白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───交差点

 

 

四条姉弟と徒歩での通学となった四宮かぐやは、信号待ちの時に想い人に声を掛けられた。

 

 

 

『そちらはどちら様ですか?』

 

 

見慣れない制服の男子に白銀御行は、あえて丁寧に問い掛ける。

当の四条帝が答える前に眞妃が二人の間に入る。

 

 

 

『おはようございます、白銀会長。

紹介します、私の弟の四条帝です。』

 

『四条の弟さんか。

初めまして、生徒会長を務めてる白銀御行です。』

 

『こちらこそ、いつも姉がお世話になってます。

申し遅れました、四条帝と言います。』

 

 

尖り気味の口調を御行が改めて、互いに会釈を入れ挨拶を二人は交わす。

幾人か、他校の生徒会長など役職にある者と対面した事のある帝は、役職に就くと態度が横柄になる人間がいるが、初対面ながら丁寧な名乗りと柔らかい姿勢の御行に好感を抱く。

 

 

 

───しかし、

 

 

資料の写真以上に、酷いクマと寝不足と判る雰囲気に何があったんだと思う。

眞妃は、正直引いている。

かぐやは鋭くなってる御行の目付きに高揚してる(声が高くなった原因)。

 

 

 

『帝、そろそろ行かないと厳しいんじゃないの?

朝練もあるんでしょう?』

 

『あ─、確かに厳しいね。

じゃあ、そろそろ行くわ。

白銀会長、かぐやと姉貴をお願いします。

かぐや、また会おう。』

 

 

そう告げると帝は自転車で走り去って行った。

 

 

『弟は公立校で、秀知院とは反対方向なんです。』

 

『・・・そうなのか。』

 

 

眞妃がフォローしようとするが、御行の解りやすい不機嫌オーラに引いてしまう。

四宮かぐやを名前で呼んだ事も不快だが、「四条帝」という名前に引っ掛かるものがある。

 

帝さんは、私を名前で読んだのは絶対ワザとよねと、かぐやはため息をつく。

 

その後、三人には特に話もなく秀知院に着いてしまう。

御行は自転車を停めに二人と別れ、クラスの違う眞妃とも別れたかぐやは、校舎の端の窓越しに近侍の早坂愛から報告を受けていた。

 

 

 

『ごめんなさい、外泊になってしまって。』

 

『そんな、気になさらないでください。』

 

『それで、あちらの動きは。』

 

『眞妃様が居られるので、今朝の近辺警護はあちらに譲り、こちらは外周を固めました。ただ、かぐや様に飲み物を渡されたあちらは、少し落ち込んでましたね。』

 

『・・・そんなつもりじゃなかったんだけど。』

 

 

そうかぐやは言うが、愛が配置した人員が護衛と見破られてかぐやに声を掛けられたり、差し入れをされた時は愛を含めて見破られたら人間は深刻な敗北感に襲われた。

緊急に動員された家庭教師やコックなどではなく、早坂愛と同様に専門の訓練を受けた人間が見破られたからである。

 

何故判ったのかとかぐやに聞けばなんとなくと答えられ、より詳しく聞けば、視線や気配などでかぐやを意識してる様に感じたからと答えられ、以降覆面のかぐや護衛方は精進を重ね、この二ヶ月足らずで関東で一位二位の実力になっている。

その彼らや愛から見れば、四条の覆面の護衛は脇が甘いので見分けがつく。

 

自分達がそうだったが、バレたら意味がない覆面護衛が護衛対象に見破られたら相当に落ち込みそうだけどと思う愛だが、「かぐやの目」を誤摩化せるのはなかなかに困難なので、今では別邸の護衛の全員と、雲鷹方と本宅の護衛の半数は、かぐやは人相などを覚えている。

 

接点のほぼ無い青龍の護衛方は全く把握できてないが───。

 

号外の一件の調査が手詰まり状態との報告を最後に別れたが、それでも始業までかなり時間があるので、かぐやは生徒会室に顔を出す。

予想通り、白銀御行がいた。

 

 

 

『ああ、四宮か。』

 

 

入室したかぐやに気が付き書類を見ながら声を掛けた御行だったが、視界が突然真っ暗になる。

かぐやが後ろから両手で御行の目を覆ったのだ。

 

 

 

『そのまま、書類を置いてシートに体を倒してください。』

 

『何だ、いきなり。

何の遊びだ?』

 

『いいから、言われた通りにしてください。』

 

 

いつになく強い口調の為にかぐやは怒っていると考え、御行は抵抗は得策ではないと言われた通りにする。

シートに体を倒すとかぐやは手の覆いを外したが、直ぐ様ハンカチを濡らしてきて御行の頭を後ろに逸らさせて、目の上に濡れたハンカチを被せてきた。

 

 

 

『すまない、四宮。

意味が解らないのだが。』

 

『昨日より酷いクマです。

また徹夜ですね。』

 

 

憂う口調のかぐやは、御行の右手を揉み始める。

突然の連続とかぐやに右手を触れている事に、動揺を隠すだけで御行は精一杯になるが、次第に揉まれる心地良さに身を預け寝息を立てていた。

 

交際中に指圧が強過ぎると御行に打ち明けられて以来、指圧の勉強を続けてプロ並みになっていたかぐやに掛かれば、心地良く揉んで眠気を誘発する事など造作も無くなっている。

 

 

 

『本当に、しょうがない人。』

 

 

そういうと、眠気覚ましのコーヒーを淹れる為に御行から離れる。

電気ケトルが湯気を出す頃にはうたた寝から意識が戻った御行がかぐやが乗せたハンカチを外すと、かぐやの姿を確認して安堵する。

 

 

 

『ごめんなさい、起こしてしまって。』

 

『いや、起こしてくれないと困るよ。』

 

『会長がお疲れでも頑張る時は、今度からこうしましょうか?

休息も重要ですよ。』

 

『気持ちは嬉しいが勘弁してくれ。

四宮、ハンカチをありがとう。

 

・・・その、気持ち良かったよ。

 

で、四条の父親はどうだった?』

 

照れ隠しに話題を転換し、かぐやは御行に尋ねられて、淹れたコーヒーを差し入れながら、昨日の四条眞妃の転校の件について、父親の四条真琴から説明された意向を御行にも説明する。

 

 

 

『海外の大学、か・・・。』

 

 

かぐやのコーヒーを飲みながら御行は思案する。

この時、既にスタンフォード大のアーリー(早期出願受験制度)を御行は受験していたが、合否の連絡は12月に入ってからになる為、受験自体をかぐやには打ち明けてはいなかった。

 

 

 

『親御さんの考えは解るが無理強いはロクな事にならないぞ。

ただ、その感じでは聞き入れて貰うのは骨だな。

 

四条自身は、どうなんだ?

親の希望通りに受験の前倒しを考えているのか?』

 

『まだ、そこまでは・・・。

戸惑っている、という感じでした。』

 

『いや、転校ではなく海外へ飛び級での進学が本当の理由と言われては仕方ない。

そうなると、四条が気がかりだな。』

 

『まだ何度か伺おうかとは考えてますが、あまりしつこくしますと眞妃さんのお父様を硬化させる恐れもありますので、難しいですね。

 

・・・ところで、会長?

今朝は、なぜあの道を選んだんですか?』

 

『えっ!?』

 

『いつもの登校のル━トと違いますよね?』

 

『いや、ナンダ、けさは用事があってな・・・。』

 

 

笑って誤魔化しに掛かるが、かぐやも深く追求する気はない。

ラインで四条家に泊まる事は愛と御行には連絡していた為に、四条家を通過する登校ルートに変えた為だろうと。

夏の花火大会の日を思い出して、嬉しさが込み上げてくる。

かぐやにはわかってるのに御行は隠そうとするところが可愛らしいと、笑みが溢れる。

 

 

 

『何だ、急に?

何か可笑しな事があったか?』

 

『いえ、会長らしいなって思いまして。』

 

『・・・いい意味ならいいんだが。』

 

『はい、すご━━━く良い意味です。』

 

 

御行には、かぐやが言ってるのは良い意味に感じられなかったが、満面の笑みで言われては、悪い気はしなかった。

 

それ以上は始業の時間が迫っていた為、二人はそれぞれの教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

───放課後

 

 

今日は珍しく生徒会業務がない為に御行は帰ろうとしたところ、同じクラスの風祭に呼び止められた。

 

 

 

『交流会?』

 

『ああ、色んな学校の人が集まって親睦を深めるんだけど、俺達だけだと、な?』

 

『う〜ん、わかったよ。

いつも断ってばかりだからな。』

 

 

その様子をかぐやと通りすがりに見てしまった早坂愛は、横にいたかぐやに注意を促す。

 

 

 

『う〜ん(そういえば、愛が本音を言ってくれたのはカラオケの後だったわね)。』

 

『あれ、多分合コンですよ。

会長さんは気が付いてないみたいですけど。』

 

『愛、潜入できる?』

 

『へっ? それは、まあ。』

 

『私も同じお店の予約入れるから、そっちに連れ出して。

私もカラオケしてみたいし、皆で盛り上がろうかな?』

 

『・・・意外ですね。』

 

『高二は今しかないんだから、楽しみましょう。

愛には、いつも負担かけてるし。』

 

『・・・わかりました。』

 

 

かぐやとしては気を利かせたつもりだった。

そして、軽い気持ちで声を掛けたら、藤原千花・萌葉、石上優、伊井野ミコ、四条眞妃、白銀圭、そして、何故か龍珠桃が集まった。

 

 

 

 

 

───カラオケ店・個室

 

 

『・・・案外、集まりましたね。』

 

『・・・私も驚いてるわよ。

柏木さんは用事と門限があるからと断られたけど、萌葉さんと圭さんには誘ってないのに。

多分、千花さんね。』

 

『・・・なるほど。』

 

 

中学生がいるなら2時間が限度かと、タクシーの手配まで考えて解散後の帰宅ルートの変更を愛は考え始めていた。

 

かぐやは、柏木渚を誘うに当たって眞妃の名をあえて出さなかった。

誘う時から田沼翼がベッタリ張り付いて二人だけの世界を展開していたので、カラオケボックスの狭い空間にそれを持ち込まれては胸焼けする。

 

一番疑問なのは龍珠桃だ。

誘ったのはかぐやだが、下足場で眞妃を誘う時に珍しく顔を合わせて、誘ってみたら乗ってきたのだ。

 

 

 

『あっ、かぐやちゃん。

時間だから、行ってくるね〜!』

 

『お願いします。』

 

 

ギャルにキャラチェンジして愛が部屋を出ていくが、そういえば、どうやって御行さんを連れ出すのだろう?とかぐやは疑問に思う。

 

 

 

『かぐやさん、曲入れちゃいますよ。

この歌でいいですか?

私がトップバッターいきま━す!』

 

『千花さん、どうぞ。

皆さん、頼む物決まりました?』

 

 

様々な料理や飲み物を頼んで、千花と萌葉&圭ペアで一曲づつ歌い終わった頃合いで、料理と飲み物の第一陣が運ばれて来た。

運んだ店員と入れ違いに、顔が引きつった御行が愛に連れられて入室してきた。

愛は、珍しく制服を正しく着ている。

 

 

 

『会長も来てたんですか。

どうしたんですか、顔色悪いですが?』

 

 

おかしな様子の白銀を訝しがる石上優が疑問を尋ねる。

 

 

 

『どうもこうもないさ。

交流会にいたら、ドアのガラス窓から四宮が見えて・・・。

まさか、こんな所に居る訳無いと見直したんだが、やはり四宮に見えてな。

立ち去ったから気になって外に出てみたら早坂の変装だったんだ。

それで、皆集まってるから来てくれて言われて、ここに来たんだ。

ああ、ありがとう。』

 

 

 

優に答えながら、御行は愛に誘導されて眞妃の横の席に腰を下ろす。

優の隣はミコと桃が座っていたが、桃の目は明らかに面白がってる。

御行は気が付いてないが同学年で遠慮なしで言い合える女子は、実は桃しかいない。

故に、苦手意識もある。

 

 

 

『あら、御行はここに来るのが嫌だったのかしら?』

 

『いや、正直助かった。

交流会があんな感じとは知らなかったからな。

男女比が同じぐらいだったが、あんなものなのか?』

 

『・・・あれは、合コンですよ。』

 

『えっ!

あれがそうなのか!?

付き合いは殆ど断わってるから、解らなくてな。

いや、助かったよ。

知らない人ばかりなのに、距離感近くて困ってたんだ。』

 

 

眞妃と愛に突っ込まれてやっと交流会の正体を御行は理解した。

かぐやと同様、変なところで世間知らずな御行だった。

イメージ通りだが。

 

 

 

『会長、両手に花だな。』

 

『多分、気が付いてないわよ、あれ。』

 

『アイツは前からあんな感じだ。』

 

『龍珠先輩・・・、詳しいんですね。』

 

『去年、生徒会で付き合いあるしな。

今と違って、秀知院に入ってきた頃はオロオロしてたな。』

 

 

 

優とミコの内緒話に、桃がフライドポテトを摘みながら相槌を打つ。

 

 

 

『オロオロしてる会長なんて想像できないですね。』

 

『アイツも色々あって脱皮したんだけど、ひょっとすると虚勢張ってるだけかもな。

意識して喋り方変えてる時あるからな。』

 

 

優にそう言いながら、愛と場所を変わったかぐやと談笑してる御行を見るが、二人は上手くいってる様で安堵する。

 

 

 

『去年は、酷かったからな。』

 

『そんなに、ですか?』

 

『四宮が尖ってたからな。

二人は今年からだからあんまり知らないだろうけど、毎日酷かったぜ。

あのまま、生徒会解散するのかとも思ってたからな。』

 

『そこまでですか!?

今では、二人で居るのが当たり前ですけど。』

 

『分かんないもんだぜ。

あと、石上と言ったか?

こういう席は肩の力抜け、砕けて話せ。』

 

『あっ、はい。

すみません。』

 

『素直でよろしい。』

 

 

そんな事を言ってる桃だが、ロングスカートとはいえソファに胡座をかき、口調は男っぽいがピンクの可愛らしいツーピースを着ているのでアンバランスな事この上ない。

おまけに、桃本人は気が付いてないがチラチラスカートの奥が見えてしまっているので、それは御行の席からよく見えてしまっていて、極力桃の方に目を向けない様にしている。

隣のかぐやは御行を見てるので気が付かず、反対隣の眞妃は分かってるが御行の反応が面白いから放置している。

何なら、ちょくちょく御行の目線が桃の方向に向く様に誘導したりもしてる。

 

やがて、かぐや&千花ペアが歌い終わり千花がトイレに立つと、御行に歌う順番が回り、悲劇が起きる。

 

 

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