【完結】並行線上の彼ら彼女ら   作:シュガーマン

4 / 4
これで完結です。


()彼女()2人旅(逃避行)  並行(パラレル)時空(ワールド)

「ありがとう。」

 

その言葉と共に茜さんは飛んだ。

きっと彼女は幸せな顔をするだろう。してくれるだろう。

僕はなぜだろう、茜さんが死ぬっていうのに肩の力が抜けてしまった。

長いようで実は1日しか経っていなかった2人旅が終わるからだろうか。

それとも茜さんが自分の願いを叶えれたからだろうか。

 

あ。

 

……

なぜ

なぜ僕は

たくさん茜さんと過ごしてきたのに

気づかなかったんだッ!

 

 

…茜さんは悲しい、ただ悲しい顔をしていた。

今にも泣き出しそうで、それは頑張って笑おうとしているようで、でも笑えてなくて。

ただひとつ、言えることは。

幸せな顔じゃない。

 

「なんでそんな顔してんだよ!」

 

僕は駆け出した。今!今間に合わなきゃ意味がないだろッ!

でも肩の力を抜いていた僕は駆け出そうとした時足がもつれこけそうになる。

でもなんとかこけないように走ったがいつものように走れない。

自分でも分かる。焦りすぎだ。気持ちばかり先走って緩めていた体が急な動きについてこない。

あぁ、あぁ!

僕は手を伸ばしたがその手が触れ合う前に茜さんは。

落ちた。

 

 

 

 

 

 

グチャッ

 

 

 

 

 

 

 

残ったのは彼女だったものだけだった。

 

 

 

 

 

あれから一週間が経った。

彼女が死んで以来僕は一歩も外に出れていない。

 

あの後僕は1日中ずっと放心状態になってしまって、あの場から動けなかった。

夜になってからスマホの通知が鳴り止まない事に気づいて

家族に連絡していなかったことをようやく思い出し、

そして彼女にも家族がいた事を考えて、泣いた。

泣き終えた頃に警察に連絡。彼女の死はそのまま自殺として処理される事になった。

僕は何も考えられなくて僕が殺した事にならなくて運が良かったなーとか考えてた。

それで自己嫌悪に陥り吐いて泣いての繰り返し。

 

彼女の家族はもう母親しかおらず、母親も病院で暮らしているようだ。

今から会いに行く。でも説明しても納得してもらえるとは思ってない。

僕だけがあの場に居合わせて、茜さんを助ける事が出来る唯一の人間だったのに。

僕は彼女を助けられなかった。

 

「あんた、そろそろ行くんじゃないの?」

「あぁほんとだ、ちょっと…行ってくる。」

「……行ってらっしゃい。」

 

 

 

 

あ、通り過ぎてた。

ぼーっとしてて病院を通り越してしまっていた。

慌てて引き返し受付へと向かう。

 

「すみません、昨日連絡した貴野です。水島さんの病室は何号室でしょうか?」

「あ、貴野さんですね、お待ちしていました。

水島紗江さんの部屋は125号室です。なのですが……」

「?」

「会えるには会えるのですが、少し精神が不安定になっていて…1対1だと…

看護婦を付き添わせる事が出来るのですがどうしましょうか。」

「いえ、僕1人で大丈夫です。」

 

水島紗江、それが彼女のお母さんの名前だ。

そういえば彼女の自分の家族の話を全くしなかったなぁ。…クソっ。

 

 

僕は少し迷いながらも125号室に着いた。

僕は紗江さんに何を言われても受け止めるつもりでいる。

葬式に来るなと言われれば行かないし死ねと言われれば死ぬだろう。

そうする権利が紗江さんにはある。

 

僕は深呼吸をした。そして、

ドアを開けた。

 

そこにいたのは少しやつれてはいたが、

まるで15年後ぐらいの彼女そのものだった。

涙が溢れそうになるがなんとか堪え自己紹介をした。

 

「貴野真です。…」

「真?…いや。そう、あなたが……」

 

もっと色々説明するつもりだったのに言葉が出ない。

彼女と話していた時はもっとすらすら口から言葉が流れ出ていたというのに。

 

「アハハ!あなたが茜を殺してくれたのね、本当にありがとうね。」

 

え?

 

「…え、いや。…は?あなたは今何を?」

「聞いていなかったの?まぁ自分から話すことでもないか。あの子は体を売って得たお金で私から逃げようとしたのよ!

あの子は父親と同じ!同じ悪魔なんだッ!!」

 

「水島さん!落ち着いて!」

 

近くにいた看護婦さんが声を聞いて入ってきてくれた。

もし入ってきてくれていなかったなら僕は紗江さんに何をしただろう。

 

「茜は本当に死んだんだろうな?!あいつは私より幸せにならなかっただろうなぁ!

真を、真を返せ!」

 

僕は看護婦さんに連れられて病室を出た。その看護婦さんは昔から茜さんの知り合いだったそうで、

そのまま別室に連れられて彼女の話をしてくれた。多少看護婦さんの推測も入っているようだけど。

それでも。

全部、全部僕の知らない話だった。

 

 

父親に虐待されていた事、弟が死んだ事、

弟が死んで母親がおかしくなった事、母親を病院に入れるため、

幸せになるために体を売ってお金を稼いでいた事、それを母親に使われた事。

それからも体を売り続けていた事。それから僕に出会った事。

そして、僕と弟の名前が同じ真で顔も、雰囲気もよく似ていた事。

 

 

虐待されていたなんて、弟が死んで母親もおかしくなった事なんて教えてくれなかった。

2人で旅した2日間のあのお金、あれは体を売って得ていたお金だったなんて知らなかった、知りたくなかった。

幸せになるために彼女は不幸になっていた。

そんな人に僕は死ぬ時は幸せな顔をしろなんて言った。

出来る訳がない。そんなこと。

ごめんなさい。

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

 

謝ったって彼女は帰ってこない。

 

そして。

おかしいと思ってたんだ。

いくら彼女が変わった人間だったとしても知らない人にあんな風に話しかけたりなんかしない。

僕と彼女の死んだ弟は共通点が多かった。多すぎた。

彼女は貯めたお金を使われてからも母親と仲良くしたがっていたらしい。

ならこう考えたんじゃないだろうか。

母親に僕を会わせれば弟が帰ってきたようで、また仲良く話せるかもしれない、と。

彼女なら必ずこう考える。つまり。

 

僕と話していたのは母親に会わせるため???

 

じゃあ恋愛感情なんかを抱いていたのは僕だけ?

 

彼女はずっと僕を弟の代わりにしようとしていた?

 

分からない。分からない。

彼女が死んだ今となっては。

分からない。

 

 

「〜〜〜茜さんは。っまだ高校一年生で。っ、これからっ、幸せになっていけるとっ、

私は思ってたんだけどねぇっ!」

 

「年下、…だったのかよ。」

 

 

 

彼女は何一つ僕に話してくれていなかった。

僕は生きていくのだろう。

彼女がいなくなった世界で。

笑えないこの世界で。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。