ジャスティスの会のキョウヤ 作:セダ
お付き合いいただければと思います。よろしくお願いします。
ガタンガタンと席が揺れている。
お昼過ぎの車内。
窓の外を通り過ぎていた畑や林は数を減らしながらも少なくない緑がまだ見えていた。
二人がけの椅子が向かい合ったボックス席を独り占めしながら座る。乗客は少なく自分以外の人たちも同じようにゆったりと座っている。キョウヤも座席に軽く背を預けながら、流れゆく景色をただ眺めていた。
ポケットからスマホを取り出し自然と動画アプリを開く。フリックするごとに次の動画に移っていくが一つの動画で手が止まる。
『【ラッキーのたまご】今日こそクリアする!二日目【DG4】』
動画の中でマスクをつけた黄色と青色2色の髪色をした少女が百面相をしながら楽しそうにゲームをしている。これから行く街に拠点を持っている配信者らしい。
キョウヤは特に表情を変えるでもなくただ映像を見ていたが、そのまま画面をスワイプし次の映像に変わる。
──その時、列車が急に減速した。
車輪が軋む音がし車内に微かな揺れが走りそのまま列車が止まる。乗客たちがざわつき始める中、車内アナウンスが入った。
『現在大量発生したポケモンが線路を塞いでおります。安全確認のためしばらく停車いたします。お急ぎの方大変申し訳ありませんが今しばらくお待ちください』
窓の外を覗くと先の方に線路脇の林から体から草が生え頭から一対の角の生えた4足のポケモン達の群れが線路を超えていた。巨大な群れがたまたま大移動していたようだ。もしかしたら複数の群れが合わさっているのかもしれない。特に列車に攻撃をしようとはしてこないが、数があまりに多かった。
乗客は諦めたようにため息をつき、スマホをいじったり、お菓子を取り出したり、思い思いに時間をやり過ごす。
「あの群れが線路を越えるまでしばらくかかりそうだな……」
キョウヤも画面が暗転したスマホをポケットに戻し窓辺に体を預け再び車窓から景色を眺めていた。
群れが林へと抜けている頃には陽が落ちてきて、列車は再び動き出したがミアレの街に着いた頃には空はすっかり夕焼け色に染まっていた。
駅のホームを包む夕陽の光は柔らかく列車を迎え到着を告げるアナウンスが響く。
「昼には着いて泊まれる所を見つけるつもりだったんだけど……。今から見つけられるかな……」
駅から出て一人ゴチる。
最悪24時間営業してる飲食店で時間を潰させてもらおうかななんて考えながら街の中へ歩みを進めた。
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ミアレシティ。
カロス地方の中心にあるカロス最大の街でありカロスで最も美しい街としても世界的に知られている。現在はクェーサー社が3年ほど前から都市再開発を行なっており、人とポケモンとが共存できる都市づくりを目指している、と今駅前のディスプレイで宣伝されていた。
「情報だけ知ってたけど本当に街中にワイルドゾーンがあるんだ……」
ミアレシティのワイルドゾーンは野生ポケモンと人間の暮らしを隔てるための緑色のホロで囲われた場所である。街中に増え続けるポケモンを隔離・保護するために用意されたものらしい。
ホロの向こうには街中でも見かけるようなポケモンから普通街中にはいないようなポケモンまで見えた。
するとワイルドゾーンの前から声が聞こえてきた。
「自分はジャスティスの会のシローです。みなさん人とポケモンとの真の共生のためにワイルドゾーンを無くしましょう!!」
そこには金髪の偉丈夫とその後ろには道着のような服を身につけた女性達が立っており、夕方にも関わらずその前には人だかりがあった。
「クエーサー社は人とポケモンの共生を謳っています。しかし野生ポケモン達はワイルドゾーンというホロによって閉じ込められています。これでは真の共生とは呼べません」
「野生ポケモンは強く、恐ろしいです。ワイルドゾーンを無くしたら危険ではないかとお思いだと思います」
「ですがご安心ください!! ジャスティスの会に皆さんも入会し共に強くなりましょう! ポケモン勝負も肉体の強さもメキメキと上がっていきます!! 実力をつければポケモンと素手で戦うことも可能です!」
「ミアレシティの皆さんが強くなることでワイルドゾーンの撤廃できるのです!!!」
とんでもないことを言っていた。
確かに野生ポケモンの溢れるワイルドゾーンを元々普通の街中だった場所に作るのはあまり自然な状態とは言えないかもしれないけれど。それでもそれが実現可能な事だとは思えなかった。
「みんながポケモンと戦えるくらい強くなるのは難しいんじゃないかな……」
まだジャスティスの会の人たちが話をしていたが夕陽も沈んでしまいそうになってきたため街中へ足進めていった。