一日三食食べたくて   作:ケツバット

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プロローグ

「キー君、俺は街に降りるよ」

「そうか」

「一日三食、毎日毎日肉と魚。偶に二食、最悪一食。この生活に耐えられない………人の文明が恋しい」

 

 少年は親友兼、育て親ともいえるキー君にそう言い残すと霧に包まれた森から出ていった。

 

 

 

 

 飯を得るためには何が必要だと思う? そう、金だ!

 というわけで盗賊や魔物狩り。このあたりなんかスライム少なくない? どこにでも居るゴキブリみたいな魔物だと思ったんだけど、スライム襲う天敵でも居るのかな? と少年は首を傾げた。

 

 盗賊も盗賊で規模が小さいというか………。まるで盗賊を狩りまくる天敵に襲われ数を減らし、天敵が失せ再び数を増やし始めたような。

 

「まあ金目のものだけもらってくか。お? 此奴指名手配犯」

 

 賞金首の首。つまり金目のものだ。運びやすいように切り落として持って帰った。

 

 

 

 

「やっぱ肉は家畜だな。ジビエや魔物は獣臭くていけねえや」

 

 買った肉に香料と塩をまぶして焼く。これだけでも十分うまい。

 因みに主食は肉を挟んだパン、主菜は肉、スープにも野菜の倍は肉。肉肉肉! 彼は肉が大好きなのだ。

 

 とは言え肉は結構高い。毎日買うとなると相応の金がいる。

 彼は盗賊の持ち物は元の持ち主に返還されることを願い国に渡すので、持ち主不明、あるいは死亡の際、ほんの一部が入る。多くは国のクズ共がそのまま懐に入れている。

 

「手っ取り早く金を稼ぐ方法…………ブシン祭?」

 

 大会か。優勝賞金で肉を買おう。

 

 

 

 

「じゃあな王国最強。俺がいない国で育っただけの凡夫」

 

 

 

 優勝した。歴代最年少優勝者として名も刻まれた。

 トロフィーの宝石を取って、本体は融かして鋳造して売った。その金で焼肉パーティー。

 

 ミツゴシという商会が始めた新しい試み。肉を己で焼くのだ。しかも食べ放題。

 切った肉を提供するだけにすることで人件費とか削減してるのだろう。

 

「見つけた」

「んもぐ?」

 

 基本的に捨てられる部位だった内臓を焼くという新しいスタイル。ずっと捨てていたことを後悔しながら味わっていると声をかけられた。

 

「試合ではお世話になりました」

「……………何回戦?」

「決勝、でした………」

「………………………………ああ。前回優勝者の王国最強」

 

 確かこの国の第一王女でもあるのだとか。今の今まで忘れていた。

 

「今、その称号はあなたの物ですが」

「イラネ。返す………店員さん、壺ホルモン追加」

「貴様………!」

 

 と、王女の後ろに控えていた若い騎士が思わず剣に手をかけようとし、少年が持っていたナイフを握る手に僅かに力が入る。

 

「やめなさい! お時間、いただけませんか?」

「…………ここの食事、時間制限なんだよな。終わってからでいい?」

「そういうお店もあるのですね。分かりました、店の外で待っています」

 

 そう言って王女は出ていった。さて、彼処まで丁寧な対応をされてしまえば延長するなんて非道は行えない。制限時間内に満足いくまで食わねば。

 

「すいません店員さん、あるだけ全部の肉とこのシチリン持ってきてください」

 

 

 

 

「食った食った。お待たせいたしました陛下」

「まだ王位は継いでいません」

「ん? え、違うの? ええと………」

「殿下だ」

 

 と、王女に控えていた年いってる方の騎士が教えてくれる。若い方はいなくなってる。帰されたのだろう。

 

「改めて、優勝おめでとうございます」

「ありがと………身に余る光栄……? ありがたき〜………」

「楽にしてください。貴方は私の部下ではありません………何より、その強さに敬意を払うべきは私です。どのようにその強さへ?」

「鍛えた」

「お前………」

 

 単純明快な答えに騎士は呆れたようにため息を吐いた。王女はむしろクスクス微笑む。

 

「私も、精進が足りませんでしたね………そんな未熟な身で、図々しいお願いだとは百も承知です。この国に仕える気はありませんか?」

「………………ほう?」

「正式に騎士にするには、ブシン祭優勝だけでは認めぬ者もいるでしょう。そこで、貴方にはミドガルド王国魔剣士学園に通ってもらいます。その際の学費は………」

「我が家から出そう。養子………は継承で色々面倒事があるので、支援という形だが」

 

 何も珍しい話ではない。将来有望な物を見つけた金のある家が支援し、将来仕えてもらう。よくある話だ。ただしそれは魔力が高くとも継承権のない貴族の三男四男……平民を支援するなど珍しいを通り過ぎて初めてのことだろう。

 

「…………その学院」

「っ!」

 

 刺すような鋭い視線に思わず身構える王女。紡がれる言葉を持つだけで、思わず唾を飲み込む。

 

「飯は出るか?」

「……………え? えっと……………ええ、寮生には三食出されるけど」

「最高じゃあないっすか…………」

 

 感動に震えた少年はそのまま王女に跪く。

 

「これより先、我が身は貴女を守る盾、我が剣は貴女の敵を斬る刃。このサード、アイリス王女に永遠に変わらぬ忠誠を誓います」

「あ、ありがとう…………」

 

 お礼を言いながらも王女………アイリスは思う。早まったかな? ご飯欲しさに裏切ったりしないよね、と。

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