白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜 作:チャリンコ2025
───前回までのあらすじ
サッカー部は故障者多数で交流試合もできない状態になり、白銀御行等は予算削減を交換条件で助っ人に参加する。
その交流試合の対戦相手は、四条帝のチームだった。
───交流試合当日
サッカー部は呪われているのかと言われるぐらい、不運に見舞われた。
当日朝、登校途中のサッカー部員が交通事故に遭遇し、怪我の為に出場出来なくなったのだ。
親に車で送ってもらっていたら居眠り運転の車に追突されて、運転手の親御さんと二人でムチウチで検査入院する事になってしまった。
臨時キーパーとして参加する白銀御行を応援する為に観戦予定だった四宮かぐやは、お弁当を大量に準備して登校したのだが、事故の対応で慌てる渡部神童達サッカー部と生徒会長として対応してる御行に、事態が解らず困惑するばかりだった。
既に対戦相手は到着しているので取り急ぎ代わりの人員確保をしなければいけないが、何ら有効な方策が思い付かない状態だった。
『だめだ、捕まらない!
あと一人が、いない!!』
『運ばれた部員の親御さんから、大事には至ってないが念の為の検査の後、今日は安静にする必要があるから、帰宅するそうだ。
どうする、渡部?
相手チームに事情を説明して延期してもらうか?』
『だめだ、今日以降は予定を組めないんだ。
あと一人いれば・・・。』
『会長、おはようございます。
何かあったんですか?』
『ああぁ、四宮!
おはよう。
実は、出場予定だった選手が交通事故で来れなくなったんだ。』
『そんな!
大変じゃないですか!?』
『それで、渡部が誰か出れないか心当たりを当たってるんだが・・・。』
『元々、居ないのに更に居ない状態で、どうにもならなくなった・・・。』
『・・・あの、お困りなら、私が出ましょうか?』
『『・・・えっ?』』
『し、四宮、サッカーできるのか?』
『まあ、多分。』
『な、なんでもいい、頼む!』
『おっ、おい、渡部!
四宮、本当にいいのか?
怪我をするかもしれんぞ?』
『会長も出るんですから、大丈夫ですよね?』
『俺は、キーパーだからゴール前から動けないんだが・・・。』
『それなら、眞妃さんと組ませて貰えませんか?』
『・・・そう、ならざるを、得ないか・・・。』
『おい、待て!
いくら人がいないからって、初心者の女子二人にフォワードを任せるなんて、危険だぞ。』
『俺がフォワード下に待機して、二人には始まると同時に俺の方にボールを蹴って貰う。
キックオフはうちからに決まってるんだ。
その後も、俺が二人のフォローをする。
正直、相手チームは四条帝以外は警戒する程の選手は居ない。
敵が上がってくるルートからは逃げて、俺達が相手を抑えて溢れたボールを拾ってくれたらいい。
ただ、後半戦も出て貰う事にはなりそうだ。』
『四宮達は女子だ!
男でもバテるだぞ!!
交代要員を出せないなら、生徒会長権限で試合を中止するぞ!!!』
『大丈夫だ、フォローするから!』
『渡部、お前がキーパーやれ!
俺が前に出る!!』
『何、騒いでるの?』
『あっ、眞妃さん。
いえ、事故で欠員が出たので、私が出ると言ったら会長が。』
『えっ、また欠員!?
そうね・・・、
かぐやが出るなら・・・、
わ、私と組みなさいよ。』
『そう、ですね。
私もその方が、いいですね。』
『じゃあ、決まりね。
(本音いうと、あの人とはやりにくそうなのよ。)』
『よろしくお願いします。
(まあ、雰囲気的に解りますわ。)』
二人は小声で割と酷い事を話してたりする。
『四宮! 四条も、本当にいいのか!?』
『良いわよ、別に。』
『私も、眞妃さんなら。』
『白銀、本人達が良いと言ってるんだから。』
『渡部、考える事を放棄したな?』
『もう、どうにもできん。
こんだけ問題だらけだと、助けがあるだけ幸運だよ。』
そういうと、神童は遠い目をする。
『まあ、解らんじゃないが・・・、
四宮・・・、あれっ?』
『彼女達なら、あそこだ。』
神童の指差す方を見ると、談笑しながらかぐやと眞妃が歩いて行くのが見えた。
『・・・心配だな。』
『過保護だな、白銀。
彼女達を信じろよ。
俺は、相手チームと審判に挨拶してくる。
メンバーチェンジの説明もしてこないと。』
『それなら、俺も行く。』
二人は揃ってグランドに近い更衣室兼休憩所に向かう。
到着していた相手チームは着替えを済ませており、引率の教師が審判と打ち合わせをしていた。
あらかじめ大筋の話は連絡していたが、詳しい説明を改めて行う。
『災難だな・・・。
流石に居眠り運転までは予測できないからな。
そういう事情なら、メンバーチェンジと女子二人が参加する事は了解するが、皆いいな?
しかし、女子達は本当に大丈夫か?』
『まあ、お手柔らかにお願いします。』
『うちも人数はギリギリだから、気持ちは分かるよ。』
『そう言って貰えるとありがたいです。』
相手チームと引率教師、審判の了承は得られて御行と神童は安堵する。
最悪、取り止めも覚悟していたのだ。
しかし、説明を受けた四条帝は気が気ではなかった。
不審に思ったチームメイトが理由を聞く。
『どうしたんだ、帝。
お前の姉さんって言っても経験者なのか?』
『いや、サッカーはガキの頃以来やったことない筈だ。』
『なら、問題ないだろう?
軽くお相手させて貰うぜ。』
『・・・怪我させるなよ。』
『わ、解ってるよ、怖えな。』
帝は知ってる。
自分の姉に「常識」なんてものが通じない事を。
そこに加えて、かぐやが!
姫が来る!!
本来なら想い人とプレイが出来るのは嬉しい事!
まして、小さい頃と違い高校生にもなってから、である。
・・・しかし、言い知れぬ恐怖というか悪寒が走るのは何故だろう?
一方、ジャージに着替えを済ませた眞妃とかぐやはウォーミングアップにシュート練習をしながら、試合運びの打ち合わせをしていた。
『渡部の考えは、真ん中まで引っ張り上げて、そこで潰してカウンター狙いね。』
『それで、弟さんは止められるの?』
『無理じゃないかしら?
何度か試合の応援に行ったけど、どんな状況でも切り抜けてたから。
ただ、現状でチームとしてみれば五分五分かこっちが有利よ。
文字通り、帝がチームの屋台骨だから。
だからね・・・、』
眞妃には、何やら策がある様だった。
『四条様、おはようございます。
かぐや様、ジャージになんか着替えてどうしたんですか?』
二人で話し込んでるところに、かぐやの近侍の早坂愛が話し掛けてくる。
試合後の相手と味方の両チームの差し入れにと、大量に弁当(おにぎりと豚汁)を仕込んだが、量が量なので試合の終わる時間までに運んで貰う手配を愛に頼んで、かぐやは先に登校していたのだ。
『あら、久しぶり。
眞妃でいい、と言った筈よ?』
『すいません、なかなか慣れませんもので。』
『眞妃さん。
愛さん、手配ありがとう。』
『お昼前には届く様に手配致しました、かぐや様。
ところ、どうしてジャージに着替えてるのでしょうか?』
『いえね、サッカー部の人が交通事故で試合に出れなくなったからピンチヒッターで私が出るの。』
『・・・はい?』
『ちょっと、青筋立ってるわよ。』
『あまりにも、あんまりな話だったので・・・。
何故、かぐや様が危ない目に合う必要が・・・。』
『・・・サッカーって、そんな競技だったかしら?』
『かぐや様、サッカーというのはですね、フーリガンなる暴徒まがいの集団もいる程、熱狂すると何が起きるか解らない競技なんです。
例えて言うなら、日本シリーズの球場で阪神ファンと巨人ファンをエレベーターに入れるぐらい危ないんですから。』
『・・・その例え、なんとなくしか理解できないわ。』
『ともかく危険です。
ただでさえ、ケダモノ共が試合にかこつけて猥褻な事をする恐れも。』
『大丈夫よ。
渡部さんがフォローするって言ってくれてるし、いざとなれば会長が動いてくれるから。』
『この私が付いてるから、安心しなさい。
それに、あんまり過保護にすると、主人が成長しないわよ。』
『・・・(仕方ない)。』
二十分後、秀知院チームは更に一人の欠員が出て、早坂愛が急遽出場する事になった。
─────つづく