白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
放課後
───一階下足場近くの女子トイレ
トイレの洗面台に寄りかかりながら、四条眞妃は話し出す。
『・・・パパが、私を転校させると言い出したのよ。』
『転校!?』
『・・・私は、幼等部から秀知院で友達も殆どここの子よ。
卒業前に他の学校なんて考えた事もなかったわ。』
『パパは高圧的に言ってくる事は殆どないけど、今回はかなり強く言われたのよ。
転校っていうのは、そういう「段階」に入ったって事でしょう。
アンタも・・・、かぐやも聞いてるでしょ。』
『・・・私は末妹だから蚊帳の外よ。
それでも、多少は聞くわ。』
眞妃の横に並んで同じ様に洗面台に身を預けてるかぐやは、眞妃に同意しつつ九月以降(タイムスリップ以降)の眞妃との関係を思い出したが、そんなに距離を縮められたかしら?と首を傾げ。
『ねえ、眞妃さん?
確かに以前に比べれば私と貴女はこうやって話してるけど、他人の見てる前で私達ってそんなに話してる?
殆ど生徒会室で皆さんとで会ってるから、私と特別仲良くしてると勘繰られる状態?』
『・・・それは私も引っ掛かってるのよ。
スープジャーも一回きりだし、私が自分で洗って返したからパパは知らない筈だし・・・。』
腕組みしながら眞妃も同意する。
二人の中では両家の抗争しか思い当たる節がない。が、二人とも腑に落ちない。
両家の関係は、かぐやと眞妃が産まれる前から固まっていた。
かぐやと親しくなる事が都合が悪ければ、眞妃をかぐやと同学年の秀知院の高等部まで通わせる事がおかしい。
眞妃の父親の「四条真琴」氏は子煩悩なところがあるから、強気な眞妃の扱いに困るところがあるぐらいだ。
───そうなると、別の力が働いた?
───まさか、バイクで京都まで行った反動?
・・・凄く中途半端で回りくどいのだけど。
しかし、眞妃とこういう話が出来るほどになれたのに、理由の解らない力に邪魔されるのは癪だ。
どの道仲直り出来るのだし、こんな顔した眞妃を見るのは嫌な気持ちだわ、と。
我ながら悪手でしょうけど、「調整」の下地を作る必要もあり、時間も殆どない中、飛び込んでみますかとかぐやは考えていた。
『眞妃さん、各生徒の家庭の事情に踏み込むのは良くないと言われるでしょうけど、「生徒会」として今回の貴女の事情は静観すべきではないと考えます。
お父様とお会いする事は出来るかしら?
高等部生徒会「副会長」として、お話をお聞きしたいのだけど?』
意外な申し出に驚く眞妃だったが頭を振る。
『逆効果になりかねないわ。』
『それでも、よ。』
『・・・アンタ、本当に変わったわね。』
『そうね、誰の影響かしら?』
『なに、惚気る気?』
『会長は心配性なだけよ。
積極性は貴方の影響よ。』
『そうね、以前のかぐやからは考えられないわね。
こんな話が出来る様になるなんて。』
そう言いながら、四条眞妃は笑っていた。
もっとも、未来で眞妃と交流する様になってから眞妃の積極性の影響をかぐやは受けているので、私が変われたのは御行さんや貴女達のおかげよとかぐやは思ってるが。
近い内に口実を設けて眞妃の父親の四条真琴氏に、「生徒会副会長」としてかぐやが対面する約束を取り付けて二人は帰ろうとしたが、下校時間を過ぎた事で正面玄関を施錠されていて、渡り廊下から帰る事になった。
普段の二人からは想像できない、靴を片手に靴下で廊下を歩く姿は何故か可笑しくてクスクス笑いながら歩いた。
途中、スマホゲームをしていた校長を見掛けたが二人は無視した。
もっとも、校長はゲームを口実に徘徊してるが見廻りも兼ねてる事をかぐやは知ってるが。
ふざけた男と思っていたが、食えないところのある男でもある。
買いかぶりかもしれないが・・・。
───夜、かぐやの寝室
ベッドに入っていたかぐやは、スマホの画面に目が点になっていた。
白銀御行からの連絡、
「四条眞妃が転校するらしい。」
に、である。
『なぁ、なんで、知ってるんですか!?』
考えられる事は、四条眞妃が教えた。
いつの間に、連絡先の交換を・・・。
そういえば、既に「経験」した今秋には、いつの間にか生徒会室に来る様になって、御行さんや石上君と友達になってたわね。
後で知ったけど、三人で遊びに行く時もあったわね・・・。
段々、かぐやの中にドス黒い感情が渦巻き始めていた。
そんな中、御行からの第二報。
「四条とライン交換した。
言いそびれていた、申し訳ない。」
『やっ、やっぱりそういう関係だったんじゃない?!』
渦巻いていたドス黒い感情はかぐやの身体から染み出してきて陽炎の様に立ち昇る。
可視化しすれば天蓋に届く程の高さとなり、かぐやのベッドは別空間の様になっていた。
刹那、かぐやは自分の頬を両手で叩く。
大きく息を吐き深呼吸を繰り返して瘴気を吐き出していく。
(危ない危ない、何をやってるの、私!)
しかし、不快は不快である。
『よし、明日シメる!
そして、私は寝る。』
割りと無条件に周りを助ける御行は、かぐやに恋敵を定期的に発生させるので、まともにヤキモチを焼いていては身が持たないかぐやは、ふて寝する事に慣れていた。
が、しかし、かぐやは予想外の爆弾を振り回される事になる。