ゼロから始める葬送のフリーレン   作:西方物理

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魔獣の森

ロズワール邸の朝は、残酷なほどに穏やかだった。

窓から差し込む陽光は柔らかく、庭の芝生についた朝露を宝石のように輝かせている。小鳥のさえずりが聞こえ、遠くの調理場からは朝食の準備をする音と匂いが漂ってくる。

平和だ。

何も知らなければ、このままピクニックにでも出かけたくなるような、完璧な休日の朝。だが、ヒンメルの内側は、冷たい泥沼のような恐怖で満たされていた。

「……よし」

鏡の前で、ヒンメルは自らの頬を両手で叩いた。乾いた音が室内に響く。

鏡に映る蒼い髪の男は、いつも通りの自信に満ちた笑みを浮かべている。目の下の隈は化粧で隠した。蒼白な唇も、血色がよく見えるように噛んで色を出した。

完璧だ。

どこからどう見ても、世界を救った英雄の顔だ。その英雄の皮膚の下で、心臓が早鐘を打ち、胃液が逆流しそうになっていることなど、誰も気づかないだろう。

(行くんだ。今日こそ、この悪夢を終わらせるために)

今回の死のループの原因。その正体には、あらかたの見当がついていた。呪いだ。

前回の記憶。村で子供たちと触れ合った際、足元にじゃれついてきた黒い子犬。甘噛みされた瞬間に感じた、微かな違和感。あれは物理的な痛みではなく、魂に杭を打ち込まれるような呪術的な接触だった。

魔獣使い。

アーラム村の結界が何らかの理由で綻び、あるいは人為的に破られ、魔獣が村に入り込んでいる。

子供たちが危ない。そして、それを放置すれば、やがて屋敷の住人たち――エミリアや、フリーレンにも危害が及ぶ。だが、自分だけではだめだ。圧倒的な魔獣の数に、八つ裂きにされる未来を一度体験している。

「……フリーレン」

愛しい名前を口の中で転がす。

彼女を連れて行くわけにはいかない。もし彼女が一緒なら、森の魔獣など一瞬で塵になるだろう。あの圧倒的な魔法の前では、ウルガルムの群れなど枯れ葉の山と同じだ。

だが、それでは駄目なのだ。

彼女は鋭い。僕の些細な変化も見逃さない。もし戦闘になり、僕が少しでも「死の恐怖」に反応して身体を強張らせたり、前回の死のトラウマで嘔吐したりすれば、彼女はすべてを悟ってしまうだろう。

僕が、何度も死んでいることを。そして彼女自身が、その原因の一端を担っているかもしれないということを。

彼女に罪悪感を背負わせるわけにはいかない。彼女の魔法は、世界を美しく彩るためにあるのであって、僕の汚れた死に様を隠蔽するために消費されるべきではない。

「ヒンメル、遅い」

部屋の扉を開けると、そこにフリーレンが立っていた。いつから待っていたのか。壁に背を預け、少し眠たげな半眼でこちらを見上げている。

その姿を見た瞬間、ヒンメルの胸に温かい痛みが走った。守りたい。この無防備で、不器用で、途方もなく優しいエルフを、この残酷な世界の理不尽から遠ざけたい。

「やあ、フリーレン。おはよう。今日も君の寝癖は芸術的だね。まるで早朝の雲のようだ」

「……うるさい」

フリーレンは無表情のまま、自分の頭を撫でた。ぴょこんと跳ねた白銀の髪が、彼女の指に絡まる。

「村に行くんでしょ? 私も準備したよ」

彼女が短杖を握りしめる。当然のように、ついてくるつもりだ。ヒンメルは一瞬だけ息を止め、そして最高の笑顔を作った。

「いや、フリーレン。今回は君には留守番をお願いしたいんだ」

「……なんで?」

フリーレンの眉がピクリと動く。不満のサインだ。

「村での調査は、非常にデリケートなものになりそうでね。魔獣使いが潜んでいる可能性がある。君の強大な魔力は、相手を警戒させて逃がしてしまうかもしれない」

「魔力を隠すのは得意だよ」

「知っているさ。でも、もっと重要な任務があるんだ」

ヒンメルは跪き、彼女と目線を合わせた。その翠玉の瞳を、真っ直ぐに見つめる。

「エミリア様のことだ。彼女は王選候補者として狙われている。ロズワール伯爵も不在の今、この屋敷で彼女を守れるのは、僕が最も信頼する魔法使い……君しかいないんだ」

「……レムとラムがいる」

「二人はメイドだ。屋敷の管理で手一杯さ。それに、万が一敵が『魔法』のエキスパートだった場合、対抗できるのは君だけだ」

嘘だ。

いや、半分は本当だが、本質はそこではない。ただ、君を戦場から遠ざけたいだけだ。

フリーレンは、じっとヒンメルを見ていた。その視線は、ヒンメルの心の奥底にある嘘を見透かそうとしているようだ。数秒の沈黙が、数時間にも感じられた。冷や汗が背中を伝う。

ばれるか。いや、騙し通す。勇者ヒンメルは、嘘つきなのだから。

「……わかった」

やがて、フリーレンは小さく息を吐いた。

「ヒンメルがそう言うなら、そうする。エミリアは守るよ」

「ありがとう。助かるよ」

ヒンメルは立ち上がり、彼女の頭をポンと撫でた。柔らかい感触。

これが最後にならないように。必ず、生きて帰ってきて、またこの感触を味わえるように。

「それと、村へはレムについてきてもらうことにした。土地勘がある人が必要だからね」

「……ふーん。あの子、ヒンメルのこと嫌いみたいだけど」

「はは、ツンデレというやつさ。僕の魅力に気づくのに時間がかかっているだけだよ」

「……ポジティブだね」

呆れたような声。それでいい。呆れて、安心して、ここで待っていてくれ。

「行ってくるよ」

ヒンメルは背を向けた。振り返らずに歩き出す。背中に感じる彼女の視線が、物理的な重みを持って引き止めているような気がした。

________________________________________

アーラム村への道のりは、重苦しい沈黙に包まれていた。

ヒンメルの数歩後ろを、レムが歩いている。昨晩の「和解」ともつかない対話の後、彼女の態度は軟化していた。少なくとも、あからさまな殺意を向けてくることはなくなった。

だが、警戒心は解けていない。彼女にとってヒンメルは、「魔女の匂いを撒き散らす、奇妙に人間臭い不審者」という位置づけだろう。だからこそ、一緒に村に行って欲しいという言葉に無言の賛同を示してくれたことには、感謝しかなかった。

「……いい天気だね、レム」

「……そうですね」

会話が続かない。ヒンメルは苦笑した。本来なら、気の利いた冗談の一つでも言って空気を和ませるところだが、今の彼にそんな余裕はなかった。

村が近づくにつれて、強くなる「気配」。魔力ではない。もっとドロリとした、怨嗟のような気配。そして、匂い。自分の体から発せられる魔女の残り香とは違う、獣の油と血の混じったような生臭さが、風に乗って漂ってくる。

(いるな)

村の入り口には、村人たちの姿があった。だが、いつも子供たちが遊んでいる広場が静かだ。

「……様子がおかしいですね」

レムが小声で呟く。彼女も気づいたようだ。メイドとしての顔から、戦士の顔へと切り替わっている。

村長が駆け寄ってきた。顔色が悪い。脂汗をかいている。

「おお、ヒンメル様! レム様! 良かった、ちょうど屋敷へ使いを出そうと……」

「何かあったのかい?」

「子供たちが……いねえんです。朝から森の方へ遊びに行ったきり、戻ってこねえんです。それに、村の周りの結界が……」

村長が指さした先。村を囲むように設置されていた、魔獣除けの結界石。その一つが、砕け散っていた。物理的に破壊されたのではない。内側から腐食し、崩れ落ちたような痕跡。

ヒンメルは砕けた石の破片を拾い上げた。指先で触れると、ピリリとした不快な感触がある。

「……術式の強制解除、いや、汚染による機能不全か」

ヒンメルは独りごちた。こちらの世界の魔法体系は、彼が元いた世界のそれとは異なる。フリーレンたちの魔法が「解析と構築」による論理的なものであるのに対し、この世界の魔法は「ゲート」を通じた大気中のマナへの干渉、あるいは精霊との対話に近い。

だが、原理は違えど、現象には法則がある。この結界石は、意図的に「魔獣を引き入れる」ために壊されたのだ。もっとも、これを見るのは二度目だけれど。

「子供たちは、森へ?」

「ええ。ペトラも、他の子たちも……」

「わかった。すぐに捜しに行く」

ヒンメルは立ち上がった。その動きに迷いはなかった。恐怖はある。森に入れば、そこは死地であることを知っている。

だが、子供たちが犠牲になる未来だけは、選ぶわけにはいかない。

「レム。手を貸してくれるね?」

「……勿論です。村の子供たちを守るのは、屋敷の使用人の務めですから」

レムが頷く。その瞳が、ヒンメルをじっと見つめた。

「ですが、貴方はここで待っていてください。森は危険です。戦闘になれば、貴方を守りながら戦う余裕はありません」

正論だ。彼女の目から見れば、ヒンメルはただの口先だけの男に見えるかもしれない。腰に下げた剣も、ただの飾りだと思われているだろう。

だが、首を横に振った。

「いいや、僕も行くよ」

「足手まといです」

「厳しいね。でも、これでも腕には覚えがあるんだ。それに……」

ヒンメルは、森の奥を見据えた。鬱蒼と茂る木々の暗闇。その奥から、無数の視線を感じる。

「子供たちが怖がっている。勇者が助けに行かなくてどうするんだ」

キザな台詞。

だが、声は震えていなかった。自分を奮い立たせるための言葉。レムは呆れたように溜息をついたが、それ以上は止めなかった。

彼女もまた、一刻を争う事態であることを理解していたからだ。

「……死んでも知りませんよ」

「ああ。君に守られるつもりはないさ」

(守らせるつもりもない。君を守るのは、僕の役目だ)

心の中で付け加え、ヒンメルは森への一歩を踏み出した。

________________________________________

森の中は、異様な静けさに包まれていた。普段なら聞こえるはずの虫の音も、鳥の声もない。ただ、湿った土の匂いと、腐葉土の発酵した臭い、そして微かに漂う獣臭だけが充満している。

ヒンメルは剣の柄に手をかけ、周囲を警戒しながら進んだ。感覚を研ぎ澄ませる。魔族との戦いで培った索敵能力は、この世界でも健在だ。

だが、何かが違う。魔族の殺意は、理知的で冷徹だった。だが、この森に満ちているのは、もっと原始的で、飢餓感に満ちた殺意だ。

「……ヒンメル様」

レムが小声で呼ぶ。彼女の手には、すでにモーニングスターが握られている。

「囲まれています」

「ああ。わかっているよ」

茂みの奥。木々の影。無数の赤い目が、こちらを覗いている。ウルガルム。魔獣だ。ただの狼ではない。魔女の瘴気に侵され、殺戮衝動のみで動く怪物たち。

(数が多いな……)

ヒンメルは冷や汗を拭った。十や二十ではない。五十、あるいはそれ以上。群れ全体が、統率された動きで包囲網を縮めている。

「子供たちの匂いがします。……奥です」

レムが指し示す方向へ、二人は走った。藪を漕ぎ、倒木を飛び越える。

視界が開けた。森の中の小さな広場。そこに、子供たちが固まって震えていた。ペトラが、小さな男の子を抱きしめて泣いている。

その周囲を、十数匹のウルガルムが取り囲み、涎を垂らして威嚇していた。

「やめろッ!」

ヒンメルが叫ぶと同時に、剣を抜いた。一閃。飛びかかろうとしていた先頭の一匹の首が、宙を舞う。鮮やかな太刀筋。

ヒンメルの肉体は全盛期ではない。この世界の理に縛られ、身体能力も制限されている。だが、長年の経験と技術は錆びついていない。最速の踏み込みと、無駄のない軌道。

「勇者様!」

子供たちが歓声を上げる。だが、ヒンメルは振り返る余裕などなかった。仲間を殺されたウルガルムたちが、一斉に吠えた。

空気が震える。その咆哮は、ただの威嚇ではない。仲間を呼ぶ合図だ。

ザザザザザ……ッ!

森の四方から、さらに多くの黒い影が溢れ出してくる。波だ。黒い獣の津波が、広場を埋め尽くそうとしていた。

「アル・ヒューマ!」

レムが叫ぶ。巨大な氷柱が出現し、獣の群れを吹き飛ばす。凄まじい威力だ。だが、数が多すぎる。吹き飛ばしても、吹き飛ばしても、次から次へと湧いてくる。

「ヒンメル様! 子供たちを連れて逃げてください! レムが食い止めます!」

レムが鉄球を振り回し、血肉の雨を降らせながら叫ぶ。彼女の額から、白い角が生えようとしていた。鬼化。身体能力を極限まで引き上げる、諸刃の剣。

だが、それを使えば彼女は理性を失い、暴走する危険がある。

「馬鹿を言うな! 君を置いて行けるわけがないだろう!」

「足手まといだと言ったはずです! 早く!」

レムの声には、悲壮な覚悟が滲んでいた。彼女は死ぬ気だ。子供たちと、そして(不本意ながら)ヒンメルを逃がすために、ここで命を燃やし尽くすつもりだ。

その自己犠牲の精神。あまりにも美しく、そしてあまりにも痛々しい。

(ダメだ)

ヒンメルの脳裏に、前回の記憶がフラッシュバックする。冷たくなったレムの死体。砕け散った希望。そんな結末は、二度と御免だ。

「子供たちは下がっていろ! 決して僕たちのそばから離れるな!」

ヒンメルは叫び、レムの隣に並んだ。剣を構える。呼吸を整える。震える膝を、地面に突き刺すように固定する。

「レム、君は一人じゃない。僕がいる」

「何ができるんですか! 貴方ごときが……!」

「勇者だからね。奇跡の一つや二つ、起こしてみせるさ」

強がり。

だが、その言葉にレムが一瞬、動きを止めた。その隙を、獣たちは見逃さなかった。

「ガアアアアアッ!」

死角から、三匹のウルガルムが同時にレムに飛びかかった。彼女の鉄球は、正面の敵を薙ぎ払った直後。戻すのが間に合わない。

鋭い牙が、レムの細い喉笛を狙う。

(間に合え……ッ!)

思考よりも早く、ヒンメルの体が動いた。魔力を脚に集中させる。筋肉繊維が悲鳴を上げるのも構わず、地面を蹴る。時間よ、止まれ。

そう願うほどの切実さで、彼はレムと獣の間に割り込んだ。

ドスッ。

鈍い音が響いた。肉が裂け、骨が軋む音。

「……ぅ、ぐ……ッ!」

ヒンメルの左腕に、一匹の牙が深く食い込んでいた。右肩に、もう一匹の爪が突き刺さっている。そして、脇腹に三匹目が噛み付いていた。

熱い。焼けるように熱い。痛みが、脳髄を直接殴りつけてくる。

「ヒン、メル……様……?」

レムが、信じられないものを見る目で、目前の男を見上げていた。彼女の目の前で、ヒンメルは三匹の魔獣をその身に受け止め、血を流して立っていた。

盾になったのだ。魔法障壁でも、鎧でもなく、生身の体で。

「……っ、く……ああ、痛いな……」

ヒンメルは顔を歪めた。格好つける余裕など、とうに消し飛んでいる。痛い。痛すぎる。涙が出そうだ。叫びだして、のたうち回りたい。

だが、彼は笑った。口の端から血を垂らしながら、引きつった笑みをレムに向けた。

「……服が、破れてしまったよ。これじゃあ、フリーレンに叱られる」

「なんで……」

レムの声が震える。

「なんで、庇ったんですか……。貴方は、レムのことが嫌いなはずじゃ……殺されかけたのに……」

「言っただろう。僕は勇者だ」

レムが二匹の魔獣を吹き飛ばす。ヒンメルは、いまだ噛み付いている狼の頭を、予備の短剣で刺した。獣が悲鳴を上げて離れる。傷口から、どくどくと鮮血が溢れ出し、地面を赤く染める。

視界が霞む。失血によるめまい。立っているのがやっとだ。

「女の子に傷一つつけさせない。……それが、僕の美学なんだよ」

それは、ただのやせ我慢だった。だが、そのやせ我慢こそが、ヒンメルという男の生涯を貫く真実だった。

「……ッ!!」

レムの瞳の中で、何かが弾けた。鬼の角が、完全に顕現する。だが、それは暴走によるものではない。明確な意思。この愚かで、無茶で、どうしようもなくお人好しな男を、死なせてはならないという強烈な感情。

「アル・ヒューマ!!!」

先ほどとは桁違いの質量の氷塊が、周囲の空間を埋め尽くした。殺到していたウルガルムの群れが、一瞬にして氷の彫像へと変わる。

圧倒的な破壊力。その余波で、木々がなぎ倒され、森の一部が更地へと変わる。

静寂が戻った。氷の砕ける音だけが、キラキラと響いている。

ヒンメルは、剣を杖にしてどうにか立っていた。全身が血まみれだ。意識が遠のく。暗い闇が、視界の端から侵食してくる。

(ああ、またか……)

死の予感がする。出血が多すぎる。このままでは、助からないかもしれない。また、戻るのか。

あの朝に。

ふわり、と体が支えられた。レムだ。彼女が、崩れ落ちそうになったヒンメルを抱きとめていた。その顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「死なないでください……っ! お願いします、死なないで……!」

治癒魔法。彼女の手から、淡い光が溢れ出し、ヒンメルの傷口を覆う。温かい。痛みが少しずつ引いていく。

「……泣くなよ、レム」

ヒンメルは、血に濡れた手で、彼女の頬に触れようとして、汚してしまうと思って止めた。代わりに、言葉を紡ぐ。

「君の可愛い顔が、台無しだ」

「……馬鹿です。貴方は、本当に大馬鹿です……ッ」

レムは泣きじゃくりながら、必死に魔力を注ぎ続けた。その姿を見ながら、ヒンメルは薄れゆく意識の中で思った。

(ああ、よかった)

彼女は、もう僕を殺そうとする目をしていない。僕のために、泣いてくれている。

それは、この地獄のようなループの中で手に入れた、初めての確かな希望の光だった。

「……少し、眠るよ」

「ダメです! 目を開けてください! ヒンメル様!」

レムの叫び声が、遠く聞こえる。深い、深い眠りの底へと落ちていく。だが、それは死の冷たさではなかった。誰かの体温を感じられる、穏やかな気絶だった。

森の奥から、巨大な影が近づいてくる気配があった。群れのボス。真の脅威はまだ去っていない。だが、ヒンメルの意識はそこで途切れた。

(あとは頼むよ……レム……)

勇者は静かに目を閉じた。その顔には、微かに安堵の笑みが浮かんでいた。

 

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