【完結】並行線上の彼ら彼女ら   作:シュガーマン

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胸糞展開あります。


()彼女()2人旅(逃避行) 終幕

あれから僕達は自殺する場所を2人で探すため、夕暮れの空の下、スマホ片手に歩き回っていた。

僕の前を歩く茜さんは僕に話しかけてくる。

 

「死ぬならやっぱ他の人に迷惑をかけないように、そんで派手に!死にたいよね。」

「秒で矛盾してるんですが…」

 

茜さんは今から死ぬ人とは思えないほど明るかった。僕の方が今にも死にそうな顔をしているだろう。

 

「というかよく認めてくれたよね?」

「何がですか?」

 

「いや、私はね、自殺する!って言ったら駄目!って泣きながら言って引き止めてくるんじゃないか?なんて考えてたんだよ。

まぁ止められてもやめなかっただろうけど。なんで引き止めなかったの?」

 

「……これは僕の考えなんですが…僕はあまり自殺が悪い事だとは思えないんですよ。」

「どうして?」

 

「いや、自殺しないに越した事はないし、気軽にしていいものじゃないって思うんですけどね。…人生っていうのは他の人のものではなくその人のものじゃないですか。死ぬ時くらい選んでもいいだろってのが僕の考えです。」

 

「…そっか…いいなぁ。…羨ましいよ。」

 

「?……でも、例外もあります。」

「えっ?」

 

「それは…幸せな顔をせずに自殺する事です。まぁこれに関してはほんっとうに自己満みたいなもんなんですがね…

なんというか…言語化するのが難しいんですが…生きる事の目的は幸せになる事だと僕は思ってるんですよ。

だから自殺っていうのは生きるより死んだ方が幸せになれるからするものだって思ってるんです。自分でも本当に最低だと思います、

こんな自己中心的な考えの事も…死ぬ人に自分の考えを押し付ける自分の事も…あぁくそ。本当に言語化が難しい。」

 

「……要するに。幸せになるなら幸せになる顔をしろ!って。たくさん苦しんで自殺する人に幸せな顔をしろ!って。僕はそんな自分勝手な考えを持ってます。…僕をどう思います?僕は自分を軽蔑します。」

 

「…いや!…私は全然軽蔑なんてしないよ。研究者達もびっくりな考えだ。発案者は私という事で。ねっ?

…私も死ぬ時は幸せな顔をすると誓おう!

だから君は。

泣かないで?」

 

あれ。僕はいつの間に泣いてたんだろう。

 

「君は笑顔がよく似合うんだからね。これ私の遺言でっ。」

 

 

「分かりました…!」

 

僕はいつもの茜さんと話している時の表情をした。

 

 

 

僕達はその後夜になるまで歩き回って茜さんの死に場所を見つけた。

人が全くいない場所に静かに建つ廃ビル。お化けがでそうな怖〜い場所だ。

 

「今日死ぬつもりなんですか?」

「やだよこんなお化けでそうな場所で夜中に死ぬなんて。死んだらお化けとすぐ会って仲良くなっちゃうんだよ?」

「楽しそうでいいじゃないですか。」

 

「私!怖いの!やだ!」

 

むっとしながら言ってくるのが最高に可愛い。

 

「じゃ、どうします?」

 

「ふっふっふ。私が今ちょー金持ってる事忘れてるでしょ?」

 

「ま、まさか!その金で!」

 

「あぁ!そのまさかだよ!」

 

「まさかラブホに!「デケー家を買う!!」」

 

…はっ?

 

「いや家買える訳ないでしょうが!「夢がないなぁ!!というかなにがラブホだよこの男子高校生が!」」

 

…結局ネカフェに泊まりました…

 

—————————

——————

———

 

「朝だよ!朝が私に会いに来たよ!」

「違います太陽が僕の顔を見に来たんですおはようございます茜さん!」

 

「おはよう君!」

 

「いや名前呼んでくださいよ…」

 

「私が君の名前を呼ぶのは特別な時、だけだよっ?」

 

「いや可愛く言っても可愛いんで駄目ですよ?」

 

「?」

 

今日も相変わらず茜さんは可愛い!

……僕達はいつもと変わらない軽口を叩きあっている。こんな軽口も今日で最後か。

 

「君。」

 

「茜さん。」

 

行こっか(行きましょうか)

 

—————————

——————

———

 

僕達は昨日目星を付けていたあの廃ビルに来ていた。屋上から飛び降りるため、僕達は階段を上がっている。

 

「昼でも怖いね…ここ…」

「どんだけビビりなんですか。大丈夫ですよ、僕がいるので。」

 

ドンッ

 

「ヒッ!」

 

「なに君今の声可愛いっ!ただ窓ガラスが風に吹かれただけだよ!最期にこんな声聞けるなんて思わなかったね。」

 

く、クールな僕のイメージが!

 

「いや始めからクールじゃなかったけどね。」

 

「いや能力(ちから)使わないでください。」

 

「そのルビダサいよ。」

 

「茜さんが始めたんでしょうが!」

 

コツン。コツン。

 

僕達は階段をゆっくりと上がっていく。

 

「思えばこんな事ばかり話してましたね。僕達。」

「そだね。君とこんな事ばかり話せて楽しかったよー。」

「僕もです。」

 

コツン。コツン。

 

「そういえば2人で電車通学してるの同級生に見られた事があって、クラスが大騒ぎになった事あったんですよ。

あの非リアの頂上みたいなやつに彼女が?!って大騒ぎになって、見てた奴にあれ彼女?って聞かれたんです。」

 

「非リアの頂上って。あはは、そんで?彼女だ!って言ったの?」

 

「そんな事言えるわけないですよ…パートナーだって言いました。」

 

「あははははっ!やっぱ君面白いよ!さすが非リアの頂上!」

「やめてくださいそれマジで嫌なんですよ!」

 

あぁ。もっとこんな会話を続けたかったのに。屋上に着いてしまった。

 

「あはは、もう着いちゃったね。」

「着いちゃいました。」

 

最期は…笑顔でお別れしたい。

なんて考えていると茜さんが柵の方に向かって歩き出していた。

一度も止まる事なく。

いつのまにかもう柵の向こう側に立っていた茜さんに向かって僕は叫ぶ。

 

「水島茜さん!…あなたと会えて良かった!」

 

「っ!私も!貴野真君!君と会えて…本当に良かった。」

 

あぁ本当に茜さんに会えてよかった。

あぁ本当に悔しい。生きる事で得られる幸せより死ぬ事で得られる平穏の方が大きくなってしまった事が。

幸せにしてあげられなかった自分の不甲斐なさが、悔しい。

 

 

 

「ありがとう。」

 

その言葉と共に彼女は飛んだ。

きっと彼女は幸せな顔をするだろう。してくれるだろう。

 

柵から飛ぶ彼女の顔が、僕の顔を見ながら背中から落ちる彼女の顔が見えた。

 

 

あぁ!

なんで!なんで!なんで!

なんで!!

 

「なんでそんな顔してんだよ!!!」

 

落ちる瞬間、茜さんは悲しい、ただ悲しい顔をしていた。

これは気持ち悪くて汚い僕の考え。昨日あなたが理解してくれた考え。

 

「幸せな顔するんだろ!!」

 

走る、走る。今落ちゆく彼女の手を取れないなら僕に今まで生きてきた価値はない!

 

「間に合え!」

 

僕は柵を飛び越え、落ちゆく彼女の手を掴んで、窓ガラスの上側の縁に掴まる。

 

「なんでどうして君は!」

 

「自分で誓った事も守れない人の自殺なんて、僕は認めない!」

 

「っ!!そう、だね。そうだっ。そうだ!私、まだ、っ。まだっ、死にたくないよぉ!」

 

「僕も死んでほしくない!」

 

窓ガラスを叩き割って涙を流す茜さんをそこから無理矢理投げ込んだ。

 

「私、まだ君と話したい事たくさんある!」

 

窓ガラスの縁に掴まりながら僕は話す。

 

「僕も話したい事たくさんあるんっっ!!」

 

やっべ。窓ガラスの上の縁が外れて僕は落ちかけたが咄嗟に下の縁を掴む。

でも。その時僕の腕の筋が切れてしまったようで力が入らない。

 

「真君っ!」

 

茜さんがすぐ走り寄って内側から助けてくれようとしたが。

間に合わなかった。

 

 

あぁ僕死んじゃうのか。このまま死ぬと茜さんはショックを受けちゃって幸せに生きていけないかも知れない。

そんなのいやだ。伝えなきゃこの一言を。

僕の代わりに。なってくれ。

なれよ。

 

「幸せになれよ!茜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グチャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————

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———

 

私はすぐに警察と救急車を呼んだ。

だがもう見なくても分かる。

もう無理だ。

私の、私と彼の逃避行は……終わった。

 

 

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——————

———

 

少し私の話をしよう。

私、水島茜は幸せな家庭で産まれた。

強くカッコいい父、優しい母、少し甘えん坊な弟。

本当に幸せだった。

でも。

 

いつからだろう。父が暴力をふるいだしたのは。

父の会社が倒産した時だろうか?

それとも父がすごく尊敬してた私の叔父さんが死んだ時だろうか?

 

家にいるのが怖くなった。

私に出来たのは私達を守って殴られる母を見て毎日毎日弟と震えるだけ。

母はそれでも私達に愛を注いでくれたが父は母に暴力を与え続けた。

でもそんな毎日は急に終わりを告げた。

 

「大丈夫ですか?!」

 

警察の人が家にたくさん駆け込んできて私達を保護して、父を逮捕してくれた。

弟が警察に通報したのだ。家に電話なんて無かったから自販機の下なんかを漁って

お金を手に入れ、公衆電話で電話をかけたのだろう。私にはそんな事これっぽっちも考え付かなかった。

 

だが。

本当の悪夢はこれからだったのだ。

 

幸せな3人でいられた時間は短かった。一年くらいだろうか?

どうやったのかは知らないが父はすぐに刑務所から出てきてしまった。

父から逃げる為私達は家を転々とした。なのに。

 

「いつまで逃げんだお前らぁ!家族だろぉ?!!」

 

私達が住んでいたアパートのドアを無理矢理開けて父が入ってきたのだ。

あの時の事を今でも鮮明に覚えている。何も出来なかった私と腰が抜けて動けなかった母を守るように

私よりも2歳も年下の弟が前に出たのだ。

 

「お前!お前だ真!お前のせいだ!」

 

父は弟を殴って殴って殴り続けた。動かなくなるまで。

 

母も私も助けようしたがすぐに蹴り飛ばされ、助けれなかった。

音を聞きつけた隣人がまた警察を呼んでくれていなければ次は私達だっただろう。

父は死刑になった。安心したのは…安心出来たのは私と母だけだった。

いや、果たして母は安心したのだろうか?

 

それから母はおかしくなった。

私の目が。私の髪が。父に似ていると言って近づくと奇声をあげる。

奇声をあげなくなったと思ったら弟を探し始める。

私にも「いつも真と一緒にいたでしょう?真はどこにいるの?ねえどこにいるのよ!?」

と毎日同じ事を言ってくる。

 

病院の先生に「入院した方がいいでしょう。」と言われた。

そんなお金今の私達にあるはずがない。

私は中学生になると同時に働き始めた。でも中学生が働ける場所なんて基本的にない。

年齢を偽ろうにもどうすればいいのか分からない。

どうやって偽り方を調べるのかすら分からない。

私は無知だった。無知な私に出来た事は体を売る事だけだった。

私は時には学校を休んでまでお金を稼いだ。

体を売って得たお金の6割は入院費用に。4割は、母の退院サプライズに。

たくさんのお金をプレゼントすればきっと母は喜んでくれる。

そのお金で綺麗な家に住んで豪華なごはんを食べたい。

2人しかいなくなっちゃったけど2人で幸せになりたい、子供ながらにそう思っていた。

 

私が母のお見舞いに行くと母の手に握られていたのはブランド物のバッグの数々。

「それどうやって買ったの?」

「あんたが隠してたお金からだよッ!私に黙ってあんなに貯めて!お前は父親そっくりだぁッ!」

 

母はその後言葉にならない奇声をあげて、看護婦さんに睡眠薬を飲まされ眠ってしまった。

私が80万も貯めた貯金はたった10万円にまで減ってしまっていた。それから高校1年になるまでに貯まった貯金は30万。

もうその頃には、母とまた暮らすのは諦めていた。母と暮らしたい気持ちはあったが、それよりも

その30万を使って体を売らずに生きていく、それが私の夢だった。

 

だが、そんな時だった。弟そっくりの彼に出会ったのは。

見れば見るほど彼は弟に似ていて名前まで弟と同じだった。弟が生きていたならこんな顔になっただろう。

彼は私より一つ年上だったが。

だが彼とはじめて話したあの電車の中で。私の中に悪魔が生まれてしまった。

私は高校3年と偽り、彼の年上になった。

それから必死に勉強し、3年生と同じ学力を持った。それを自慢しようと彼と勉強会をした事もあったか。

私は彼の「姉」になりたかった。彼を私の「弟」にしたかった。

私は綺麗な夢を捨て汚い夢を得た。

彼と母を会わせれば母は元通りになってくれる、あの時はそう考えていた。

あの時の私は何かおかしかった。姉でありたい、弟にしたい。それしか考えていなかった。でも。

 

彼が告白された、そう聞いた時私の心臓が強く拍動した。

 

ドキンッ

 

その音を聞いて私は気づいてしまった。彼の前でだけ私は、昔の私でいられた。

 

私は彼を愛していた。

 

綺麗な夢を得た。30万を使って私と彼で駆け落ちする、逃避行する。

そう考えた、考えてしまった私は保護者の有無や彼と家族との別れ。そんな事を考えずに彼の手を引いた。

2人ならなんでも出来る、なんて考えて。

 

でもそんなの出来なかった。スマホの通知が私を不幸な現実に引き戻す。母からだった。

今どこだなにしてる入院費用の振り込みはまだか。私より幸せになるな。いつもお前を見てるからな。そんないつもの台詞。

私は彼と生きる事を諦めてしまった。どんな事があっても追いかけようとする人間からは死ぬ以外に逃れられないと身をもって私は知っている。

私は彼と生きて立ち向かう事より死んで楽になる事を選んでしまった。

死に場所を探している時に話していた彼の考え。とても冷たくて、暖かい考え。

私には理解できなかった。彼には言えないし言えなかったが、本当に理解できなかった。

理解がもし出来てもしたくなかった。彼は本当に恵まれて育ってきたのだろう。

死ぬ時に幸せな顔なんて出来る人間はそもそも自殺しない。

あれを話したのが彼じゃなかったら罵詈雑言を浴びせただろう。

だが、話したのは彼だった。

私は道化を演じてみせた。

私は彼を少しでも悲しませないために。

幸せな顔を無理矢理にでもして彼の悲しみを減らしてあげたかった。

 

私には幸せな顔を出来なかった。母が私を見ていた。幸せな顔をしようとする私を。

幸せな演技くらいさせてよ。お母さん。

不幸な現実を思い出させないでよ。お母さん。

 

そして

 

彼は弟のように私を助けて、消えてしまった。

私は君と一緒じゃなきゃ助からない人間なのに。

 

 

 

 

 

グチャッ

 

 

 

 

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

ごめんなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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———

〜5年後〜

 

「茜〜今日うちらと合コン行かない?」

「ごめん千紗、真由美、私行けないんだ。」

 

「そーなの?また今度行こうねー。」

 

 

「……あの子いっつも付き合い悪いよねー。」

「分かる。なんか自分なんていつでも彼氏作れます、みたいな顔をしてるよ。キモッ」

「あははッ聞こえちゃうよ!」

 

 

彼は最期になんて言ったのだろうか。

風の音で聞こえなかったあの言葉が心残りで私は死ぬに死ねない。

これからも私は生きてしまうのだろう。

この不幸せな世界で。

 

 

 

 

 

 

 




彼ら彼女らは本心では最期まで交われませんでしたね。
まるで並行線のように。



ifいるって人が1人いたんで書いてみます!まぁ蛇足なんですが…



一応「僕」が助けようとした後のIfルート考えてるんですけど見たい人います?多分蛇足だし割と短めになりますが。

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