは龍珠桃に頭を下げる。
『とりあえず、頭上げてくれよ。
謝られる覚えはないだから。』
『なかなか2人で会えませんでしたから、お礼を言いたかっただけです。
生徒会会計の手解き、ありがとうございました。』
姿勢を戻し、かぐやは感謝の念を伝える。
『手解きってほどの事はしてねえぞ。』
『白銀会長とニ人、三学期が終わるまで厳しかったですから・・・。』
遠い目をして空の雲を見つめるかぐや。
発足当初の第67期生徒会は、白銀御行会長・四宮かぐや副会長・藤原千花書記の一年生三人と、会計監査と庶務のニ年生の五人だけだが、ニ年生はほぼ持ち帰りで仕事していたので生徒会室にはあまり居らず、肝心の会計がいない為に発足後の体育祭・文化祭・二年生の修学旅行・年度末の決算(三月)や校内の様々な「お金」にまつわる処理をせねばならず、また、久々の「混院」の生徒会長だった為に風当たりも強かった。
加えて、白銀御行は仕事を抱え込む癖がある。
そういう立て込んだ時に、前会計としてかぐやの居ない時に加勢に来てくれたのが、龍珠桃だった。
かぐや自身、数回遭遇して書類や処理の不備を指摘された事もある。
そんなこんなで、かぐやは白銀御行に対して軟化していき、二年次には「素直じゃない」関係になり、今に至る。
『龍珠さんがいなかったら、私達はどうなっていたか解りませんから。』
『・・・白銀と二人で無言で書類を処理してる光景には呆れたがな。』
『喋るだけの余裕が無かったからですよ。』
『アイツもお前も要領が悪いんだよ。』
『・・・否定はしません。』
『そうやって態度に出るのが要領悪いんだよ。』
かぐやのタコさんウィンナーを食べながら龍珠は茶化してくる。
咳払いを一つして、かぐやは本題に入る。
『それで、アレの話ですけど。』
『私が知ってるのは、「怪我をさせた」らしいって事だけだ。
傷害が付くレベルだそうだ。
それこそ、お前なら調べが付くだろう。』
『今なら少年院ですか。』
『表沙汰にしたくない奴らがいるだろうから、どうなるかな。
「周知院」ブランド使って手広くやってたみたいだから。
・・・変わった味噌汁だな。』
『麦味噌を使ったサツマイモの味噌汁です。』
『なかなか渋いな。
自信がなければ選ばないぜ。』
『少しは自信ありますよ。』
食べ終えて、龍珠は敷物代わりにしてた愛用の寝袋に横になる。
かぐやはテキパキと片付けをしていく。
弁当といい、片付けてる様といい、熟練してると感じた龍珠桃は、感じたままを口にしてしまう。
『アイツとは上手くいってるみたいだな。』
『お陰様で。』
『否定しないのが凄いな。
去年と大違いだ。』
『そんなに酷かったですか?』
『まるっきり別人だよ。
人当たりも髪型も変わって。
こうハッキリ見せ付けられると、な。』
『あの頃は、「未熟」だったんですよ。』
単純にかぐやと御行に自覚がなかっただけだが、去年のクリスマスには「それ以前」を知ってる者(つまり同学年ほぼ全員)は「会長と副会長は交際してる」と認識されていた。
髪型をストレートからリボンで纏めた髪型に変え、校内を御行と二人連れでよく歩き、「氷のかぐや姫」とまで言われた態度は軟化し話し易くなった。
敏感な歳頃の集団で思い至らない方がおかしい。
従って、かぐやと御行は同窓会の鉄板ネタにされ、からかわれた。
二人の国境を跨いだ恋愛(通い妻)もネタにされて、拗ねる二人だった。
『なかなか美味かったよ。
私は残るけど、四宮どうする?』
『御暇します。
たまには此処で食べるのもいいですね。
陽射しや風が気持ちいいですし。
伺ってもいいですか?』
『好きにしなよ。
私は断り入れて使ってるだけだから。』
『はい。
ではまた、ごきげんよう。』
軽やかに去っていく四宮かぐやを見送りながら龍珠桃は独りごちる。
『此処でイチャつくなら、場所変えよう。
邪険するのは、野暮か・・・。』
漫画を読み返したのですが、剣道部部長の名前は直接は確認できませんでした。
ネット上は高等部一年生で「小島」とありましたので、引用しました。
石上優と同学年となると変な影響でそうですが。