一日三食食べたくて   作:ケツバット

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入学

 サード……貴族が通うミドガル魔剣士学園に入学した平民。本来なら首席合格してもおかしくない成績であったが、平民の出ということで歴史ある学園の代表には出来ず次席が首席扱いに。

 

 さらにミドガル魔剣士学園では実力により制服の色が分けられるのだが、サードは白だ。

 

「ごめんなさい………私の力が足りず」

「歴史ってのは重要視されるものですよ。仮令それが形式だけの意味のないものに成り果ててもそれを支えにする奴等にとっては重要なので」

「サード…………」

「むしろこちらこそ申し訳ない」

「え、何が?」

「姫様が手を回そうとしたせいで、どうも自分は姫様のお気に入りと思われたらしく」

 

 アイリスはその言葉に首を傾げる。事実自分は彼の実力を高く評価しているのだ。それがお気に入りでなく、何だというのか。

 

「あ〜…………」

 

 チラリと中年の騎士………『獅子髪』のグレンを見るサード。グレンは首を横に振る。

 くまちゃんのぬいぐるみと寝るアイリスは、未だその手の話題は早すぎると彼女に近い者達から認識されている。

 

「ほんと、どうして駄目だったのかしら…………」

「そりゃただ強いだけじゃ。強さがなければ国は守れなませんが、強さだけでも民を守れないでしょう?」

「え?」

「……………え?」

 

 グレンも不思議そうな顔をしている。ははん、さては脳筋だなオメー等。

 

「例えばこの国にスパイが紛れていたとして、盗られた情報、或いは取らされた情報次第では無実の民を失う事になるでしょう?」

 

 そういう事をやる連中がいるのだ。そしてそういう事をするには相応の金がいる。だから貴族や商人に多い。こう言うのって普通王族が学ぶべき事では?

 

 まあ初対面の時から思っていたが、この国の王は汚れた部分を娘達に見せぬまま自分が消して継がせれば問題ないと思ってそうな目だった。背負う者の目と言うか…………その割に娘達に目線を合わせてないというか。

 

 まあアイリスは情緒まるでガキだし妹もまんま捻れたクソガキだったしさもありなん。汚れなんて後から後から湧いてくるものだろうに。

 

 まあ汚れを拭うってのは賛成だけど。アイリスは綺麗だから、汚いものから遠ざけたいのも理解出来無くはない。でもせめて学生のうちだけにしておけと思う。

 

「どうしたの? 私の顔、何か付いてる?」

「綺麗だなぁって…………失言です。忘れてください」

「え? あ………えっ!?」

 

 アイリスって、本当ガキ。グレンもニヤニヤしてやがる、とサードはため息を吐いた。

 

 

 

 

 

「ほら、彼奴が………」

「アイリス様の推薦を受けておきながら下級(白服)かよ……」

「まあ顔はいいし? 騙したんじゃないかしら」

「アイリス様を誑かすなんて!」

 

 そんな陰口がふと聞こえてきた。シド・カゲノーは周囲の生徒の視線を向ければ、そこにいるのはこの学園唯一の平民の生徒…………名をサード。家名はない。

 

「………………ふむ」

 

 歩きにブレがない。陰口が聞こえているだろうに気にもしていないのは、絶対の自信から。そもそも前回の武神祭優勝者にして最年少優勝者。

 

 実力は保証されているのに貴族という血筋を重んじる彼等は貴種の誇りならぬ奢り故に見下す。モブ仲間のジャガとヒョロですら同様。

 

 ただしシド・カゲノーだけは違う。聞こえてくる噂話程度の浅い情報に惑わされはしない。何故なら

 

(主人公だ! 最初から結構強いタイプの主人公だよFOOOOOO!! ああ、クソ、過去回想に挟まりたい。彼がその強さに至る過程に陰を残す実力者になりたい! 彼の強さを極めるきっかけになるような台詞を残したい! 今から僕が言ったことになんねーかな。無理かぁ。いいけどね、これから彼が行う戦いに時折混じって意味深の言葉を告げればいいだけだし! でもそう簡単に起きるかなあ。別に悪の秘密組織がいるわけでもないからなあ。まあ最悪そこは演技でもいいけど。モブたる身としては深く関わるのは良くないけどね…………待てよ? 主人公ととき折り話すただのモブだと思っていたキャラが実は実力者ってのありじゃないか?)

 

 

 

 

 

(………………なんか妙な視線を感じる)

 

 あの黒髪の男か。どこかで見たような? う、頭が!

 

 しかしなんだろうねあの視線。こちらに視線は向いているのにサードと言う男そのものはまるで見ていない。

 

(……………まあ良いか)

 

 そんな視線など飽きている。2年に一度の武神祭…………サードの公的な視線の集まる唯一の活躍の場………それを見ておきながら朧げになった記憶で『大したことなかった気がする』と平民故に見下す貴族の視線、逆に魔剣士協会所属の魔剣士オタクなどはサードの剣を直接目にしたことがなくとも、凄いに違いないと尊敬の目を向ける。その手の類いだろう、ちょっと強めの。

 

 

 

 

(う〜ん、どうやったら彼とお近付きになれるかな?)

 

 

(まあ別に向こうから話しかけてこないなら放置でいいか…………)

 

 

 

 魔剣士学園では授業でチームを組むこともある。サードは所謂落ち零れ達と組まされた。これならサードが実力を示したところで雑魚相手にしてるだけだろ、と言えるからだ。

 

 要するに貴族共は『平民は(其処)にいろばーか』と言いたいわけだ。参ったな、一日三食の礼に卒業後に大手を振って騎士団入りできる実績を作っていきたいのだが。と…………

 

「あ、あの………よろしくサード君!」

(決まったあ! 我ながらナイスモブ! これもう武神祭優勝者に緊張するただの男子生徒だよね!)

「ああ、よろしくな」

(なんだろうな? なんか、こいつと話してるとガラス越しに舞台劇でも見ている気分)

 

 かくしてサードの学園生活はこうして始まる。

 シドにご飯食べに行かないか、とか武神祭での優勝した時の話など聞かれたがったので再び焼肉食べ放題に向かう。

 

「申し訳ありませんお客様。毎度ご利用くださり光栄なのですが、その、ご遠慮していただけると………」

「ええ、マジか」

「あれ、出禁なのこの店」

「と思いましたがどうぞこちらに! 今月777番目のお客様なので最高級コースが無料でございます!」

「「お、ラッキー」」

 

 

 

 

 そんな生活をして一ヶ月。

 

「貴方が人の弟を誑かすクソ野郎ね」

「……………………」

「面貸しなさい」

 

 女子生徒に喧嘩売られた。

 

 修練場に行った。この年にしてはなかなかの剣技を見た。5秒ぐらいで勝った。

 

「……………嘘」

「これでも武神祭最年少優勝者だ。甘く見られては困るぜ」

 

 推薦してくれたアイリスの顔に泥を塗ることにもなるし。というか実際今塗ってると言えるが。

 

「も、もう一度! もう一度勝負しなさい!」

「いいぞ。休日、飯奢ってくれるならな」

「上等!!」

 

 

 

 その後勝つまでやると騒ぐ女子生徒…………クレア・カゲノー。寮の門限もあるのでその日は解散。次の日も、その次の日も挑まれる。最初はただただ悔しそうな………しかし日が経つごとに楽しそうに。

 

 サードからすれば得るものなど何一つない時間だが、まあ学園の殆どから嫌われているサードを毛嫌いせずに絡んでくれる数少ない友人との時間は、それなりに楽しい。

 

 そんな生活を一ヶ月。入学から約2ヶ月。

 

「聞いてサード! シドが女と付き合ったの!」

「知ってるよ。見てたから」

「どんな女なの!?」

「この国の第二王女、良かったな。男爵家には過ぎた縁談だ」

「別れさせて!」

「やだよ面倒臭い」

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