白銀かぐやはどうにかしたい 〜2周目の恋路〜   作:チャリンコ2025

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───前回までのあらすじ


四条帝率いる公立高チームとのサッカーの交流試合は、秀知院サッカー部チームに欠員が多数出た為に、白銀御行達が助っ人で参加する。
帝の姉、四条眞妃の策で秀知院チームは先制点を上げる。


058『四宮かぐやは役立ちたい』

 

 

 

───交流試合当日

 

 

帝チーム 0━1 秀知院

 

 

 

 

先制点を許してしまった帝チーム(便宜上)は、遮二無二に秀知院チームゴール目掛けて攻め上がるが、ボールを持つ選手はゴール前のサッカー部ディフェンダー陣に阻まれ、後続は助っ人風祭豪と豊島三郎を中心にサッカー部エースの渡部神童指揮の元に妨害されて寸断、カウンターでフォワードの四宮かぐやや四条眞妃にボールが渡れば自陣ゴールが脅かされ、攻勢に全力を振り向けられず消耗させられていた。

特にセンターサークルから正確にゴールを狙ってくる眞妃のシュートは脅威だった。

 

随所でかぐやの近侍・早坂愛の絶妙なアシストも効果的に機能し、帝チームを寸断してボール持ちを孤立無援にして、人数と技量で勝る秀知院フォワード陣が有利に戦えている。

 

しかしながら、流石は四条眞妃の弟・四条帝は姉達に負けない駿足を発揮し、味方が秀知院コート中盤まで囮でボールを運び、秀知院ディフェンダー陣を前に釣り上げて、空いた隙間を縫ってパスを受けた(こぼれ球)帝が秀知院ゴールに同点ゴールを叩き込んだ。

 

この時、キーパーの白銀御行は帝への反応が遅れたのと、帝が打ち込んだ球筋と違うところに身体を出して守ってしまい、得点を許してしまった。

 

秀知院応援団(藤原千花達)から悲鳴が上がる。

相手チームは数人の女子生徒(帝の追っかけ)が応援に来てるが、ゴールした帝に黄色い声援が飛ぶ。

 

 

 

帝チーム 1━1 秀知院

 

 

 

この時、御行の動きに違和感を覚えたかぐやは、「来年」に近侍の早坂愛がコンタクトレンズを御行に装着させようとして御行と揉めていた事を思い出した。

その後は、かぐやが代わってかなり怪しい光景(かぐやは御行の鋭い目が大好き)を展開し、御行はコンタクトレンズが当たり前になったが、この段階では裸眼のままではコンデション次第ではかなり視力が悪かった筈と思い当たったのだ。

 

しかし、サッカーのルール上、眼鏡類の装着は専用仕様で主審の許可がいる。

昨日の晩に、観戦してもルールが解らなければ状況が理解できないと、かぐやはルールに目を通していたのだ。

 

幸い、頭角を現してきてる新興チームのエース相手で混戦状態だった為と、周りは失点理由に納得しているが何度もそうはいかない。

祈る様な気持ちで御行をかぐやは見つめる。

その視線に気が付いた御行は右手を上げて応えるが、相手がかぐやとは判別出来てない。

 

勘で反応しただけだ。

 

両者の距離は二十メートルは離れている為、御行からは人らしい輪郭と参加者の中で女子だけ青色のジャージを着てるので、かぐや達のうちの誰かだろうと予測しての応えたのだった。

そんなかぐやの様子を不審に思った愛が話し掛けてくる。

 

 

 

『どうされました、かぐや様?』

 

『ねぇ、愛さんはコンタクトレンズよね?』

 

『・・・そうですが?』

 

『ハーフタイムの15分(女子参加の為)で必要だから、予備は持ってるかしら?』

 

『ありますけど。』

 

『じゃあ、お願い。

使わせて。』

 

 

深刻な顔をしていつもは言わない事を言うかぐやに、首を傾げる愛はかぐやからある懸念を伝えられる。

 

その頃、千花達応援組の席では、かぐやに頼まれて千花が望遠レンズ付きのカメラを、かぐやの友人の柏木渚が猥褻被害の証拠にとスマホで録画している。

御行の妹の圭は、御行やかぐやを案じて無言で佇み、心配そうな視線を向けている。

 

 

 

『藤原さん?』

 

『千花でいいですよ?

どうしたんですか、柏木さん?』

 

『じゃあ、千花さん。

かぐやさん、輝いてますね。』

 

『そうですね、凄くイキイキしてますね。』

 

『楽しそうだな・・・。

私もやってみようかな?』

 

『サッカーですか?

女の子ならフットサルとかもいいですよ。』

 

 

和気あいあいという感じで観戦しているが、彼女達はある現実から目を逸らしてる。

 

交流試合の為に一部の保護者も観戦に来てるいるのだが、サッカーのルールがイマイチ呑み込めてない保護者もおり、生徒会会計・石上優と会計監査・伊井野ミコの二人が保護者の集団に捕まり解説と接待役をする羽目になっていた。

 

地味に集団から距離を置く千花達は、なかなかである。

 

 

 

『一人をあんな人数で取り囲んで、反則じゃないの?』

 

『そういうルールなんです。

サッカーボールをゴールに入れるのを競う競技ですから、ゴールに入れられてしまうと点数を取られてしまうんです。』

 

『それにしても・・・。』

 

 

一人の質問が終われば、また別の質問が飛ぶという面倒な状況が生まれていて、優はうんざりしていた。

ミコはミコで、人数は少ないが前期高齢者の方々に孫の様に可愛がられて、うんざりしていた。

しかし、相手は保護者達なので下手な事は出来ない。

我慢のしどころだが、知らぬ顔で観戦してる千花達を見ると、

 

 

「先輩方〜?」

 

 

と恨み節の一つも言いたい気分になる。

 

どこで聞きつけたのか、御行達が臨時に参加してると知った龍珠桃と子安つばめまで観戦に来ていた。

 

 

 

『しっかし、白銀の野郎、トレぇなぁ~。

それに比べると、四宮はよく動くな。

反対に四条は真ん中からあんまり動かねぇ〜な。』

 

『桃ちゃん、仕方ないよ。

でも、四宮さん達はそういう作戦なのかな?

ねぇ、藤原さん。

四宮さん達から何か聞いてる?』

 

『私は、何も。

かぐやさんや早坂さんが出場するというのも、試合直前に急に決まりましたから。』

 

『・・・急に出場できるものなの?』

 

『なんでも、交通事故で来れない人と体調不良で出れない人が出たから、急遽かぐやさんと早坂さんが出る事になったと聞いてます。

ところで、子安先輩と龍珠さんは会長が出場するから、ですか?』

 

『ああ、渡部が何ふり構わず声掛けまくったからな。

それでも集まらなくて、生徒会に行ったと聞いてな。

しっかし〜、私の前を素通りして四条や四宮には声掛けてたとはな〜、いい度胸してるじゃねぇか〜。』

 

『もう、桃ちゃん。

程々にしないと。』

 

『『(子安先輩、止めないの!?)』』

 

 

渚と千花は同じ事を思った。

たが、千花はそれ以外にも不可思議に思ってる事があった。

渚の彼氏の田沼翼が、渚と離れて保護者達から開放された優と観戦してるのだ。

渚も撮影に集中してるせいか、翼が側にいない事を気にしていない様に見える。

 

 

「あれだけベッタリだったのに何があったんだろう?」

 

 

と、千花は嵐の前の静けさの様な不気味さも感じていた。

そうこうしてる間に、交流試合は1━1のままハーフタイムになった。

休憩とコートチェンジが行われる中、かぐやと頼まれた愛と眞妃の三人が御行を物陰に強引に連行すると、羽交い締めにして無理矢理コンタクトレンズを装着しようとする。

 

 

 

『や、やめろ!

いっ、イキナリなんなんだ!?』

 

『いいから、大人しくしてください!』

 

『男でしょ! これぐらいでビビるな。』

 

『会長さん、騒ぐと変な噂立てられますよ。』

 

 

かぐやと眞妃の二人がかりで御行を抑えると、愛がコンタクトレンズを装着しようとするが、御行は全力で抵抗する。

やむなく、かぐやは小指を御行の耳に入れる。

予想だにしてなかったかぐやの行動に、御行の愛への注意が反れた瞬間に、無事コンタクトレンズの装着に成功する。

 

 

 

『ひゃっっぅ!

しっ、四宮!?

何するんだ!!?』

 

『こうでもしないと、時間がないんです!

お叱りは後で聞きますから、今は「見えて」ますか!?』

 

『見えてるって、なに・・・、お・・・。』

 

 

非常にクリアな視界になった事で、至近距離でかぐやの顔を見た御行は、思わず見惚れてしまい紅潮する。

 

 

 

『ああぁ、疲れた。

目が悪いんなら自覚しなさいよ、御行?』

 

『コンタクトレンズ付けるだけでこんな大仕事は、御免被りたいです・・・。』

 

 

疲れて座り込む眞妃と呆れてる愛を横目に、かぐやは御行に問い続ける。

 

 

 

『どうです?

しっかり見えますか?』

 

『・・・ああぁ、「しっかり」見えるよ、四宮。』

 

『会長・・・、私は物凄く欲張りなんです。

私は、皆さんと、勝ちたいんです!』

 

 

久々にかぐやからの真っ直ぐな視線を受けて御行は硬直するが、同時に笑いがこみ上げてくる。

 

 

 

『・・・そうか、そうかそうか!

いいだろう!!

四宮、勝つぞ!!!』

 

『はい!』

 

『はっはっはっはっはっ!!』

 

 

眞妃と愛は疲れた顔を二人に向けて思う。

 

 

「「この二人、なに勝手に盛り上がってるの?」」

 

 

と。

しかし、かぐやはともかく、御行は途中からとんでもない事に気が付いてしまった。

コンタクトレンズに抵抗するあまり身体に力を入れ過ぎてしまい、それを抑えるのにかぐやと眞妃は必死だった為に、二人の胸が御行の身体と密着してしまったのだ!

 

その事に、柔らかい感触の正体に、唐突に気が付いてしまった御行は、意識を逸らさないととんでもない痴態を三人に見られてしまう為、ワザと笑って誤魔化していたのだ。

ヒジョーにギコチない動きでゴールに足早にむかう御行を、事態が解らないかぐや達三人は身体の何処かを痛めたのだろうか?と労る視線を御行に向けていた。

 

 

 

 

 

『何やってんだ、あいつら?

見えるか、藤原?』

 

『・・・まあ。

状況、理解できませんけど。』

 

 

 

桃に問い掛けられた千花はかぐやの望遠カメラで見てるが、眞妃は座り込み、傍らに愛が立って、その前にかぐやと御行が向かい合って御行が笑ってる様に見えるだけで、全く状況が解らない。

 

 

 

『ま、まさか、4P!?』

 

『ミコちゃん、イメージ台無しだから止めよう。』

 

『でも、さっきまで三人がかりで白銀会長を抑えてましたよ。

四宮さん、会長の耳に指入れてますし。』

 

『『『エエェェぇ!』』』

 

『撮りたくなかったけど、映っちゃったんです・・・。』

 

『・・・お兄、昼間っから何やってるの?・・・。』

 

『圭ちゃん、大丈夫!

大丈夫だから、怖い顔しないの。』

 

『千花ねぇ~。』

 

 

 

三人が物陰に向かって走っていくところから、スマホカメラの最大望遠で撮っていた渚は、録画してしまったのだ。

保護者達から開放されたミコも加わり、渚の話でただならぬ状況が解ると応援の女子組には困惑が広がる。

 

 

 

『・・・いいんですか、田沼先輩。

(やっと名前が解った・・・。)』

 

『・・・色々相談に乗って貰ったから君には言うけど、内緒にしてね。

サプライズを演出したいんだ。

 

渚を・・・、喜ばせたいから。』

 

 

いつもくっついて離れない渚から離れてる理由を、翼から意外に真剣な顔で種明かしをされて、「リア充シネ」と「成功します様に」という感情に挟まれて、優は複雑な心境になる。

 

 

 

 

 

─────つづく

 

 

 

 

 

 

 

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