白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

2 / 61


───前回までのあらすじ───


夫の白銀御行が会社で倒れて意識が戻らないと、連絡を受け急ぎ駆け付けた妻の白銀かぐやは、夫の病室で意識を手放すと、気が付いたら高等部二年次の夏休み明けの寝室にタイムスリップしていた。




002『京都突撃と御行の誕生日パーティー』

 

 

 

───二学期始業式の翌日

 

 

意気込んで登校した白銀御行は、空振りに終わった。

 

生徒会室に来た四宮かぐやは、スマホを替えた事で藤原千花がベッタリ張り付いてしまい、話を切り出す隙もなく帰ってしまったのだ。

ラインのID交換も出来ず、である。

 

失意の中、バイトに向かう白銀であった。

 

かぐやもラインのID交換ぐらいしたかったのだが、藤原千花が離れてくれなかったのと、週末の準備で忙しく時間が無かった。

 

 

一泊二日で京都の本宅に乗り込む為である。

 

 

当然、早坂愛はいい顔をしなかった。

たが、かぐやは押し切った。

彼女には時間が無かったからである。

 

タイムスリップがいつ解消するか解らない。

今、この瞬間に現代に戻るかもしれないし、もっと過去に行くかもしれない。

 

もう一つが父親の時間が少ない事。

 

既に経験した「今年」は、この秋に父が倒れているが連絡なく、新年の本宅での挨拶でも全く話は無かった。

四条グループからの攻勢は既に始めており、四宮グループに動揺が走るのを避ける為に、兄・黄光の独断と父・雁庵の追認で秘匿された。

それは、かぐやが本宅に連れ戻された時に初めて知らされた事だった。

 

故に、今ならまだ可能性がある。

父親との写真が撮りたかったというかぐやの心残りを、晴らす事ができるかもしれない。

今年は二学期始業式が木曜日で、直ぐに週末の日程の為に行動を起こし、土曜朝には新幹線で京都に。

かなり強引に段取りを組んで、夕方に近い遅い時間に父親との対面に成功した。

 

 

 

『ご無沙汰しております、お父様。』

 

『・・・初めてだな。

・・・何か、あったか?』

 

『娘が父恋しいと会いに来るのに、理由が必要ですか?』

 

 

妙な沈黙が両者に影を落とす。

父親の書斎での対面だが、他人行儀な対面となった。

雁庵は、かぐやの母親とはかぐやの出生である疑念を払拭しきれていない。

その疑念は、かぐやとの距離感に直結した。

かぐやは、父親から近づいて来てくれる事を期待したが、それは殆ど叶わず上手くいかなかった。だから、今回は自分から近付いた。

 

 

 

『これからも会いに来ます。

そして、今日はお願いがあって来ました。』

 

 

横に置いていた、この年頃の娘が持つには不釣り合いなカメラを見せながら赤面して「父親」にかぐやは告白する。

 

 

 

『お父様との写真を撮りたいんです!』

 

 

持ってきたカメラを見せながら、かぐやは精一杯の勇気を出して、父親に自分の思いをぶつけに来たのだ。

驚くと同時に少し気恥ずかしさが出る雁庵。

 

 

 

『・・・ここでいいか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

───そして、もう一組の親子も。

 

 

 

『パパ! ママ!』

 

『おっと、大きくなったな、愛。』

 

 

口調こそ素っ気ないが、しっかりと娘を抱きしめる愛の父親で雁庵の秘書を務める早坂正人と、正人と共に愛を抱きしめる愛の母親の奈央。

 

 

 

『かぐや様がね、私だけは不公平だから愛も会って来てって。』

 

『ああ、聞いてるよ。』

 

『さあ、時間も少ないから行きましょう。』

 

『うん!』

 

 

今回、強引どころか強襲に近いかぐやの本宅来訪は、「雁庵の娘」を前面に立てて、

 

『娘が父親に会って何がいけないのですか!』

 

と、鬼気迫る気迫と数少ないパイプを駆使して実現した。

渋る親戚や側仕え達をかぐやは押し退けて通る。

兄である雲鷹や黄光に土下座までしてこじ開けた対面であり、兄達のかぐや評が再考しないといけないほどだった。

 

 

 

『・・・あいつがあそこまで粘るとは思わなかった。』

 

『・・・俺もだ。』

 

 

いつものかぐやとはあまりに違う様子と、かぐやを気に掛ける夫人に頼まれて雁庵の三男・雲鷹は嫌々本宅まで付いて来た。

座卓を挟んで対面には長男・黄光が座してる。

 

 

 

『あれだけの剣幕で、何がやりたいかと思えば「父親との写真が撮りたい」だからな。

時間があればちょくちょく来るそうだ。』

 

『・・・女の考えは解らん。

親父も満更でもない様子だしな。

あれだけ遠ざけて置いて、なんなんだか。

お前が焚き付けたのか?』

 

 

苦々しさ半分呆れ半分に様々な感情が混ざった黄光が雲鷹を睨んでくる。

 

 

 

『俺が聞きたいぐらいだ。

あんたが焚き付けたんじゃないか、大兄貴?』

 

 

睨み返す雲鷹。

 

 

 

『それより、青龍がまたやらかしてるみたいだが?』

 

『あいつの事はほっとけ。

何時までも自覚が出ん。』

 

『あんたにくっついてるんだから監督しろよ。』

 

 

答えずにお茶を飲む黄光を鼻で笑いながらタバコをふかす雲鷹。

 

二人の心中は複雑だった。

ニ人の子供時代の父・雁庵との思い出は、殆どない。

父親の自分達への情が無かった訳では無いが、四宮家という体面に潰された。

酒を飲み交わしたり、笑い合ったりも記憶に無い。

男同士というのも作用したかもしれない。

 

 

 

『・・・しかし、なんなんだ?

この土産の山は?』

 

 

部屋の隅に固められた、大量の土産袋の山を指さしながら黄光が聞いてくる。

 

 

 

『知らねえよ。

あいつが買いたがって持ちきれる分しか持ってきてねえが、この数倍は宅配で送ってくるぞ。

陳列の半分ぐらい買いやがったからな。

店の奴は喜んでたが。』

 

『・・・そりゃそうだろう。

 

・・・しかし、この煎餅は美味いな。』

 

『俺もそう思う。』

 

 

土産の煎餅を食べながら苦笑する兄二人は、妹のチグハグな行動に苦笑しか選択肢が無かった。

それから少しの間、土産の菓子を取り出しては、

 

 

 

『これは、まだ売ってたのか。』

 

『これも、案外美味いな。』

 

 

等と話してると、父親に呼ばれて書斎に行けば、意外な話をされて戸惑う二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに金曜夜はバイトの疲れと、かぐやとライン交換できず落ち込んでる御行は、ふて寝した。

 

土日は鬱憤をバイトにぶつけバイト先の評価が上がったが、気になるならメールか電話すればいいものを、あれこれ考えて何も出来ない御行だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───翌日、京都駅

 

 

 

『ご尽力、ありがとうございます。』

 

 

京都駅の新幹線ホームで東京行きの新幹線を待つ間、四宮かぐやは付き添いに東京から来た一つ上の兄・雲鷹に頭を下げていた。

 

 

 

『・・・まあ、なんだ。

お前がいきなり来て、親父に会いたいから段取りをしたいと言った時は、呆れたがな。』

 

 

ここまで直接妹に頼られた経験は、雲鷹にはない。

パーティー等に連れていき四宮のやり方を教え込んたが、かぐやはそのせいか一歩引いて自分の我を出す事は無かった。

 

最初は断ったが別人かと思うほど食い下がってくるのと、見かねた夫人の取り成しで渋々妹の要望を聞いて本宅まで付いてきた。

 

 

 

『嫁はお前がお気に入りだからな、後が怖いし俺はお前の保護者だしな。

お前がこんなに大胆で面白い奴とは思わなかった。

真っ直ぐ、帰れよ。』

 

 

素っ気ない態度だが気恥ずかしさを自覚しながら妹に見送られ、雲鷹は側近や取り巻きと改札から外に出ていく。

 

 

 

『ネズミに気をつけろよ。』

 

 

そう言おうか考えたが、態々早坂親子の時間まで作る様頼み込んだ妹は聞く耳は無いだろうなと思い、空気を壊すのも「野暮」等と考えて黙った。

いつもの雲鷹なら考えられない事ながら。

 

 

 

『さて、帰りますか。』

 

 

思いっきり背伸びをした後、振り返って愛に向き直る。

 

 

 

『はい、かぐや様。』

 

『愛は、楽しめた?』

 

『ええ、たっぷりと。』

 

 

上機嫌で紅潮した頬で近侍は答える。

かぐやは彼女の後ろに控える2人に対し居住まいを正し背を伸ばす。

 

 

 

『父をお願いします。』

 

 

かぐやは、見送りに来た父の秘書の早坂正人に深々と頭を下げる。

慌ててかぐやのやや後ろに並び同じく頭を下げる、愛。

 

 

 

『承りました。』

 

 

応じる正人も深々と頭を下げ、夫人の奈央も頭を下げる。

 

端から見ればおかしな光景だが、何人も入り込む余地のない空気に包まれる四人。

 

晴れ晴れとした気持ちで京都を新幹線で後にする、かぐやと愛。

それを見送る早坂夫妻。

遠ざかる娘達が乗る新幹線を見送りながら、

 

 

 

『愛は、良い方に仕えられたのだな。』

 

『・・・ええ。』

 

 

暫く早坂夫妻はその場を動かなかった。

 

 

 

今回のかぐやの本宅来訪は、大量の土産という置き土産で苦笑を誘う結果となり、少なくともマイナスには作用しない結果をもたらした。

本宅でのかぐやの株は上がったのである。

これは、かぐやの社会人経験が功を奏し、今後の本宅訪問のハードルを下げる結果となった。

 

心付けは意外と効く、のだ。

 

雁庵の書斎には、かぐやとのツーショットが小さいながら飾られ、黄光も雲鷹も妹に頼まれて渋々撮った父親と兄妹三人の写真は案外大事に扱っていた。

妹に撮られた父親との四人の写真を見ながら、意外にこれが父親との飾らない初めての写真なのだと、思いを巡らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京行きの新幹線の中、愛は両親との昨日の出来事を話していた。

近年は会う事もままならず、数年ぶりに三人で食事した事等を話していたのだが、愛の表情が固まる。

かぐやが涙を流し始めたのだ。

 

 

 

『どうしたんですか、かぐや様!?』

 

 

指で涙を拭いながらかぐやは答える。

 

 

 

『・・・違うの。

そうだよね、一杯会いたいよね、話したいよね、って。

私、愛の大事な時間を奪い続けてたんだって。

ごめんね、愛。

本当にごめんなさい。』

 

 

抱き着いてきたかぐやを抱きしめながら、二人は泣き出してしまいグリーン車内は気不味い空気になる。

 

乗り合わせた家族連れの女の子が母親に聞く。

 

 

 

『ママ、あのお姉ちゃん達は何で泣いてるの?』

 

『貴女がもう少し大きくなったら解るわ。

女の友情はアレぐらいが良いの。

男が絡んだらあんな風にならないから。』

 

 

 

一斉に振り向く男性陣!

男共を一瞥する母親!

深く頷く女性陣!

車内は、更に重苦しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

───東京に帰ったかぐやは「白銀御行の誕生日」をどうするか考えなければいけなかった。

 

 

 

因みに、当の御行はウジウジした週末を過ごしていた。

かぐやに意を決してメールしたが返事が来なかったのだ。

当のかぐやは、携帯見るよりデジカメやノートPCとにらめっこしていてメールに全く気が付かなかった。

メールに気が付き慌てて返信し、御行は安堵の溜息をつき喜んだ。

 

因みに、かぐやは大量の京都土産と東京の泉岳寺別邸に帰り、別邸使用人達は当面お茶請けや京漬物に困らなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

───月曜日

 

 

 

『会長の誕生日なんですか!?』

 

 

生徒会メンバーの千花と会長・白銀御行の誕生日プレゼントを相談したら、やはり把握してなかった。

 

丁度土曜日の為、妹の白銀圭も呼んで生徒会の皆でささやかながらサプライズでお祝いするプランでまとまり、かぐやが石上に、千花が圭に連絡する事になった。

因みに、かぐやが誕生日ケーキなどを手配する段取りとなり、場所は藤原家と決まった。

 

 

 

『会長、すいません。

実家に行ってたのでメールに気が付かず、返事が遅れてしまい申し訳ありません。』

 

 

仕事が立て込む事が多い未来の白銀夫妻は、メール等を見ても直ぐ返事が出来ない事はよくあるのでかぐや自体は慣れっこなのだが、この時期の御行は耐性がない為に返事の無かった日曜の正午前までは「かぐやに嫌われた」と思い込み、魂が抜けていた。

 

 

 

『いや、大丈夫だ。

・・・問題ない。』

 

 

どう見ても動揺してる白銀御行を見て、「痩せ我慢しちゃって」と思うと同時に、「面倒臭い」とちょっぴり感じてるかぐやだった。

 

 

 

『それで、急な話ですが週末の土曜日に藤原さんのお家でパーティーをしますので、皆で参加しませんか?

石上君とみ・・・、会長の妹さんも参加するとの事で、私と会長と計六人です。』

 

『圭ちゃんも参加するのか。

なら参加させて貰うよ。』

 

『良かったです。

では、土曜日楽しみにしてますね。』

 

 

用事も終わり、早々に帰る四宮かぐや。

ケーキの手配やプレゼントの準備もあるので急いでいた。

御行は取り付く島もなく、またかぐやとID交換できなかった。

 

 

 

 

 

─────俺、避けられてない?

 

 

 

全くそんな事はなく忘れられてるだけだが、敏感なお年頃な御行は変な事ばかりが頭をよぎる。

 

そして、かぐやはやる事だらけな上に毎日生徒会室や廊下で顔を合わせてるので、御行とラインしてない事が全く気にならない。

 

ガラゲー時にはメールのやりとりすら稀だった(双方駆け引き中の為)ので、御行は自分からメールする事も躊躇われて、とうとうパーティ前日の金曜日となった。

 

 

 

 

 

 

 

───金曜日放課後

 

 

 

明日の土曜日は御行の誕生日の為、生徒会女性陣はプレゼント購入やパーティーの準備の為に足早に学校を後にし、生徒会室には会長・白銀御行と会計・石上優だけとなった。

 

業務も片付き週末の為、急いで帰る必要もないのでコーヒーブレイク中の二人。

 

 

 

『石上、正直なところを聞きたい。

俺、四宮達に避けられてないか?

この一週間、まともに喋った記憶がないのだが?』

 

『そうですか?

四宮先輩からは京都土産貰ったり、藤原先輩は何時も通りでしたし、普通に感じましたけど。』

 

 

既に誕生日プレゼントは購入済みで、かぐやからはサプライズパーティーだからと念を押されてるので、ここでバレては不味い(優はかぐやが怖いから)と慎重な言葉選びになる優。

 

 

 

『なんというか・・・。

よそよそしいというか、四宮は業務連絡な内容しか話してこないし、藤原書記とばかり喋って直ぐ帰るし。』

 

 

ため息まで溢れる様は、

 

 

「最近は彼女が構ってくれずに、自分を置いてガンガン先に行かれてる彼氏」

 

 

の様な状態である。

 

御行は疑心暗鬼になっていたが、二人の間で告白(濃厚なキスはあったが言葉にはしてない)はしてない為にもどかしい気持ちになっていた。

 

 

 

『聞いてみたらいいじゃないですか?』

 

『いや、まあ、そうなんだがな・・・。』

 

 

妙な沈黙が降りかかった瞬間、生徒会室のドアをノックする音がする。

 

 

 

『どうぞ!』

 

『会長、お邪魔しま〜す。』

 

 

優の返事で入ってきたのは、御行のアドバイスがキッカケで柏木渚への告白に踏み切り、交際している田沼翼だった。

 

御行と優は並んで座っていたので向かいの席を翼に勧めるが、彼女の渚との夏休みの惚気話を聞かされ、渚が翼を探しに来る頃には殺気立っていた二人だった。

 

 

─────一方、帰宅後に誕生日プレゼント購入とショッピングで集まった藤原姉妹・四宮かぐや・白銀圭、そして、早坂愛は喫茶店でお茶をしてた。

 

 

 

『かぐや様、本当に良いんですか?

私がここにいて、かぐや様の友達なんて紹介して。』

 

 

ヒソヒソ声でかぐやに確認する愛。

 

 

 

『私が良いって言ってるんだし、今日集まった人達は信頼出来るし。』

 

 

正直、これからやりにくくなるなと思う反面、「私の大切な子」と紹介されたのは、愛は少し照れ臭かった。

 

 

 

『かぐやさん、かなり時間を気にしてこのお店に入りましたけど、何かあるんですか?』

 

『藤原さん、実はサプライズなんです。

すみません、お願いしますー!』

 

『えっ? うわわぁぁー!!』

 

 

集まった女性陣が驚きと感嘆の声を上げるのは、40cmを超える高さを誇るフルーツたっぷりの巨大パフェがかぐやの声に合わせて、奥から運ばれてきたのである。

 

かぐやが予約を入れていたのは一日五杯限定の巨大パフェである。

 

 

 

『すごいです。私、こんな大きいの初めて見ました。』

 

『私もー。』

 

 

御行の妹の圭の感想に藤原の妹の萌葉も賛同する。

 

 

 

『たまたま読んだ雑誌に秋のパフェ特集があって、このお店が出てたんです。』

 

『・・・かぐや様、まさか?』

 

『完全にたまたまよ。この間の新幹線の時に買った雑誌に載ってたのよ。』

 

 

愛の問いかけに耳打ちで答えるかぐや。

 

周りは巨大パフェに釘付けで二人のやり取りなど全く見てない。

本当のところは、かぐやも食べたかったのと、愛や藤原姉妹や圭に日頃の感謝を込めて振る舞いたかったのだ。

オバ・・・、淑女が入ってきてる白銀かぐやはそういう年齢である。

 

女五人に掛かれば巨大パフェといえども40分持たなかった。

しかし、更に追加でナポリタンや唐揚げなどを頼んだ藤原姉妹には、他の3人は目を点にしたが・・・。

 

店を出た後もまだまだ楽しいショッピングは続き、最後は五人で藤原家へ。

タクシー二台に大量の買い物袋と乗り込み走り出す(帰ろうとした愛はかぐやに拉致された)。

 

藤原家に着いても、まだまだ夜はこれからとパーティーに突入した。

 

 

 

『でも、知らなかった。

早坂さんとかぐやさんが友達だったなんて。』

 

 

ボードゲームをしながら、横に座っていた千花はかぐやに愛との関係性を聞いてみる。

かぐやが自分の事を話したがらないのは知っていたが、早坂愛は完全に寝耳に水だった。

 

 

 

『藤原さんと同じですよ。

辛い時に私の側に居てくれた、大切な人なんです。ただ、私は最近まであんな感じだったから、仲良くしてるところを見られると早坂さんも巻き込まれてしまうと思って。』

 

『私は大丈夫ですよ?』

 

『藤原さんは、全く気にしてなかった「フリ」をしてくれてたのでしょう。』

 

 

これは、大人になってから藤原千花自身から聞いた話である。

 

 

 

『まあ、色々言いたがる人は多かったですね。

仲良くもしてないのに勝手に決め付けて!

とは、思ってましたけど。』

 

『・・・ありがとう。』

 

『私は、かぐやさんが大好きですから。』

 

かぐやに抱き着きながら本心をいう千花。

 

『さあ、本気出しますよ、萌葉。』

 

 

ボードゲームは藤原姉妹(特に萌葉)と愛の牽制で三すくみ状態の間に、かぐやと圭は二人で先にお風呂を頂いた。

浴室で二人きりになった圭は、ここなら他の人に聞かれる事はないだろうと、二人で湯船に入ってる時に兄の話を切り出す。

 

 

 

『四宮せ・・・、かぐやさんは兄の事をどう思ってるんですか?』

 

『・・・この間はごめんなさい。

お兄さんからは、聞いてます?』

 

『・・・はい。』

 

『こんな年にもなって恥ずかしいし、はしたないと自分でも思うわ。』

 

『・・・好きな人には、止まらなくなっちゃうんじゃ?

アレはビックリしましたけど。』

 

『・・・好き、です。

私は、お兄さんが、白銀御行さんが好き。』

 

 

かぐやは自分の気持ちを再確認する様に言葉を紡ぐ。

少し紅潮しながら黙って聞く圭。

 

 

 

『でも、だからかしら。

私はお兄さんの、白銀御行さんの本心が知りたい。』

 

『・・・兄も、かぐやさんを好きだと思います。』

 

 

兄の壁の張り紙群(不気味で狂ってると思ってる)を見てる圭はそうなんだろうと考えてる。

ただ、だんだん最初とはかなり違う方向に行ってそうだけどと張り紙が増える度に感じてはいる。

 

 

 

『でもね。

この気持ちは、まだお兄さんには言えない。

私は、御行さんに告白されたいの。』

 

『・・・。』

 

『ところで、圭さんは?』

 

『えっ、アッ、はい?』

 

『好きな人、居ないの?』

 

 

かぐやの尋問が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───土曜日午後・藤原家

 

 

 

サプライズ誕生日パーティーは、御行に完全にハマった。

家の事情で盛大に祝われた記憶がない御行は、ウェディングケーキの様な大きい誕生日ケーキ、女性陣の手料理、各々からの誕生日プレゼントで泣き出したいほど喜んだ。

 

 

───避けられてると感じてたかぐやに祝って貰ったのが一番嬉しかったが───

 

 

 

『しかし、大きいですね。

二段のホールケーキなんで初めて見ました。

盛ってるフルーツも大きくて甘いですし、どこのケーキ屋なんですか?』

 

 

優が素朴な疑問を口にする。

 

 

 

『このケーキは皆で作ったんですよ!』

 

『手作りなんですか!?』

 

 

千花の妹・萌葉が舞台裏を明かす。

誕生日ケーキは土台のスポンジケーキはオーブンの大きさや焼き上がりの時間の関係でお店の物(かぐや発注)を使ったが、生クリームや全体のデザイン等は参加した女性陣+藤原の姉も加わり作られている。

フルーツ類はかぐや発注で銀座の有名フルーツ店の物を使っている。

二段になってるが実際は重なってる部分は一段目の部分で、スポンジ中心部をくり抜いて、開いた部分に支えを入れて、くり抜いたスポンジを乗せてるので実質一段のケーキなんです。

と、自慢げに優に萌葉が解説する。

 

ちなみに3段以上のウェディングケーキ等は、ケーキカットでナイフが入る部分だけ本物で他の部分はレプリカという物もある。

新郎新婦が場所を間違えると・・・などというあるあるも起きたもの。

 

 

 

『すごい手間暇かかってるんですね。』

 

 

優の率直な感想なんだが、その話を聞いた御行はそれをかぐやが自分の為「だけ」にしてくれたと脳内変換が起き、嬉し恥ずかしさと巨大な幸福感で本日二派目の泣き出しそうな感情の波に、必死に泣くのを抑えていた。

 

さて、当のかぐやは御行の誕生日に3段ケーキを実際用意して大き過ぎると直前に気が付き、ショートケーキ1個分を切り出してプレゼントと渡した経験がある(3段ケーキは愛が主に処理した)為に同じ失敗を繰り返す訳にはいかなかったが、ケーキを食べた事も盛大に祝われた事も殆どない白銀御行に両方体験して貰うにはサプライズパーティーが良いと判断した。

 

白銀家の家庭事情と御行のトラウマの幼少期体験を知ったかぐやは、交際スタートから結婚後も御行の誕生日は必ず祝う様にして、お返しに御行も必ず正月にケーキを用意して正月ムードを無視してかぐやの誕生日を祝っていた。

四宮家の正月の有り様と、幼少期からのかぐやを取り巻く環境を知ったから、である。

 

為にかぐやは、いつもの感覚で張り切ってケーキも料理も率先して作った。

 

 

 

『かぐやさん、凄かったんですよ。

働いていたんじゃないの?って思っちゃうぐらい、手早く下ごしらえや料理をしていって。

早坂さんと阿吽の呼吸で次に何をするのか、話さなくてもお互い解ってるみたいに。』

 

 

千花が見ていたかぐやと愛との連携の手際の良さは、感心する程に洗練されていて思わず見入ってしまうほどだった。

 

 

 

『もう、皆さん褒め過ぎですよ。』

 

 

恥ずかしそうに答えるかぐやだが、十年近く台所に立てばそんなもの。

千花から正面から褒められた愛も表情は澄ましてるが、心はドヤ顔で「かぐや様とは1番長い付き合いですから!」と思っていた。

 

 

「会長。ハイ、あ〜ん。」

 

「会長。これ、美味しいですよ。」

 

 

並んだ席をガッチリキープしているかぐやは、合間を見て白銀御行に食べさせたり料理を勧めたりして、おしどり夫婦といえる空気を時々出し、御行はかぐやと結婚したら毎日こんな感じかと妄想の世界に入り込む。

千花と萌葉はそれぞれかぐやと御行を取られた気分になり、愛は「かぐや様、大胆!」と驚愕し、かぐやの本心を知ってる圭はイラつきつつ2人を見て、優と千花の姉の豊実は料理を堪能して居た。が、楽しい食事会は、その後に始めた藤原千花のゲームのせいで阿鼻叫喚の世界となった。

 

ちなみにかぐやは、写真を最近始めたからとパーティーの様子を収め、希望者には焼き増しを、御行にはフォトブックにして後日渡した。

 

誕生日パーティーが終わって余った料理や材料はそれぞれが持ち帰る事になり、それでも余る物は藤原家が引き受ける事になった。

主役は白銀御行だったが、参加者全員が食べて・持ち帰るぐらいの量を見積もってケーキの大きさや食材の量を考えて、持ち帰り用の包材も準備しておいたかぐやは、片付けの手伝いがあるからと藤原家の玄関先まで白銀兄妹を見送った。

 

 

 

『四宮、ありがとう!

忘れられない誕生日なったよ!!』

 

 

格好付けてるが、御行は本日第三波の感情の波に泣き出す寸前で踏ん張ってる状態で、「この人、案外涙もろいのよね。」と内心苦笑してるかぐや。

多分、途中で泣くなと予測してる圭は兄を連れて手早く帰宅の途につき、かぐやは片付けに戻った。

 

 

 

『会長、どうでした?』

 

『凄く喜んでましたよ。』

 

『そうでしょう、そうでしょう。

いや、良かった良かった。』

 

 

かぐやは愛想笑いしてるが、内心はゲームは要らなかったと思ってる。

なんで誕生日パーティーで王様ゲームなの?と、おまけに何をやるかは皆で紙に書いて箱に締まって、くじ引き方式でお題に挑戦って・・・

 

既に見送った白銀兄妹と、それより先に石上優と早坂愛は帰って、残ったのは藤原三姉妹とかぐやの四人。ただ、三姉妹の長女の豊実は、勝手に飲んで酔いつぶれて、萌葉はテーブルの片付けをしてるので、台所の片付けはかぐやと千花の二人になっていた。

 

 

『でも、なんか妬けちゃいましたよ。会長とかぐやさん。』

 

『あら、どうして?』

 

『なんて言ったらいいんでしょう。

すごくお似合いというか、あんなに自然と「あ〜ん」出来るなんて。』

 

『ああ、あれは前にちょっとありましてね。

会長は何時までもケーキを渋って食べないから、つい。』

 

『凄く嬉しそうでしたね。』

 

『サプライズにした甲斐があったわ、ありがとう藤原さん。』

 

 

他愛の無い会話は片付けが終わった後も続き、結局、かぐやは藤原家に連泊となり、翌朝、ハーサカ君に変装した早坂愛が迎えに行く事になった。

 

因みに、持ち帰ったケーキを見てパーティーの際にかぐやに「あ〜ん」された余韻に浸っていた御行は、大事に食べるつもりのケーキを父親に横取りされて口論になった。

それを見て呆れる圭だった。

 

 

 

───つづく

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。