白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


三者面談当日、四宮かぐやは期待してなかった父親・四宮雁庵の唐突な参加に驚くが、考えの違いが露呈する。


✕編集中✕

 

 

 

───校長室前の廊下

 

 

四宮かぐやの父親・四宮雁庵と白銀御行の父親は、短い挨拶を済ませた。

双方、特に雁庵が興味なさげだった。

続けて、白銀御行が挨拶をする。

 

 

 

『初めまして、知らない事とはいえ失礼しました。

生徒会長を務めてます、白銀御行と申します。

四宮・・・、娘さんにはいつもお世話になってます。』

 

『かぐやの父親の雁庵だ。

娘が世話に、とは?』

 

『お父様、私は副会長を拝命してます。』

 

『お前、副会長だったか?』

 

『もう、いつも言ってるじゃないですか。』

 

 

雁庵は、暗にかぐやが会長ではないのか?と言ってるのだが、かぐやははぐらかす。

が、挨拶した御行の特に目を見て雁庵は少し見どころがあるか、と感じていた。

 

 

 

『シロガーネクン、ドーシましたか?』

 

『ああ、校長。

校長室に行く様にと言われまして、父と参りました。』

 

『オー、そうでした。

ではシッノミヤさん、ゴキゲンヨウ。

気を付けて帰ってクダサーイ。』

 

 

胡散臭さだけのカタコト日本語がワザとらしかったが、雲行きが怪しくなってきたので双方助かった。

その間に白銀の父親とかぐやの兄の四宮雲鷹も挨拶を済ませる。

 

 

『・・・かぐやの兄で雲鷹だ。

妹が世話になってる。』

 

『・・・白銀と言います。

うちも、息子が妹さんにはお世話になってます。』

 

 

互いに社交辞令の顔をしてるが、腹は「油断ならない相手」とお互いを見て短い挨拶を交わす。

雁庵といい、その様子を見ていてかぐやと御行は不安になる。

御行からの話でも、父親達は会う事も無く雁庵は逝ったからだ。

 

 

 

『四宮、あちらの方は?』

 

『お父様、早坂のおじ様を紹介しても?』

 

『・・・まあ、いいだろう。』

 

『おじ様、うちの生徒会長の白銀御行さんです。

会長、早坂愛さんのお父様です。』

 

『早坂愛さんのお父様でしたか。

生徒会長を務めてます白銀御行と申します。

こっちが俺の父です。

娘さんとは仲良くさせて貰ってます。』

 

『どうも、初めまして。

白銀と申します。』

 

『・・・早坂愛の父です。

初めまして、娘がお世話になってます。』

 

 

正直、父親としては娘の男性の知り合いというのは、警戒対象になる。

白銀御行はかぐやの定期的身辺調査で報告は聞いていたが、なるほど見どころはありそうだと感じる。

 

 

 

『終わりマシたか?』

 

『すいません、直ぐ行きます。

じゃあ、四宮。』

 

『かぐやちゃん、失礼するよ。』

 

 

白銀父の言い方に雁庵は片眉が反応し、ぷいっと踵を返して歩き出す雁庵。

 

 

 

『お父様。』

 

『なんだ?』

 

『どうした、かぐやちゃん?』

 

 

かぐやの声に両方の父親が反応する。

特に雁庵は、不快感をあらわにする。

 

 

 

『お前じゃない!

かぐやは俺を呼んだんだ!!』

 

『いつも「お義父様」と呼ばれてますから。』

 

 

雁庵の言に、何故かドヤ顔の御行の父親が言い返してくる。

正人は無反応に徹するが、かぐやと御行はオロオロし、雲鷹はそっぽを向くが肩が震えている。

御行の父親の不遜さより面白さが勝ったる。

父親の雁庵がムキになるところなど初めて見るからだ。

 

 

 

『まるっきり、子供の喧嘩だな。』

 

 

雲鷹に笑いながらそう言われて、正人は反応に困る。

 

 

 

『俺の娘を名で呼ぶな!』

 

 

 

「娘、ね・・・。」

 

かぐやの養育を押し付けられた雲鷹と、折に触れてかぐやの事を報告していたが雁庵は無関心だった事を知ってる正人は、失笑している。

二人共「よく言うよ」と心の中で雁庵にツッコミを入れている。

 

 

 

『ちょっと、親父。』

 

『お父様も。』

 

 

御行とかぐやがとりなそうとするが短い睨み合いの末、互いに踵を返して歩き出す。

直感といっていい、かぐやと御行は良い仲だなと雁庵は理解した。

故に、癪に障る。

 

 

 

『後の予定がアリまーす。

さあ、シロガーネクンとオトウサン、どうぞ。』

 

 

校長に先導されて歩く御行だが、父親の心情を考えると挨拶は自分だけですれば良かったかとも考えていた。

 

 

 

『親父、すまない。』

 

『・・・あんなもんだろう。

かぐやちゃんが「普通」なんだよ。』

 

 

そういうと、父親は御行の肩を叩く。

四宮家の人間との付き合いは、かなり忍耐がいるなと思案顔になる。

それっきり喋らず、三人は校長室に入る。

 

 

 

 

 

 

 

───数刻後

 

 

藤原元総理の招きで四宮家の雁庵・雲鷹・かぐやの三名は、ある店に来ていた。

かぐやは食事会と聞いていたので、モストフォーマルかセミフォーマルのおとなしいドレスに着替えようと考えていたら、普段着に近いワンピースでいいと兄に言われた。

 

 

 

『動きやすい格好にしとけ。

あの爺が相手だ。』

 

 

兄は警戒してるが、曾孫にあたる藤原千花や萌葉と付き合いのあるかぐやは、そんなものは意味がないと理解させられたので、流れに身を任せて早々に撤退する算段でいた。

忠告通り、ワンピースにはしたが。

 

一行が着いた店は、普通の寿司屋だった。

肩が凝らなくてよさそうだが老舗である。

が、食事会をするには少し手狭に感じる店構えで、「貸し切り」の張り紙がされていた。

 

 

 

『此方です。』

 

 

秘書の正人が出入口の引戸を開けると、カウンター席の真ん中で一人で手酌でやってる老人が居た。

件の藤原元総理だった。

 

 

 

『皆、好きな所に座れ。』

 

 

雁庵はそういうと、藤原老人の右隣に座る。

 

 

 

『かぐや、そこにするか。』

 

 

そういうと、雲鷹は出入口に近いカウンター席に座わり、左隣の席の椅子を引く。

促されたかぐやは雲鷹の横に座り、正人は出入口横に控えようとする。

 

 

 

『早坂、お前はこっちだ。』

 

 

雲鷹はそういうと、右隣の席を引いて促す。

 

 

 

『何にします?』

 

 

人の良さそうな、にこやかな笑顔の小柄の中年の女性が注文を取りに来る。

 

 

 

『握りの松を三人分、茶碗蒸しも三人分、俺はビールで、早坂はどうする?』

 

『私は遠慮します。』

 

『かぐやは?』

 

『私はお茶で構いません。』

 

『じゃあ、それで。

タバコ、よかったですか?』

 

『生憎。』

 

『ああ。』

 

 

そういうと出し掛けたタバコを仕舞う。

雲鷹の慣れてる様な注文の仕方に、かぐやは不思議に思う。しかし、食事会というのに他に人はいない。

店はカウンターの中の主人と思われる年配の職人が一人と、先程の女性のみで切り盛りしてる様だ。

カウンターは八席、他に座敷席がテーブル二卓にそれぞれ四席の八席、計十六席。

 

カウンター側から雲鷹の前に栓を抜いたビールとグラスが置かれ、雲鷹は何も言わずに手酌で始める。

 

 

 

『お兄さん、おつぎします。』

 

『ああ、すまん。』

 

 

かぐやは「初めて兄に酌をする」。

幼少期のパーティー以来、酒席に一緒に出る事も無くなった兄妹の初めての事にかぐやは不思議な気分になる。

 

 

 

『まさか、お前に酌をして貰えるとはな。』

 

 

雲鷹の照れてる様な口ぶりにかぐやもむず痒くなる。

御行にはよくしているが、慣れもあってこんな反応はしてくれないので、面白みがある。

その間にお茶とおしぼりが。

少し経つと、先程の女性が握り寿司が乗せられた盛り板を運んでくる。

 

 

 

『茶碗蒸しは少しお待ち下さい。』

 

 

そう告げられ、まずはお寿司から頂く。

別邸や各種のパーティーで出される物に比べればとは思えるが、特にパーティーのものは寿司職人を呼んで握って貰うものでもなければ少し硬くなっている。

醤油も本醸造のお寿司用の物を使っているのだろう、ネタの味を邪魔しない。

 

かぐやは御行と付き合い出してから回転寿司等のお店に行ってみたのだが、どうしても口に合わなくて困らされた。

御行達は固くないと言うのだが、かぐやからすると口の中での解け方など違うと違和感を感じてしまう。

無理をして食べて体調を崩す場合もあった。

 

その味覚からすると、ここのお寿司は食べやすくネタも口の中で解けやすく、美味しかった。

あっという間に握り寿司の半分を食べてしまった。

 

 

 

『美味いか?』

 

 

唐突に雲鷹に水を向けられ驚くと共に我に返ったかぐやは、無意識に食べ進めてしまった事にも驚く。

 

 

 

『・・・はしたない姿を見せてしまいました。』

 

『気にするな、食べろ食べろ。』

 

 

見ると、雲鷹と正人の盛り板は握りが無くなりガリだけになっていた。

 

 

 

『ああ、すまねえが、何か当てを二人分と俺に冷を頼む。

あの大吟醸でいい、奥から三番目のな。』

 

『あいよ。』

 

 

盛り板を下げに来た先程の女性に雲鷹が注文する。

雲鷹のかなり気さくな雰囲気にかぐやは軽く驚きを覚える。

 

 

 

『雲鷹様。』

 

『お前からは頼みづらいだろう。

あれは長引くから食っとけ。』

 

『・・・ありがとうございます。』

 

『・・・ここに来ると思ってなかったな。』

 

『・・・お兄様は、このお店に来られた事が?』

 

『・・・言ってもいいだろう。

かぐや、お前を東京に連れてきて少し経った頃に、親父が来たんだ。』

 

『えっ?』

 

『他の諸々の案件の合間に僅かな時間だけだがな。

その時に、この店に親父と来たんだ。

もう一昔前の話だ。

忘れてたが、店に入って思い出した。』

 

『・・・そうだったんですか・・。』

 

『口には出さなかったが、親父はお前を気にしてた。

素直じゃない糞爺だよ。

会っていけばいいものを・・・。』

 

『・・・私はお会いしたかったです。』

 

『俺も同じだ。

親父とはろくに会えなかった。

今ならなんとか会えるが、その時はやり方も解らなかった。

本当に手の掛かる糞爺だよ。』

 

 

兄妹に「糞爺」と言われてる雁庵は、藤原と話し込んでいた。

 

 

 

『どうしたんだい、こっちに来るなんて。』

 

『もう見る事も無いだろうからな。

娘達が住んでる街を見てみたかった。』

 

『寂しくなるな。』

 

『「東」が逝って十年だ。

顔を出すにはいい頃合いだろう。』

 

『素直じゃないねぇ。』

 

『身軽に動けるお前とは違う。』

 

『周りなんか見てないお前さんが言うかね。』

 

『・・・』

 

『もう殆ど居なくなっちまったな。

ここも含めて関東が瓦礫だらけで、進駐軍が闊歩していた光景を覚えてる奴らは。』

 

『お前は、あの時はガキだったろう。』

 

『ああ、だから余計覚えてるよ。

物心付いたらそれを見せ付けられたからな。』

 

 

そういうと藤原は杯を空にする。

新しく注ぎながら、同じく空になった雁庵の杯にも注ぐ。

 

 

 

『復興、戦争、経済成長、世界第二位・・・、そこからの低迷。

俺は病気で舞台を降りてやり残した事も、ある。』

 

『「金の卵」と持て囃された世代だろう。

実質、世界第二位はお前らから後の世代の功だろ。』

 

『実態は、都市部の進学する同年代の穴埋めに地方から人連れてきただけだよ。

いい事ばかり言ってな。

メディア、というより、それが暗黙の了解と社会常識になっちまった。』

 

『都合の悪い事を喋る奴はいない。』

 

『お前さんも、やってない事の方が少ないだろ。』

 

『それが必要だった、とは言おう。

その業が、形を変えて現れてきた。』

 

『だがな、揉められても誰にも益はないぞ?

痛み分けがいいところ、悪すりゃ魑魅魍魎が跋扈する。』

 

『資本主義は、破綻する者がいなければ成り立たない。

しかしな、ここじゃなくても良かったろう?』

 

『新しい常連を作るのが、古株の役割だ。

もうすぐ、来るだろう。

その気があって、迷わなかったらな。』

 

『来なければ、お前とサシだ。

その方が、気が楽だがな。』

 

『後始末は自分で付けな。

倅が泣くぜ。』

 

『そんなタマじゃない。

そう、育てた。

及第点には足りんがな。』

 

『厳しいね。』

 

『そうでなければ、当主は譲っとる。

まだまだ、安心できん。』

 

『傍迷惑な親心だな。』

 

 

その時、出入口の引き戸が開き新しい招待客が顔を現した。

 

 

 

『失礼します。

藤原さん、いますか?

此方と伺ったんですが。』

 

 

丁度、かぐや達に茶碗蒸しや当ての料理が運ばれたタイミングで、出入口に一番近い席であったかぐやと雲鷹は振り返り、驚く。

 

四条グループ代表、四条真琴が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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