白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
───護身術の練習の翌日
いつも通り登校した四宮かぐやは、好奇の目を向けられてる事に戸惑う。
同級生達とも朝の挨拶を交わしはするものの、皆が余所余所しい。
何故なのか、
「気をしっかり持ってね。」
「人生こんな事もあるわよ。」
など言われ、意味が解らない。
それよりも、今夜にでも四条家を訪ねようと四条眞妃を探して中庭の通路まで来て、皆が余所余所しい原因が判った。
掲示板の一角を見つめて立ち尽くす四条眞妃、心配そうに横に立つ柏木渚を見つけたかぐやは、段取りをしようと眞妃に挨拶をする。
『おはようございます、眞妃さん、柏木さん。』
眞妃は顔だけ向けてかぐやに反応し、柏木はオロオロしている。
普段と違う眞妃が指差す掲示板の一角をかぐやも見る。
そこにはマスメディア部の号外が張られていた。
「禁断の三角関係!?
かぐや様と四条眞妃さんが熱愛!
が、藤原千花さんとかぐや様はただならぬ関係に!
しかし、藤原千花さんの本命は白銀会長だった!」
かぐやも想像して無かった内容の号外に唖然とする。
『四宮、おはよう。
ここに居るとは珍しいな。』
『かぐやさん、おはようございます。』
『四宮先輩、おはようございます。』
白銀御行も藤原千花と石上優を伴って通り掛かり挨拶をするが、かぐやと眞妃は顔だけ向けて反応する。
柏木は更にオロオロしだす。
周りの生徒も息を呑む。
『『『『『朝から修羅場だ!』』』』』
周囲の変な期待は、完全に無視された。
御行も千花も石上も、号外の内容に唖然として言葉が出ない。
始業時間が迫り、各々の教室に向かうが、四人とも好奇と同情と侮蔑の視線に晒される。
生徒会権限で掲示板からの号外の撤去と配布された号外の回収が行われたが、殆ど回収出来なかった。
発行元のマスメディア部は、部長は風邪で今週頭から休み、部員達は雲隠れしていた。
───放課後の生徒会室
『まず、事実の確認から、しよう。』
会長の白銀御行から本日の議題が提示された。
メンバーは、白銀御行・四宮かぐや・藤原千花・石上優・伊井野ミコら生徒会の五人、巻き込まれた四条眞妃と付き添いの柏木渚、風紀委員で伊井野ミコの友人の大仏こばちの計八人。
早坂愛は雲隠れしたマスメディア部の二人の追跡・捕縛に動いている。
田沼翼は事が事なので渚が遠慮させた。
『会長、二股ですか?』
口火を切ったのは伊井野ミコ。
視線が嫌悪感をあらわにしている。
『なんでだよ!
書かれた内容は俺達は全く知らん!!
完全なフェイクニュースだ!!!』
号外に書かれた内容は、四宮かぐやは藤原千花と四条眞妃に告白したが眞妃に振られ、千花には白銀御行という彼氏が居た為、かぐやは二回振られたと書かれていた。
ご丁寧に下足場でのかぐやと千花の抱擁、かぐやが眞妃の肩を掴む姿、千花が自転車を押す御行と夕暮れに染まる道を下校していく姿の写真も掲載されている。
『四宮先輩達は女同士だから良いんです!
問題は会長と藤原先輩です。
まさか、言葉巧みに藤原先輩を騙して手籠めにしたんじゃ!?』
『なんでそこまで話が進むんだ!?
フェイクだって言ってるだろ!』
『まあ、四角関係とか私的にはなかなかに萌えるシュチですけど。』
『お前の趣味は知らんわ!』
『こばちゃん、話ややこしくなるから止めて。』
生徒会長席まで詰め寄り喧々諤々の妄想話で責めるミコ、激しく抗議する御行、余計な合いの手を入れて余計ややこしくする大仏こばちの三人でヒートアップする中、テーブルの五人は冷静に話を進める。
『とりあえず先輩達には事実無根な捏造記事ですから無視が一番でしょうが、既に高等部全体に話が広がってる事が問題ですね。』
『まあ、私とかぐやはいいとして。』
『よくないでしょ、眞妃さん。
私は二股掛けたか、節操なく続けて告白した女にされてるのよ?』
『そうだよ眞妃、放置したらもっとおかしな話になりかねないから、否定はしないと。』
『そ・れ・よ・り、藤原さんだったかしら?
アレとはどこまでの関係なの?』
そういうと、眞妃は御行を指差す。
正直、証拠写真がなければフェイクと流すが、物証がある以上疑わざるを得ない。
全員、聞きたいが聞きづらい二人の関係を眞妃は聞いてしまった。
『100%無いです。
アレは、願い下げです。』
『・・・、最近の藤原さんはかなり辛辣じゃない?』
『かぐやさん、解るでしょ?
毎回、あんな事手伝わされるですから、今は尊敬もありません。』
『そ、そこまで言わなくてもいいのでは!?』
『・・・アンタ達は何があったの、アレと?』
『しつれ〜いしま〜す。』
ノックと共に早坂愛が入室してきた為、室内の喧騒は一旦収まる。
愛に連れられて(連行)マスメディア部の紀かれんと巨瀬エリカの二人が入室してくる。
途端に、生徒会メンバーの視線が厳しくなる。
促されて生徒会長席前まで進んだ三人。
『弁明があれば、聞こうか?』
生徒会長席デスクに広げられた号外を指差し、御行が二人を尋問を始める。が、返事は想定外だった。
二人を代表して紀かれんが返答する。
『私達は、潔白です。
この写真が撮られた時間帯は、私達は部長のお見舞いに自宅にお伺いしてました。』
『なに?』
『じゃ、誰がこれを作ったんですか?
風紀委員会としても盗撮に当たる行為は黙認できません!』
御行より先にミコが問い質す。
かぐや達、テーブルに座る面々は雲行きが怪しくなってきてる事に眉を顰める。
『あの子達が作ってないなら誰が作ったって言うのよ?
あの時間帯、校内に残っていた生徒はサッカー部ぐらいでしょ?』
『そう、ですね。
藤原さんは会長と帰る時、後ろから誰かが来たとか覚えてる?
後、なんで二人で帰ったの?
送るって言ったら、遠慮したわよね?』
『あぁ、ああ、あれはですね・・・。』
『なんで、そんなに、歯切れが、悪くなるの?』
かぐやの問いかけに合わせて、周りの視線が千花に集まる。
『あ、あの日は本屋さんに用事があって、駅に向かっていたら会長と会って、自転車がパンクしたから駅の近くの自転車屋さんに行くから一緒に帰っただけですよ。』
『本当に?』
『ほ、本当です本当です。』
『・・・まあ、良いわ。
それより、あの子達の話が本当なら盗撮魔がいる、という事になるから、そっちの方が生徒会としても問題だわ。』
『ですけど、今は殆どの人がスマホを持ってますし、空気に流されるというか意識の低い人も居ますからね。
対策としても注意喚起位しか。
ただ、号外としてマスメディア部を語って配布したのは悪意を感じますけど。
・・・眞妃、どうしたの?』
『・・・よくよく見たら、この号外はおかしいと思って。
ここよ、渚。』
『四条先輩、何がおかしいんですか?』
『シリアルナンバーが入ってないのよ、優。』
『・・・ああ、確かに。
マスメディア部なら号外でもシリアルナンバー入れますね。』
『石上くん、それは確かなの?』
『会計の書類でもマスメディア部は通し番号入れてくれてたり、日付とナンバーはシッカリしてるから仕事しやすくて覚えてます。
ちょっと待ってくださいね。』
そういうと、石上優は私物のノートパソコンを起動してある号外の拡大を画面に映す。
『先日の体育祭の号外ですが、紙面の右上か右下に必ずシリアルナンバーが入ってるんですよ。』
画面に写された、優が指差す体育祭の号外には確かにシリアルナンバーが確認出来る。
『なんか、不気味ね。
計画的な犯行なら徹底してるけど、号外という形にしたのは私達を貶めたいから?』
『或いは、面白可笑しいから勢いで作ったとか?』
推論を言い合って、かぐやと眞妃は考え込む。
眞妃は犯人像を推測してるが、かぐやは「経験」した高二の秋を思い返してた。
この頃はカラオケ騒動と御行のラップ披露があって、こんな捏造報道は無かったなと。
来週末は二学期期末考査、その次に三者面談、奉心祭、御行からの告白と来て、クリスマスの追いかけっこから、晴れて二人は恋人になれた。
───もう一回告白を受けるのは悪くないけど、もしそうならお返しをしたいなと・・・。
あの後は素直になれなくて御行さんを傷つけてしまったし、そのせいで御行さんは倒れてしまったから。
そう回想してるかぐやだが、突然ニヤけ始めたかぐやに周りは引いている事に気が付いていない。
呆け始めたかぐやに眞妃のチョップが決まる。
『痛━い!
眞妃さん、いきなりなんです!?』
『こっちが聞きたいわよ、急にニヤけ始めて。
・・・なに?
まさか、クリスマスとかお正月の事考えてたの?』
『うっ!(流石、鋭い!)』
『全く、気が早いわね。』
『ちょっと、眞妃もかぐやさんも。
それより、あっちをどうにかしないと。』
そう言って指差す渚に促されて、生徒会長席で更にヒートアップしてる
御行とミコ。
二人を放置して、号外を出した犯人を特定する為に話し込む早坂愛ら四人の姿が見えた。
千花が手招きすると四人はテーブル組に合流して、議論は活発になる。
『俺達を無視して話を進めるのはあんまりじゃないか?』
不毛な言い合いを終えて、ハブられていた御行とミコもテーブルに合流する。
既に両者は満身創痍状態だった。
『ああ、終わりました?
じゃあ、整理しましょう。』
(俺達の言い合いはそんな扱いかよ。)
御行とミコをよそに、かぐやの仕切りでマスメディア部は号外が勝手に第三者によって作られて配布・掲示された物との訂正記事の作成と掲示、引き続き勝手な事をした者の特定と流布してる憶測への対策が話し合われ解散となった。
有力な犯人候補のマスメディア部が濡れ衣となると捜査は振り出しに戻ったが、下手に騒ぐと余計面白がられて尾ヒレが付くと石上優の助言(実体験)から暫くは静観する事になった。
生徒会室を片付けて皆が帰路に着く中、最後に生徒会室を出た白銀御行は四宮かぐやに声を掛ける。
『大丈夫なのか?』
『何が、です?』
『四宮グループと四条グループが対立関係にある事は俺でも知ってる。
いくら同級生と生徒会副会長といっても、会わせて貰えるのか?』
『話は通してます。
・・・100%の自信も保証はありませんが、会ってみます。
出たとこ勝負は時に必要ですから。』
『「出たとこ勝負」か・・・、四宮からそんな言葉が聞けるとは思なかった。
何かあれば連絡を。
飛んでいくよ。』
『・・・花火大会の時みたいに、ですか?』
『ああ! 必ず!!』
真剣な眼差しと真摯な御行の態度に、込み上げてくる感情がかぐやを動かす。
左手を伸ばして御行の左手を掴む。
驚く御行を無視して左手を引っ張り腕相撲をする様に体制に互いの手を組む。
『私も、必ず帰ってきます!』
拳越しに互いの視線が交わる。
男女のそれではなく、友情として交わす男臭さが感じられる誓いを二人は交わす。
通路の角でかぐやを待ってる早坂愛はため息が漏れる。
もうちょっと抱き合うとか色っぽい事すればいいのに、と。