白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


三者面談の日の夜、藤原元総理の食事会に参加した四宮かぐやは意外な人物の参加に驚く。


✕編集中✕

 

 

 

───夜・食事会の寿司屋

 

 

藤原元総理の開いた食事会に参加した四宮雁庵達。

後から来た四条真琴との非公式の会談の場となった。

 

 

 

『遅くなって、すいません。』

 

『よう、来たか。

こっちだこっち。』

 

 

出入口側の席だった四宮雲鷹・かぐやと目で挨拶を済ませると、藤原の招きで横のカウンター席に真琴は座る。

早坂愛の父親で雁庵の秘書である早坂正人と藤原老人に挟まれた席で、藤原の反対側には雁庵が座る。

正直な所、雲鷹としてはかぐやの子供の頃からパーティーで顔を合わせていた真琴は、気に入らない相手だった。

よくやっているなとは思っていたが。

 

 

 

『かぐや、お前は帰っとけ。』

 

『それは、どういう?』

 

『集まり過ぎだ。

親父に俺とお前、あいつに藤原の爺だ。

お前ぐらいは離れてろ。

早坂、迎えは準備できてるんだろう?』

 

『はい。』

 

『あの、それでしたら茶碗蒸しを食べ終わるまで、お時間頂けませんか?』

 

『・・・まあ、いいだろう。』

 

 

かぐやは兄の忠告に従い帰る事にするが、少しでも時間を伸ばしたい気持ちもある。

食事会の会場規模から考えて、四条眞妃の父親で四条グループ代表の四条真琴が来るとは予想できなかったのだ。

三者面談の挨拶の際に話が出なかった事を考えると、参加者や会場の事も詳しくは教えて貰ってなかったのだろう。

 

 

 

『まさか、叔父さんも居るとは聞いてませんでしたよ。』

 

『居ては悪いか?』

 

『驚くでしょう。

アピール、ですか?』

 

『必要はあるだろう。』

 

『・・・うちの方針は変わりませんよ。

私でも変えられません。』

 

『だろうな。』

 

『頭ごなしだな、俺も居るんだが?』

 

『これは失礼しました、先生。』

 

『微塵も思ってないだろう。』

 

『いやはや。』

 

 

今夜は実りのある話になるか怪しいなと真琴は考えている。

 

 

 

『何になさいますか?』

 

『あ、すいません。

そうですね・・・、お寿司のおまかせと冷と、煮蛸あります?』

 

『はい、ありますよ。』

 

『では、お願いします。』

 

 

注文を聞いて女性がカウンター内に下がる。

 

 

 

『慣れてるな。』

 

『そうですか?

・・・若い頃を思い出しますよ。

こういうお店は敷居が高かった。』

 

『お父様、すみませんがお暇させて頂きます。』

 

『ああ、そうか。』

 

『いや、かぐや君。

眞妃がよろしくと言ってたよ。』

 

『はい、また明日とお伝え下さい。』

 

 

かぐやと真琴のやり取りに雁庵と雲鷹が片眉を上げて反応を示す。

かぐやの護衛からの報告で四条家に泊まった事は知っているが、両家の娘達がどれ程の仲になってるかまでは把握してない。

 

 

 

『ところで、お父様。

お暇させて頂く前にお聞きしたいのですが、お野菜はお嫌いですか?』

 

 

雁庵の動きが止まる。

本宅での雁庵の食事量と比べると、先程からモリモリ食べてるので狐に摘まれた気分にかぐやはなっていたのだ。

雁庵は、盛り板一枚分・刺し身一皿を平らげ、酒をコップに三杯は飲んだ上に、追加で盛り板一枚とつまみを頼んでもいる。

耳のいいかぐやには、注文内容は全部聞こえていたのだ。

たとえ、藤原老人が自分の注文と混ぜて頼んだとしても、その程度の誤魔化しは解る。

 

かぐやの背中にドス黒いモヤの様なものが立ち込めている。

横目で見ると、あの雁庵オジと藤原元総理が振り返ろうともせず、目を泳がせてる事に真琴は驚いている。

かぐやも仕事を持ち様々なクライアントと付き合い、御行との結婚生活もあり、諸先輩方から妻の威厳というものを学んだのだ。

 

 

 

『早坂、目を合わすな。

飛び火するぞ。』

 

『心得てます。』

 

 

かぐや以外、参加者は妻帯者か経験者の為に女房や娘を怒らせるとどれだけ厄介か骨身に染みてる。

多分に漏れず真琴も理解してるが、このままではと思いかぐやと雁庵の間に入ろうとして、かぐやと目が合う。

瞬間、背筋が凍る。

 

 

「不味い、口を出さない方がいい。」

 

 

真琴の頭脳が警告を発する。

しかし、先にかぐやが矛を収める。

 

 

 

『楽しみを邪魔したくありませんから、程々にしてください。

では、皆様、失礼します。』

 

 

かぐやの言い草に圧を感じる五人だった。

因みに、五人とも野菜嫌いの肉好き魚好きだった。

出入口の引戸の開け締めが終わり、誰からともなく五人全員が息をする。

ここは、空気を入れ替えるのは自分の役目と、真琴が話し始める。

 

 

 

『いやはや、女の子は、なかなか迫力がありますね。』

 

『・・・全くだ。

死んだカカアが化けて出てきたかと思ったわい。』

 

『・・・あんなもんじゃない。』

 

『なんだい、骨身に染みてるみたいだな。

で、どうすんだい?』

 

『今夜は楽しむだけだ。

ところで、さっきの話だが?』

 

 

途端に、雁庵の目に鋭さが戻る。

 

 

 

『少し、話をしただけですよ。

娘とは仲良くしてくれてる様ですが、あくまで生徒会の役員としてでしょう。

かなり親身になってくれましたが、娘さんの性格でしょう。』

 

『・・・そうか。』

 

 

八月以前なら疑うが、九月以降のかぐやなら十分考えられると雁庵・雲鷹・正人は思う。

免許取り立てなのに、高速をバイクで東京─京都間を往復する行動力は唖然としたが。

 

店を出たかぐやは、正人の妻娘である早坂奈央と愛が迎えに来ていた。

 

 

 

『奈央さんごめんなさい、折角の時間を。』

 

『構いませんよ、かぐや様。

丁度、娘を送るところですから。』

 

『かぐや様、お疲れ様です。』

 

『愛もごめんなさい。

もっと早くに食事会の予定を教えてくれてれば・・・。』

 

『まあ、仕方ないですよ。』

 

『さあ、参りましょう。』

 

 

かぐやを加えた三人が乗り込んで、車が走り出す。

 

 

 

『お父様は、今夜はどちらに?』

 

『ホテルを用意できてると聞いております。』

 

『そう・・・。

直ぐにお帰りになるのかしら?』

 

『いえ、明日の予定は、競馬と聞いてます。』

 

『えっ、競馬?』

 

『なんでも、四宮家所有の馬が出走するとかで、そのレースをご覧になるとか。

確か、名前は「ガンアンファイター」と「シノエンペラー」でしたか・・・。』

 

 

「何それ、私は知らない。」とかぐやは思う。

 

 

 

『ママ、その名前は誰がつけたの?』

 

『確か、ご当主様が付けられた筈よ。』

 

『『・・・。』』

 

 

かぐやと愛の本音は、「子供の玩具みたいな名前」だったのだが、当主である雁庵自ら付けたのなら何も言わない方がいいと考えた。

為に、無言になる。

 

本当のところは、雁庵はあまり馬に興味はない。

だが、四宮家として競走馬を所有してるので命名する段で黄光に振り、黄光は青龍に振り、青龍がたまたま持っていた玩具のカタログギフトから適当に名前を組み合わせたのが、「ガンアンファイター」と「シノエンペラー」だった。

 

「ガンアンファイター」は、雁庵とファイターをくっつけただけで、「シノエンペラー」は、四宮と皇帝をくっつけてカタカナ読みしただけだが、「シノミヤ」はあからさまだったので命名規則に引っ掛かり「シノ」だけにしたという、しょうもない事を振ってきた兄達への意趣返しだった。

 

馬の資質のせいか、名前のせいか、二頭とも最高順位は五着で青龍同様に期待されてない存在になっていた。

雁庵が所有馬が出走するから競馬場に行くのは完全な口実で、東日本の要人達との競馬観戦にかこつけた懇親会だった。

 

懇親会となるとろくに食事もできないのと、本宅では栄養士や医師の指示で野菜中心の食事になる為、今夜位は好きな物を食べさせろと雁庵は食べていたのだ。

以前、魚を食べたいと雁庵が言ったら、手を変え品を変え魚ばかり続いたので、好みは言わない様になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

 

 

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