じー
電車の吊り革を握る僕の事をじっと見る女子高生がいた。
じー
絶対僕の方見てきてるよな。目を合わせたらちょっと気まずくなるやつだ。でもずっと見られるのも気分悪いし目を合わせてみるか。
目が合った。
「君、さては一目惚れしたね?」
「いやなんでだよ。」
これが僕と彼女の出会いだった。
目が合ったその日から彼女、水島茜はいつも同じ電車で出会う。それまで出会わなかったから、彼女が僕に時間を合わせているのだろう。
僕も電車の時間を変える、なんて事はしなかった。なぜって?それは彼女は街で出会えば10人中15人が振り返るような美人だったからだ。
風に吹かれてすらりと靡く綺麗な黒髪、吸い込まれてしまうような瞳、彼女のチャームポイントをあげればキリがないほどだ。
それほど美人な人と毎日同じ電車に乗れる、そんなの日曜日を無くして月曜日を増やして欲しいと願っても仕方ないじゃないか。
「君は卵が割れるのが先だと思う?それとも鶏が生まれるのが先だと思う?」
「卵から鶏が生まれた方が嬉しいので後者でお願いします。」
「そんな考えが!これは研究者達もびっくりしちゃうね!発案者は私という事で。」
今の会話からも分かると思うが彼女はかなり変わっている。
「ねーねー、何考えてるのー?ねー!」
…彼女には彼氏がいない。なんならモテない。本人曰くだが。学校が違うから学校での振る舞いを知らないのは仕方ない。
だがモテない、というのはとても納得出来る。
「今私の事考えてるでしょ。私君の事ならなんでも分かるかも知れない…」
こんなに
「誰が宇宙人だ。あと君がついてこれてるじゃん。」
「ナチュラルに思考読まないでください。」
「これが
「ドヤ顔しないでくださいあと能力をちからって読むのダサいですよ。」
「毒舌だねぇー。というか私のルビ読まないでよ!」
ガチャ
「はい、茜さん、前橋駅着きましたよ。」
「今日はこの辺にしといてやるっ!」
「はいはい。」
この辺で馴れ初め、というやつを話しておこう。
目が合ったあの日はいつもより少し早い電車に乗ってしまったらしい。それでなんかどこにでもいそうなやついるなー、と思って僕を見つめていたんだそう。いや結構ひどいな。
高校に入ってすぐからずっと彼女の容姿に惹かれて話しかけてくる男はたくさんいたようだが
みんな一言話しただけで撃沈。不甲斐ないものである。
僕に毎日話しかけてくれるのははじめてまともな反応を返してくれたからだそうだ。
随分と苦労していらっしゃる。まぁ僕は今高校2年生で、そんな青春したいっ!って時に
綺麗な人と毎日会話出来るというのが嬉しくない訳がないのでこれはWin Win というやつである。
綺麗な人、と言っても名前を聞いて水島さんと苗字で呼ぶと殴ってきたような人だが。名前で呼ばれると
まるで名前で呼ばれてるみたいでいいらしい。意味がわからない。
俺は彼女の一つ向こうの駅の高校に通っている。校訓は「青春しようっ!」。陽キャが楽しそうでなにより。「さっき青春したいっ!とか言ってたのは誰だ!」と茜さんが言っているが気にしない。…いやなんでいるんだ。
「なんで茜さんいるんですか!学校行きなさいよ!」
「…会いに…来ちゃった。」
「それは彼氏が外国に留学して会えなくなって1ヶ月経った彼女がはるばる会いに来た時に言う言葉です。」
「いや細かいね。というか彼氏と彼女で例えるって事は〜?!なんでそう例えたの〜?ツンツンツンツン!」
「早く学校に行きやがれください。」
「あ、ごめんなさい。」
…油断も隙もない人だ…
彼女は僕と同じ駅で降りた後引き返して行った。遅刻しなきゃいいのだが。
これが最近の僕の毎日。充実してると言えるだろう。
だが僕には学校に好きな子がいる。同じ2年の姫野さん。彼女は水…じゃない、茜さんと違ってお淑やかな雰囲気の人で
いわゆるいいとこの子、という奴である。男というのはお嬢様に惹かれてしまう。これは自然の摂理だ。
そんなどうでもいい事を考えながら靴箱を開けると
ピラッ
なんだこれ。……ハートのシールが貼られてある封筒。………こんな典型的なの入ってる事ある???
とりあえずあえずあえず読んでみよう。いや焦り杉田。間違えた焦りすぎだ。
『あなたへ
今日の放課後
三階のあ、空き教室に来てくだしゃ。…ください。
姫野より』
…いやつっこみどころが多いけど嬉しい〜ッ!!つっこみどころ多いけど!
これ入れ間違いとかだったら泣くぞ?宛名があなただから誰に向けてか分からないが前向きに行こう。
なんだよこの急展開+ご都合展開。こっから学園ほのぼの系が始まると思ったのにすぐカップル爆誕しちゃうんですかーっ?!
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なんて考えているともう放課後。一応学校に来てるのに授業な描写がない事には目を瞑ってもらおう。
るんるん気分でスキップしながら空き教室に向かう。RPGによくいる門番もいない!
ガラガラガラ
ドアを開けるとそこには姫野さんがいた、
そこだけがまるで絵のようで世界が終わってもここだけはこのまま、そう思わせられるほどに絵画じみていた。
「ごめん待たせちゃったかな?姫野さん、呼んだの僕で合ってる?」
「は、はい。合ってます。」
人違い説→× こーれは流れが来てますね。あんなハートのシールも貼っといて告白じゃなかったら俺が世界終わらせるかもしれない。
「あ、あの!わ、私とお付き合いしてください!」
キタキタキター!ありがとう世界よろしく世界!リア充、爆誕だぁー!
「…ごめん、君とは付き合えない。」
えっ?
「あの、理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
えっ?いや、…えっ?
「えっと。その。他に好きな人いるんだ。」
「そう…でしたか。時間…をっとらせ、てす、すいませんっ!」
泣きながら姫野さんは出て行った。
なんで僕は…振ったんだ?
「次の日である。」
誰だよこれ言ってるの。はい、次の日が来ました。あの後モヤモヤしながら帰って飯も食べずに寝ました。なんで振っちゃったのかしら…
ピコンッ
スマホを見るとえげつない通知が来ている。
「おいおい誰だよこんなに送ってきてるの。」
スマホには茜ちゃんさ!という文字が。…俺の疑問に先に答えるな。
えっとなになに?朝って正午だから午後ティー飲んでいい?
…相変わらずだな…というかLEINなんで知られてるんだよ僕教えてねーよ。
『君がスマホを落とした時に交換しておいたのさ!』スマホの画面はそう教えてくれた。
このままペースに乗せられ続けると遅刻するのでスマホの電源は落としておいた。
今日の朝ご飯はパンとヨーグルトだ。……男子高校生のモーニングルーティンなんか誰も興味ないよな。割愛!
時は流れて改札口。テクテク歩きながらまた僕は昨日の事を考える、がなんだにも思い浮かばない。こんな時こそ年上の茜さんに聞こう。
そういえば言ってなかったな。茜さんは今
「高校3年生だよ。」
「…おはようございます茜さん、今日も
「そのルビダサいよ。」
「そんな事はおいといて、」
「置いとくくらいなら貰っとくね。」
「…昨日僕姫野さんって子に告られたんですよ。」
「ふむふ…む?」
「そんでですね、」
「待て待てそんなの初耳だ!説明願おうか!」
「今説明してるんでちょっとお口を外しといてください。」
「あ、はい。」
僕は昨日の顛末を茜さんに話した。
「って事です。分かりました?あ、もう喋っていいんで口付けてください。」
「やっと喋れる!口外してる時に鼻詰まってたら死にかけちゃうんだね。君のおかげで気づけたよ。」
「そりゃどーも。」
「で、その断る時に言った好きな子って誰のことさ?!」
「誰、なんでしょうね?」
「いや私じゃないの?」
「自意識火城ですよ。」
「漢字がファイアーキャッスルだよ!」
…聞かれて分かった。いや聞かれなくても分かってたか。……僕は茜さんが好きだ。だから昨日無意識に断っちゃったんだろう。
今茜さんの
「君は……私にとっての弟みたいなものだからね。私に恋愛感情はないよ?」
「からの〜?」
「もう、君を弟とは思えない…っていや普通これ男が妹みたいだとか言うもんじゃないの?」
「そういう細かいところは、昨日の夜置いといたのを朝あっためて食べたので無いですよ。」
「…君もこちら側に近づいてきてると常々思うよ…」
「そりゃどーも。」
「どーいたしまして。」
「…あの……あ、あのさっ…いや、やっぱなにもないや。」
「珍しく歯切れ悪いですね。話聞きますよ?僕ならそんな思いさせへんのに。」
「ナンパすな!」
怒られてしまった。
今日もまた、前橋駅でお別れだ。
「じゃあ頑張って〜!」
「任せとけー!」
今日は茜さんのおかげでモヤモヤせずにすみそうだ。
今日は日曜日。
僕が嫌いな日だ『ピコンッ』
誰だ?スマホを見ると「私だ!」という三文字。これだけで誰か分かるから不思議だ。
なになに?…………えっまじか。僕はLEINを見るとすぐに着替え外出の用意を済ませる。
「ちょっと幸せになってくる!」
「いってらっしゃーい。」
僕は家族にそう言って家を出た。
LEINには勉強教えろ!私の喫茶店にて待つ、とあった。
私の喫茶店、というのは少し前に良いところ見つけたっ!と話していた店だろう。
僕は電車を乗り継ぎ喫茶店に着いた。
「遅い!47点!」
「何点満点ですか?」
「100億万点!」
「小学生ですか。今日は算数を教わりたいんですか?」
………私服可愛い〜!宇宙人とはいえ女子高生。っぱ茜さんだよ!
「君はダサいね。」
こんな毒舌もスルー出来るぐらいには可愛いグハッ。
「スルーできてないよ。」
「で、今日はどうしたんですか?」
「生物!訳!分からん!教えてくださいお願いします。」
「丁寧にお願いしてきたので良いでしょう。僕も苦手ですが教えますよ。
どこが分からないんですか?」
「ここ!」
「いやこれ高1の問題集じゃねえか!」
「若さが取り柄だからね!」
「二十歳なってから言ってください!」
苦労しそうだが仕方ない。一肌脱ぐか。
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「分かる?ここがこうでこうのこうなんだよ!」
「いや全く分かりません…あとなんで僕が教えてもらってるんですか?」
「君が私に教えられないからだよ!」
意味が分からん…
こうしてる間に日曜日は終わった。
月曜日が来た!
あろうことか五日間連続で茜さんに会える素晴らしく疲れる素晴らしい素晴らしい日の1日目である疲れる!
茜さんの相手…疲れる「やっ!」
「茜さんまだ僕のトークの最中です。」
「君のものなんてないのさ…」
「そんなにカッコつけて言ってもカッコよくないですよ。」
「むぅ……」
まずい、可愛い。
「じゃあ今日も張り切って学校行きましょうか…」
「いや行かないよ?」
「えっ?」
どゆこと〜?
「ねえ君。」
「は、はい。」
「デートしよっか!」
いやそういうのは学校サボって行かないだろいや行きましょう。
そうして僕と彼女の2人旅が静かに?始まった。