一日三食食べたくて 作:ケツバット
「あの女! シドに荷物持ちさせて! 男は女の荷物を持つためにいるんじゃないわよ!」
「うん。ちょうどそこの窓ガラス見てみろ、尾行中だってのに
「そもそも年ごろの男女が2人っきりで街を歩くなんて……あ、新作」
「お前さては自分を客観視出来ねえな?」
「どうしたら別れてくれるかしら?」
「シドから告白してアレクシア王女側が了承したわけだし、アレクシア側から降ってもらうとか?」
「そんな、無理よ! シドは確かに弱くて情けないところもあって呼んでもすぐに来ないけど素直ないい子よ? 嫌いになんてならないじゃない!」
「帰りに眼鏡買うか?」
サードは罰ゲームで告白するまでならともかく金を渡されたら速攻で手のひら返す友人が素直ないい子だとは思えない。
そう、罰ゲームなのだ。シド、ジャガ、ヒョロ………そしてサードの四人で実技テストの成績が一番悪かった者が入学2ヶ月で数多の男を振ったアレクシアに告白するという。
因みにサードも貴族連中の嫌がらせでC判定だったので告白したが速攻で振られた。そもそもアレクシアは初対面からこちらを嫌っていた。姉に認められているからだろうか? 剣を見て『羨ましい剣だ』と言ったら殺意すら感じるレベルの目を向けてきた。
「褒めたのに? その女頭おかしいんじゃない。認められてるんだから喜べばいいのに」
「話は変わるけどクレアの剣って他の奴等と違うよね。結構好きだぜ俺」
「急に何よ気持ち悪い。てか、嫌味にしか聞こえないから」
「…………………」
サードはミツゴシ商会のパフェを食う。
「冗談よ、嘘じゃないのは分かってる。だって貴方、剣の腕は
「ん? ああ、そういやそうか」
その煮え切らない返答に首を傾げるクレア。違うならどういう意味で言ったのだろうか。
「すいません店員さん。この20分以内で食べきったらただのパフェ、おかわりください」
「は、はいぃ………」
因みに3つ目。先週まではタダどころか腹を満たした上に金まで貰えたのに、賞金ではなくあくまで無料になってしまった。
「シド、飯に行こうぜ」
「君毎回僕を誘うよね」
「シドと行くとミツゴシ商会経営の店でタイミング良くただになるからな」
777人記念、1000人記念、一ヶ月記念などなど。何故か知らないがミツゴシ商会はシドに対して金を取ろうとしない。当然その付き添いであるサードもその恩恵を受けている。
「う〜ん。さすがに親友ポジは違うなあ」
また変なことを言っている。
「よく分からんが駄目ならいいぞ」
「いやいや、君の誘いを断るなんてモブにあるまじき行為はしないよ。今日はどこで食べるの?」
「あれだ。あの…………チューカってやつ」
翌日、サードはアイリスに呼び出された。
「………アレクシアが誘拐されました」
「なんと…………」
「第一容疑者は学園の生徒です。何か知りませんか?」
と、渡された資料を見る。シドだ………。
「こいつ、昨日俺と飯食ってたんで通学路のアレクシア殿下を誘拐するのは時間的に無理だと思いますよ」
それから4日後。
「いや、通学時間を知るだけでも話は変わると思うよ」
そう言ってくるのは講師の一人ゼノン・グリフィ。アレクシアの婚約者候補でしかないくせに婚約者ヅラしている侯爵家の男だ。
「? 最後に接触していたから疑わしいって話では? 協力者がいるなら誰と接触したか関係なくね?」
「い、いやだから………帰宅時間を知っていれば」
「シドは喧嘩したって話だったが………下校時刻を知ってるかね? どうにもゼノン先生はシドを犯人にしたいようだが」
「…………いや、婚約者の危機に気が急いていたようだ」
まあ、確かに疑わしくはあるが。それでも拘束する程ではないだろう。と、その時……
「アイリス様!」
扉が勢いよく開き一人の生徒が入ってくる。クレアだ。
「お願いです! 弟を……弟をどうか釈放してください!」
「クレア………」
「クレア君!? 何をしているんだ、王女の前だぞ!」
「彼女は?」
「シド・カゲノーの姉です。確か現在は騎士団に仮入団している成績優秀者だったかと」
「サード! 貴方からも何か言って! 弟が、シドが5日間も拷問を受けていると!」
「拷問とは人聞きの悪い………」
「いや、拷問してたぞ? 犯人と確定してない容疑で犯人と決めつけて自白させようとしてたから現在謹慎中です」
「……え?」
「グレンから報告を受けてないんですか?」
流石に子飼いの騎士未満のサードに発言力はなく、グレンに頼んだが。アイリスにも報告が入っているだろうに。
「…………その、アレクシアの所在について以外聞く気はない、と」
何やってんだこの女。いや、それだけ妹が心配なのだろう。
「サード……ありがとう」
「………申し訳ありませんクレアさん。シド・カゲノーは釈放させます。治療費もこちらから」
「よろしいのですかアイリス様」
「現状証拠もありませんから……………サード、引き続きアレクシアの調査を」
「はい」
サードは退出し、ふとゼノンを横目で見る。その後面倒くさそうにため息を一つ。
「王家の血、ね…………教団の仕業か。全く面倒な」
索敵はあまり得意ではないのだ。攻撃的な魔力ならともかく。
「魔力………多いな。シャドウガーデン共か………」
こりゃ、大事になる予感。
丁度いいや、利用しよう。
「アレクシア殿下の靴………」
と、学園前の林道でアレクシアの靴を見つけるサード。ヒョイと拾う。証拠品として持ち帰ろう。
「おや〜、誰かと思えば王女様のツバメ君」
「ちょっと予定と違うけど、触っちゃったね〜。魔力痕跡バッチリ残ってるよ〜。あ〜あ、犯人はお前で確定だ」
「……………………」
「お前を王女誘拐の容疑で逮捕する!」
と、突っ込んできた騎士だったが片足を失い倒れる。
「………………あ? あ、あああああ!? お、俺の足!」
「て、てめぇ! こんな事してただで」
と、もう一人の騎士の首が落ちる。
「…………………」
「ひ、ひい! 来るな! 俺たちが死んだら真っ先に疑われんのは………!」
恐怖で顔を引き攣らせる男とサードの間に割り込む黒い影。黒装束に身を包んだ仮面の女。
「我等はシャドウガーデン、陰に潜み、陰を狩る者」
女はそう名乗ると騎士を切り捨てる。そしてサードに向き直った。すっと剣で彼方を刺す。
「征きなさい、貴方は貴方が進むべき道を」
「分かった、痴女」
「ちっ!?」
その女は体のラインが丸見えのスーツで身を包んでいた。昔っから思ってたがなんだあの格好。スタイリッシュ盗賊スレイヤーの趣味?
出来れば会いたくないがそこだけはいい趣味してると断言しよう。