白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


三者面談の夜、四宮かぐやは食事会に参加したが、会場規模と釣り合わない四条真琴の登場に、兄の四宮雲鷹に促されて先に帰る事になった。


055『渡部神童は頼みたい』

 

 

 

───食事会の翌日

 

 

三者面談は二日に分けて行われる。

保護者の都合のつかない生徒もいるので、昨日はA・B・C組中心に、週末の今日はD・E組中心に行われる。

そんな日のお昼の生徒会室。

 

 

 

『明日の交流試合の助っ人?』

 

『そうなんだ。

うちのキーパーが怪我をしてしまって、会長に頼めないかと思って。

バレーボールや体育祭でなかなかいい動きだったから、サッカーも出来ないかと思うんだ。

実は名うての選手だったんじゃないか?

勉学の為に今は遠ざかってるだけで、とか。』

 

 

食後の一杯を珍しく生徒会メンバーだけで楽しんでいたところ、アフロ頭が特徴のサッカー部の渡部神童が直に生徒会長の白銀御行に頼み込みに来ていた。

かぐやはモジャモジャさんと記憶してる彼だが、聞けば故障者続出で交流試合の助っ人を掻き集めてる最中だと。

助っ人の話を聞いて書記の藤原千花は無の境地に達しており、そんな千花を見て副会長四宮かぐやは青褪めている。

千花の反応を見る限り、嫌な予感しかしない。

 

 

 

『急に言われてもな。

(明日は寝溜めしようと思ってたんだがな・・・。)』

 

『故障者が多いとは、何かあったんですか?』

 

『良く分からないんだが、体育祭が終わった後ぐらいから腰痛だ捻挫だと増え出してな。』

 

『とりあえず、後で返事をするよ。

色々と調整しないといけなくなるからな。』

 

『急かせて悪いが、なるべく早く頼む。

放課後にグランドで練習してるから、返事はその時に。』

 

 

それだけ言うと、神童は慌ただしく帰って行く。

 

 

 

『しかし、なんだな。

サッカーなんて小学校以来だぞ。』

 

『会長、サッカーしてたんですか?』

 

『ああ、キーパーをしてたよ。

なかなか大変でな、状況次第じゃ顔でボールを受けたり、選手がボールと一緒に飛び込んでくるのを受け止めたり、結構生傷が多くてな。

二年生以降は・・・、色々あって遠ざかってたんだが。』

 

 

そういうと、御行は両腕でサッカーボールを抱き止める姿勢を見せる。しかし、小学生で生傷が絶えないというのは、強豪校だったのだろうか?と千花とかぐやは思う。

 

 

 

『会長、そんなに強いチームに居たんですか?』

 

『いや、男子は大概野球かサッカーなんだが、サッカーはボール一つあればできるからな。

希望者が多くて、他の奴は足が速かったりボールコントロールが上手くて得点に繋がりやすかったのだが、キーパーはなり手がいなくて俺がキーパーで後ろを守ってたんだ。』

 

 

かぐやと千花は思う。

それは、「ボールから遠ざけられていた」のでは、と。

 

 

 

『という事は、引き受けるんですか?』

 

『まあ、困ってるみたいだしな。』

 

『反対です。』

 

 

それまで黙っていた石上優が発言する。

伊井野ミコは文化祭「奉心祭」に向けて風紀委員会に参加していて、今はいない。

 

 

 

『何故だ、石上?』

 

『会長、夏休み前に僕が言ってた事、覚えてます?』

 

『夏休み前?』

 

『予算に関わる話の時です。』

 

 

千花とかぐやも御行と同じく優の発言の真意が解らない。

が、思い出した御行はある可能性に気が付く。

 

 

 

『・・・おい、しかし、まさかまさか?』

 

『文化祭もありますし、ね。』

 

 

御行と優の共通認識、サッカー・野球・バスケットの三部は彼女持ちが多い。

体育祭も終わり、運動部は裏方に回される文化祭等をサボる口実と、実際にイチャついてうっかり体を痛めてるケースが多発してるのでは?というのが、優の推論であり、御行も否定できないところだった。

 

 

 

『どうしても助っ人が必要なら、予算削減案を呑んで貰っては?』

 

『いや、しかし、本当に怪我なのかもしれんぞ。』

 

『それを探る為にも、提示してみては?

どうであれ、削減案は呑ませる事が出来ます。』

 

『まあ、寄付金も年々減ってるしな。

頭の痛いところだ。』

 

 

事情が呑み込めず、怪我と予算削減が結び付かない千花は首を傾げるが、かぐやは呆れている。

社会人で、「身内・知人を、殺す・病気にする」アレの事かと思い当たったからである。

そんなテクニックを今から覚えてる学友達って・・・。

 

 

 

 

 

 

 

───放課後・グランド

 

 

御行が返事をしに行ったら、時間がないからと即席の練習会になってしまった。

 

 

『しかし、何でお前達まで居るんだ、風祭に豊島。

それに、四条は女子だろう。』

 

『固い事言わないの。

楽しそうじゃない。』

 

『渡部、女子が参加していいのか?』

 

『公式戦ではないから問題ない。

相手には先程、了解を取った。

交流試合は出場機会のない選手とか、滅多に対戦しないチームとプレイするのが目的だからな。

だが四条、わざとのラフプレーとかは味方であっても言えよ。』

 

 

暗にセクハラ的プレイの事を渡部は言っている。

助っ人して集まったのは、白銀御行、御行の友人の風祭豪と豊島三郎、紅一点の四条眞妃の四人。

三者面談の関係でD・E組(神童は昨日済ませてる)は捕まらず、運動部を中心に殆どの人間に断られた。

眞妃は、柏木渚と田沼翼といるところで翼の勧誘に来て断られた神童から誘われ(渚に睨まれてバツが悪かったので半分冗談)、断ろうとしたら、

 

 

「眞妃ちゃんなら上手くできるだろうね。」

 

 

と、翼が余計な事を言った為に、助っ人を引き受けてしまったのだ。

因みに、渚と翼は明日はデート予定だったのだが、渚が眞妃の応援をすると言い出したのと、二人共日曜は別の予定が有るので来週に変更になった。

その事を、眞妃は知らなかった。

 

 

 

『ところで渡部。

例の件、頼むぞ。』

 

『ああ、解ってる。

「他校に出向いての試合はしない」でどうだ?

大会は無理だが、それ以外の試合は減るから遠征費は下げられるだろう。

相手校が交通の便の悪い立地の所も少なくないから、いい口実になる。

結構、移動に文句が出てたんだ。』

 

『だな。

大概学校は、そういう所に作るからな。

それで、何をしたらいい?』

 

『交流試合なので、そんなに激しいプレイにはならない筈だ。

試合時間も、30分を前・後半二回の60分で、終われば昼食予定だ。

正直、怪我をされるなら負けてもいい。

本番は年末からだからな・・・、と思ってたらこの有様で、助っ人を引き受けてくれた四人には本当に助かった。』

 

 

そう言うと、渡部は四人に頭を下げる。

 

 

 

『良いって事よ。

なあ、白銀。』

 

『お前達二人が参加してる事が、俺は驚きなんだがな。』

 

『僕は豪に無理やりだよ。

運動不足だから丁度いいけど。

白銀とプレイするなんて、まず無いしな。』

 

『仲良いわね、アンタ達。』

 

『まあな・・・。

色々、あったんだよ。

色々、とな。』

 

 

そう言うと、御行達三人は頷き合う。

 

 

 

『そろそろ、いいか?

では、まずはボールの扱いに慣れてくれ。』

 

 

そういうと、四人それぞれにサッカーボールを手渡していって即席サッカー講座が始まる。

その様子を、不安げに千花とかぐや、優とミコは見ていた。

まさか練習会になるとは思わず、四人とも気になって帰るに帰れない。

 

懸念された御行は「ちょっと苦手」と今回は言わなかったので、流石にボールさばきは危なげ無かった。

小さい頃にやっていたというのは、確かなようだ。

 

 

『まさか、眞妃さんまで参加してるなんて・・・。』

 

『大丈夫なんですか、かぐやさん?

確か、従姉妹さんでしたよね?』

 

『大丈夫とは思いますけど、眞妃さんは部活はやってなかった筈なんだけど。』

 

 

そんなかぐやの心配を他所に、眞妃はなかなかのボール捌きを見せていた。

頭の上にボールを乗せてバランスを取ったり、リフティングをしたりと、御行達男子三人より上手い。

それを見ていたかぐやは、何故だかウズウズしてくる感覚に襲われ、

 

「やってみたい。」

 

と、思いだしていた。

御行達を注視してるかぐや達二人と一メートル程開けて、ミコと優も練習を見ている。

 

 

 

『石上、アンタは参加しないの?』

 

『団体競技は苦手なんだ。

僕は中学までは陸上の短距離だったから。』

 

『そう。』

 

『・・・伊井野。』

 

『・・・何よ。』

 

『この間は、ごめん。』

 

『・・・いいわよ、私も悪かったから。』

 

『・・・。』

 

『・・・私は、多分アンタに期待してたんだと思う。』

 

『・・・。』

 

『・・・でも、勝手に期待されても困る、よ、ね?

アンタが落ち込んでるの見て、本当は怒るべきじゃなかった・・・。』

 

『・・・僕は良かったと思ってる。』

 

『・・・え?』

 

『あんな状態じゃなければ、伊井野の本音なんて聞けないだろう。

それだけ、僕に真剣になってくれたんだって思って・・・。

お陰で、会長や四宮先輩の気持ちも少しは解った様な気がする。

僕からは、伊井野も含めて三人とも高い点数を取るのは当たり前に思えてたから・・・。』

 

『・・・正直、逃げ出したくなるけど、逃げたらもっと悪くなると思ってるから・・・。

そこを乗り越えて、結果を出せたら、私は間違ってなかったって思える。

・・・私がしっかりしないと、パパやママに迷惑掛けるし。』

 

『・・・羨ましいな。』

 

『なにが、よ?』

 

『・・・僕は、色々あったから。

今でも尾を引いてる。

自業自得だけど、それもあって・・・。』

 

『・・・石上は正しかった。

私が言ってあげる、アンタは正しかった。

少なくとも、萩野を殴った事は。』

 

『・・・ありがとう・・・。』

 

 

かぐやと千花は、優とミコの話が気になってしっかり聞き耳を立ていて、練習どころではなくなっていた。

一通りの軽い練習が終わって、御行は神童に気になってた事を聞く。

 

 

『ところで、聞いてなかったが対戦チームは何処なんだ?』

 

『一昨年までは無名だったんだが、去年から急速に頭角を現してきたチームだ。

今年は優勝候補の一角で一部では「ボーイフォッカー帝」とあだ名を付けられた選手、四条帝が率いるチームだ。』

 

『四条帝・・・。』

 

『・・・へぇ、アイツはそんな渾名を付けられてるんだ。』

 

 

神童の発言に御行と眞妃の雰囲気が変わる。

 

 

 

『つまり、この人選は、狙って声を掛けた、という事か渡部?』

 

『何を言ってる?

偶然だよ。

狙って女子に声掛ける訳ないだろう。』

 

『だが、本命は年末の大会で、それまでに四条帝のチームの情報が欲しいのが本音だろう?

そうでなければ、文化祭準備の始まってる今頃に試合など組まん。

まして、四条の姉である四条眞妃を試合に出したら、女子である事を含めて本気にならないだろう。』

 

『・・・姉なのか?』

 

『・・・知らなかったのか?』

 

『待て、おかしいだろう?

姉が秀知院で、何で弟が公立高なんだよ!?

それって・・・。』

 

『何の話してるの?

私の名前が聞こえたけど?』

 

『あ、いや、四条・・・。

大変聞き難い話なんだが、何で弟さんと学校が違うんだ?

姉弟と言うのも、俺は知らなかったんだが?』

 

『ああ、アイツは秀知院に入学予定だったけど、友達とサッカーやりたいからって、公立高に行ったのよ。』

 

『・・・そんな理由で?』

 

『何かおかしい?』

 

『友達とうちに来てサッカー部に入ってくれてれば、どれだけ良かったか・・・。』

 

『渡部、そんなに四条の弟は、サッカーが上手いのか?』

 

『白銀、帝は一人で十一人を相手してると言われる程だ。

試合の記録映像を何度も見たが、対面するとボールを取られた事に相手が気が付かない速さで奪って、ゴールを決めるんだ。』

 

『なっ!

そんな凄腕か・・・。』

 

『帝のチームと対戦するなら対策は一つ。

帝を徹底的にマークしてボールに触れさせない事と言われてる。』

 

 

御行の顔が引き締まる。

神童は御行の帝への対抗意識は知らない。

全国模試で自分を負かした相手である事を御行は認識していたが、四条の弟がそれ程の猛者とは思いもしなかった。

御行の事は気にせず、神童は他の三人は説明を始める。

 

 

 

『さて、ポジションの話をしよう。

最初に言ったが、試合時間は30分・30分の計60分になる。

間に15分の休憩を入れて、コートとメンバーチェンジになる。

白銀は60分間キーパー、風祭・豊島・四条にも・前後半の60分間をお願いしたい。

ポジションなんだが───。』

 

 

神童から伝えられた翌日の試合時の配置は、

 

先頭・フォワード二人(四条眞妃・渡部神童)

二段目ミッドフィルダー(左端・風祭豪、右端・豊島三郎)

の中央二人と三段目ディフェンダーの四人はサッカー部で固めて

キーパー白銀御行

 

という4-4-2の布陣で、神童を含むサッカー部七人で自陣中央部で相手を食い止めて、ボールを取ったら神童が素早くゴールを決めに行くというものだった。

眞妃・豪・三郎は、中央部でのボールの奪い合いには参加せず、陽動やこぼれたボールの回収を主目的にする。

場合によっては、コートからボールを蹴り出してもいいとも言われた。

 

 

 

『うちの連中もそうだが、怪我をされるのが一番怖い。

特に、四条は女子だから体格差で不利になりやすい。

ボールの奪い合いには絶対参加しないでくれ。

オフサイドとハンドにも要注意だ。

何度もいうが、怪我が一番怖いから、それを一番注意してくれ。

他に、質問は?

 

では、明日はよろしく頼む。』

 

 

こうして、即席サッカー講座は終わり、交流試合当日を迎える。

 

 

 

 

 

 

 

───つづく

 

 

 

 

 

 

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