白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───火曜・放課後の生徒会室

 

 

 

 

 

今週は三連休の為に火曜日スタートの週の為と、高等部全体は体育祭の熱気が残っているので少しテンション高めだったが、朝から早坂愛の機嫌が悪かったので今週は大人しくしておこうと考えたかぐやは、生徒会メンバーとの雑談の中で長野と静岡のお土産を渡しながらバイクでの週末旅行記を話したところ、全員が怖い顔になった事に気が付いた。

 

かぐや本人はお茶請け話にと話したつもりだったのだが、他のメンバーにはとんでもない事をサラッとやってのけた、と映っていた。

 

 

 

『四宮、プライベートの時間にお前が何をするかは自由だが、免許取り立ての人間が高速乗って京都まで往復するのは、正気の沙汰じゃないぞ。』

 

 

かぐや以外のメンバーの中で唯一の免許保有者の白銀御行が、暗黙の了解で口火を切って説教を始める。

正直、笑って失敗談として話すかぐやに恐怖を覚えていた。

京都まで免許を取って直ぐに往復するなど、御行は信じられない気持ちだった。

 

 

 

 

───四宮らしくない。

 

 

 

それが白銀御行の本音だ。

 

白銀御行の何時になく真剣な表情に石上優と伊井野ミコ、「あの」藤原千花ですら真剣な面持ちでかぐやを見つめる。

 

ここまで真剣な空気になるとは思わず戸惑うと同時に、心配されてる事に温かいものを感じるかぐやだった。

 

 

 

『四宮、今度行く時は俺にも声を掛けろ。

俺も免許(実質ペーパー)はあるから、一緒に行くぐらいは出来る。』

 

 

(えっ! ソレって、ドライブデート!?)

 

 

かぐやはそう考えたが、当の白銀御行は心配が九割なので考えに至ってない。

石上優や伊井野ミコは「先輩、大胆!」と顔に出ていた。

ただ、藤原千花だけが沈黙を守ってる。

 

 

『大丈夫です、会長。

家の者に大分絞られましたので、しばらくは遠出は出来ませんから。

ただ、私は出来れば皆さんとツーリングしたいと思うのですが?』

 

『う〜~〜ん・・・、魅力的な提案ですけど、風紀委員会や期末考査や奉心祭やらで年内は私は難しいですね。

免許からになりますから。

石上は来年までは無理よね。』

 

『僕は免許取れればバイクは兄に借りれるでしょうからね。』

 

『直ぐ動けるのは俺だけか。』

 

『なら、横浜ベイブリッジを抜けて横浜まで行ってみません?』

 

『横浜か、近いし直ぐ帰ってこれるか。』

 

『横浜ならお土産に焼売お願いします、会長。』

 

『それは定番すぎないか?』

 

『石上、横浜ならケーキとかは?』

 

『車ならともかく、バイクでケーキは大変だぞ、伊井野。』

 

 

花が咲きかけた雑談は激しい音で中断させられる。

藤原千花が右手でテーブルを叩いたのだ。

 

 

 

『・・・皆さん、かぐやさんに怒るんじゃなかったんですか?』

 

 

日頃の藤原からは想像できない程の低い声でメンバーに問い掛けてくる。

白銀御行や四宮かぐやでさえ、その迫力に息を呑む。

 

 

 

『・・・藤原書記、それは俺が問い質したつもりだが?』

 

『それで、いいんですか?

皆、心配だからかぐやに怒ったんじゃないんですか?

 

それなのに、かぐやさんに誘われたら話に乗って、出掛ける約束をしそうになって。

 

皆さんの心配心はそんなに簡単に切り替えられるんですか?』

 

『藤原書記・・・、』

 

『解らないなら、もういいです!』

 

 

慌てたかぐやが間に入る。

 

 

 

『藤原さん、心配させてしまった事は謝ります。ただ、私は皆さんと楽しめたらいいなと思っただけで。』

 

『そういう事じゃないです!』

 

 

そう言うと藤原千花は生徒会室を出て行ってしまった。

 

 

 

『・・・どうしたもんかな。』

 

『私が見てきます。』

 

 

そういうと、伊井野ミコが藤原千花を追って行った。

 

 

 

『千花さん・・・。』

 

『藤原書記の態度は少し過剰とも思うが、気持ちは俺達も同じだ。

今回は、かなり度が過ぎたと俺は思う。』

 

『・・・はい。』

 

 

俯くかぐやを御行と優の二人は見つめるが、その後は結局は白銀御行と四宮かぐやの二人でバイクで出掛ける約束をしてしまった。

ドライブデートに気が付いた御行が、誘惑に負けたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

───廊下

 

 

 

藤原千花を追い掛けた伊井野ミコは直ぐに追い付いたが、何と声を掛けてよいか躊躇っていた。

そのまま、二人で近くの女子トイレに入る。

洗面台に寄りかかる様に立ち、藤原千花は伊井野ミコを見る。

 

 

 

『どうしたの、ミコちゃん。』

 

『藤原先輩・・・。

 

怒る気持ちは解ります。

私だって、四宮先輩は笑って話してましたが、運転免許取って直ぐに高速道路なんて怖いです。

 

・・・事故の話だって、色々聞きますし。

 

だから、藤原先輩は怒ったんですよね?』

 

 

伊井野ミコなりの解釈なのだが、藤原千花が四宮かぐやに怒ったのはそれだけが理由ではない。

 

九月からのかぐやの言動に違和感を、引っ掛かるものがあるからこそ、あえて行動に起こしたのだ。

それは、かぐやの親友として少なくない年月を共に過ごしたからこそ、最近の四宮かぐやには違和感を感じるのだ。

 

だが、それは今は言うべきではないと千花は考えていた。

 

 

 

『かぐやさんは色々言われてるけど、思い付きだけで動く人じゃないの。

バイクで京都に行ったのも、やってみたかった「だけ」じゃないと思うんです。』

 

『・・・。』

 

『哀しいじゃない。

親友なのに、何かやろうとしてると思えるのに、「本当の理由」を教えてもらえないなんて・・・。』

 

『藤原先輩・・・。

 

待つしか・・・、

 

ないんじゃないですか?』

 

『・・・そう、

 

・・・だね。

 

・・・なら、私は待とうかな。

 

やりたい事を教えてくれるまで。』

 

 

大仏こばちの事が頭をよぎる伊井野ミコは、二人は素敵な関係だなと思う。

 

日頃の千花を知るかぐやが聞けば複雑な表情にしかならないが。

 

伊井野ミコは藤原千花の本性を、まだ知らない。

 

 

 

 

 

生徒会室にミコと戻った千花は、再度四宮かぐやから謝罪を受けて謝り合ったが、やはり違和感を感じる。

具体的にいえば、喋り方や声の上下や選ぶ言葉など今までと微妙に違う。

 

親近感は今の方がある。

 

かぐやに周りへの遠慮がなくなったというべきか。しかし、変化を指摘してもはぐらかされるだけだろうとは思う。

寂しさを抱えつつ、その日は生徒会は解散となった。

 

白銀御行はバイト、石上優はゲームしたさに足早に帰り、追う様に伊井野ミコも二人をおいて先に進む。

 

 

───会長達が二人にしてくれている。

 

 

下足場に来た時、四宮かぐやと藤原千花は二人っきりになった。

 

周りに他の生徒はおらず、遠くに部活をしている生徒の声や物音が聞こえるだけの空間。

 

千花は言うつもりはなかったが、空気がそうさせたのかもしれない。

気が付いた時は、かぐやが自分の靴に手をかけたまま、表情は変わっていた。

 

 

 

『貴女は、誰なの?』

 

 

藤原千花は、四宮かぐやにそう言ってしまった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

かぐやは、言われた事の意味を即座には理解できなかった。

 

 

「私は四宮かぐやよ。」

 

 

そう答え様としたが、目の前にいる親友だと思ってる藤原千花の寂しそうな瞳を見た瞬間に、何も言えなくなった。

 

藤原千花は少し俯きながら続ける。

 

 

 

『かぐやさんはね・・・、物凄く臆病で繊細なんです。

 

物凄く考えてからでないと何も出来ない、凄く怖がりな人なんです。

 

私とは全然違う人なんです。

 

・・・会長に悪戯した日の事、覚えてますか?』

 

 

無言でかぐやは頷く。

上目遣いで見ていた千花は、話を続ける。

 

 

 

『普段動じない人なのに、悪戯位であんなに慌てて・・・。

 

そんな人が免許取って直ぐに高速で京都まで行って帰って来るなんて、考えられないの。』

 

 

 

 

 

───アメリカに行かなかったらやらなかったわよ

 

 

、とかぐやは思う。

 

彼の国は行動しなければ何も得られない。

遠慮や配慮より、動いて示さないと存在さえ認められない。

 

でも、

 

この頃の私なら、確かに考えられない事してるわねとかぐやは思う。

 

 

 

『ねえ、貴女は何をしようとしてるの?

 

私は怖いの。

 

貴女は、突然いなくなりそうで、

 

怖いの。

 

貴女は、誰なの?』

 

 

何時ものおちゃらけた藤原千花かと思ったが、目を見る限り真剣であったので、直感的に「私」に気が付いたのかもしれない。

かぐやはそう考えた。

彼女はその手の勘は鋭い。

 

 

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

───本当の事を言う訳にいかない。

 

 

 

こういう時は、言葉だけではダメとかぐやは行動に移す。

下足箱から手を引き、カバンを足元に置き、藤原千花を抱き締める。

 

 

 

『私は居なくならないわよ。

そんな怖い事考えないで。』

 

『・・・やっぱり、

 

・・・貴女はかぐやさんじゃない。

 

かぐやさんは、こういう時は抱き締めてなんかくれない。』

 

 

 

多少自覚はあるが、冷たい人間と改めて言われてる様で千花の言葉は癇に触る。

 

 

『・・・ねえ、千花さん。

貴女は私を普段どう見てるの?』

 

『言ってるじゃないですか?

意地っ張りの寂しがり屋で、頭でっかちの臆病な人って。』

 

『「意地っ張り」と「頭でっかち」は、さっきは言ってなかったわよね?』

 

 

かぐやの周りの気圧が下がり、帯電し始める。

藤原千花を抱き締めていた腕に力が入る。

 

 

 

『藤原さん、貴女は私をそんなふうに思っていたんですね。』

 

『い、痛い!

痛いです、かぐやさん!!』

 

 

慌てて千花はかぐやの肩を叩きギブアップを伝えるが、かぐやの体勢はプロレスのベアハッグの様な状態になりつつあり、かぐやの笑顔が余計不気味さを出している。

 

 

 

『こんなところで愛し合わないでくれる。

彼氏が泣くわよ。』

 

 

聞き覚えのある声で言われて慌てて千花を離したかぐやは、声の主に身体を向ける。

声の主は四条眞妃だった。

 

ただ、いつもの気さくさはなく、険のある態度だった。

 

 

 

『眞妃さん、愛し合うなんて私達は女同士ですよ。

それに、彼氏って誰の事ですか?』

 

『今時は珍しくはないでしょ?

 

・・・彼氏って、白銀会長しか居ないじゃない。』

 

『会長とはそういう関係ではありません。』

 

『付き合ってるんじゃないの。』

 

『ええっ!

付き合ってるんですか、かぐやさん!!?』

 

『千花さん、貴女まで眞妃さんに合わせないでください。』

 

『私はお似合いだと思ってるけど。』

 

『・・・真顔で言わないでくれます、眞妃さん。』

 

 

そう言いつつ言葉とは裏腹に顔が赤くなるかぐやは、白状してる様なものだが。

(未来で)結婚してるとはいえ、言われて嬉しい言葉はある。

 

しかし、四条眞妃に歯切れの悪い感じを受けるのは何だろう・・・。

 

その時、下校時間を告げる予鈴が鳴る。

 

 

 

『ああっ、ごめんなさい。

今日はペスの散歩があるんです。

かぐやさん、さようなら!』

 

 

そういうと、藤原千花は駆け出して帰って行った。

去り際に、少し笑いながら。

 

四条眞妃はつれない態度で自分の靴を出すと、そのまま帰ろうとした。

 

 

 

『眞妃さん、何があったの?

田沼さん?』

 

『・・・違うわよ。

大体、なんで知ってるのよ。』

 

『・・・私に言う前に、貴女もかなり判りやすいわよ。』

 

『・・・うるさいわね!

皆して、うるさいのよ!!』

 

 

唐突な反応に戸惑うかぐや。

 

が、こういう時は眞妃の良くない前兆と経験しているかぐやは、手に力を入れて眞妃の前に回り込んで両肩を掴む。

 

 

 

『私の目を見て、「眞妃」。』

 

『・・・。』

 

『「話せる?」』

 

普段はしないかぐやの言動に戸惑う眞妃。

少しの間、二人はそのままの姿勢をしていたが、眞妃が大きく息を吐き出すと観念したかの様に口を開く。

 

 

 

『トイレ・・・、行かない?』

 

 

 

 

 

 

 

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