白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ

生徒会室でおでんを振る舞っていた四宮かぐやは、訪ねてきた四条眞妃から白銀御行達と一緒に柏木渚と眞妃が大喧嘩をして仲直りし、渚が恋人の田沼翼に振られた事を知らされる。


075『藤原千花は泣きたい』

 

 

 

───木曜・生徒会室上の秘密部屋

 

 

石上優は、自前のギターを持ったまま固まっていた。

生徒会長の白銀御行は、文化祭に向けて実行委員会との打ち合わせの為に遅くなる為、先に集まっていた四宮かぐやら女性陣三人と優の四人でバンド演奏の練習を始めていたのだが、そこにかぐやの再従姉妹姪の四条眞妃が前日に続いて顔を出し、流れから眞妃をボーカル役にして歌ってみようという事になり、模擬バンド演奏が始まった。

 

藤原千花と伊井野ミコはピアノコンクールの全国大会に出場する腕前、かぐやと眞妃も何でもこなしてしまう天才で楽器などの教育も受けている。

おまけに四人とも完璧主義に近い価値観を持っていた為、何年も活動しているセミプロバンドの様な息の合った演奏に短時間でなってしまったのだ。

 

こうなると優の腕前ぐらいではかえって演奏の邪魔になる為、空気を読んだ優が自主的にトイレ休憩と嘘を付いて外れたのだが、どこか遠慮があった四人は持てる力を全力で出してライブの様な状態になってしまったのだ。

 

まだまだ慣れてない筈のミコが鮮やかなスティックさばきでドラムを叩き、千花が電子ピアノを日頃のはっちゃけぶりが嘘の様に可憐な指さばきで奏で、かぐやが予備のギターを力強く激しいピックさばきでかき鳴らし、眞妃がメゾソプラノの歌声を披露する。

 

トイレから戻った優は、最早入り込む余地もなく、観客になってしまっていた。

 

 

 

『あぁーーー、最高!

皆、ありがとう!!

すっごく気持ち良かった。』

 

『いや、久々に本気になっちゃいました。』

 

『ねぇねぇ、さっきの弾き方、もう一回見せて。

物凄く歌いやすかったのよ。』

 

『良いですよ〜。』

 

 

ピアノを止めてから気が向いた時に弾くぐらいしか演奏していない千花にとって、久々に本領発揮な上に眞妃が目を輝かせて千花の演奏を褒める為に、大分気分が良い状態になっており眞妃のリクエストに応える。

 

眞妃も眞妃で、自分と同レベルの技量持ちにかぐや以外ではなかなか出会わない為に、演奏家として千花を気に入ってしまったのだ。

 

 

 

『伊井野さん、力強いドラム演奏でしたよ。』

 

『四宮先輩も、見事なギター演奏でした!

経験あるんですか!?』

 

『三味線は習ってましたから少しは出来るかなと思っただけで、私なんて全然ですよ。』

 

『そんな事ないですよ。』

 

『(あれで全然なら、僕はどうなるんだ・・・。)』

 

 

かぐやとミコも、タオルで汗を拭きながら互いを称える。

二人だけでも既に活動期間の長いアマチュアバンド並みに仕上がっていて、優は既に立ち入れないぐらいのレベル差を四人との間に感じていた。

 

 

 

『今度は私にやらせて。』

 

『あっ、それならこの曲弾いてみます?』

 

『どの曲?

 

・・・知らないわね。

 

これ、なんか曲調がさっきと違わない?』

 

『実はですね、この歌はピアノで弾けるんですよ。

この曲だけじゃなくて、大体の曲はピアノで弾けるんですよ。

少しテンポを落としますけど、いきなり速いテンポだと合わせるのは大変だと思うので、どうですか?』

 

『う〜ん・・・、まあやってみるわ。

かぐや、私と代わってボーカルやる?

で、どう弾いたらいいの?』

 

『わ、私は歌は得意じゃないんですよ。

伊井野さんは、どうですか?』

 

『私も、歌はちょっと。

もうちょっとでドラムのコツが掴めそうなので、ドラムを続けたいです。』

 

『それなら、私が次は歌いますね。

かぐやさん、ミコちゃん、次はこの曲でお願いしますね。』

 

『どの曲ですか?』

 

『先輩、どのページですか?』

 

『ええっと・・・、このページのこの曲です。』

 

『(・・・藤原先輩が乗り気だと、嫌な予感するな。)』

 

 

観客になって見守っていた優は、雲行きが怪しくなってきている様に感じていた。

 

 

 

 

───その頃、御行は生徒会室に向かっていた。

 

 

 

『・・・少し、長引いたな。』

 

 

御行としては練習と下校を考えるとあまり時間を割きたくはなかったが、申請書類などの確認などで時間を取られてしまった。

年内のイベントは残すは文化祭のみな為に、勉強時間を少し減らして30分だけでも捻出してギターの練習をしたいところだった。

文化祭本番まで逆算して練習時間を確保したいが、今のままで間に合うのだろうかと懸念はある。

そんな事を考えながら生徒会室に着いた御行は、微かに聞こえてくる場違いな歌を聞いてしまった。

正確には声の主は千花と解ったのだが、歌が引っ掛かるのだ。

 

 

 

『・・・これ、予定の曲じゃないだろう?

なんか、聞き覚えあるな。』

 

 

「演奏予定の曲はロックかポップスだった筈だが?」と、御行は訝しがりながら秘密部屋への階段を上がる。

生徒会室に僅かに漏れてきていた歌声と演奏が階段を一段昇る度に段々ハッキリしてきて、御行はある確信を持つ。

 

こんな歌を歌うのは藤原千花ぐらいだと。

 

 

 

『さぁても 皆さま 悪声ながら〜〜〜

 

坂田三吉 物語り

 

派手なかけ声 いただいて

 

唸るおとこの

 

かわちぃ〜〜〜 ぶうぅぅぅしぃぃ〜〜〜』

 

河内おとこ節/中村美律子(012-0857-1)

 

秘密部屋に入ると、千花が何処から持ち込んだのか、おたまをマイク代わりに演歌を熱唱していた。

思いっ切り項を垂れて四つん這いになる御行。

 

 

 

『いつから、演歌を歌う事になったんだ!?

ロックかポップスの予定だったろう!!

練習時間がないんだぞ!!!』

 

『あれ?

会長、知らないんですか?

殆どの曲は、演歌調に歌い直す事が出来るんですよ〜。』

 

『そういう話じゃない!』

 

『か、会長、息抜きですから。

そんなにカリカリしないでください。』

 

『ごめん、御行。

私が簡単な曲にしてって頼んだから、この曲になったのよ。』

 

 

かぐやと眞妃は千花を庇うが、演奏し始めてから今まで「これって、何の歌?」と千花以外の四人は頭の中が?マークで一杯だった。

ただ一人、千花だけが気持ちよく歌っていたが。

 

 

 

『四宮、四条、庇わなくていい。

藤原の発案だろう?』

 

『ま、まあ会長。

結構楽しいですよ、洋楽器で演歌を演奏するのは。』

 

『そうですそうです。

じゃあ皆さん、そういう事で。

頭からもう一回行きましょう!』

 

『気持ちは解りますが会長、先輩達の演奏は凄いですから、一度聴いてみませんか?』

 

『石上・・・。

仕方ない、伊井野や石上までそういうなら頭ごなしに否定するのもアレだしな。』

 

『じゃ、いきますよ皆さん!』

 

 

再度、演奏が曲の最初から始め直す。

賑やかな祭囃子調の曲が始まり、千花が手拍子をしながら歌い始め、御行と優もつられて手拍子をしていた。

 

 

 

『しかしまあ、息抜きと考えればいいか。』

 

 

御行はそう言いながら優と手拍子を続けているが、体がウズウズしてる様に優には見えた。

 

 

「ひょっとして、会長はこの曲を知ってる?」

 

 

優はそう感じていた。

実際、曲自体は明るく元気が出るのは確かであり、演奏している三人は次第に楽しくなってきていた。

 

 

 

『〜かわちぶぅしぃぃぃ〜〜〜〜〜』

 

 

それほど長くない曲の為、直ぐに千花は気持ち良さげに声を伸ばし歌い終わる。

 

 

 

『いや〜〜〜、気持ち良かったです。

皆さん、初めてにしては上出来ですよ!』

 

『そ、そうかしら?』

 

『まあ、良いんじゃない。

一番大変だったのはこの子だし。』

 

 

眞妃はかぐやの反応に応えると、右手でミコを指差す。

 

 

 

『な、何とか演奏できましたけど、ドラムで演歌って難しいです。

藤原先輩、次は先輩がしてください。』

 

『私はミコちゃんなら出来ると思ってたよ〜。』

 

 

千花は適当な事を言ってはぐらかそうとするが、ミコの中で千花の評価がまた一つ下がった瞬間だった。

 

 

『さて、いい演奏が聴けたところ、本番だ。』

 

『そうですそうです。

次は会長の番です。』

 

『・・・えっ?』

 

 

途端に眞妃と千花以外の全員の血の気が引く。

 

 

 

『・・・藤原書記。

まさか、俺に今の曲を歌えと?』

 

『会長はギターをお願いします。

難しくないですよ。

会長は音を二つ出すだけでいいですから。

石上君、ギター貸して。

かぐやさん、会長の横で同じところを演奏してください。』

 

『わ、私ですか!?

千花さんが指導するんじゃ?』

 

『しますけど、お手本がいないと会長もコツが掴めないと思いますから、かぐやさんがお手本をお願いします。』

 

『藤原先輩はどのパートを担当するんですか?』

 

『私は、ボーカルです!』

 

 

ドヤ顔で千花は宣言するが、眞妃以外は困惑顔である。

御行とかぐやがギターを担当すれば、残る楽器はドラムと二台の電子ピアノであり、両方とも優は演奏できない。

 

 

 

『わ、私も今度はピアノがいいです!

それに、ドラムは藤原先輩が演奏するんじゃ?』

 

『この曲は、ドラムパート無いんですよ。』

 

 

千花以外の全員の頭に?マークが飛び回る。

では、さっきミコが苦労してドラムで演奏したのは何だったのだろうか・・・。

 

 

 

『さあさあ、始めますよ!』

 

 

反論が出る前に勢いで押し切ろうとする千花に、ミコは静かに怒りが蓄積していく。

 

 

『・・・先輩、それはどうかと思います。

伊井野は頑張って演奏したのに、そんなに軽く流されて本来はドラムパートは無かったなんて、伊井野の頑張りはどうなるんですか?』

 

『・・・石上・・・。』

 

『・・・そうです。

今、私達がやってる事はそれぐらい難しくて大変な事をやろうとしてるんですよ。』

 

『・・・どういう意味ですか?』

 

『バンド演奏なんて、一朝一夕にできるもんじゃないんです!

まして、会長みたいなド下手くそがまともに演奏出来る様になる為には、ミコちゃん以上の無茶をしないといけないんです!!

 

・・・それを解って貰う為に、私は・・・、私はミコちゃんにあえて試練を課したのです!!!』

 

『ええっ!?

そ、そうだったんですか!!?

藤原先輩!!!』

 

『『『『『・・・。』』』』』

 

 

「何を言ってるんだ、この人達は?」と、千花と千花にあんな扱いを受けても簡単に信じてしまうミコ以外の全員が思っている。

部外者に近い眞妃ですら、そうだ。

目茶苦茶理論にも程がある。

 

御行の演奏が下手なのと、バンド演奏が簡単でない事と、ミコにドラムパートのない曲をドラムで演奏させた事と、千花がただ歌いたいだけにしか見えない事が、どう繋がるのか理解できなかった。

 

 

 

『・・・もういい。

時間がない、練習しよう。』

 

『そう・・・、ですね。』

 

『ではでは、いきますよ。』

 

 

最早、誰も突っ込む気も無くなり、粛々と千花のリサイタルの様な練習が再開された。

 

しかしながら、先程の歌声と同じで自らボーカル役をしたがる千花は、流石に歌は上手かった。

「河内おとこ節」をもう一回演奏し終えたタイミングで下校を求める予鈴がなり、御行達は片付けに入った。

 

 

 

『ああ〜・・・。

後、二・三曲は演奏したかったんですけどね・・・。』

 

『・・・他には何があったの?』

 

 

御行達が千花と距離を置いて片付けをしている為に、一番近くにいた眞妃が必然的に千花の話相手をする事になった。

 

 

 

『これなんかいいと思うんですよ。

懐メロになるんですけど、長くないのと演奏的にはそこまでレベルは高くないですから。

 

・・・あっ。』

 

『どれどれ・・・。』

 

 

片付けをしていた手が止まり、楽曲帳の前で急に二人が黙り込んだので、片付けが大体終わった御行達が二人を見ると、千花が気遣わしげな視線で眞妃を見ながら狼狽しており、当の眞妃は固まってる様に見えた。

 

 

 

『あっ、やっ、これは・・・。』

 

『・・・さようなら、

 

・・・好きな人、

 

・・・。』

 

『・・・どうしたんですか?』

 

 

二人の様子がおかしいので優が近付いてみる。

二人の前に広げられた楽曲帳は、あるページが開かれていた。

そこには、

 

 

『好きになった人』都はるみ(043-0923-5)

 

 

というタイトルが付けられた楽曲が書かれていた。

歌詞に目線を走らせた優は、眞妃同様に固まってしまった。

その様子に、ただならぬ事態が起きたと判断した御行・かぐや・ミコが楽曲帳を覗き込み、歌詞を読んで優や眞妃同様に固まってしまった。

 

書かれていた歌詞は、

 

 

「さよなら さよなら

元気でいてね

 

好きな二人は いつでも逢える

たとえ別れて 暮らしても

お嫁なんかにゃ 行かないわ

待って 待って

待っているのよ 独りでいるわ

 

さよなら さよなら

好きになった人」

 

 

だった。

 

誰も何も言えなくなってしまった。

歌詞を追い掛けて呪文の様に小声で呟き続ける眞妃。

最早、何を言ったら、何をしたらいいか解らず涙目の千花。

圧のこもった視線で、「なんでこんな曲を見せるんだ」と無言で問う御行。

乾いた引き攣り笑顔と冷え切った目で千花を見つめるかぐやとミコ。

千花に無言の非難が集まる中、優は横にいる眞妃に声を掛ける。

 

 

『四条先輩?』

 

『・・・ごめん、先に帰るね。

お邪魔しました。

楽しかったわ・・・。』

 

『ま、眞妃さん・・・。』

 

 

かぐやは呼び止めようとしたが、眞妃は周りが見えなくなってる様で、かぐやの声にも反応が薄くなっていた。

秘密部屋の階段を降りていく後ろ姿は嫌な予感しか感じさせない。

 

 

 

『会長、後頼みます!』

 

『えっ、石上?』

 

 

間髪入れず優が動き、眞妃を追って階段を降りていく。

 

 

 

『ご、ごめんなさい。』

 

 

金縛りが解けた千花が慌てて頭を下げるが、それどころではなかった。

 

 

 

『どっ、どうします、会長?』

 

『落ち着け、四宮。

今は石上に任せよう。

藤原、お前も頭を上げろ。』

 

『・・・はい。』

 

『とりあえず、降りませんか?

早くしないと、校門閉められますよ。』

 

『だな、ともかく帰ろう。

それと、藤原書記。

凹む暇があったら行動しろ。

いつものお前は、そういう奴だろう。』

 

『か、会長・・・。』

 

『わ、私、石上の鞄持っていきます。』

 

 

バタバタとミコが階段を降りていくが、残された三人にはある疑問が頭をよぎっていた。

 

 

 

『『『鞄なんか持ってたか?』』』

 

 

と、各自記憶を掘り返す。しかし、石上優が鞄を持ってるところを、三人とも見た記憶がない。

 

 

『そういえば、石上って何時も持ち歩いてるゲーム機も何処に隠し持っているんだ?』

 

『・・・彼は痩せ型で服も大きくはありませんから、上着の内側に入れていたら膨らみますから、持っていれば解りますものね。

そんな姿は見た事ありませんし、私と勉強してる時も鞄は持ってませんでしたね・・・。』

 

『石上から大分前に聞いた話だが、教材類は毎日持ち帰ってると言ってたな。

中等部の時に、例の件でかなり悪質で陰湿な嫌がらせをされたと言ってたからな。』

 

『と、なると、鞄は持ってきてはいる?』

 

『・・・そういう事だろう。』

 

『ゲーム機は持ち歩くけど、教材類は何処かに置いているか、そもそも無くても困らないのでしょうか?』

 

『そういえば、アメリカの話だが、事情があって家庭で子供に勉強を教えて通学させてない親が、前日に予習・復習して翌日に子供に勉強を教えて大学まで卒業させたそうだ。

その子供達は今は大学で講義を受け持つ教育者になったと、テレビでやっていたな。』

 

『ま、まさか、会長。

石上くんがそこまで出来るとは思えませんけど?』

 

『・・・ありえなくはないですよ。

例の件で調査した時も、石上くんは普通の生徒なら音を上げてしまうぐらいの量の課題を教師から課されても、毎日消化していたそうです。』

 

『・・・石上はゲームを辞めて本気になったら、かなりの順位にまで成績は上がるんじゃないか?』

 

『そうかも知れません。

陰湿な嫌がらせがトラウマで教科書類を持ってこない代わりに、前日に内容を頭に入れて登校しているのかも。』

 

『・・・かぐやさん、会長。

盛り上がってるところですけど、後五分で校門閉まりますよ?』

 

『なにっ!?』

 

『ええっ!?』

 

『急ぎましょう、ダッシュですダッシュ!』

 

『ああ、もう!

残りは明日の朝だ!!』

 

『ええっ、急ぎましょう!』

 

 

三人は慌てて秘密部屋の階段を降り、生徒会室を後にした。

かぐやと千花は校舎を出たところで自転車の御行と別れ、校門前に待機していたかぐやの迎えの車に二人で駆け込むと一息つく事が出来たが、ある疑問にかぐやは気が付いた。

 

 

 

『ねぇ、藤原さん?

校門が閉まるからと、私達は慌てて下校する必要あったのかしら?

確か、まだ校内に部活や文化祭準備で結構な人数残っていたわよね?』

 

『ああ、そうですね。

慌てる必要なかったですね。』

 

 

千花はあっけらかんと言い放ち、ケタケタと笑っていた。が、急に真面目な顔になってかぐやに頭を下げた。

それでかぐやも察しがついて、何も言わずに千花を抱き締めた。

 

 

 

『貴女って、結構うっかりなところあるわよね。

普段は結構抜け目ないのに、偶にね。

そんな時はいつもは笑って誤魔化してるけど。』

 

『・・・かぐやさんだって。

 

・・・私は、四条さんを傷付けるつもりはなかったんです。』

 

『解ってるわよ。

でも、謝るなら早い方が良いわ。

私から連絡しておくから、明日にでも。』

 

『・・・お願い、します・・・。』

 

 

傷付きやすくて周りの顔色を伺って、好き勝手な言動を見せるのは甘えられる相手だけ。

藤原千花という女の子は、同年代の子達と変わらない。

平均的な子達よりも傷付きやすいかもしれない。

それを周りを振り回す様な言動で

気が付かれない様に、傷付いた事すら悟らせない様に糊塗している。

かぐやはどんなに振り回されても、自分と似た部分を持つ千花の友人であり続けるのは、そんな事が理由かも知れない・・・。

 

冬も間近で日も暮れるのが早くなった11月終わりの夕刻、そんな二人を乗せたハイヤーは夕暮れに染まりながら松濤の千花の家へ走っていた。

 

 

 

───同じ頃、優を追い掛けたミコは、通学路から外れた公園で泣いている眞妃を抱き締めている優を、公園の植え込みに隠れて見ていた。

公園の反対側には、野次馬の小学生グループと近所の主婦グループが食い入る様に二人を固唾を呑んで見ている事を知らず、泣き続ける眞妃を優は慰め続けていた。

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

 

 

 

 

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