白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───四条家

 

 

四条眞妃の招きという口実で四条家を訪れた四宮かぐやは、緊張していた。

 

別邸の迎えの車は眞妃を乗せると四条家に向かったが、門前で二人を降ろし別邸に返した。

 

流石に手荒な事はしないとは思うが、そこは未知領域。

踏み込んでみなければ判らない。

 

 

 

『いや、ようこそ。

まさか、我が家に君が来てくれるとは。

お兄さんは、お元気かな?』

 

 

別邸より幾分小さくした感じだが、それでも一般家庭からすれば巨大と言っていい広さの四条家の玄関ポーチに、現四条グループ代表にして眞妃の父親、四条真琴が待っていた。

 

 

 

『ご無沙汰しております、おじ様。

過日は兄が失礼な言動致しまして、私からもお詫び致します。』

 

 

そういうと、かぐやは四宮真琴に深々と頭を下げた。

あまりに意外というか、かぐやが頭を下げてくるなど予想してなかった真琴は面くらう。が、流石に代表を務めるだけあって、奥目にも出さない。

 

 

 

『パパ、かぐやも私も疲れてるし、先に着替えたいのだけど?』

 

『あ、ああ、そうだな。』

 

 

娘の眞妃が四宮かぐやを名前で呼ぶ事にも、少なからず動揺する四条真琴。

いつの間にそんな仲になったのかと思う。

 

眞妃はかぐやを自室に招き着替えを促す。

 

 

 

『トレーナーでもいい?』

 

『お願いします。』

 

 

眞妃から部屋着を借りて着替えを済ませると、眞妃に案内されて食堂に向かう。

別邸程ではないが幾人かのメイドが居るが、かぐやの事は話には聞いているのだろう、視線には棘がある。

「出たとこ勝負」等と言ってはみたものの、勝算がある訳ではない。

 

夕食自体は軽めのものになり、別邸ならば重めのものになるのもしばしばな為、これはかぐやは助かった。

いくら若いとは言っても好きで食べる訳ではなく、来客に合わせた好みの料理で少食気味のかぐやには辛い時が多い。

 

食後の談笑となった時、「本題」が始まった。

 

 

 

『さてと、眞妃からも話があったが、今日はどの様な用件ですかな?』

 

 

口火を切ったのは眞妃の父親の四条真琴。

資料の写真より日焼けして口髭を蓄え少し髪を伸ばした今は、ラテン系の色男と言った風貌になっているが、その眼光は鋭い。

気を抜けば相手のペースに持ち込まれる。

 

 

『では、単刀直入に。

四条眞妃さんを転校させると仰ったとか?』

 

『・・・ええ、言いました。』

 

 

敬遠の仲等という表現は生温いと思える両家の関係を考えれば、そんな事を話せる仲にかぐやと眞妃はなっていたかと考えるが、子供同士ならそんなものかと四条真琴は思う。

 

しかし───、

 

 

 

『が、これは我が家の事情です。

他家の方に、例え娘の友人と言えども何か言われる理由は無いと考えますが?』

 

『そうも参りません。

眞妃さんは大事な私の友人であり、私は「高等部生徒会副会長」を拝命しております。

生徒会の目的の一つは、「生徒の有意義な学生生活の支援」があります。』

 

『ほう、「大事な友人」ですか?』

 

 

四条真琴の態度に軽い失望をかぐやは覚え始める。

いちいち反応に棘がある。

やはり、「四宮の娘が」という気持ちが見え隠れする。

 

 

 

『お父様にはご理解頂けると思います。

学生時代というものは、過ぎ去ってからその大切さに気が付きます。

何事もそうです。

そうある事が当たり前だと感じてしまう事こそ、失いやすく取り返しの効かないものであると。

眞妃さんの転校は考え直して頂けませんか?』

 

『・・・確かに。

 

しかし、親としては最高とは言わずとも、最善と思える教育環境を用意したいと考えるものです。

 

失礼ながら、今の秀知院はその点に難がある。』

 

 

ゆっくりとした所作で食後の紅茶を飲みながら、四条真琴は「否」の姿勢を崩さない。

 

 

 

『どの様な点がお気に召さないのでしょうか?』

 

『足りないというより、今より充実した環境を娘に用意したい。

具体的には飛び級での大学進学です。』

 

『えっ!?

そんな話し聞いてないわよ、パパ?』

 

『まあ、なかなか難しいが眞妃なら出来ると私は思ってるよ。』

 

『・・・飛び級での大学進学とは、具体的にはいずれの大学へ?』

 

『日本ではないですよ。

幾つか候補はありますが、選ぶのは眞妃ですから。

ご存知の様に、四条は日本以外が主戦場。

そうであれば、眞妃には他国の価値観を知り、他国の友人を作る方が良いのではないか?と考えます。』

 

『そんな話、今まで何も言わなかったじゃない?』

 

『今まで何回も言おうとしたが、聞いてくれなかったじゃないか。』

 

 

それはそうでしょうね、とはかぐやは思う。

眞妃さんにとっては、秀知院には渚さんと翼さんがいるのだから、と。

さて、どう攻めたらやら・・・。

 

 

 

『転校・・・、今回は進学先になりますが、するもしないも眞妃さんのお気持ちが固まってからでも遅くないのでは?』

 

『今は、むしろ遅いぐらいです。

アジア以外なら入学は九月になります。

日本なら、その後でいい。』

 

『眞妃さん自身は希望してないのでは?』

 

『そうよ、私は嫌よ。』

 

『眞妃、私は眞妃の可能性を試せる環境を作りたいだけだ。』

 

『それは、私が決める事じゃないの、パパ?』

 

『なら、眞妃はどうしたい?

秀知院大学は眞妃の希望に合うのかい?』

 

『お父様、お父様の考えも解かりますが、結論を急いでも良い結果にはなりません。

今は時間を掛けるべきでは?』

 

『四宮さんの言う通りと思うけど?』

 

 

声の主はゆっくりと室内に入ってきた。

そのまま、かぐやの席に近付く。

 

 

 

『久しぶり、覚えてるかな?』

 

『ええ、お久しぶりです、帝さん。』

 

『いつも、姉がお世話になってます。』

 

『早かったな、帝。

食事はいいのか?』

 

『部の連中と食べて来たよ。』

 

 

そのタイミングでメイドが四条真琴を呼びに来る。

 

 

 

『失礼、用事ができたので、今夜は此処までで。

かぐや君、ゆっくりして行くといい。』

 

『はい、お言葉に甘えさせて頂きます。』

 

『泊まっていけるの、姫?』

 

『ご迷惑でなければ。』

 

『かぐやは私の部屋に泊まるんだから、変な事したら承知しないわよ。』

 

(・・・社交辞令のつもりだったんだけど、泊まらないといけなくなってきたわね・・・。)

 

 

 

 

───四条眞妃の部屋

 

 

眞妃はベットにうつ伏せ寝をした状態で、ベットの端に腰掛けたかぐやの横に並ぶ。

 

『で、大丈夫だったの?』

 

『さっき連絡入れたから問題ありません。』

 

『そう。

なら明日は一緒に登校ね。』

 

 

頬杖した状態で、何故か嬉しそうな眞妃に戸惑うかぐや。

ひょっとして、私と一緒?

 

 

 

『ねえ、眞妃さん。

明日なんだけど・・・、歩いて学校に行ってみる?』

 

『あら、かぐやも同じ事を考えていたの?』

 

『私は送り迎えがあるから、なかなか出来なくて。』

 

『でしょうね、うちも同じよ。

最近は帰りは歩かせて貰えるけど。』

 

『色々あるんでしょうけど、「普通」をしてみたいとも思うわ。』

 

『「恋」とか?』

 

『・・・なんでそんな話になるんです?』

 

『誤魔化さない。

・・・本当いうと、毎日当てられてるから、嫌でも気になるのよ。』

 

『・・・こういう恋は辛いわね。』

 

『かぐやだって、どうなのよ?』

 

『振りかえて欲しいけど、なかなかですよ。』

 

『結構ストレートにやってる様に見えるけど?』

 

『一年近く、進展なし。』

 

『・・・奥手もそこまで行くと立派だわ。』

 

『貴女の方が健気じゃない。』

 

『・・・人を好きになるって、難しいわね。』

 

 

二人揃って深いため息をつく。

二人ともプライドを脇に置いて素直になれば簡単に進展するのだが、それができない。

最も、かぐやはいつタイムスリップ状態が解消するか判らないのと、大きな変化は未来にどんな影響を与えるか判らないので、慎重に探りながら進めてるだけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

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