白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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2026,01,02 訂正


✕編集中✕

 

 

四宮雁庵の長男で四宮家次期当主である四宮黄光は最近不機嫌である。

主たる原因は、雁庵の長女にして親子以上に年の離れた末妹・四宮かぐや。

 

9月早々、京都本宅に突然やって来たかぐやは、何をするのかと思えば現当主で父親の四宮雁庵に会わせろと直談判してきたのだ。

 

鬼気迫るといった迫力と渋る黄光に土下座までして止める親戚などを押し退けて通り、保護者役の雁庵の三男・雲鷹でさえ窘めて止めようとするが、『娘が父親に会いたいと来て何が悪いのですか!?』と咆哮かと思うぐらいの口上の激しさで押し切られた。

そうまでして父親と何をしたのかと思えば、「写真が撮りたい」だけだった。

 

別室で雲鷹と時間を潰していれば父親の元に呼ばれ、「家族四人の写真」が撮りたいとかぐやに頼まれた。

家族と言われた事にむず痒さを覚えたが、雲鷹も同じらしい。

 

父親の手前、断る理由もなく承諾したが、よくよく考えれば父親との飾らない写真はこれが初めてだと気が付き、後で眺めてほろ苦い気持ちなった。

 

それから、週末毎に必ずと言っていいほど本宅に来る様になったかぐやは、徐々に本宅での存在感を増していった。

 

あれほどかぐやを遠ざけていた雁庵はかぐやと必ず会う様になり、かぐやは本宅使用人達の心証も良く、あろう事か本宅の板場に入り込み手伝いまでし味噌汁まで作った。

別邸では毎朝やってると言われて、卵入りという変わり種に驚きました。

その味噌汁を雁庵が気に入ってしまったから、何も口出しできなくなった。

 

黄光も知らずに出され、味噌汁を飲んでみたが美味かったのが癪に障る。

 

同時期、夫人が娘の嫁入り修行と料理の手ほどきを始めた。

それはいいが、娘の料理が自分の口に一口も入らないのが、また癪である。

 

同じ板場で手ほどきを受けているのだから、かぐやの影響と黄光は邪推している。

実際は両者の使う時間帯も曜日も違うので勘違いでしかない。

 

以前は猫を被っていても隠し切れない狡猾さを感じていたが、今は畏まりはするものの堂々としていて、かぐやが居るだけで場の空気が和らぐ。

 

更に、父親の雁庵の態度も違う。

かぐやが部屋を出た時に入れ代わりで入り、いつも通り「親父」と言っただけで殺されるかと思う程に睨み付けられた。

 

これには事情があり、かぐやは最初は「お父様」と言ったのだが、「お父さん」と言った時があった。

雁庵が満更でもない反応したのを見逃さなかったかぐやが、以後は「お父さん」と呼ぶ様になったのだ。

 

その余韻に浸ってる時に「親父」と呼ばれたのが無粋に感じ感情的になってしまったのだ。

しかし、予想外の雁庵の反応に動転した黄光は思わず、何をトチ狂ったか「パパ」と言ってしまったのだ。

 

「パパ」の意味を理解するのに雁庵と黄光や、居合わせた者達は五秒の時間が必要だった。

そうして頭が理解すればするほど、意外な人物からの似つかわしくない発言の為に、居合わせ各人は当人以外は笑いを堪えるのに必死だった。

黄光は赤っ恥をかいたのだ。

 

そういったものが重なったところで両者が対面する機会が生まれた。

 

偶然でしかないのだが、場を和ませ様とかぐやが藤原千花を真似て花札を誘ったら黄光が食い付いた。

 

結果・・・

 

 

 

『もう一勝負だ!』

 

『良いですよ!』

 

 

黄光が熱くなって二人の花札対決となった。

勝敗は黄光が負け越している。

雁庵は止めもせず、親子ほどの年の差の兄妹喧嘩の様な対決を面白いからと見物している。

 

 

「コイツは何を考えて毎週来てるんだ?」

 

 

昼下がりに親父に会って他愛も無い話をして泊まって、翌朝は必ず味噌汁作って昼には帰る。

 

 

「たったそれだけの為に、態々来るか?

あれだけ寄り付かなかった狡猾な小娘もだが、親父も親父だ。

ポックリ死んだ妾に見た目が似てると鼻の下伸ばしやがって。

お袋はどうなるんだ!?」

 

 

黄光が勘ぐってるが、かぐやにも全く考えなしで本宅に来てる訳では無い。しかし、御行との事で生じた苛立ちと鬱憤をこの「タコ」に今はぶつけて発散してるのだ。

 

最初の勝負で「タコ」の威圧的な言動が癇に障ったので、一方的に叩きのめした。

カスすら作らせない様に自分の役より「タコ」の妨害に終始し、散々邪魔した。

 

「タコ」もそこまで花札が下手ではないので、かぐやの意図が最後に読めた。

 

 

「このクソガキが!」

 

 

文字通り逆上して茹でタコになってしまったから、かぐやはからかい半分に勝っては負けてを繰り返し、黄光は勝っても勝った気になれず、よりムキになって負けて、かぐやに踊らされる。

 

茶を飲みながら二人の勝負を眺めていた雁庵は、黄光も疲れてきたろうと強引に代わり、かぐやと勝負となった。

 

やたらうるさい黄光が黙るだけ途端に場は空気が変わり、かぐやは初めてとなる父親との真剣勝負となる。

互いに札を取り役を作り上げるを繰り返す遊びだが、花札を通してひと言も喋らないが親子の対話は続く。

 

 

 

『ダメですね、負けましたお父さん。』

 

『そうか? 俺が負けたと思ったが。』

 

 

その後も勝負は続くが、黄光は仕事の為に外出し今日は戻ってこない。

 

 

「なんだ、親父のあの目は?

かぐやも俺の時と違って、声一つ出さないで。

俺じゃ話ならないっていうのか、二人とも!」

 

 

その夜、黄光は荒れて深酒して数日寝込む事になった。

 

 

 

 

 

 

 

『次の週末、お父さんと一緒に出かけたいのですが?』

 

 

花札も終えて、娘の淹れてくれたお茶を飲みながら、雁庵は横に座ったかぐやの頼み事を聞いていた。

なかなか美味い茶だなと思いながら具体的な段取りは席を外してる早坂と詰めろと、秘書で早坂愛の父親の早坂正人に振った。

早坂親子は、家族水入らずの時間を過ごしていた。

 

その時は、眠くなっていたので行き先は気にも留めてなかった。

 

若いだけに何処ぞの服屋で買い物でもしたいだけだろうと。

それより、久々の「真剣勝負」と「美味い茶」の余韻に浸っていたかった。

 

かぐやはそれ以上話しかけて来ず側に居るだけ。

それが雁庵には心地よく、かぐやの母親の名夜竹もそうだったなと思い出しながら、雁庵は寝息を立てていた。

高齢になれば若者が難なく出来る事でも、大変な労力を使う。

 

雁庵とかぐやは、会話はないが以前は想像も出来ない「二人だけの時間」が流れていく。

 

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