白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


四条帝率いる公立高チームと私立秀知院学園高等部サッカー部の交流試合は、秀知院側の欠員を白銀御行ら助っ人で補い開催するが、直前に更に欠員が出た為に四宮かぐやと早坂愛も参加する事になった。


057『四条眞妃は楽しみたい』

 

 

 

───交流試合当日

 

 

『ええぇえぇぇぇぇぇっっっ!?

かぐやさんが出るんですか!!?』

 

 

交通事故で出れなくなった選手の代わりに出場する事になった四宮かぐやは、応援に来た藤原千花に絶叫される。

 

 

 

『先輩、危険です!

押し倒されてあんな事やこんな事をされかねませんよ!!』

 

『・・・伊井野さん、何言ってるの?』

 

『四宮先輩、何かあったら言ってください。

シメてきますから。』

 

『・・・石上くん、目が座ってるわよ。』

 

『かぐやさん、無事を祈ってます。

証拠写真は抑えますから、勝ちましょう!』

 

『柏木さん、法廷に持ち込む気ね。』

 

 

ヤバ目の妄想が揃って爆発して、とんでもない事を口走り出してる伊井野ミコ達に呆れつつ、一番目が笑って無い千花はかぐやのジャージの袖を掴む。

 

 

 

『かぐやさん、その時は私も一緒に堕ちますから、一人じゃないですよ!

絶対かぐやさん一人にはしませんから!!』

 

『・・・私は、どこに行こうとしてるの?』

 

『皆、心配性ね。

この私が付いてるんだから、大丈夫よ。』

 

『私は眞妃も心配だよ。』

 

『渚、眞妃ちゃんなら大丈夫だよ。』

 

『・・・翼。』

 

 

こんな時でも二人の世界に入る事に周囲は呆れる。

眞妃には目の毒だが、正直、それどころではない状況が生まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───グランド横の男子トイレ

 

 

 

『お前! 一体、何食ったんだ!?』

 

『まっ、全く心当たりがありません!』

 

 

トイレから出てこれなくなったチームメイトに他のチームメイトが問い詰めるが、当人はそれどころではない。

サッカー部エース渡部神童は遠い目をして涙を流しながら空を見上げ、サッカー部顧問教師と生徒会長で臨時キーパーの白銀御行は、事情を説明して相手チームに頭を下げていた。

最早、相手チームは苦笑いしか出来なくなっていた。

そして、ピンチヒッターが何故か早坂愛になっていた。

 

 

 

『・・・愛さん、何があったの?』

 

『気にしない気にしない、かぐやチャン!

(この子、ドンくさい所あるし、怪我なんかさせる奴がいたら、タダじゃおかないから。)』

 

『・・・かぐや、アンタの周りの人達、危ない人が多くない?』

 

 

千花達と離れて合流したかぐやは、愛が加わってる事に疑念に目を向け、眞妃は引き攣り笑いをする。

 

愛は、かぐやが出場する事を聞いた瞬間から出場不可に出来る者を物色し、試合中にアクシデントを装い女子二人に抱き着こうかと軽口を叩いていた選手のスポーツドリンクに強力な下剤を盛ったのだ。

 

その後、何食わぬ顔で騒動になってる所に、かぐやからの差し入れの話を口実に御行と神童と顧問教師に自身の嘘のサッカー履歴(女子サッカー経験者)を信じ込ませ、臨時に出場枠を獲得したのだった。

 

一連の騒動を見ていた四条眞妃の双子の弟で対戦相手の四条帝は、この試合は荒れると確信していた。

同時に、姉同様に想い人の四宮かぐやもかなりヤバい人間ではないかと思いだしていた。

 

一方、相手チームに説明に行った戻りの御行は、応援に来てくれた目の座った妹の圭から、

 

 

 

『かぐやさんに何かあったら、叩き出すから。』

 

 

と、洒落にならない事を言われていた。

 

そんなこんなで、両チームグランドに並列に並んで一礼の後、配置に付きプレイオフとなった。

 

両チーム4-4-2の配置と同じ陣形でキックオフは神童達のチームからであり、サッカーグランド中央のセンターサークルに入るのは、FW(フォワード)の四宮かぐや・四条眞妃の両名。

 

正直、二人共緊張している。

 

同時に、交流試合といえどもこういう機会(新入生代表など面倒な役回りはあるが)はなかったかぐやは、紅潮していた。

それは眞妃も同じで、二人は興奮と緊張の綯い交ぜの心理状態にあった。

試合直前、白銀御行・渡部神童・早坂愛・風祭豪・豊島三郎達から何かあれば俺(私)達が飛び込むからと念を押された二人だった。

 

四人のサッカー部員達は最終防衛ラインになってしまったので、全力で帝を阻止する様に神童に言われている。

 

神童は助っ人女子達に何かあれば、来年度予算半額の上に未使用予算の全没収を行うと、御行から非常に低い声で脅されていた。

故に、必死である。

(泣いてて相手チームに頭を下げに来なかった事も根に持たれてる。)

 

早坂愛は、不心得者一人を排除したが他にも居そうな為、両チーム全男子に鋭い眼光を飛ばして監視している。

 

豪と三郎は、やり合った後に友誼を結んだ御行の恋路(知らない方が秀知院ではモグリ)に感づいているので、かぐやのバックアップに動くつもりだ。

 

そして、一番後ろ。

ゴールキーパーである為にゴール前から動けない御行は、全身からドス黒いオーラを発して、全選手に圧力を掛けている。

 

 

 

『(四宮達に何かあれば、ただでは済まさん。

生きて秀知院から帰れると思うなよ。)』

 

『『『なっ、何が起きてるんだ!?』』』

 

 

あまりの圧力に帝達は圧倒される。

 

 

 

『いやぁ、秀知院さんは凄いですね、女子選手まで揃えているなんて。

とても交流試合とは思えない緊張感ですし、見習いたいもんです。』

 

『いやぁ、欠員だらけでお恥ずかしい。

まあ、今日は楽しい試合になればいいですよ。

「交流試合」ですから。

怪我が一番怖いですからね。』

 

『いやぁ、全く。

「明日は我が身」、ですからね。』

 

『『ハッハッハッハッ。』』

 

 

皮肉と嫌味と見せかけの謙遜のブレンドされた暢気な社交辞令の会話を顧問教師同士で交わしている中、試合開始のホイッスルが鳴り響く。

 

ホイッスルの音と同時に、眞妃の作戦が始まる。

 

センターサークル右側にいる眞妃が、体を大きく前方に地面と水平になるほど倒しながら、利き足の右足を後ろ足に真上まで上げる。

横から見ると180°開脚をしてる様に見える状態だ。

秀知院チームは、目のやり場に困る。

ジャージとはいえ女子の拝む事など姿だからだ。

その眞妃の右足を振り下ろす位置に、かぐやはボールを軽く蹴って合わせると同時に、相手チームの左手側に走り出す。

 

ミッドフィルダー陣の右から二人の位置にいる帝は、二人の動きに目を配っていたが、どちらの動きに対応するべきか悩む。

 

普通はあんな体制からではまともボールを蹴れない、普通なら・・・。

 

相手は、あの「姉」である。

しかし、なら自分の方に走ってくるかぐやの動きは説明が付かない

この帝の迷いからの初動の遅れが致命的な結果を生む。

 

帝達のチームのフォワード二人が眞妃の壁になるべく前進。

狙えるなら眞妃からボールを取りに動く。が、二人が眞妃に後三メートルに近付いた所で眞妃の振り下ろした足が、反動を利用した強力なシュートを放つ!

 

眞妃の放ったシュートは、フォワード二人の頭の間を抜いてゴールに、翔ぶ!

 

同時に、加速して速さの安定したかぐやが帝の右を抜く!

 

瞬間、帝は直感で「理解」した!

 

姉のシュートはかぐやへのパスだと・・・。

 

急いで振り返ってかぐやを視界に収め直した瞬間、姉が蹴ったボールも視界に入る。

ボールはゴールにまっすぐ進まずやや左に、それも縦回転が掛かっていた。

そのまま、帝からはかぐやの背中がボールの軌道を隠してしまった為にボールの最終コースが判断できなかった。

この頃になって帝チームのキーパーとディフェンダーの五人が事態を飲み込み、動き出す。

既にかぐやはディフェンダー陣に差し掛かっていた。

 

このとき、大きい音と共に眞妃の放ったボールは帝チームの右ゴールポストの根元近くに当たり、かぐやの方に跳ね返ってきた。

ドライブシュートだったのだ。

サッカー初心者がやる芸当ではない。

 

この瞬間、かぐやの俊足が生きる。

伊達に、優と追いかけっこ(勉強からの逃亡阻止)をしていた訳では無い。

一学期に優の逃げ足と逃亡の機転が変なところで、かぐやの役に立つ。

今のかぐやには、少し古い記憶だが・・・。

 

帝チーム各員はボールを目で追っていた為、帝以外は自陣に入り込んでいたかぐやの存在に気付いてない。

 

 

 

『止めろぉぉぉぅぅぅぅぉぅぅ!』

 

 

帝の叫びと、目に映ったかぐやの姿にその存在に気付いた周りのディフェンダーとキーパーが、かぐやの持つボールに殺到しようとした瞬間、かぐやはバックパスを出す。

オフサイドのホイッスルは鳴らない。

 

果たして、かぐやがパスを出した先には早坂愛が居た。

 

キックオフと同時にボールを蹴り左手に走り出したかぐやの穴を埋める様に、愛と神童は眞妃の側に、両端に居る豪と三郎もセンターラインまで進む。

キックオフ時点でかぐやと愛は10メートル程距離が離れていたが、短距離のタイムは愛の方が良い。

バックパスの先、愛がボールに対してシュート体制に入った瞬間を見た帝チームの全員が一瞬硬直する。

 

眞妃・かぐや・愛と女子が予想外の働きの連続で、頭も体もついていけない。

 

まさか、開始早々ここまで切り込まれるなんて!?

女子にここまでやられるなんて!!

 

そこからは、スローモーションだった。

 

愛がボールを蹴り、ボールはゆっくりと、だが確実に、ゴールに向かって宙を舞う。

 

やがて、皆が見てる中を無常にもボールはゴールに入りゴールネットを揺らしながら、地面に落ちる。

 

数瞬の間の後、観戦していたミコ達から、次いで秀知院チームから歓声が上がった。

 

かぐや達の作戦勝ちの先制ゴールが決まったのだ。

 

 

 

信じられないという目で、ゴール内に転がるボールを取る帝チームのキーパーは、帝に肩を叩かれる

 

 

 

『どうした!?

始まったばかりだぜ!!』

 

『・・・けどよ。』

 

『取られたら取り返せばいいだろう。

悔しい思い、今までどれだけしてきたよ?』

 

『・・・ああ、ああぁ、そうだな、やってやるか!』

 

『皆、やるぞ!』

 

『『『『『おぁ、おおおぉぅぅ!!!』』』』』

 

『姉貴、そっちがその気なら手加減なしだな。』

 

 

ゴール前から、センターサークル内からシュート後に一歩も動かず、仁王立ちをしている姉の眞妃を睨み付けて不敵に笑う帝。

対する眞妃も、ドヤ顔で見下す様に帝を睨み返して不敵に笑う。

 

 

 

『やれるもんなら、やってみなさい。』

 

 

その横を抱き合いながら愛の得点を喜ぶかぐやと、喜んで貰うのが

照れ臭い愛が紅潮しながら自陣に歩いていく。

 

試合は一旦仕切り直しになる。

 

 

 

 

 

 

 

キックオフ直前に愛を加えたかぐやと眞妃の作戦は、

 

一、派手な挙動で眞妃に注意を引き付けておいて、かぐやがゴール前に近付く

 

二、眞妃がゴールポストにぶつけるシュートを打ち、跳ね返ってきたボールを確保してかぐやが愛にバックパスをする

 

三、本命の愛が、帝チームの注意が眞妃からかぐやに移って守備に綻びが生じた所をゴールを決める

 

 

というものだった。

いかにも素人が考えそうな無理が多い作戦だったが、決定的に違う点は、三人が帝チームより「動ける」事だった。

そのまま、眞妃のシュートだけで得点してもよかったが、かぐやと愛が絡む事で三人に警戒心を持って貰う事も狙いだった。

 

結果オーライではあるが、神童は予定と違う眞妃達の行動に冷や汗をかいていた。

 

 

 

 

 

秀知院臨時編成チーム

開始二分で初得点

 

帝チーム 0━1 秀知院

 

 

 

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

 

 

 

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