My trump card is absurd(meの切り札は馬鹿げている) 作:SD銀竜
今回非道な描写があります
ご容赦下さい
……いやぁ、凄いものを見てしまった。
いや確かに今まで出てきたパック種類の順で考えたら既に存在していてもおかしくないけどさ。こっちで発売されている所なんて見た事なかったからまさか使う人がいるとは思わなかった。
実際、今日までこの存在をほぼ頭の隅に追いやっていたけれども……当時出ていたコラムを何とか思い出せるまで効果に目を疑ってしまってたぞ。
うん、プロや大会で使われる事を想定していないab・set──absurdから始まるジョークセットは馬鹿みたいな効果だらけのカード群だ。
その成り立ちは初期のルールが整備されていない頃に遡る。
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これ1枚では良くて1枚に重なれば……という成功率の低さであったし、落とし方の指定もなかったので落とし方を考えるという、初期あるあるの妙なカードだ。
だがある時、このカードが即座に禁止される事態が発生する。
ルールの穴を突いて複数枚の破壊を企てたマナーの悪いプレイヤーが、<Sphere Claymore>を
あっけに取られる周囲を尻目に、そのプレイヤーはこう言い放った。
『カードを破ってはいけないとは書いてない。それにクレイモアは弾けるもんだろ?君の場にあるクリーチャーも土地も宝玉も、全部に触れたから全破壊して』
その後、一般常識にあるような事も含めてルールがより整備され、カードを破る事はなくなった。
だがその発想を皮切りに、その当時で通常セットに入らないであろう──考えうる滅茶苦茶効果を詰め込んだお遊びパックが企画され、発売されることになったという訳だ。
ただ、実際発売されるまでには当然色々なアイデアが捻り出されては没や修正が繰り返される。
しかも面白い事に、そのやりとりですら着色して番外ストーリーを組み上げた末に裏側までコラムで取り上げられた、なんていう遊び心まで混ぜ込まれたのだが。
……いるのか?マジで?開発部阿鼻叫喚の象徴が?
「面白いカードだらけでしたね、でも面白さに振り切って強くなかったような……?」
「ユウキ、あれはコメディのお仕事モードなだけ。本当のローズはやばい」
真顔で答えるサレン。知り合いと言っていただけにあのデッキと結構ファイトしたんだろうなぁ。
「初見殺しで押し切る他に、特殊勝利。ファイト自体の無効化。それに対戦時間の冗長化。或いはカードによる物理攻撃・金銭的打撃に勝負前の取決めを悪用したルール外勝利とかもある。つまりどんな手を使っても負けない事にかけては群を抜いている。私もローズに負けた事ないけど」
「……ごめん、今なんて?聞いた事のない言葉が急にでてきたけど」
ユウキちゃんの目が点になっている。
こんな言われようになっているのは仕方ない。これは制作チーフが何としても出したい効果を色々と試した結果起きた開発途中の惨事が由来している。
結局その効果自体はジョークセットに収録される事は無かったが、コラムで上げられた画像からは何とかして採用できないかという試行錯誤の一部を見て取る事ができた。
……つまり、コメディファイター・ローズさんの使っているカードには
「ユウキちゃん。1枚具体例を出すけれど……飲み物を買いに行く<Drunking Drink Ticket>ってあったよね」
「使った後に皆が鼻の下を伸ばしたカード……」
うわぁ、酷い覚え方。……って、そうじゃなくて。
「あのテキストの内容そのまま使われたら、最悪サレンダーか無一文かの二択を迫られるよ」
◆
折角のイイ気分を凹マセに来る事が大体1日の終わりにやって来る事ハちょくちょくあるジャン。
そりゃmeも界隈ジャそれなりには知られてるコメディファイターなんダヨ?
過去のショーで相手して倒した相手トカ、偶にプロ志望の芸人ガ突っかかってきたりトカ。中には自業自得でポリス案件な事を迫ろうとしたヤツもリベンジしようとするとか、ホ~ント物騒。
フツーのか弱い女の子だったら絶対1人で外を出歩けないってmeは思うナァ。
「ヤァヤァ、meのファンカナ?あとでサインでもあげた方がいいカナ?」
「ッザケんじゃねぇぞオイ!テメー、この前のファイトじゃ変なカードで勝ち逃げしやがって……お前のまぐれな勝ち逃げのせいで撮影現場は台無しになるし事務所は閉鎖されるしでこっちは大損だ!このエセファイターがよぉ」
案の定、よろしくない感じの男がやってきたヨォ。逃げた逃げたッテ……スケジュールとかmeの都合だってあるノニ、勝手なヤツジャン。
現場に事務所……ネェ。確か賭けFightで裏流通のHentai撮りしようとシテタ事務所絡みがあった気がしたナァ。ソコの関係者カナ?トップはお縄にナッタシ。
何か変な自信持ってるッテ事は厄い案件決定。適当に吹いたら向こうからプンプンしてるナァ。
──███サマ、このパターン最近多くないカィ?
イヤ、そう心で呟いテモ答えてくれる訳じゃないケドネ。Fight中に降臨メサレルほどのコストが出せないはアリエナイくらいにオ高イというのもあるけどネェ。
「で、今度は逃げられナイ、とデモ言うつもりカナ」
「そうだ。俺が手に入れた新たなカードで、誰だって倒せる力でお前をねじ伏せて……その腹立つ顔を歪めさせながらテメーの身体を蹂躙してやる!」
気色悪いヨォ。男の風上にも置けないヨォ。一部のお客様ノ目線ヨリも数十倍イヤらしく目を見開いて舐めるように見てくるヨォ。
「ハァ……デ。逃がさないッテ言ってもドウシテ勝負する前提でイルノ?受けずにバイバイすればオシマイデショ」
「エセファイターの言いそうな事だな!だがこいつを使えばお前はファイトを受けざるを得ない!」
周囲が一層薄暗くなっていく……アー、ハイハイ。闇のCardネ。
仕方ナイカラボードは構えて強制敗北回避ハしておくヨ。
「オーケーオーケー、受けなきゃダメなのはワカッタヨ。でもイヤな感じのフィールドだケド実は壊したり抜ける方法とかアルンジャナイ?」
「そんなもんねーよ!そしてこの中では俺は強くなるんだ。ざまぁ見やがれ!」
「つまり勝負がつかないとズット出られないンダネ。そしたらどっちがお腹空いて倒れるマデ我慢比べでもスルカイ?meの栄養補給の準備は万端ダヨ」
袖から取り出したカロリースティックをお口にポイ、Fight前ノ栄養補給完了ット。
「そんな屁理屈通用するか!"
「エー……Cardの処理が途中でも1分?」
「当たり前だ!遅延行為で何とかしたいなんて魂胆が見え見えなんだよ!」
オヤオヤ、すぐカッとなるヤツだったヨ。……確カニ言質は取っタシ被っていたフードをズラして準備を整えてヤルヨォ。
クックク……共鳴率を奪ッタから勝てル?ファイトで強いカードを使えば勝てル?イヤァとってもオメデタイ人ダネェ。
「確認アリガトついでに先行は貰うヨ──命燃え尽きるマデニ相手の命を消ス」
「ハッ、せいぜいいたぶってやるよ……だからこそ己が命を燃やせ」
サァ、手札を引いて。オイオイ、これはモウ、ネ。
「Fight!」「ファイト!」
Meの勝ちじゃないカ……それジャもうどんな名前かもアンマリ覚えてナイHentaiファイターにはとっととご退場願うとスルヨ。
コメディファイトじゃゼーッタイ見せない、口角を上げて歪んだニヤリ顔を浮かべテ……折角ダシ今日のショップで皆言ってた口癖をマネしてみようカナ。Let’s my turnネ。
「Ready・upkeep・drowskip。Set from the Lifedeck──今ネ、meは喉が渇いたんだヨォ」
「は?何言ってやがる。どうせ大したカードは来ねぇんだろ?このフィールドはそういう場所なんだ。どうした、早くターンを終了しやがれ!」
「それガ動けるんだヨネェ~。meはこのカードをコスト0で配置、レストして……こうスルヨ」
今置いたCardを横向きに手に取って、先ずは半分にビリビリと千切るヨ。
それを重ねて今度ハ縦に、もう一度千切ッテ……
フィールドに現れた輝くソレが、手でビリビリと音を立てて破れるカードに合わせてキラキラ瞬きながら崩れ落ちていくヨ。綺麗ダネ。
「……は?自分のカードを破くだ?何をやけになって……」
「コノCardを4枚に破イタ秘宝は、紙片1つ1コスト分……ツマリ4コスト分にナルヨ」
シレッと伝えた言葉に相手が固まっチャッタ。その後不満をぶつけて来るんデショ?
「なぁっ!?1ターン目から4コスト生み出すって何だよ!おかしいだろ!?インチキだ!不正だ!」
「ソレ言っちゃう?デモ残念、ボードが正当な動きと認めてるヨ。単なる【ナインス】擬きダネ」
「なっ……!?」
絶句シチャッタネ。イヤァ、愉快愉快。分かりやすくて愉快すぎて……逆にツマラナイヨ。
「続いて……本来0コストの秘宝<Drunking Drink Ticket>を、土地もレストしてCardに記されている"
そして相手の掌に謎の紙切れが現れる。5コストも支払ったとも思えない、不思議な言語で書かれたチケットダ。
「こ、コスト0に追加コストだと!?何を仕掛けて……お、驚かせやがって。今度はカスの飲み物券を俺の場に?こんなチンケなもんでまさか命乞いでもするつもりか?折角破いたカードの結果がコレかよ」
イヤァ、ここまで調子に乗ってるトカ、meのdeckより馬鹿げてるジャン。
さあ、
「この瞬間、追加コストで付与サレタGreedmaxim能力が発動しちゃうネェ。このCardは自動で発動されるンダ。そうしたナラバ、『このターン中に
宣言シタ瞬間、胸元の宝石の中央ガ、瞼を開くかのヨウニ赤く輝き出ス。
ぞわり、と恐ろしい気配が辺りを覆い、しゅるり、と不可視の糸が対戦相手の男に纏ワリつく。アァ、今日のイベントのお陰で███サマがちょっと機嫌良かったみたいダ。
……イヤ、折角楽しんでくれたイベントのイイ気分をジャマされて機嫌ワルクなってルノ?気配の圧ガ強すぎてワカラナイヤ。デモ、ここまできたらする事はただヒトツ。
──サァ、
「ひ、ヒィッ!?なんだこれは!?体が急に動かなく……ありえない!そのカードで何をしやがった!俺の思う通りに動けよ俺の身体──ぐっ、力は入れている筈なのに、何が起こってやがる!?どうして口しか動かせない!?オイ、まさか。お前も闇のカードを……」
「ソンナ既存のルールに縛られているCardと一緒にしないで欲しいネ。これはそんなものでは説明できないヨ……今からmeの言う事は対戦相手のオ前が選択する内容になッチャウからサァ、耳の穴カッポジッテ聞いてネ!」
「な、何をさせる気だ……まさか無理矢理降参をさせる気か!?」
「それはこの効果では許されていないヨ。オ前の意思でならできるケド。ソレジャ<Drunking Drink Ticket>の効果デ、飲み物を買う相手と渡す相手、そしてその飲み物の種類と購入に掛かるコストを支払う相手を指定するヨ。買う相手はオマエ、渡す相手はme。飲み物は、高速鉄道で数駅離れた観光名所に売っている特製Grape vinegar、コストを支払うのもオ前ダヨ──という訳でお買い物ニ行ってラッシャイ!」
「グレープ、ビネガー……って……ハァッ!?お、俺の金でテメェに葡萄でできた酢をお前に買って来いだと!?そんな馬鹿げた事をカードの効果でさせられてたまるか!ふざけんな……って身体が勝手に!?俺はそんなパシリする気はねぇ、なのに何で……何で俺はお前に背を向けて駅に向かって歩き出してんだよ!?俺は行かねぇ!買い物になんていかねぇって言ってるのに何で止まらねぇんだよ!?」
Greedmaxim能力に、meに……いや、███サマに操られた対戦相手がmeに背を向けさせて闇のフィールドの外に歩いていくヨ。でも意識はちゃんとあるみたいだネ、よかったネ。
「クックック、本来は内容次第で断る事も出来るケド、オ前のコントロールはmeが得てるからァ、その選択はできないネェ……そういえば。このFightは、何故か貼られているフィールドのせいで出られないンダッケ?それに"
この言葉を聞いた相手がハッとシテ、その表情を見る見るうちに青く染めていくヨ。イイ感じに慄いているネェ。
「……!?お前、汚ねぇ手を使いやがっ」
「クックック……何を言ってルノ?meは勝敗条件を確認したダケ。そこに対シテ勝手に勝敗内容を付け加えたのはオ前だヨ」
悪~い力を使ってる癖ニ、こんな手にあっさり引っかかるダなんてネ……イヤ、悪いカラいい気になって、自分から引っかかりに来るんダヨ、クックク。
「じゃあ、ゼンブ教えてヤルヨ。買い物が終わった後にDrunking Drink Ticketは墓地に送られ、Greedmaxim能力は終了する。デモ安心してネ、Card効果が適用サレルのはFight中ダケ。決着シタ後ハCardで示された買い物は無かった事になるヨ!ただこのFight
実際、飲み物なんてドーデモイイんだヨネ。meと、多分ダケド███サマのいい気分にちょっと水を差した……その報いを受けて貰うだけダヨ。
ついでニ、オマエのエネルギーもmeの目的の為に回収させてもらうネ。
胸元の宝石が煌々と
「な、なんだよこれ!こんなのがファイトかよ!?何で力を振るえねーんだよ!!ヒィッ、勝手に足が外に!歩くな、俺はファイトするんだ、やめ……やめろォ!!逃げる気なんてねーのに、なんでおれは、いやだ、こんなの、あんまりだぁぁぁぁぁ……」
「──
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