白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ───


夢か幻か、得体の知れない空間に浮きながら、白銀かぐやは時代が入れ替わって精神だけタイムスリップした高校生時代の自分と話し込んでいた。




✕編集中✕

 

 

 

───鮮やかな色の霧の漂う空間

 

 

高校生の四宮かぐやと、大人になった白銀かぐやは、空間に浮きながら話し込んでいた。

 

四宮かぐやから伝えられた同窓生の訃報に、白銀かぐやが重い口を開く。

 

 

 

『亡くなっていた同窓生というのは、御行さんに強い影響を与えた人です。

離人病・現実感消失病は・・・、貴女は知らなかった病名よね?』

 

『知らないわ、そういう病気は。

どういう病気なの?』

 

『彼が発症していた病気は私達も発症していた可能性のある病気で、現実が映画館にあるスクリーンの向こう側の出来事の様に感じたり、自分の体が自分の物では無い様に感じる病気で精神病等に分類される。

 

亡くなったと言われた彼は、物理学など理数系に大変強い人で、スタンフォード大学に入学する前から天才と言われていた人なの。

多分、私や御行さんでは話にならない程の。

 

けれど、生に執着がないというか、勉学に勤しんでる時が心落ち着く人らしいかったの。

 

私も二回ほど、機会があって御行さんと一緒に彼とランチをした事があるけど、名前すら教えて貰えなかった。

それぐらい他人や自分に興味が無いというか・・・。』

 

『・・・わたしの中等部の頃みたいね。』

 

『私達のあの頃は・・・。

 

・・・上手く言えないけど、彼は根本的に勉学以外に関心が無いという感じだったの。

二回ランチをした時も、話し掛けてる御行さんに殆ど反応しなくて、5分もせずに何も言わずに立ち去ったから。』

 

『・・・かなり変わった方なんですね。』

 

『ただ、御行さんと二人っきりなら少しは話をしてたみたいなの。

 

御行さんの何が彼にとって興味が湧いたのか、或いは、心地よかったのかもしれないけど、私は通じ合えなかった。

けれど、彼の存在は御行さんには大きかった。』

 

『それは、どういう意味で?』

 

『・・・かなり酷い話よ。

貴女は、まだ知らない筈。

御行さんの家庭がお金に困ってるのは知ってるわね?』

 

『・・・聞いてます。

クリスマスや誕生日に図書券しか貰えなかったとか、ケーキを食べた事があんまりないとか。』

 

『その原因は、

 

・・・私達。

 

・・・四宮家だったの。』

 

『どういう事!?』

 

『・・・本宅の、・・・四宮黄光が若い頃に御行さんのお父様に反抗されたとかで目の敵にしていて、御行さんや妹の圭さんが生まれてからお父様のなさっていた事業が立ち行かない様に追い込んで、奪ったのよ・・・。

 

それが原因の一つで御行さんの御両親は別居なさって、御行さんはお母様と別れて暮らさないといけなくなったの。』

 

『・・・そ、そんな・・・。』

 

 

まだ知らぬ事実を教えられ、四宮かぐやは全身が震えだした。

自分の想い人に辛酸を舐めさせたのが自分の兄だという事実を、四宮かぐやは処理できなくなっていた。

まだ抱きしめた身体を離していなかった白銀かぐやは、嗚咽を洩らす四宮かぐやを、過去の自分を強く抱き締め直す。

 

 

 

『・・・わ、わたしは、御行さんにふさわしくないじゃ・・・。』

 

 

嗚咽混じりに四宮かぐやの心の葛藤が、口をついて溢れてくる。

 

 

 

『お願い、私を見て。

 

・・・私は、御行さんと、結婚したわ。』

 

『・・・。』

 

『御行さんは私を、

 

私は御行さんを選んだわ。

 

そして、私達は結ばれたわ。

 

・・・未来永劫ではないかもしれない。

 

でも、私達は二人でこれからを歩みたかった。

 

だから、結婚したわ。

 

この気持ちは、

 

今の貴女が御行さんを想う気持ちは、

 

どちらも偽りの気持ちかしら?』

 

 

一語一句、噛み締める様に白銀かぐやは言葉を紡ぐ。

それに、四宮かぐやも応える。

 

 

 

『・・・っ、そんな事・・・無い。

わたしは、・・・御行さんが良い!

他の誰でもない、ここまで好いた方は御行さんだけだから、御行さんが良い!!』

 

『その調子よ。

それに、貴女自身を卑下したら貴女を選んだ御行さんも馬鹿にしてる事になるわ。

卑下と謙虚は違うから。

て、「お釈迦様に説法」ね。』

 

『・・・そうね・・・。』

 

 

二人のかぐやは互いに不器用に笑って見せ合う。

自分に自分が慰められ悟らされるという奇妙な体験は、なかなかにしないものだから。

 

 

 

『話が少し逸れてしまったわね、ごめんなさい。』

 

『そんな事無いわ。

寧ろ、大事な話をしてくれてありがとう。』

 

『それでね、御行さんにとって大きかったというのは、彼がお父様の奪われた事業の製薬工場を取り返す動機と続ける動機に迷いがあったの。

動機が弱かったと言った方がいいわね。』

 

『なぜ?』

 

『事業の複雑さと初期投資の費用が大きくなる事がハードルだったの。

新薬の開発も、登録審査や特許の申請登録も、同業他社との調整なども、掛かる費用などもね。

あまり採算性のいい分野とも言い難く、かといって、下請け的なポジションでは立場は弱くなる。

それなら、掛ける費用や時間や労力も採算性の良い違う事業に回した方が、利益の確保が確実になる。

それを承知でやり続けるだけの動機が、御行さんの中で弱かったの。』

 

『だから、病を得た彼の存在が?』

 

『「治してやりたい。

少しでもマシな状態にして、アイツに生きてる実感を知って欲しい。

アイツもアイツの頭脳も、こんな事で死蔵するのはおかしい。

俺はアイツと一緒に笑ってみたいんだ。」

 

大学に居る頃に珍しくお酒を飲み過ぎた時に、御行さんがそうこぼしてたの。』

 

『なら、今の御行さんは!?』

 

『亡くなった事を長らく知らなかった事もショックが大きい筈。』

 

『どうするの!?

早く戻らないと!!』

 

『私だって急いで戻りたい。

けれど、この訳の分からない空間で貴女に会えた事も何故なのか解らない状態では、どうすれば元の時代に戻れるか解らない・・・。』

 

『・・・そうね、そもそもの原因が解らないものね。

それなら、あなたは高校時代に戻って何かやりたい事をしたの?』

 

『・・・お父様と写真を撮ったわ。

それから毎週、お父様に会いに本宅に通ってる。

写真は日記に御行さんの写真と挟んでるから、見てみて。』

 

『・・・ウソ・・・。』

 

 

四宮かぐやは未来の自分の予想外の行動に驚きを隠せず、口元を両手で覆い隠す。

目を見開き白銀かぐやを見つめるが、浮かない表情に察するものがあった。

 

 

 

『・・・まさか、お父様は?』

 

『お父様に時間が残されてないのは確かよ。

だから、渋る雲鷹お兄様や黄光にも頭を下げて邪魔をする親戚達も押し退けて、お父様にお会いしたわ。

時間がないと解ってるのだから、余計な事に時間を掛けてる余裕はなかったの。

それに、来年には四宮家にも貴女にも試練の年になるわ。

まだ詳しい事は言えないけど、その為の準備と何をしてきたかは鍵付きの日記に書いてあるから、元に戻ったら読んでね。

それから、週末に本宅にお父様に会う事だけは続けて欲しいの。』

 

『でも、本宅には黄光が・・・。』

 

『・・・まだ、内緒の話よ。

黄光はね・・・。』

 

 

そういうと白銀かぐやは四宮かぐやに「ある秘密」を話す。

話を聞いて四宮かぐやは目を見開き驚愕の表情になる。

 

 

 

『本当なの!?

あの、黄光が・・・。』

 

『確かよ。

それもあって、私は本宅に無理にでも通い続けてるのよ。

後、愛さんのお父様はお役目の為に本宅をなかなか離れられないから、愛さんの家族の時間を作る必要もあったから。

それ以外にも色々あってね。』

 

『・・・わたし、あなたの様になれるかしら?

元に戻れても自信が持てないわ。』

 

『「かぐや」、貴女は「かぐや」でしょ?』

 

『わたしは、確かに「かぐや」だけど、今までは考えもしなかった事を貴女がしてる事が・・・。』

 

『他にも色々あったけど、それなら言わない方が良さそうね。』

 

『な、何をしたの!?』

 

『ええっと、毎日別邸の全員分の御味御汁を作って、御行さんのサプライズ誕生日パーティーをして、週末はお父様の御味御汁を作るついでに本宅の御味御汁を作って、毎回お土産を本宅に買って行ったり別邸に持って帰ったり、御行さんにソーラン節の稽古をしたり、バイクで本宅と別邸を往復して、御行さんとツーリングの約束をして、

 

・・・後は何だったかしら?』

 

『お、御味御汁?

パーティーに、本宅?

京都までバイク!?

ツーリングの約束!!?

ソーラン節の稽古って、何なの?』

 

『ま、まあ、色々あったのよ。』

 

 

過去の自分相手とはいえ、説明が白銀かぐやは面倒になった。

 

 

 

『あっ!

それから、入れ替わりが元に戻ったら私が問い詰めるけど、元に戻らなかったら御行さんに、「千花さんからは、私に内緒で秘密の特訓をどれだけ受けたんですか?」と、問い詰めて白状させて。

聞いてるのと体験したので、ソーラン節とバレーボールが酷く、音痴で校歌が歌えなかったのと、ラップが人を気絶させるレベルの酷さだったわ。』

 

『・・・えっ? 本当の話!?』

 

『私に幻滅されるから千花さんに内緒で特訓して貰ってたんですって。』

 

『なっ!

だからって、なんで千花さんなの!?』

 

『そうよね! 寄りにも寄って、「何で千花さんなのよ!?」って話になるわよね?』

 

『そうよ、おかしいわよ!?

なら、わたしに言ってくれてもいいじゃない!』

 

『それでも、打ち明けてくれなかったのよ。

多分、把握できたのは一部の筈だから、もっとあるわよ。』

 

『・・・ねえ、二年の一学期の「G」を覚えてる?』

 

『貴女もそう思う?』

 

『『御行さんは、虫も嫌いなんじゃ?』』

 

 

二人は重い重いため息をつく。

そのため息を合図の様に、空間の霧が色とりどりに光り始め、眩しい程の光量を放ち始めた。

あまりの眩しさに抱き合っていた二人のかぐやは、互いの存在すら認識できなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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